凡例 跋、序などは平仮名にしない。 ※割り書きの中は一文ごとに改行しない。 ------------------------------------------------------- いなかしばい とうざいとうざい。 しばらくしばらく。 それちんぷんかんしげでんにいわく。 むかしこうていのぎょうかとよ。 ほうおういでてとうえんにらいぎす。 ほうねんときにおおあたり。 いなかしばいはじまりて。 ひやくしょうらゆうらくす。 そのこじをそのままに。 どつさりすえただいみょうだい。 為 まずはつはるのじよひらきに。 えほうにむかってかきぞめの。 万 すずりはおうみのとらふいし 為もったるしいのみさんもんふで。 そがきょうだいのせりふまて。 万くどうはあらずさらさらと。 ひつかくさるぐまこばやしの。 あさひにはをのすつるがやがはん。 為 よわいはちよのたけづえが。 ししょうじまんのはなのさき 万 たかいやまからたにそこみれば。おまんにあらぬまんばいが。 おなじくいきせいはるがすみ。 ひゐきのひきまくきりまくを。 為あくるいわどのいちばんめ。 万ごばんつづきのいちからじゅうまで。 ふたりひょうばんたのみあがりまするとほほうやまってもふす。 序 さきにゆうしほうけんたつみのそののにしょいでてより。ねんねんさいさいそのかすをすすって。 にたりよったりのしやれぼんとますをもってはかるともはかりつくすべくもあらず。 そのしゃれぼんをけみするに。 そこのそこをうがたんとほっして。 はちまんならくのどろをほりだし。 くまのくまをさがさんとほっして。 ろくまんつぼのごもくをかきだし。 みぬこときよしのかげせんさく。 くらやみのことをあかるみへもちだされて。 じょうろげいしゃのみのうえにはめいわくにおよぶことすくなからず。 これみるにきょうなくみらるるにがいあり。 じつにわらいをとるにしっして。 にがわらいをひきだすにいたらしむ。 これをや。 すぎたるはなほおよばざるがごとしとやいわん。 よがあにでしのまんぞうていいえることあり。 おおよそしゃれぼんをつづるにひとつのしょほうあり。 よくちかくたとえをとらばたてやくしんけんをぬいてまことにかたきやくのこうべをはね。 やつしおんながたをとらへてまえをまくりはたえをあらわにしてえならぬことをしだし。 どうげふんどしをはづしてきんたまをふりまわさば。 めをおどろかしかたはらをかかゆべけれど。 しょうのものをしょうでおんめにかけずして。 しかもしょうのもののごとくみするをじょうずのげいといいつべし。 けさくもまたしかりじつをもってじつをしるすはじつろくなりきょをもってじつのごとくかきなすはげさくなり。 しゃれぼんのしゃれをみてしゃれるしゃれはしゃれたところがしゃれにもならねば。 ただおかしきもをもっぱらとすべしとこのごげさくどうのくわくろんといふべしこのごろまんぞうていかきすてのしょうさつあり。 しゃれぼんにあらずしてやぼほんなり。 そのふでさきのほるところは。 しょうとくいなかのいもかしらにして。 これをよみこれをあじわゆれば。 こつぜんとしてへをもよおす。 ひるところのしかばねたなりしてきくひとのみみをおどろかしめ。だいとなくしょうとなくおとことなくおんなとなく。 おとがいをときはらをだかえてひとつわらいをはっせずということなし。 もしはなをつまみそでをおおうて。 くそのごとしといふひとありとも。 そこはばんしょうへいきなものなり。 てんめいひちねんひつじのはつはるふうらいざんじんもんせいむみょうしかんだのやどりにぶらつくひまひさしぶりにてふでをとる 田舎芝居 ○序開 万象亭著 えちごのくにはさむんくににてふりつむゆきのこうにゅうどう。 みこしじのひとつにして。 なつさりくればくびすじも。 ちぢみのかたびらあつさをわするる。 たやすみのあぜみちを。 ふらふらいくは。 おおぬまぐん。 つまありのさと。 みなみあうさかむらのひゃくしょうよごひち。 たつなみにすいしゃをそめだしたる。 ておりもめんのひとえもの。 はないろぶとりのあつごえたるおびをひょうたんくびりにひっくくりかみはさきンねんはやりたる。 やくびようほんだにかったいまゆ。 えどみやげにもらったじまんに。 びろうどのかめのこうのついたはらかけをみせかけ。 さらさうちわをさしかざし。 やまびきのげたをがらつかせながら。 歌 ¬(注A)どのさあどのさまいばんきやあれぞんきがのうてもいとし。 しめてねたよはなおいとし。 とのこうといなとこうたまじくらいくあとより。 きたあぶさかむらのかんたろうといふわかもの。 ちぢみおりのやもめかかをちょろまかしてこしらえたる。かきじまのたいきょくぶるいというちぢみのゆかたに。 さるとはふつりあいなるくろざんとめのおびをねこじゃらしにむすび。 ごじゅうさんつぎのだちんづけをすりたるあぶらおおぎをかざし。 ぞうりげたをひきづりてきかかりしが。 おっととみるより。 [かんた]よごしちどこへいくしばやだらどうしにいぐべい。<卜よびかけられてふりかえり> [よご]かんたかおらあはやさきへいんだんべいとおもったあ。 さあさあひとつところにいぐべい。 なんでもはやこんどはないたわたりやあ。 きょねんのすだれあけにきたよりやあおおいりだあ。<はないたとははじめたこと。わたりとはわたりしばいとてたびしばいのこと。すだれあけとははちじゅうはちやすぎにはえちごのくにのならわしにて。いえいえにみせをひらき。ちぢみいちとてちぢみのばいばいありこのじぶんはえどよりもでょうにんいりこみてことのほかにぎやかなり。そのせつはいつでもしばいあり。> [かんた]そのはづでもあんべいさ。 にいがたのやましたさくべえがざもとで。 さくらがわほうじろうだあのまつもとはまじりょうだあのというしょうよとうがきたからいいはづだあ。 きょうはなんのうしるな。<しょうゆたるとはすぐれておんなかたのことをいふ。なんのことかつまびらかならず。> [よしち]よんべたいこがまわるっけが。 