フランス国立東洋言語文化大学・大阪大学 国際共同シンポジウム

モノと文献でわかる古代・わからない古代

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古代世界復元における図像資料の寄与 ― 年中行事絵巻の例

エステル・レジェリー=ボエール(イナルコ教授)

年中行事絵巻は後白河法皇の命により1157年から1179年頃にかけて制作された約60巻から成る絵巻物である。この絵巻は宮廷や高官の生活、および庶民の生活の節目となる出来事を詳細に描いている。この点において本作は物質生活のみでなく、人々の精神、感情、感受性を研究する歴史家にとって極めて豊かな資料となる。12世紀後半の日本最大の町についてもごくわずかな物的痕跡しか残っていないためにこの絵巻はなおさら貴重なものなのだ。

しかしながら原本は1661年の火事で焼失してしまった。そのため現在では江戸時代の写本(または写本の写本)によって部分的に知られているだけである。したがってわれわれが見ることのできる図像にはいくつかの批評的検証を加えなければならない。それらは写本であって原本ではないこと、原本の図像自体も特に出資者の意向に沿って制作されたこと、そしてまた制作過程における絵師の果たした役割も考慮すべきであろう。

本発表では、年中行事絵巻のあらまし、内容および本作品にかかわる諸問題を紹介し、歴史家がそれをどのように活用できたかについていくつかの例を挙げたのち、とりわけ新年の大臣大饗を描く場面について考察する。


エステル・レジェリー=ボエール:2001年1月、Inalco日本学学科日本美術史専攻博士号。2001年9月よりInalco日本学学科准教授、2015年9月より同教授。専攻は日本美術史。平安時代から江戸初期にかけての絵画史、特に説話絵巻、源氏絵などの物語絵画、図像分析、絵に対する言説史などを中心に研究している。著書に『日本伝統絵画による挿絵付フランス語版源氏物語』(セリエ社、 2007年)、『酒飯論絵巻』(セリエ社・フランス国立図書館、2014年)などがある。