フランス国立東洋言語文化大学・大阪大学 国際共同シンポジウム

モノと文献でわかる古代・わからない古代

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源氏物語古写本のヴァリアント

加藤洋介(大阪大学)

11世紀初めに成立したと思われる『源氏物語』について、現在までに確認されている古写本は、12世紀(平安時代末)までに書写されたものは現存せず、13世紀以降に書写されたものしかない。もちろん紫式部自筆の『源氏物語』も確認されていない。『枕草子』は(唯一の例外はあるが)、現在読まれているのは16世紀以降に書写されたものであり、『源氏物語』の場合、『枕草子』よりは格段に古い資料に恵まれているといえる。しかし、平安時代に書写されたものが30種以上確認されている『古今和歌集』ほどではないことが了解されるだろう。

今回は『源氏物語』の末摘花巻と紅葉賀巻を取り上げ、それぞれ20本程度の書写本を実際に比較して、その本文が何種類かに分類できることを示し、そのような異なりが生じていることの背景について考えてみる。また今日一般的に読まれている『源氏物語』の本文と、これら『源氏物語』古写本のヴァリアントとの間には、どのような関係があるのかを示すことで、「わかる古代」と「わからない古代」について考える材料を提供することとしたい。


加藤洋介(かとう・ようすけ):1989年名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程(国文学専攻)中退。国文学研究資料館、愛知県立大学文学部を経て、2006年4月より大阪大学大学院文学研究科准教授、2010年10月より同研究科教授。著書に『河内本源氏物語校異集成』(風間書房、2001年)、『伊勢物語校異集成』(和泉書院、2016年)などがある。