きょうなあほつねんおどりそがのたうえというえどきょうげんだげだあ。 [かんた]おらはやここのかめだあから。 ちゅうしんくらだんべいと思ったあ。 <いなかしばいのここのかめはぜひちゅうしんくらをするなり> [よしち]そりやあおぶちゃって。<うちすててということばなり> こいづみのたざえもんのおふくろが。 どうかしられたじゃあなかっけかの。 [かんた]をうものしけ。あるべいこったきかっせえ。 このごろのばんげあのおふくろが。 きざみこんぶのうこしらってくらうとって。 としのけでめのわりくなったうえに。 くらまぎれのこんではあり。 きざみたばこととりちがえて。 さんねんだれへぶちこんでしょっからくにたやつのう。<さんねんたれとはしょうゆのこと。しょっからくとはしょっからくのこと> めしのさいにほおばって。 がらーんのんだあから。 のどじゅうへやにがこびりついて。 おとすべいしかくかねえから。 ただはあめまなこのうさつくりかえして。 ぎっくりしゃっくりしてべへいるから。 だざえもんもおかたも。 あんとつかうべへあんとつかうべへとほうがくうしなったあよ。<おかたとはにょうぼうのことなり> [よしち]そりゃあはあちんじちゅうようだっけなあ。おっとからどうつかうけな [かんた]そこへおらがおやじどのがいきあわせてこれだざえもんどの。こかあどうてんしるところじゃあござんねえおらがとなりのおおうみでんりゅうさまをたのんだがよくござるといわれたら。 なにがはあせんじゅちょうのうまいちに。 はくらくどののなかつぎで。 いっぷんごひゃくでかったとちくりげのうまにごうしどのからかりよせて。おきくらのうかかりてむかいにきたらそんまでんりゅうさまがわつらわらとのつつけさしった。 なんでもはあでんりゅうさまはごこうしゃだあ。 おいしやのはつしゅうけんがくだあ。 こりやあへへげえろのやにのうなめたあとちがって。 ごぞうろっぷといふはらわたのうなめさんだいて。すすぎせんだくなあなるめえ。 ここがはいとんちはつめいはちさんけんいちのいるところだあといわれて。 しばらくかんがえておられけが。 なんのうおもわれたかおくらはんしのはながみのうとりだいて。 やぶってはひねりひねり。 くわんぜんよりのうこしらつて。 おふくろのくちのへしわってて。 そのよりのうおしこまれたあ。 [よご]おっとからどふつかうけな。 [かんた]さあそのあとのうきかっせえ。 それよりこんだくわんぜんよりが。 しんななへぬけだいたは。 おっとからしりのうぼったてさせて。 づるづるとたぐりだいたら。 のとくびにこびりついたたばこのやにがみなとれてほんふくのうしられたあ。 ならほどいしゃどののいないむらにはすまないものだあというが。 おらなんどがおやじどのなんだあしあわせで。 いきやくしのでんりゅうさまのとなりにおられるおかげで。 せんきのむしのねだやしのうしられたあ。 [よご]そりやアへへおふくろなあはんしはんせいのめにあわれたな。 そしてあのでんりゅうさまのむすめこのおさじどなあどうしられたな。 [かんた]おさじどなあもさくといろごとよおきなぞろえのひにも<しょにちのことなり>しゃじきへきておられたら。 むかうしゃじきにもさくめがきていて。 こつちからてまねきをしれば。 あっちからはほつくいてりをしかけてねこしゃめおどりのさいちゅうに。 ふたりながらどこへかおっぱづしたつきやあ。 よくたんだえてききやあきょねんのぼんおどりのときからのちいんだけだあ。 [よご]そりやあへへとんだあこんだあしかしはやきものやけたあこんだ。<トむっとしたかおはこいつおさじにきがあるとみえたり。> [かんた]そんだらにしもきがあるか。 [よご]あにはあそうでもねえけんど。<卜はなしもってゆくうちにだんだんしばいちかくなってくるとみものはとろとろいなかかかしどものてをひきたてて> [みもの]あれえしばいがはねえたげでてえこが。 してれこれことなくわえ。 はやくあいベえ。 [みもの]はやくいがじゃあいいしゃじきがふさがるべい。 [ふたり]おらもいそいでいぐべえ。 二立目 そもそもいなかしばいのかまえといっぱこもだれにてしほうをかこみ。 くりまるたをなわゆいにしたるねづみきど。 かんばんはまついたにやくしゃのなをかきつけたるをうちつけ。きょうげんなじろはかみのぼりにかきたるをおしたてて。<このほりまえのはんにたいこをまわすときさきへかついであえるいたのをすぐにきどへたてるなり>たいこやくらはきどのきわへたかくくみあげ。 ざもとのもんしょまるのうちにささりんどうのまくをはりて。 まぬけせんばんなるしゃぎりをうち。 そのしたにふだばあり。 かしらというはきんざいきんごうなをしられたるとおりもの。 きりたけをそめたるだてゆかたに。 とらふをうちたるもんぱのくんなにしまのふんどしを見せかけ。 やけんつばのながかたなをぼっこみ。 ぜにばこにしとねをしきてむんつといかかり。 あたりをにらんでひかえたり。 きどばんはちぐはぐに。 おもいおもいのはんてんをちゃくし。 ゆひわたとさんますのもんを。 こふんにてべったりかきたる。 あかねもめんのなげずきん。 そろえとみえてひとつとろにひっかぶり。 [きどばん]やあはねえるはわねえるわ。 このまくがたいめんだあ。 しゃっきょうのかくべえじしだあ。 今っからおしまわりのふちぬきまでたんだひゃくだあ。 やすいもんだあ。 みばはやくはいってみさっしゃりましょう。 ふちぬきとはおおじかけのことなり。 [みもの]これもともといちばんしゃじきはいくらしもうすな。 [かしら]いちばんしゃじきがはっぴゃく。 にばんしゃじきがななひゃく。 さんばんしゃじきがろっぴゃく。 なみしゃじきがごひゃく。 つちしゃじきかがひゃくっっもし。<つちしゃじきはきりおとしのこと。> [みもの]そりやあへへげえにたかくござるそんだらなみしゃじきをさんびゃくにまけなさろ。 [かしら]まけるのへすのというはただのわたりのこんだあ。 