グローバル日本研究国際シンポジウム

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日本の新移民 ―国際比較からみた政策と現実の乖離―

ダヴィッデ・キアヴァッチ (チューリッヒ大学)

近年、「乖離仮説」は先進国の移民政策の研究において影響力をもち集中的に議論される話題となっている。この仮説は、移民政策における公式の目標とこれらの政策の結果として起きている実際の移民の動きとの間に明確な乖離を認め、国民国家は今日でも移民を制御することができるかという疑問を提起する。本稿では、日本の場合を国際比較により分析する。

1980年代後半以来、日本は新たな移民国家となった。日本の外国人人口は、まだ2%未満であり、国際比較としては非常に低い。しかし、日本にはかなりの数の移民が継続的に流入しており、OECD諸国の中では移民数が最も多い国の一つである。日本経済は、労働市場のいくつかの分野で外国人労働者に構造的に依存している。また、日本は、移民政策における公式の原則と実際の移民の動きとの間に明確な乖離がある。外国人労働者の受け入れが許される、高度の専門性が必要とされる職種のリストはあるが、現実には外国人労働者の大多数は、これらの職種以外で雇用されている。欧米の移民国家の研究によると、公式の移民政策と実際の移民の動きとの間の乖離は、利益団体、国際人権体制や超国家主義的な運動や政党などという国家の外部にある要因の影響で起こる。しかし、日本の乖離の原因は、主に移民政策立案における観念的および制度的細分化という国家の内部にある。日本という国家は外部に対してはまだ強いが、内部は弱い。欧米の移民国家の場合にも、これらの内部要因を、より慎重に検討する必要があるだろう。

略歴

ダヴィッデ・キアヴァッチ(David Chiavacci)は、チューリッヒ大学アジア・オリエント研究所日本学科社会学メルカトル教授。2001年、チューリッヒ大学で社会学博士号を取得後、2001-2003年、日本学術振興会外国人特別研究員(東京大学)、2003-2005年、チューリッヒ大学リーダー、2005-2010年、ベルリン自由大学講師、2009年、デュースブルク=エッセン大学代任教授をつとめた。2009年、ベルリン自由大学で大学教員資格(ハビリテーション)取得。2010年から、現職。主な研究分野は、経済社会学、知識社会学、国際比較による日本の政治社会学。現在の研究プロジェクトは、日本の社会的不平等、日本の移民政策。