グローバル日本研究国際シンポジウム

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国境を越える子の扶養―ハーグ国際私法会議扶養料の国際的な回収に関する条約について―

馮茜(大阪大学)

現代社会では、頻繁な人の移動に伴って、家族が複数の国に離れ離れに住んでいる現象は珍しくない。このような国際的な家族の増加の一方で、国境を越える扶養に関する問題も増えている。経済的に貧しいこと、及び国境を越える手続きが複雑すぎるなどが原因で、多くの場合、子供は海外在住の親に対して扶養料の支払を請求することが極めて困難である。この問題に対して、ハーグ国際私法会議は2007年に、「子及びその他の親族の扶養料の国際的な回収に関する条約」(以下、本条約)及びその補足とする「扶養義務の準拠法に関する議定書」を採択した。本条約における国家間の協力に関する様々な規定によって、子供はより簡単に外国にいる扶養義務者から扶養料を回収することができる。たとえば、本条約によると、外国で弁護士を雇うような経済的な余裕がない子供は、自らが住んでいる国の行政機関を介して無償の法律援助を受けて、各種の申立てをすることができる。また、外国の扶養料支払を命ずる決定について、通常は裁判所の下した裁判に基づかなければ受け取ることができない。本条約によると、より広い範囲の決定に基づき、扶養料を回収することが可能である。日本は現時点で本条約の締約国ではないが、世界各国の採択動向に応じて将来には締結する可能性がないとはいえない。また、本条約は、これからの日本における国際的な子の扶養問題の解決に対して、示唆を与えることができる。そこで、本報告は、まず、本条約及び議定書の採択経緯及び内容を紹介し、そして、アメリカをはじめとした諸締約国における本条約に関する議論も簡単に踏まえて、さらに、日本における国際的な扶養料に関わる紛争解決の現状及び現時点で未採択の原因を検討する。

略歴

馮茜(ひょうせい)大阪大学大学院法学研究科博士後期課程2年。中国中央民族大学法学部を卒業後、2012年4月に大阪大学大学院法学研究科の博士前期課程に入学。2014年3月に修士号を取得し、同年4月に博士後期課程に入学。専攻は国際私法で、国際的な知的財産の侵害に関する問題を研究しているほか、国際家事問題や国際的な契約問題など幅広く学んでいる。