かんとうはちじゅうはちやぐらのてっぺんというしばいだあから。 いちもんだれにもんだれねぎりこぎりはこさんねえ。 [みもの]そんだらべんとうのうんじょうはまけなさろ。 [かしら]いっせえ。<いんにゃというきみのことば。>べんとうがひとくみでにひゃく。 さけがいっしょうでななひゃくにもんっっのうんじょうは。 わたりしばいのしきもくだあ。 したがわい。 もうあすきりになったこんだあ。 まけてやりますべい。 さあわりいんのうもっていがっせえ。<卜きどふださけべんとうのわりいんをわたすあとへくるはろくじゅうあまりのはばさまつのかくしをかぶりじゅずぶくろからぜにをひねりだしながら> [ばば]これおかしらどのよ。 みょうがぜになここへさんだしもうした。 そのおさつのういななかせてくれさっしゃりましよ。 [いなかかか]わしはこのごろまいにちつづけてきたかかでござりもす。 きょうははやさつぜにのしがくがござんねえから。 ごていどのにかくして。 ひきわりのうにますたらずもってきてもした。 ここでつちしゃじきへいれてくれさっしゃるべいならかたじけなくござります。 [かしら]こりやアへへしづらいそうだんだあが。 まいにちきめさるこんだ。 さあさつのうもっていがつえ。<卜ひきわりととりかえるそのほかあまたのみものくんじゅおしあへしあいきどぐちへよごしちかんたもくるこれはどうらくものゆえかしらもしったかおなり> [かんた][よご]おやかたどのきょうもはいでかくさかります。 [かしら]なんとしてかおそくござるいまがちょうどこいりだあ。<こひりなかいりのこと>このまくでさくらがわほうじろうどのをほめてくれさっせえ。 [ふたり]ほめべいとおもってえさわさ<わざわざということ>きもした。 きどばんどのだいぎでござります。<卜いいながらきどをはいるあとにつづいてうさんらしきおとこはいろうとするをひきとめ> [きどばん]これまちなさろふだぜにのうよござっしゃい。 [かはかし]おらはさんおくむらからきたのたあ<卜いいながらはいりにかかる> [きどばん]なんぽとなりむらのわかいしょでも。 じんじしばいたあちがひもうす。 しいなはなりもうさない。<卜やりあっているところへどうそんのわかいものにさんきかかり。> [つれ]そうろくじゃあねえかなんのうやじりあうのだ。 [かわかし]なんだあかんだあのしゃべちやあござんねえ。 おれがきどをはいるべいということもし。 おっとをぜにのださしゃあいれまいというからおこったもんちゃくだあ。 [つれ]そんだらいいは。 これもともとどのきょねんのできあきに。 おらがむらへわたりのきたとき。 ここのむらかたからきめされたわかいしょは。 おらがきどばんのうしていたが。みんなただいれもしたは。 こかああいみたがいだあ。 やさくさいいことはござんねえ。 とおしなさろとおしなさろ。 [かしら]わりさまたちやあはい。 こっちのすいちょうにないことをいうひとたちだあ。 きょねんそっちのむらかたのしばいのときやあ。 おらがむらかたからこもばりのむしろをひゃくまい。 すぎかわのうひゃくぱ。 つみものにしたから。 おっとではいただみもののうつかうたのだあ。 こんどこちらのしばいにゃあ。 いちもんげがものもよこさないで。 みものなあただつかうべいとか。 そりやあなりもうすまい。 あぶらむしだらやせはたけへつけめさろ [かわかし]ならじゃあならぬでよくござるは。 あぶらむしといわれてはいちぶんがたちもうさない。 [つれ]ををいちぶんどころじゃあござんねえ。 にふんもさんふんもたちもうさない。 とうせることがならじゃあ。 こうしてとおりもうすは。<卜いうさまきどをやぶりにかかるをきどばんとびおりたたきのける。これよりおおつかみあいになれどももともとすこしもさわがず。うしろにかけたるひょうしきをはづし。はやひょうしぎをうでば。かねてそうずのふせぎとみえ。むらはずれのえたどもたけやりにておつとまりまく> [えた]ほかのむらでほたくとはあてのよこづちがちがいもうすぞ。<ほたくとはあばれること> だまっていがじゃあ。 おらがあいてになってつきとめもうすそ。<卜やりふすまにてとりまかれさすがのあばれものもぐんにやり。> さあはやくいがっせえ。 [かはかし]いぐめへたあやねえは。 これもともとどのきっとやげえしをもってきもすそ。 [かしら]ををもってきめされば。 やだあとはいいもうさない。 おしゃらくのちょうすけだあ。 よくつらのうみしっていぐがいい。<卜ひげもみあげてたいへいらくはなにかたもおなじいきかたなり> [かはかし]いちごわすれもうさないよくみしりもうした。 [えた]いがじゃあつきとめもうすぞ。 [かわかし]いぎもうしは。 [えた]いがっせへ。<卜むらさかいへおくりだすあとはよびごえいさましく。> [きどばん]もうけんかはすみもうしたあ。 今っからばんげまでひゃくだあ。 〇三立目 しばいのうちはひらきおうぎをみるごとく。 ぶたいをもってかなめとし。 さきひろにしゃじきをかけ。 ぶたいのうえとしゃじきのうえばかり。 すぎひにてやねをふき。 おちまのうえはあおてんじょう。 きりおとしのところどころに。 たいぼくのたちきぬんぬつとはえている。 しゃじきはいずれもなかにかいにて。 間いのしきりはすだれをかけ。 まえのてすりはあらかわのまえだれのごとくなりたる。 はなもうせんをかけたるが。 だいかんどののやくしゃじき。 ひきつづいてもじいりのうちしきをかけたるがだんなでらのしゃじき。 そのつぎにつくえかけのやぶれもうせんをかけたるかいしゃどののしゃじき。 おっとよりほかははなごさ。 しぶかみ。 おおふろしきなんどをかけしもあり。 かどうはつちにてつきたて。 りょうほうへしばをしき。 なでしこひめゆりをあしらいてうえつけ。 さてひきまくはいろいりにて。 じごくごくらくのていそうをそめぬいたるは。 ちゅうじょうひめのおまんだらともいいつべし。 [きりおとしみもの]どれこびりのまにばりのうこいてくるべい。 ○おらあはこびのうぶんぬくべい。<卜いたりたったりする。なかうりもきどばんのごとくあかねそめのなげずきんかわごのふたへくいものをいれ。> [なかうり]おこしごめやおこしごめや。 あめんぼうやあめんぼうや ○むぎゆやむぎゆや。 ぶったおれもちやぶったおれもちや。<あべかわもちのこと> ○ひえだんごやもろこしだんご。 ○にごりりざけや。 あまざけや。 ○にぎりめしやにぎりめしや。 こめのめしのにぎりめしや。 ほんのめしのにぎりめしや。 [みもの]これこれここへひえだんごのうくれさっせえ。 ○おれにはあめんぼうのうくれさっせえ。<卜あめをかいえどのあめとはちがいいなかにてはもみぬかにてつめてあるゆえまっくろなつめでこそげにおとしてくう> [かんた]あんでもでかいみものだあぢとうやしきへごうそのきたやうだあはいあくとがさわりますべいよろさっしゃりましょとすはる。<あくととはかかのこと> [よご]いちばんしゃじきがだいかんどの。 にばんしゃじきがとうこうじさま。 さんばんしゃじきがでんりゅうさまだあ。 しかもおさじどのもきておられらあ。 だいかんさまとおてらさまとおいしゃさまははや。どこでもいこうがつよいは。 すもうもしばいもぜになしだあ。<卜ふたりはそこらのさじきなどみまわしているむかいのほうにてなにかこうろんのこえがする> [またろく]これそんさくさっきからひゃくまんだらいうこんだあ。 なんぼさつをさきへとってはいっても。 おしんはおれがしりへつくべきはづだ。 あとへさがってみもののうつかうめさろ。 [そんさく]またろくどのそんなよこぐるまはやねえものでおんじゃる。 [またろく]むりもひどうもござんねえ。 おしんがいえすじは。 おらがひいじいどののだいに。 ふだいめろうのづばらんだていしだあから。 おらがさきへたつべきはづじゃあござるめえぞ。 [そんさく]またろくどのわりさまもじめんのみてものなあいいなさろ。 おおばんぶるまいのざせきたあちがいもうす。 ゆうしよでせきろんなあいりもうさない。 さきへはいったものがさきにいるべきはずでござらあよ。 こかああくしょでござりもす [またろく]はてあくしょもはいごやもいりもうさない。 このみなみあぶさかのそんちゅうではゆびおりのまたろくだあ。 とうこうじさまのしょうがつまいりにも。 おらがはしをとらないうちは。 なのしどのでも。 しょうやどのでも。 いちばんしるこのおやわんのふたのう。 だれもあけることはなりもうさない。 だいだいだいしだいだいこじのいえがらだあ。 [そんさく]だいだいだいしくねんぼはだいしでもとんぢゃかあござんねえ。 そりゃあへへ。 ばしよとところによったらいえがらもいりもうすべい。 いまもいうとおりこがあゆうしょだあ。 とおくてみづらくははやくきてまえのほうへはいったがよくござるは。 [またろく]おっとをおどれにならうべいか。 [そんさく]しらじゃあおしえますべい。<卜ふたりともこわだかになるおりからまくをあけて口上云罷出(注B)。> [こうじょう]とうざいとうざいさあて。 このところにおきましてとうそんたそんからやくしゃいろこへくださった。 つみもののかきつきのうよみあげます。 しずかにしておききやりもし。 とうざいとうざい。<卜いえばしゃじきもおちまもひっそりとなる>とうそんかたやへいじさまだんべえさまよりぜににじゅうよんもん。 くらはしくまよしへくださるこれでさけでものめとってえ。 こいずみむらのおかみさまかたより。 ぼたもちひととじきりょうてづくりのあまさけひとつくり。 そうやくしゃどもいろこどもへくださる。 よつぱらのみくってはたらけとってへ。<よっぱらとはしたたかということ> すがたむらよしくらさまのごいんきょさまより。 きねもみにさんしゃく。 うちやまきんざぶろうへくださる。 えっちゅうふんどしにでもつかうろとってえ。 おなじうどんのこひとふくろ。 さくらがわほうじろうへくださる。 これをかおへぬれとってえ。 こいづみむら。 いなばむら。 さんおくむらはちむらせんじゆちょうみぎごかそんのわかいしょさまほうより。 むぎひとかます。 なすびひとかご。 かぼちゃじゅう。 たまみそいつつかかり。 はたばこさんきん。 たけかわさぶろうえもんへくださる。 ずいぶんかせいではたらけとってえ。 とうむらとうこうじのおしょうさまより。 せんこうごは。 ごしゅこうひとふくろまつもとはまじろうへくださる。 いしょうほろぎをふすびょうとってえ。<ほろぎとはうちかけのこと> どうたいかいでんりゅうさまより。 ひわようとうひゃくふく。 あつけにあたったやくしゃどもにふりだしてのめとってえ。 おなじおむすめこさまよりはなほりのてのごいひとひずっっ。 さくらがわほうじろうまつもとはまじろうへくださる。 これをかぶってじょなめけとってえ。 さんおくむらたかいうらのすけさまより。 さけひとたるちぢみいったんぎんいっぷう。 もりやまへいすけへくださる。 ずいぶんかせえでぎしめけとってへ。 おなじむらわかいしょさまかたより。 かんしょうがひとふくろ。 くろざとうにたかい。 うたうたいのふじたきゅうべえにくださる。 これをねぶってうたえとってえ。 このほかにいななかさつせえたものは。 またあとでよみたちますべいもはやこびりもすましたから。 おしつけそがきょうだいたいめんのきょうげんのうはないます。 さようにおもわっしゃりましょ。 とうざいとうざい。 四立目 だいかんどのはたかみやじまのかたびらにこんすずしのはおり。もくらんじきののはかま。 しゃちこばっておられしが。 となりしゃじきのとうこうじのおしょうとはなしをする [だいかん]ときにおしょうさまきょうのきょうげんもおもしろうござりました。 せっしゃもわかいじぶんはいたってほうとうで。 ところどころほうぼうへんれきいたして。 たびしばいをもけんぶついたしたが。 ちょうしのうらかたのしばいでは。 なんのきょうげんでも。 おおぎりにはりこのあかおにをださねばけんぶつかたちませぬ。 