― 『真女意題』解釈データ凡例 ― ・庵点は「¬」で示した。 ・文字の左横に添えられたルビは【 】で括って示した。 ・丸で囲まれた文字は( )で括って示した。 ・手紙文もしくは小唄と注が付されている箇所は〔ふみ〕〔うた〕と示した。 ・三オ〜五ウ、七オ、七ウの句点は「。」、それ以外は「.」で示した。 ・虫食いや印刷が不鮮明である等の理由により解読できない文字は@で表し、末尾に洒落本大成の本文該当箇所を付した。 ------------------------------------------------------------- じじょ たかまがはらにかみとどまりまします. そのかみさまもわけしりのしょうがいちやのちぎりには. すしあまざけもくうてきた. つうもふつうもおしなべて. くもとなりあめとなる けいせいがいのこんたんは. せんだつすまんのしょにつづり. せんばがうしにあせすればしょせんいうてもくちまねと (一オ) とってもつかぬせんだいなまり. あかはらたれぬのまんぱちなく. ぶんごのもさをとってのけ. ゆいいちしんとうまじりなし. こんげんじいろのうまごとをうわきのなかへもちこみしがちとあたらしいことしのしゅこう. しんめいだい【まことにじょうろのこころいき】とごうせしは. うたのこころのかえなにてただよみごえをかるのみなり なにをもうすもさくしゃのしんまい. (一ウ) さんぼんたらぬ ふでのけにてやたらむしょうにひっかきたれは. きまらぬところもおおかるべし. そこがつくりのかいわりと. めくされまつりのごうをわかさず. とがなきほんやにけんりょうを. はらいたまい. きよめてたまう からからから ときにあんえいうしのはつはるまぐろのかすねぎてんじくろうじん. (二オ) あざなはしんらまんぞうとて. ちえはもとよりなしうちえぼし. なにもしらはりひっかけてわからぬことをゆうだすきしょしていやがるしょりんにあたう (二ウ) みちのおくえもんくにことば (い)いし<えどにて。ぬし。きさまなとどいうにおなじ。> いつくしねえ。<うつくしいこと> いせやしっぺい<さけをほむるにいう。さかやのななり。> いきび。<しり。のこと> いす<ことばのすへにつく。「いし。「もし。「えす。「ちゃ。いずれもすえにくわし。> (は)ばかたれ。<ばかのこと>また。ばかたりやっこ。また。ばあかあ。<いずれもひとを。ののしるなり。> (に)にぐむ<えのぐにてぬること>にんごう<にんぎょうのこと> (三オ) (へ)べすむ。<かおを。しかめること。> へへ。またへへこ。<ぎょくもん> べろ。<したなり> (と)ととろなし。<こころなし。ぶんべつなしのこと。> とこう。<いやもうというきみなり> どとじじ (ち)ちくと。<ちっと。すこしということ。> (ぬ)ぬうだりぬうだり<のさりのさりなり> (を)おかない<おっかない。おやっかなというにひとし>おかなく。<とんだつがもないといふこと。> (三ウ) (わ)わこ<おとこの。こ> わらし。<こどものこと> (か)がが。<かかのこと> があさま。<かかさまといふこと> かけて。<やりかけてといふこと> (よ)よ。し。やれ<よしやれと。つめていうを。きっていう。「そ。り。や「こ。りや。「あ。り。や。などおなじ。このくにのならひなり> (た)たびざとうのつつたちかえりいみるようだ。<ひっくりかえることまたみのかるいを。ほめるなり> だんぽう<おやかたもとじめのこと> (つ)つけえねえ<とんじゃくないというところへもちがいないというところへもいう> (ね)ねえな。<なにさ。いやさ。いんにゃ。> (四オ) (な)なには。<なになにさ> なずき<あたま。> なずきがやめる。<ずつうのすること> なく<もののおとのすることなるということなり> (く)くらわれ<たまぐき> (や)やめる<せつないこと> やんだ<いやなり> やんだら<いやならなり> (ま)まかく<まっかくなりまたまかいはまっかいなり> (け)けね<かないなり> (ふ)ぶくめん<ぶくめん。