グローバル日本研究国際シンポジウム

開く日本・閉じる日本 —「人間移動学」事始め—

<< プログラム

日本における縁辺地域からの人口流出と地域属性 ―山村と炭鉱閉山地域の二事例について―

堤研二(大阪大学)

日本の高度経済成長は、人口移動による労働力の空間的配分によって支えられた。とりわけ、都市圏への人口供給地として、縁辺的な地域は一定の役割を果たした結果、人口が激減し、高齢化が急速に進んだ。そして、いわゆる「過疎」の問題が生じた。なかでも、山村、離島、半島、豪雪地帯、林業地帯、薪炭業地帯などからの人口流出は、各地域における過疎問題を深刻にした。これとは別に、「スクラップ・アンド・ビルド」政策によって、中小規模の炭鉱を皮切りに、最終的には大規模炭鉱に至るまで、世紀の変わり目までに日本の炭鉱のほとんどが閉山し、当該地域からの短期間での大規模人口流出と地域経済の疲弊が生じた。山村は数十年間にわたり人口減少を経験した地域であったが、個々の炭鉱閉山地域では極めて短期間での人口激減と地域機能の衰退が顕著であった。こうした過疎・縁辺地域からの人口流出の詳細については、既存の統計データでは情報を得ることが難しく、さらに日本のアカデミアにおいてはマクロなスケールでの統計的人口移動分析と、ミクロなスケールでの過疎集落研究が主体であり、両者の連接やメソ・スケールでの調査・研究がほとんど為されてこなかった。発表者は、1980年代以来、この研究上の間隙を埋めるべく、「人・地・流の三ファクター説」をフレームワークとして調査を行い、山村と炭鉱閉山地域からの人口流出者数千名の移動記録個票をもとに、人口移動流と移動者の属性からなるパターンを分析し、人口移動流を輪切りにした場合に逆照射的に見えてくる山村と炭鉱閉山地域の属性を浮き彫りにした。具体的には、山村として大分県日田郡上津江村(現・日田市上津江町)、炭鉱閉山地域として長崎県西彼杵郡高島町(現・長崎市高島町)からの人口流出を分析した。前者では世帯内属性や年齢による移動パターンの差異、背景としての多重的な遠隔性、後者では社会階層による移動パターンの差異や転出先での生活文化的葛藤の存在などを明らかにした。

略歴

堤研二(つつみけんじ)。大阪大学大学院文学研究科共生文明論講座および人文地理学講座教授(兼職)。博士(文学)。専門は社会経済地理学。1960年生まれ。1986年、九州大学文学研究科修士課程修了。国立佐世保工業高等専門学校、島根大学法文学部勤務を経て現職。山村の人口流出集落の調査・研究をはじめ、茶業地域の産業近代化とエージェント、炭鉱閉山影響調査、ニュータウンの局地的人口減少と高齢化、離島における産業と地域生活機能の維持などを研究してきた。研究のキーワードは、環境利用、近代化、過疎、人口減少、縁辺地域、地域社会、ソーシャル・キャピタル、シュリンキング・シティズ、地域変動。