フランス国立東洋言語文化大学・大阪大学 国際共同シンポジウム

モノと文献でわかる古代・わからない古代

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古事記・日本書紀と天皇陵

高橋照彦(大阪大学)

『古事記』と『日本書紀』は、現在残るものでは日本最古の歴史書として知られ、奈良時代、8世紀に完成した。そこには、日本の起源にかかわる様々な神話や、その後の国の成り立ちなどが記されている。『古事記』と『日本書紀』の両者が主に記述したのは、明らかな神話の部分を除くと、日本の時代区分でいう古墳時代に相当する。

古墳時代は、概ね3世紀中頃から7世紀の範囲になるが、このうちの7世紀は、古墳時代と区分して飛鳥時代とも呼ばれる。この古墳というのは、土を盛り上げて作った墓のことであり、基本的に地域の有力者のみが葬られる。日本最大の古墳は、大阪府にある大仙陵(伝仁徳天皇陵)古墳で、墳丘の全長が486メートル、周囲の濠や堤も加えると長さが800mを超える。このような特に巨大な古墳には、『古事記』や『日本書紀』にみえる天皇の墓を含むものと考えられている。

ただし、各古墳の被葬者が誰かは後の時代にまで正確には伝承されなかった。そのため、江戸時代の18世紀頃にはその被葬者名を推定する試みが始まり、明治時代には国家的に天皇陵の所在地が指定されて現在に至っている。しかし、『古事記』と『日本書紀』の内容がどこまで史実かは問題が残り、一方で近年では考古学の進展により古墳の築造年代なども明らかになってきた。

そこで、今回は古代の文献と実際の遺跡がどのように対応し、いかに歴史復元ができるのかについて、天皇陵と評される古墳を通して考えてみることにしたい。


高橋照彦(たかはし・てるひこ):1992年4月~国立歴史民俗博物館考古研究部助手。1998年4月~奈良国立博物館学芸課研究員。2002年4月~大阪大学大学院文学研究科助教授。2014年1月~同教授。専門は日本考古学。主に古墳時代から平安時代を対象に、陶磁器や銭貨などの古代文物、墳墓・寺院などの遺跡を通して歴史や文化を研究。共著書に、『Jr. 日本の歴史』(1)<旧石器時代から飛鳥時代>(小学館、2010年)、『天皇陵古墳を考える』(学生社、2012年)などがある。