くめんのわるいこと> (四ウ) (て)てっぺんぶくろ。<すえにいず> いでくる。<であるくこと> いでる。<もののできること> ちょう。<きょうということ> (あ)あらく<すさまじくということ> (さ)さみい。<さんげん> さかなまちのおぢょう。<おんなをほめるときいうすえにくわし> さかる。<にぎやかなること> (き)きこきこ<びいびいすること。すべてこのくにのじんぶつのおとをいふこといたってへたなりすえにくわし> (し)しじこ。<たまぐき> しめづける。<しめこむということすえにくわし> しこる。 (五オ) <かたくなること> (ひ)ひぶくろ。<すえにくわし> ひょうろうをしめづける。<めしくうこと> このほかにほうげんおおけれども。このしょにあづからざることは。もらしはべる。 (五ウ) しんめいだい かみはひとのうやまうによっていをまし. ひとはかみのみょうりょによって. さいわいありときくづきのごさいれいのきせんぐんじゅ. かまくらじだいのみごぞうりより. さんまいうらつきのいまのよにいたるまで. けあげのちりにまじわりたまう. わこうのかげはしんきょうの. かたちをてんのつきひにひょうし. かぐらのたいこはしんめのいさみ. まめはじょちゅうのはなおずれ. (六オ) さねかづらやらぎんだしやら. ぬらりくらりのはなのつゆ. だいこうあんがびんづけに. いっときはめだつみえいどう. いしょうごのみのひながたは. わかまつがよかろうか. こうせんがどうしょうと. ものずきしたるいでたちは. さぞやおやごのかたのはり. かたうでぬいだるますやがかんばん. いつわりなしはみせものの. たんばのくにのねこむすめ. たったきどせんはちもんとは. (六ウ) にゃんと。 やすいでござりましょ。 さあさきのかたおかわりと。 ごったにまぜるのぞきからくり。 わずかにけんのはこのうち。 もろこし。 おらんだ。 ちゅうしんぐら。 ばいこうがにがおは。 こうらいやとひとつにして。 ほんやのたなにならべられしは。 さぞしんがいにやあるべきと。 あてすいりょうのひかりてあい。 そそりこうたのはなをはじくは。 おみやげにもちよいのじゃ。 しょうがのにおいとしられたり おりしもかどのにうりやより。 ほろよいきげんのくにざむらい。 (七オ) せんだいつむぎのわたいればおりに。 じゅうろくうちのながひもを。 かたひざにむすびさげ。 はないろふとりにあさぎうら。 あきざまぞうりをひっかけてだいしょうをかんぬきざし。 おこうそずきんをのっけかぶりとりいのほうへのさりのさりあゆみいく うしろよりけんぼうこもんのあわせばおりに。 かっぱいろのばらおひも。 きしじまのこそでさっぱりとおびはくろななこのだいみょうじまほんだくづしのいきなるおとこ [ちゅうしち]もしおくえもんさまどちらへおいでなさります. (七ウ) [おくえもん]こ.れ.やちゅうひぢ. どこさいきやる. ちょうやひばんでいすゆえ. さんけいにいできもうした. [ちゅうしち]これはいいとこでおめにかかりました. そんならごいっしょにさんじましょう. [おくえもん]たびやみちづれよやなさけ. そんだらどしにまかるべし <と.ぐんじゅのなかをおしわけおしわけしんぜんにもなればかしわでちょんちょんちゅうおんにろっこんしょうじょうのはらえをとなえふしおがみおがみ> いしも.おがみ.やったか [ちゅうしち]はいもうおがみました <とつれたってそこらをぶらぶら> なんとごろうじましよくおみやがたちますね. [おくえもん]あらくえいふしんもし <と.はなしながらふきやのまえへいかばしんそこおもしろそうに> (八オ) (挿絵八ウ・九オ) とこうとこう. おかなくえいしかけもし. あ.り.やまかくにじんだにんごうがべろをだした <と.