グローバル日本研究国際シンポジウム

開く日本・閉じる日本 —「人間移動学」事始め—

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19世紀後期日本の農村部における生業と人口移動

東野将伸(大阪大学)

本報告では、摂津国島下郡沢良宜浜村(現在の大阪府茨木市)の有力農民である高島家のもとに残された文書群を利用し、19世紀後期日本の農村部における生業と人口移動について論じていく。沢良宜浜村は、1871年には耕地面積が約23ha、石高が約280石、人口が394人(80戸)であり、石高の面からするとやや小規模な村である。村内の土地所持については、庄屋を代々務めていた高島家とその分家4家が合計で全体の30%以上の石高を占有しており、有力者として君臨していた。

本報告では、1871年に作成された「摂津国島下郡沢良宜浜村戸籍」の分析を主に行う。本史料には、沢良宜浜村の世帯構成に加えて、各世帯の生業・土地所持状況・奉公人(出稼ぎ労働者)などが記載されており、各世帯の経済状況についての多様なデータを得ることができる。さらに、本史料には村内各世帯の養子、嫁・婿、奉公人の年齢、出身地、奉公年数等が記載されており、このデータの分析を通じて、沢良宜浜村周辺における労働圏・婚姻圏や、畿内農村と周辺地域との関係を明らかにしていくことができる。例えば、村内の奉公人29名については、過半数が丹波国(現在の京都府北部)や北陸地方の出身であったことから、経済的先進地域である畿内に労働力が集中する反面、農業や交通状況が不利な周辺地域における労働力流出の様相が予想される。如上の分析を通じて、19世紀後期日本の農村部における経済・生業と「人の移動」の様相を明らかにしていく。

略歴

東野将伸(ひがしのまさのぶ)。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程在学。2014年4月から現在まで日本学術振興会特別研究員。近世における金融と地域経済を専攻。主要論文は「豪農経営と親族ネットワーク―備中国後月郡簗瀬村本山成家を題材に―」(『ヒストリア』249、大阪歴史学会、2015年5月)など。