せんだいのしゃかどうなどのしばいは。 みまわりのやくにんがまいると。 がくやからいやいぬきのかたちにこしらえたやくしゃがでて。 やっとうやっとうのしなへうつともうして。 いやいをぬくまねをするので。 くすりうりのたいになります。 またさんいんしばいというはやくしゃさんにんぎりのいいたてでござるから。 ぶたいへやくしゃがさんにんからかみならぶときは。 せりふのまわってこぬやくしゃは。 ちいさなびょうぶをひざのまえへたておきます。 またおんながたはおんながたのめん。 たちやくはたちやくのめんをこしへぶらさげて。 にんぎょうしばいのたいになっているのもござりますて [おしょう]はてなもし。 このむらかたではそんなはっとがなくってよくござりもす。 そしてあのまくをおみやりもし。 いなばのこんやのそうべえがそめたげでござる。 しばいのまくにじごくごくらくのていそうとは。 いいおもいつきでござりもす。 すなわちこれがきょうげんきよもさんぶつじょうのえんでござりもふすと。 はなしのとなりはでんりゅうろう。 きゅうびょうようでそこらまでゆかれ。 あとにのこるはむすめのおさじ。 ところなうてのしなものにて。 あかぬりのくしにやきつけのかんざし。 ろくさいいちにかったにおいあぶらをべたべたとつけ。 えど.のおばこからびんさしをまげもせずにそのままでさし。 かみはとんびのすのやふにつかみちらし。 だおしろいをこてこてとめんをかぶったごとくけわい。 せんだいばなのとりたててのべにをくちからほほへべたへぬり。 かすりえちごのふりそでに。 ねごやきぬのしょうろくぞめのおびをよしやむすびにむすび。 しのびおとこのもさくがきりおとしからめづかいをしてたてゆけば。 そのままがてんしてちょうずにたつふりにて。 しょうべんじょへゆくともさくもそこにまっておる。 ふたりはしょうべんたごのきわにたたずみ [おさじ]おらあはやさきつからあいたくてやるせがなかっけが。 とつさまがついていさっしゃるから。 ぬけべいようがござらなんだあよ [もさく]アニおらにあいたかんべい。 こじんだふしにうたうとおり。 さつさしょうしょうあきのかぜだっぺえ。<卜なみだぐむ> [おさじ]なんとしてそんなしょちっぷりをさっしゃりもふす。 わしがこなさあにいつあきもうした。 おらはいちにちもはやくふうふになるべいとおもって。 とかくしさまへがんのうかけたから。 ことしはなりとしでせどのあおなしがすずなりになって。 みるたびにぐいぐいとつをひいてかじりたいけれど。 それをしんぼうしるのは。 たちものだあからでござりもふす。 おらあそれほどしんじゅうをたてますはよ。 [もさく]そりゃあいつわりでござんべえ。 そんだらなぜしょうよとうどもにてのごいのうやらしった。 だいほうほうじろうかはまじろうにきがあるだんベえ [おさじ]やれはあありゃあわしがふんにしてとつさまがやったのでござりもうす [もさく]いっせえ。そうじゃあござるめえ。<卜せいあうしろによごしちがうかがいよっておさじがしりべた> [おさじ]ああ、これしりのうしねるは<つめること也>だれだかなと。 よこへしゃくったたなつちり。 ふりとばされてひょろひょろひょろ。 こころえもさくがみをかわせば。 しょうべんとうへまっさかさま [おさじ]これは [もさく]かまわすとござりもふし。 〇五立目 [こうじょう]とうざいとうざい。 さあてこのところたうへそがほうねんおどりたいめんのまくでござりもふす。さようにこころえさっしゃりましょう。 ただしこれがきりきょうげんでござりもふす。 ちょんちょん ぶたいしょうめんまつはやしをかきおとしたるすだれをかけ。 だいじんはしらのほうへそこらのいなりさまからかりてきてまもののとりいをくくりつけめつけばしらへすぎのかわをまき。 まもののすぎのえだをとりつけいったいつるがおかはちまんしんぜんのてい。 しんがいくろやご。 うんのしでこしらえたるすほう。 ちょうしのたてえぼしばんさいおうぎのおやぼねをおりかけてすえひろにしたるをもち。 みやかぐらのこころいきなれど。 なんだかつまらぬなりものにてまくあく。 [しんがい]いやこれふたりのしゅう。 きょうはこのつるがおかはちまんさまへ。 くどうざえもんすけつねどのがえほうまいりをおしやるげでござる。 そのまちうけのうすべいとおもって。 このしんがいのあらじろうえさわさと。 ではりもうした。 [くろやご]このくろやごもそのふんべつでござりもうす [うんの]おらもそうでござる。 ときにはやくどうどのはおそいことでござりもうす。 おおかたあさめしのしかけようがおくれたあからでもござんべえ。<卜いっているときりまくのうちより> ○かじはらへいぞうではったあ<卜いう> [さんにん]あにへいぞうどのがおでやったあとか ○かじはらへいぞうではったあ<卜かじはらさいとうじまのもめんどてらにくろもめんのくくりずきんやまかたなをさしくわえきせるにてうしろてをくみえどならたいこようといところなれどきつねつりのようなあいかたになりかどうのみえもなくぶらぶらとほんぶたいへなおる> [さんにん]こりゃあかじはらどなあようもござるめえに。なじょにおまいりをつかいやりもうした [かじはら]きょうはこのごろぬくといひだあから。 せどのめぐらをのらまわりのうするとって。 ついぶらぶらとここまできもした。 おとうかどのにでもばやかされたげてござる。 そしてまたにしたちゃあとっときのきりもののうきて。 なじょにそこにいやりもうす [しんがい]けふはくどうどのがおまいりのうめさるげでござる。 おっとをまちうけるのでござるわよ。<卜いううちかじはらきりまくのほうをみて> [かじはら]ときにさんにんのしゅう。 むこうのほうからしょなめきがきもすわよ [さんにん]ほんにのんし<卜みなみなむこうのほうをみると。べこべこざんまいせんのあいかたになり。ふじたきゅうべえさるのこだんののうをうたいだすと。とらしょうしょうりゅうにけまりにぶうぶうかいをそめたるもめんいしょう。