みとれてよねんなし> [ちゅうしち]もういいかげんになさりまし. ちっとたばこにいたしませふ <と.そこらをみて> こりゃあどこもおさかんだ. すいたところへめえりましょう. [おくえもん]なにば@くにのしゃかどうさみるように. おかなくさかるちゃ <と.あるくうちにどきゅうのおと> あのきりんきりん.どんがりどんがりとなくはなにもし. [ちゅうしち]ありゃあどきゅうさ. [おくえもん]なにこきゅうもし. [ちゅうしち]いえようきゅうさ. (九ウ) <ほどなくやしろのかたえなるきれいなるちゃみせへ> [おんな]おかけなさえしあいおちゃ. [ちゅうしち]おちゃもあてじめえだす [おんな]ほほほついいいつけたがくせになってさ. [ちゅうしち]ほんにおめえはなかすあたりでみたようだ.か [おんな]あいなつじゅうはいくたやにおりやした. [おくえもん]しからはいしたぢや. しりひといし <と.ちゃわんとりあげ> このゆや.おかなひごみもし [ちゅうしち]そりゃあおめえこうせんさ. こことあたかあ.ちゃのかわりにみんなこれでごぜえす. またつんとして.いいやつさ (十オ) [おくえもん]どうやらこぐすりいみるようだ [おんな]うさあねえ. <ひきてわかものきすけ> [きすけ]もしだんなたかまつやへおいでなさりまし. こどもしゅもそろっております. [ちゅうしち]<あついたおりのしたげたはこいれにぎんのごけばりすこしゆびをしたげめにして> どうしょうか. [きすけ]まあごろうじておきにいらざあ. どちらへなりとおいでなさりまし. このごろひかわからきた. いいちゅうどしましゅがござります. [おくえもん]<じょろうとききてほいやり> ちゅうこういしやひまでえすか. [ちゅうしち]わたしゃあ. おめえさまんへのつとめだといやあ. いつまででもようござりますが. (十ウ) あなたはどうでござります. [おくえもん]あすまではひばんもし [きすけ]そんなあすぐにおいでなさりまし. このせつでござりますから. おそいといいのはふさがります. [おんな]おでなさるならはええがいいのさ. [ちゅうしち]それだがいまっからあはんぱだす. もうなんどきだえ. [おんな]あいこのとおりさ <と.かけあんどうへひをともす> [おくえもん]ねへてもけへても. つけえねえいき.やれやれ <とたいせつこみちゅうしちしもんせんをさらさら> [ちゅうしち]おおきにおせわ. [おんな]おゆるりとおしげりねんし. (十一オ) <すこしばかりあるくとおもえばたかまつやのかどぐち> [きすけ]<くぐりをぬっと> およしどんおきゃくがあるよ. さあおあがりなさりまし. もしだんな. おこしのもの. [おくえもん]そ.り.やふちかたぼう. [きすけ]おこがらがござりませぬ <と.かみさまへわたせばだいしょうへもはきものへもばんづけのふだをつけるじょうばたらき.およし> [およし]さあにけえへおいでな@りやし. みとおしにいたしやしょう. おやくれえあんどんだ. <と.かんざしにてかきたてる.こじょくかたてにさしたばこぼん.かたがたにはしゅんけいぬりのまるぼんにあおぎりのちゃわんすおういろのどくとく> [おくえもん]こ.り.やじょちゅう. そのすだれえまくりやれ (十一ウ) [ちゅうしち]ここのすだれはあげっこなしさ. まあしたにおいでなせえし [およし]おめえさまがたじょろうしゅは. [ちゅうしち]いきなちゅうどしまをふたありさ. [およし]そんなあうつくしいのをみたってきやしょう [ちゅうしち]こうまちな. たしかひかわとやらからきたこがあるじゃあねえか. [およし]そりゃあおかのさまんさ [ちゅうしち]それをおれにだしてくんな. [およし]しかもいまだしもうすうちさ. [ちゅうしち]ありがてえ <とおよしはしたへいきほどなくさけさかなもってくる> [およし]さあおあがりなさえし. [おくえもん]まずのみ.やれ. (十二オ) [およし]そんなあおはばかりながら <と.ちょうしてかっちり.> あいおあげもうしやす. [おくえもん]ただはあおかなくつぎやれ <と.ひとくちのみて.あたまをひつしやり> いせやしんぺいつけえねえ. こ.れ.やなまいっぽんもし. <と.こくうにしたうちこのあいだすこしさかもりちゅうしちはげこなり> [およし]さあおいでなさえし. <と.じょろうおだい.とびいろつむぎにくろじゅすおび.ほんだあげのきりまえがみぎんむねをちよっとさし.かんざしであたまをかきながらびたりびたりおなじくおかのはないろちりめんにきんなしもおるのおびかみはさっとたばねたばかり.きしょくでもわるいかおもやせたれどもにくからぬふうぞくちゅうしちとかおをみあわせびっくりしたていにてざしきへなおるちゅうしちもきものつぶれたかおつきにておよしにそっと> [ちゅうしち]あのにばんめがかのか [およし]しれしさ. (十二ウ) [ちゅうしち]そんなあよし <と.あんどのようす> [おくえもん]ちゅうこうさしやれ. [ちゅうしち]まあおじゅんさ <とおくえもんおだいへさす> [おだい]<ちよっとのむふり> [ちゅうしち]おっとよし [およし]もしおかのさまん [おかの]おりよげえながらおちかづきのため. [おくえもん]きみのおさかずきいいただくもたしょうのえんもし. [おだい]おやげんさんをみるようなことをいひねんす. [およし]ほんにそれでおもいだした. うんけえさんはどうなせえしたね. [おかの]こんやきなさるとって.おいちさんがこころまちさ. (十三オ) <とやこういうないぜんでる> [およし]おめえさんがためしけえやし. <ふたりのじょろうたち> さあおあがりなさえし. これきんじどん. おめしばちょうもってきな. <おかのかざしきのけぶりどうやらわけがありそうなり> [ちゅうしち]おめえはおさけのうえだからめしはあがられめえ [おくえもん]ねえなさけへのんだればとて. ひょうろうしめづけるにや. つけえねえこといし. むむあらくいいしるだ. こ.れ.や.ひめのりもし. [ちゅうしち]なにさかなのつみいりさ. ひらのはつたけがつがもなくありがてえ [およし]おけえなすってあがりやし. (十三ウ) [ちゅうしち]もうそふはくえやせん. そんなあぐっとちゃづりやしょう. [およし]あなたおちゃわへ. [おくえもん]からめしいもうしごはいしめづけて. そうたうえで. さっかけべいちゃ. <たらふくめしをくうのめしぜんをおりる.まもなくふたりのじょろうしたにはふるきこそでをき.ひらくけを.ちよっとむすび.はじめのうわぎをはおってくる> [ちゅうしち]さあもっとこっちへよりなさえ. おもいなしか.でえぶさみしいようだね. [おだい]このごろきついもんさ. おもてはずかしにぎやかでごぜえす. [ちゅうしち]どうでもしもがれになるからさ. そりゃあそうと. あのはままつちょうのじょろうのあんどんは. (十四オ) ごうてきにきれいでごせえすね. [おくえもん]いやそ.れ.や.みぬこといし. ただたくさんにあったのは. わくにはったひぶくろもし. [おかの]おやひぶくろたあなんのこったえ. [おくえもん]はておつべしあんどんのこともし [おだい]そりゃあまあどんなものだえ <とふたりながらわらう> [ちゅうしち]ありゃあちょうちんのおくにことばさ. [おくえもん]もののなもところによりてかわるなり. おえどのちょぢんくにのひぶくろ. いやちゅうこう. あのとりいのまえにならべてあるちっこいはこはなんてごいす. (十四ウ) [ちゅうしち]ありゃあぢきとって. ここのめいぶつさ. [おくえもん]おれやなにこびとじまのおかわだんべいとおもった <とはなしのうちとなりにかいでげいしゃのこえ> [おだい]ありゃあたしかおときちさまんのこえだよ. 