いんきんさらさのおびをむすびさげ。おさじどのからもらったてぬぐいをかぶり。あさひなはつるのまるをそめたるはんてんもめんずきんをかぶり。たいこをたたきながらおたすけおどりのみえにて。ずっとこおどりごなごなおどりこぶないよこのをおどりながらほんぶたいへなおりとどかくべえへししゆみくぐりのしょさことすむ> [みもの]やうやうさくらがわまつもとのしょうよだろくまよしどのもたいぎでおんじゃる<卜ほめるうちよごしちかんたかどうへあがり> [よご]とうざいとうざい。 きょうげんなかばへじゃまだっぺえがちくとんばかりほめもうそう。 ほうじろうどののいとしさは。 てんにたとへばほしのかず。 やまできのかずかやのかず。 しちりがはまではすなのかず。 めしたるこそでのいとのかず。 ごたんばたけのけしのかずと。 ほほうやまてつんでるこんだ [かんた]つづいておらかもほめもうそう。 はまじろうどののなりふりは。 たてばしゃくやくすわればぼたん。 ありくすがたはよりのはな。 くまよしどのをもほめあごさにほほさにおへたひげ。 いわばのにあざみのはなよ。 ひなたぼっこをめさるなら。 うぶげやけぬきでおぬきやりもうすと。 ほほうやまってぶんぬいた。<このほかひきつづいていつつむっつありこれをりゃくす> [かじはら]おらあはやおたすけだあとおもったらおおいそのとらけはいざかのしょうしょうたいこぶちなああさいなか [しんがい、くろべえ、うんの]コリャァへへたまげたこんだあ [あさいな]げえに笑いめさるな。 きょうはくどうどのがえほうまいりのうさっしゃるからたいめんのうすべいとおもって。 そがきょうだいがではるげだ。 おっとのうきかじって。 このふたりのおしゃらくがたっしべいようがあるから。あわせてくりょうとせがむからどうどうのうしたのだあ [とらしょうしょう]こばやしさあのいわっしゃるとおり。 おらがちいんのじゅうろうさあにあうべいとおもって。 しょうしょうさあといいあわせてひとのまなこにたたないように。 こんなかたちにむくれてきもうしたあよ。<むくれるとはやつすこと> [せうせう]とらさあのおっしゃるとおりだあ。 おんじいたちよ。 こいにはみをやつせでござりもうす [かじはら]おっとでわかったあよ。 したがはいそがきょうだいなあびんぼうがみのもうしごだげて。 おえべすにもおだいこくにもうとまれたあおやろうどもだあ。 しょうがつごだあのたうえゆかただあのといふものは。 ゆめにみたこともない。 さんびゃくろくじゅうよかんにのち。 のらきのぼうたいちまいで。 みずっぱなのうすすりあがるびんぼうのらにしんちゅうつくすはわるいふんべつだあ。 なあわかいしよそうじゃあござりもうさぬか。 [しんがい]おっとさもし。 とらせうしょうにはすけつねどのがきがあるげた。 びんぼうがみなあおぶちゃって。 くどうどのにねつれるが。 ぬったりのみずあめのうなめるよりうまいせんさくでござらあよ。<ぬったりのみずあめはとうこくのめいぶつなり> [くろべえ、うんの]そうでごんざるそうでごんざる [あさいな]だまりなさろ。 そがのびんぼうがおしんたちがやつがいになりもうすか。 ひとのしちなんよりわがみのはちなんだ。 おしんたちがしんだいがどれほどよくござる [かじはら]なんぼだれがみがわりくっても。 そがきょうだいにはかないもうさぬ。 なぜといいめさろ。 きょうだいにかつぼれたとらしょうしょうも。 しりおしのうめさるおしんさまも。 そのざまはなんでごんざる。 おたすけのまねのうしるとはうそだんべい。 やっぱりほんにぜにのうもらってきょうだいにみつぐのでござんべい。 たいこぶちのあさいな。 おたすけおどりのとらしょうしょう。 こっちのむらかたはさんねんがうちほうしゃどめだア。 わきのむらへとおれとおれ [とらしょうしょう]こばやしさまなああんなぞうごんのうつきますわよ。 きもかやけてなりましななりましない。<卜なくこばやしだいはだぬぎになり> [あさいな]げぢげぢどのよ。おしんさまなあねんにはじたがよくごさる。 なんのいこんがあっていまのやうなぞうごんのうつきめされた。 そしておらやとらしょうしょうにいいなをつけてくださってかたじけなくごんざる。 れいなあこうしていいますべい。<卜よこぞつほうをはればさんにんとりさへる> わいらもあいてだあ。<卜たちまわりになるこれもえどのしばいとはちがいみえもなんもなくほんのつかみあいのごとくなり> [とら]やれはあぞんぶんいうだらくちでいうがよくごさる。てをだししたらまけになりますべい [しょうしょう]とらさあのおっしゃるとおりだあ。 むしのうへさえておっこたえなさろ [あさいな]あにはあかんにんぶくろのをがきれもうした。 はなしめさろはなしめさろ [とら、しょうしょう]もっけなことがおごったあ。 だれそきてとりさえてくれさっしゃりましな。<卜おおごえてがなりたつるときりまくのうちよりばたばたにてくどうざえもんなにかつまらぬそうかみのかづらびうちいりのぬのこばおりおなじしたてのだいとてらしりをまくりながら> [くどう]そのけんかはおれがもらつたあもらったあ。<卜かどうのみえもなくほんぶたいへかけつけあさいなをひきとめ> これあにいせくことはねへ。 このくどうざえもんがおっとめた。 いちばんとめてくんさるなら。 きょうなすのしぎやきだあもさ [あさいな]すけつねどのがとめさっせえても。 ききもうさないやだあいやだあはなしなさろ [かじはら]くどうどのいいところへきてくださった。 ちくとんばかりのまちがいではや。 あさいなどのがはんけえのうおこされて。 なじょうにもつかうべいようがござらなんだあ [しんがい、くろべえ、うんの]よくあいさつのうしてくれさっしゃりまし。 やれはあつらいめにあいましたあよ [くどう]あれほどにいうこんだ。 よろしてやりなさろ。 みなつちべたへあたまのうほりこんで。 あやまりめさろあやまりめさろ [みなみな]あさいなさま。 