「あまがしたこいとなさけはうらおもて. ほれてみさんせいとしけれでもかとごさる [おくえもん]<つくづくききいる> なんのはあかたかんべいちゃ. ほれたなかだらじだらくだんべい. [さんにん]うさあねえ <とわらううちにおんなくる> [およし]さあちっとあちらへおいでなさえし (十五オ) [ちゅうしち]さあおくえもんさまん <とつれだちとこへいくなかろうかにあんどうをおきとこをにけんにわけてとる> こりゃあしんにありがてえ. わりどこというやつあどうもきざなもんだよ. [およし]そりあまたどおりさ. [ちゅうしち]おきやあがれ [およし]もしれいこくを [ちゅうしち]ぐっとこんやあぶんながした. [おくえもん]おれがびきもやるべいちゃいくらもし [およし]よいどまりでひとつぶんさ [おくえもん]そ.り.や.とりやれ <ともへぎらしゃにかねいれうらのはながみぶくろよりなげだす> [ちゅうしち]それよしか <となんりょうにまい> [およし]あいおゆるりとおやすみなさえし. (十五ウ) <としたへおりるじょろうくる> [おだい][おかの]もしおやすみなさえし. [ちゅうしち]もうおよりやし [おくえもん]ねろならねるべし <とてんでのとこへはいる> [おだい]おめえのはおりやあなんだえ [おくえもん]これもしか こ.れ.や.かなやまのしもふりつむぎです <といいながらとびさやのおびをまえへまわしよこにころりおおきせるをとりあげ> [おだい]おやどうしょうたばこがねえ. [おくえもん]おれがたばこさのみなさい [おだい]こりゃあとんだいろのくろいたばこだね [おくえもん]それやおいのかわらもし [おだい]なんださいのかわらだえ (十六オ) [おくえもん]ねえな.おいのかわらというところのたばこでえす [おだい]おやいとこのかはらがきいてあきれる. そしてどうやらきつそうだね [おくえもん]なにはやっこいこといし [おだい]ほんにひとにやあそつてみろだ. みかけによらねえ. やあらかなたばこだね どれおめえのきせるをみせねえ. おやとんだいいかるはりだの. こりゃあみずにうきやすか [おくえもん]あづらへてこしらえたから. ごとうちなどにあるよりは. かるいこともし. (十六ウ) ぞようかぜがふいてくると. くうぢゅうへあがるでえす. [おだい]おやとんだむだあいいねんす <といいなからよぎのなかへむくむく> [おくえもん]ここのけねにぢうろしゅや. いくたりごいす. [おだい]わっちまあしじゅうしちにんさ. もしおめえがたのおくににもじょろうやがあるかえ [おくえもん]おくにのさかなまちにちゃやがあるが. またおぢょうというが. おかなく. いつくしないじや. あかねうらのななすんぶきいきかけて. なにはしぬりのこまげたアはいてありく. (十七オ) いきびふうだ. てんにんのえうごうもし [おだい]いきびふうたあなんのこったえ [おくえもん]はてどんじりふうのこといし. [おだい]おやついぞねえ. そしておめえのきなんすじぶんはやったうたでもあったかえ. [おくえもん]おれやせんげつのはづかごろに. おくによできたが. そのじぶんはやったうたや. とこうすべきようもなく. ようようかいたもんくもし [おだい]どうぞうたってきかしねえ. [おくえもん]<どうごえをはなへぬいて> (十七ウ) 「どととががとがあむしで. よおろになあると. ぬうだりぬうだり. はいでくるちゃあくっちゃくくっちゃく [おだい]おかのさんききねえ. とんだうただの. おやおめえがたあもふねたか. [おくえもん]<こえをひきくして> こ.り.やちくとこ@ちさ. よりなさい. くらわれや. おかなくしこった. [おだい]そりゃあなんのかえなだえ [おくえもん]<だいがてをとって> これやこのこともし [おだい]おやばからしいなんのこったな. [おくえもん]さああしいはだけやれ [おだい]ちっとまちな. (十八オ) さあよしと <これよりすこしのあいだはなしとぎれるちゅうしちおかのなにかとんだしっぽりにてはなしごえもしめやかなり> [おかの]ほんにえんというもなああじなもんだね [ちゅうしち]おれもかおをみあわせたときやあゆめのようなこころもちだった. ほんにひかわからきたことなざしようしたも. おおかたむしのしらせだろう [おかの]ええもうじれってへ. いいてえこたあいくらもあるが. あんまりうれしくって. ひっとつもでねえ. わたしもおめえのかおをみると. (十八ウ) つもることをはなしたかったが. およしどんのめえもあり. おだいさまんはくちわるなり. しらぬふりようしていやした. わたしもおやたちにわかれてから. よつやのあにさんのところへいっていやしたが. おやしきいぼうこうにだすとつて. ちゃんとひかわへうってから. かけおちしてしめえなさる. ほんにういこともつれえことも. だれにこうとそうだんするひとあなし. うそかあしらんけれど. おめえのいいひなすったことが. (十九オ) みにしみてわすれられねえから. いずれちょっとなりとあいてえとおもって. ふみづけえをたのんで. おめえのことろをたずねたが. かんだにそんなかみやあねえとって. さんどながらただけえる. なつかしいとじれってえで. とうとうきびょうにやみだして. きゃくしゅのほうはねっからつとめずくらげえして. こけへきやした. ほんにどうしたみぐりあわせで. ふっとこんやあったやら. (十九ウ) わたしはまだゆめのような. こころもちだよ. <このはなしのようすをみるにおさななじみのじいろとみえたり> [ちゅうしち]おれもかんだのおやかたがいなかへひっこしってから. かわごえへもどろうかたあおもったが. とてものことならえどでかせいでみようとおもって. ほうぼうとききたてたが. しばぐちのはながみぶくろやへくちいれするひとがあって. すみこんでいるうちに. どうやらこうやら. たばこいれがたちゃあ. ぬいならう. じっていにしていりやあおやかたのきにいって (二十オ) しじゅうはようしにするとって. こもどうぜんにしてくださる. なんやかやでくめんもよし. あのつれだってきたきゃくじんもでいりやしきのおかちゅうさ おめえのこともいったんにょうぼうにしようと. いきちまでしぼりあったなかだから. すえずえすなにかぶりついても. めおとになろうとおもうから. かわごえへたよりのたびに. いすけどんのところまで. ふみをたのんでやったが. とどかねえもどうり. ほんにとんだみのうえになったの. (二十ウ) なるほどひとのゆくえとみずのながりゃあしれねえもんだ [おかの]それでさっぱりわけがしれた. したがわかれてからまるさんねんになるうち. なんぞいきなこともできたろうし. さぞわたしにあいなすったが. うるさくつてなるめえの [ちゅうしち]そりゃあそっちのことさあにさんにうられたのか. いろおとことかけおちしたのか. じめえかせぎでつづけてやるも. いけえことあるてんさ. [おかの]<なきごえにて> おめえそんなむげえことをいいなさる. (二十一オ) これみなおめえのてでほってあるこのちゅうのじがしょうこだあな. [ちゅうしち]なぜ [おかの]なぜとっておめえ. いろごとをするくれえで. このほりものをけさずにおくものか. おめえをひとにしてみな. しねしのうというくれえでこんなほりものをうっちゃっておきなさるか. またそんなねぶかいことてもなかあ. だれがすいきょうにみをうるもんかな. いかにしたてもんだとって. あんまりなことをいいなさる (二十二ウ) [ちゅうしち]そんなあそれでよしさ. なんもなくこたあねえはな. いきなことてもできたろうの. あったがうるさかろうのと. こころにもねえことをいわれたから. おうねえそっちのこころに. ひっくらべてのことだろうと. じゃすいのまわったも. いやみをいったも. ひらったくいってみりゃあ. うそっこなしにほれたからのことさ. [おかの]そんなあこれからいまのようなこと. いいなさらねえか. (二十三オ) [ちゅうしち]もううたげえもなんにもしねえよ. [おかの]やつておい@きしょうがあるかえ. [ちゅうしち]それがなくってどうするもんだ. <とふところより.