まっぴらようさっしゃりもし [あさいな]よくござるりょうけんのうしますべい。 そのかわりにくどうどの。 ちくとばかりたのみたいことがござるはよ [くどう]あんでもききますべい [あさいな]そんだらいいますべい。 べつのことでもござんねへ。 そがきょうだいのあおやろうどもが。 おしんさまにたいめんのうしたがりもうす。 おうてやってくれめさろ [くどう]あさいなどのまちなさろ。 そがきょうだいののやつらはおらにはちっとさしあいだ。 これはよろしてくれさっしゃりもし [あさいな]そりやあことばがちがひもうす。 わりさまのいうことなあきかせて。 おらがいうことなあきくめえとか。 おっとじやそんとくなしじゃあござんねえ。 そんだらよくござる。 またけんかのうおはだつべえ。 かじはらそこへいだされ [くどう]ああこれきくめえとはいいもうすめえ。 ならほどおうてやりますべい [あさいな]またきよごんじゃあござんねえか [くどう]くんしににごんなしでござるわよ [あさいな]まちめさろおれがここのうのいたら。 すけつねどのがにげべえもしれもうさない。 おしんたちふたりでおさえていめさろ。〈卜とらしょうしょうくどうがそれをひっぱり〉 [ふたり]しにぢからなあだしてさえもうした。 [あさいな]どりゃふたりのものをよびだしますべい。〈卜きりまくのほうへむかい〉 そこなあはいこやのかげにひかえたふたりのせなごたち。 すけつねどのをおうじょうずくめにしたら。 たいめんつかうべいといいこんだ。 はやくでてあいめさろ [じゅうろうごろう]〈きるまくのうちより〉こころえもうした。〈卜えどならたいめんさんじゅうというところなれどどういうあつらえかきだすのめりやすになるときょうだいみのかさにてじゅうろうはきにてこしらえたるくわをかたげごろうはかおをまっかにぬりりょうほうへながくくだったまえがみのかづらたけにてこしらへたるゆみやをもちかどうのまんなかにつつぼりとたてかかしのおもいいれこのみえおおおちにてきりおとしよりどろどろとかけあがりじゅうごろくにんほめことばあり〉 [かじはら]そがきょうだいなあどのようなざまだあとおもったら。 なわしろのかかしが。 さえのかみどののうみるようなでたてだあ。 あれでもとらしょうしょうがちいんだげだあ。 みんなわらいなさろ [みなみな]〈わあははあ〉/\〈卜おおぐちをあけてふんべつもなくわらう〉 [あさいな]そまにたかったからすのうみるようにやかましくござるは。 さあさあふたりのせなごよいうべいことがあらばそこでいいめさろ。〈卜いううちとこともなしにそうぞうしきゆえとうざいとうざいといえどもしずまらずそれもそのはづきりおとしのいたのうらにせみがとまってなくのなりこうけんたけさおをもってきておいちらす〉 かけあいせりふ そがじゅうろう もりやまへいすけ どうごろう うちやまきんざぶろう ¬(注A)[じゅうろう]おっとももくりさんねんかきはちねん。 うめはすいとてじゅうはちねんごきょうふきかえすあまぼしの。 かきたくるほどきもたまがやいてつらさがあかたくさん。 [じゅうろう]おらがおやじのかわづどの。 かしわがとうげでししがりの。 せこにでられたかえりかけ。 しいのみとってくうところをごはちにちんぼうささしつめて。 はないたやさきがあやまたず [じゅうろう]ふんぐりたまなあいかぢって。よこねところへおったったあ。 ごせんきのむしなあねをたてて。 [じゅうろう]ぐうともごすうともいわばこそ [じゅうろう]そのままそこで [ごろう]おもいばおもいば十これ。 おもひがけないさいなんで。 かわづどなあおしにやったごおんばくどののごんともらい。 つちごんぼうをみるごとく。 あなさあほってうめこんだ [じゅうろう]おっとからだいだいとりつけの。 そうじだんなのよりともさま [ごろう]いまはそうじをすけつねどの。 こいつけうまのうまうまと。 ひとのかぶらなひっこいて。 つけだいこんまでおさめるげだおしのおもたいほほのかわ。 かわづ。 うさみに。 くつみのしょう。 あわせてさんこのしょうやどの。 もんのいおりにもっこうに。 ささへこんだるたからのやま [ごろう]たからのやまへはいりながら。 ただはかえらぬすけつねどの [じゅうろう]おやのかたきをうつくわづか。 てんぴっかりのてんぢょこを [ごろう]てっぺんさあへいただかぬ。 あだやははなさぬこのゆみや。 こしのほねなあぐっしゃりと [じゅうろう]たったらだいじかそつくびを。 [ごろう]そのままとりてとりおどし [じゅうろう]まあそうおもってくんされどふたりほほうやまってもうす。 [あさいな]をやがあおったこんだ。かわつかへなしによくしゃべったあ [くどう]これあさいなどのよ。 あんまりほめさっしゃるな。 あんだかはやきみのわるいっこうじょうでごんざる。 おらはもういぎますべい。 うらごころがつきもうした [とらしょうしょう]なっぽうでもはなしもうさない [あさいな]ををそうだぞ。 もしかけだいたら。 ふんどしのくだりのうひいたがいいぞ。 これふたりのせなごよ。 ちっともはやくここへきてたいめんのうしろうしろ [ふたり]のみこみもうした。 さらばそこへいぎますべい。〈卜ほんぶたいへなおる〉 [かじはら]やれとりいさきへよるな。 せっかくはきちぎってあるところが。 はらみののごみになるわよ [あさいな]ごみになってもよくごんざる。 すっこんでいめさろ [くどう]そこへねまったふたりのわかいしょ。〈ねまったとはいること〉 さきへでるはずたはあんという [じゅうろう]しゃきょうのいちまんいっかくなって。 そがのじゅうろうすけなりといいもうす [くどう]つぎにではったあまじおは。〈まえがみのこと〉 [ごろう]しゃていのはこおうでっかくなって。そがのごろうときむねといいもうす [くどう]あにすけなりはおふくろのまんこうににて。 ぼやらこく。 おとうとのときむねはおやじのかわづににて。 がんじょうなうまれつきだ。 おやはなくてもがきっこはそだつとやら。 はてでかばちなくおおきくなったなあ [ふたり]すけつねどの [くどう]ふたりのわかいしょ [ふたり]はてめづらしい [さんにん]たいめんだなあ [あさいな]なんとくどうとのひさしぶりでのさんかいだあ。 ふたりのものにさかづきのうやってはおくりやりもうさぬか [くどう]さかづきなあしもうそうが。 さけのうのんでやだをふんだら。 おおごとだんべい [あさいな]そりゃあきづかいなござんねえ。 このこばやしがうけあいもうすさいわいこしへつけてきた。 とっくりさけがござる。 さあさあぬしからはじめなさろ。〈卜こしつきのびんぼうとっくりにいしごきをそえてつきだす〉 [くどう]そんだらじぎなしにはじめますべい。 りょがいながらついでくれさっしゃりましよ。〈卜ちゃわんにうけてひとくちのみかおをしかめあたまをふりさまざまうまきこなしあり〉 [あさいな]あんといいさけだっぺいじまんではないが。 おらがてづくりだあ [くどう]ああいいさけでござる。 ちかごろはふさくでどこでもさけはつくらないが。 いいたしなみでござりもうす。 すけなりさしもうさう [じゅうろう]をを〈卜へんじをしてそばへよりたけのこがさをぬきちゃわんをうけつつとおししたうちをしてくどうへもどす〉 [くどう]ときむね [ごろう]あんだあ [くどう]いしごきのうさつくれべえ。 ここへねまれ [ごろう]ををねまるべい〈卜つかつかときてちゃわんをうけさんぼうこわしのおもいいりにいしごきをかじりわる〉 [あさいな]やれはああきれたきもかんしゃくだあ [みもの]ようようごろうやったりやったり。 もちっとぎしめけぎしめけとほめる。 このところかけあいにてまたのかわづすもうものがたりあれど。 ちょうすうののぼるをいといてもらしぬ。 [あさいな]ときにはやよぎないむしんでござるが。 ふたりのものにさかなをはさんではおくりやりもうすまいか [くどう]わしもはあそうおもいますが。 なにももちあわせもうさない。〈卜そこらをみて〉 よくござる。〈卜じゅうろうがぬいたかさをとりあげかたてにはあかざやのさんとうをもち〉 じゅうろうにはたけのこがさ。 ごろうにはこのさんとう。 これがさかなだつまみなさろ。〈卜ふたりつかつかとよってうけとりおもいいり。〉 [じゅうろう、ごろう]あにこれがさかなだあとか [くどう]かさのうふせればふじのやま。 はんげすぎてのたけのこがさ。 さつきのすえはするがのくに。 ふじのすそののぢんやのうちへ [じゅうろう]よばいはしつけたおららがきょうだい。 みのかさかぶってしのびこみ [ごろう]おやじのかたきとなのりかけ。 すのこもとおれときりついたら [あさいな]ちはまっかいなさびがたな [ごろう]このあかいわしのさんとうで [じゅうろう]ほんもうとげろということか [ごろう]とてものことだらいまここで [あさいな]やれはあせつこむことはない。 このばはわかれてかえりなさろ [ふたり]わかれづらいところだが。 しょうことがないいぎますべい [とら]はなしがあってきもうしたが。 とりまぐれていいましない [しょうしょう]これからうちへかえりみち。はなしながらいぎますへい [あさいな]さあいいみちづれができもうした。いくみちすじはむこうのたのくろ。〈卜いうせりふをきっかけにしょうめんのすだれがばったりおちると。みわたしにさんさとのてんちしぜんのおおじかけこれはえどではできぬことなり。みぶつぶちぬきぬきといってほめる。〉 それどこぞいいむぎばたけがあったなら。 ころけこんだがよくござる [とらしょうしょう]あさいなさあ [あさいな]ふたりのおしゃらく [じゅうろうごろう]すけつねどの [くどう]ふたりのわかいしょ [みなみな]さらばてござりもうす。〈卜みへわるくならび〉 [くどう]まづきょうはこれきりでござりもふす うちだし みぎのほんさくしゃかきすてのげんぽんをもって。 こうごういっかせしめおわんぬ。 しはだいしょうのごとく。 でしはえんまつのごとし。 さんぼんたらざるひでのけをとりて。 そのだつろうをおぎなふとこれいう。 もんじん せんさばんべつ てんじくろうじん こうじょ かみよのまきにいわくあまてらすせかいのおやたまはやすさのをのみことわるしゃれをうとませたまい。 だいかんしゃくのいはとかくれよりこのかた。 よはやみくものめったしゃれ。 しだいしだいにぞうちょうし。 さばへむすだいうをしょうさつにさえかきあらわして。 よにおこなわるるものはっぴゃくまんかん。 いづれもにたりよったりにして。 あなおもしろきしゅこうもなし。 ここにわがしまんぞうてい。 うすめみことのむかしをおもいわざおきならぬわざくれば。 せけんのしゃれのうらをいき。 しりくめなはのよこなまれる。 ひなふりのおかしみにして。あまてらすかみにふきださせ。 しかもいわどのさしあいなく。 わらうかどにはふくきたる。 そのふくがみんのかんたちの。 かすにおうたるしちちんばんぽう。 ななしゃくさがってしりえにしょす。 ひつじの はつはる 跋 このしょうさつは。 えどまえのいんし。 まんぞうていのけさくにしていまよにおこなわるるしゃれぼんの。 あるいはげいしゃのみみのあか。 またはじょうろのそのやにをせんさくしたるような。 かたづんだるものとはことなり。 つうとなくやぼとなく。 ひとたびよめばあのかきかねをはづし。 しばしばはらすしのよれて。 そのおかしさやめとなし。 よにせいしょせよとのしめいにまかせ。 ふでにもかみをくらはする。 ひつじのはつはる。 たかたんしのいにおされず。 おめずおくせずかきちらすは。 こめんどうのしゅじん。 そのよしをしるしてばつとはなしぬ。 ふうらいざんにんのまごでし 筆者 狐面堂柳郷 ------------------------------------------------------------- 注) 注Aは庵点 注Bは訓みが確定しがたいので訓読せず原文のままにしておく。