ぶつこみのはながみぶくろをだし> それかどもすれずにちゃんとしている <となげだすきしょうといっしょにそうろうべくそうろうのおんなぶみ> [おかの]こりゃあなんだえ. [ちゅうしち]それかそりゃあうちのむすめごのつけぶみさ. [おかの]どれみせなさえ <と.やっきとしてひったくり> それみな. くちぎれいなことをいいなすって. これだものを. [ちゅうしち]まあなんだろうとよんでみた@. (二十三ウ) [おかの]よまねえでどうするもんだ 〔ふみ〕「あまりあまりつれなきおこころゆえおきにいらぬみをばかえりみずおよばぬおうらみもうしあげそうろうべくそうろう 〔ちゅうしち〕それでてえげえしれたもんだ. もうよまずとおいただいい [おかの]してきりょうはどん.なだえ [ちゅうしち]つがもなくかあいらしい. ぼっとりとしたふりそでさ. [おかの]なぜそれにかまいなさらん. [ちゅうしち]はてじゅうはちのとしから. いいかわした. (二十四オ) いのちかけてのおんながあるから [おかの]そりゃあどこに [ちゅうしち]ついここにさ <とひきよせられ> [おかの]なにうそや <というこえも.とぎれにておもしろくなりかかった@ちゅうときのかねがごんごん> [おだい]もうやっつになるそうだおかのさまおかのさま [おかの]なんだな. [おだい]ちょっとしたへいってこようか <といいながらたばこぼんのひきだしよりなのかきつけたちいさなきふだをだす> [おくえもん]<おきかえり> そのふだやなんでいす. [おだい]なんでもさ <とうわぞうりばたばた> [おかの]じきにいってくるから. おびをしめずにそのなりでいな <とこれもきふだをもってしたへいくこれはねずにつとめるというところをかみさまにみせるのなり> (二十四ウ) <このことちかごろはやみたるよしなれどちゅうしちおかのがうまごとへつきにむらくもはなにかぜちょびとさくもののやきもちなり> [おかの]<じっきににかいへもどりしょうじひっしょうすぐにとこへはいり> もうよっぽどさむくなったよ. ちょっとしたへいってきても. こんなにあしがつめたくなったよ. [ちゅうしち]どれ [おかの]それみな [ちゅうしち]ほんにかなっこほりのようだ [おかの]かたからかぜがくるじゃあねえか [ちゅうしち]そんなあこうしょうか [おかの]ひさしぶりだの <このあとはごすいりょうむこうべやにはぼうずきゃくうんかいじょろうおいちがこえとして> [おいち]これおきねえな [うんかい]むむなんだ. おらあねぶってえ. (二十五オ) [おいち]それでもおきなよ. [うんかい]ええそんなにしゅっけをいじめるな. [おいち]なんだしゅっけだえ. ほんにおめえもむしがいいぞ. [うんかい]そりゃあなぜ [おいち]なぜとって. さかなあくったりじょろうをかったり. ただのしゅよりゃあおしがつええ [うんかい]おきゃあがれ. いわしやくいたしじょろうとあねたしたあむかしのことよ. いまのせかいでじょろうをかわねえは. じゅうろくらかんとおやだまばっかりだ. [い]そりゃあそうと. このごろはなぜきなさらなんだ (二十五ウ) [うんかい]はてぜにがけえむだからさ. つりがねやあおおきくってもなんりょうのかわりにゃあならずか. せけんのいしゃがじょうずだか. ごうどうめらあくたばらず. ひょうしぎでたたきだすよりほかくめんしかたにゆきのそら. さえみょうじもどきをやったのさ [おいち]なにうそや. ねんぶつにでるものが. ゆうべのくれがたひよりげたで. もんまえんのほうへいくものか. おおかたどこぞのかこいものといろごとでもできたろう [うんかい]またみとおしからのぞいたな. いろごとじゃあなかったが. (二十六オ) しゅんりょうぼうがれこさで. すっぽんじるをこしらえたから. そりょをくいにいったのよ. [おいち]おやきみのわりい. おめえすっぽんをくいなさるか [うんかい]ううさはしいけのすっぽんはみんなはらへほうむらあ. またおこしゃらくがんで. そだつからしょうじんものもどうぜんさ. [おいち]おやにくらしいくちだの. そしてそのかこいものおしゅんりょうさんとやらばかりか [うんかい]ばかりかたあ. [おいち]はておめえがたのかもいもなあ. にさんにんでもようしゃあねえか. (二十六ウ) [うんかい]こいつあきつい. どうしてそりょうしっている. [おいち]どうしてでもさ. おおかたおめえもくみあいだろう. [うんかい]いんにゃ. おりゃあなかまはずれさ. [おいち]いやさっからとんとわすれていた. おめえやくそくのねどうぐはどうしてくんなさる. [うんかい]それもこのごろいうとおり. はつかずぎにほうじもある. てにはいるむじんもあるから. はんきんぐれえはどうともしよう [おいち]まちがっちゃあならねえよ. [うんかい]はてうたげえのふかい. それじゃあじょうぶつあならねえよ (二十七オ) [おいち]ええおめえもひさしいもんだ. もうねようじゃあねえか [うんかい]ようがすんだらもうねようか. それじゃあてめえうしになるぜえ. はらっごなしに. こっちいよったり [おいち]<ねごえにて> ええおめえもつけがあれえぞ <とここもひっそとなるおくえもんはのったりそったりおだいがくるをまちかね> [おくえもん]〔うた〕「いわのはざまのししこめや. うまれおぢるとかしらふる. <きっざこきっざこきっざこやぴっぴこぴっぴこぴっぴこやとひとりうとうているところへかたてにひいれをもち> [おだい]「ぎりいっぺんのあだつきは. けつくこころのもめるたね. <とこごえにしんないぶしをかたりながらしょうじをさらり> (二十七ウ) まだおめえねなさらねえか. よによろしいばけものならあしをあらってねるじぶんだあな. [おくえもん]なにはあよのふけるや. なんどきでもつけえねえこともし. やばんにあたったばんげはひょうしぎいぼんがりぼんがりならして. おやしきいよっぱらありくこともし. [おだい]そんなあおめえおりすけかえ [おくえもん]なにおれがなやおくえもんもし. [おだい]ええもちゅうげんかということさ [おくえもん]みがおやくめやあしがるてえす. またいしがかおをながめてやまなこをつぶして. (二十八オ) ねまられべいか. いのちたくりのきみさまめ [おだい]よくひとをちょうしねえす. すいつけてあがろうか [おくえもん]まずねまりなさい. こ.り.や.いしにちくとむしんがある [おだい]なんだえ [おくえもん]いきびいたくらせやれ [おだい]なんとえ [おくえもん]<てをまるくして> このむしんもし [おだい]ええおもいつくでもねえ. そのくれえなら. あすこのかげまぢゃやへいきなんしな [おくえもん]いしもとしろなしいかたりやれ. わかしやいしたぢよりなんりょういっぺんたこうごいす [おだい]おやきたねえことをいいねんす. そしてかげまもちけえこらあにしだがな. (二十八ウ) いきたかあいまでもいきな. ゆうべろくにねねえから. ねむったくてならねえはな <と@しろをむきてたぬきねいり> [おくえもん]こ.り.や.いしがそだにうしろをむいてや. おかなくぶくめんでえす. こ.れ.や.こぢきなさい. いしやそれへふるというでいすか <とこよりをこしらえみみをくすくす> [おだい]ええよくひとをいじめねんす. することがあるならどうともしてねかしてくんねえし. またあすがあるもんだあな [おくえもん]そんだらこぢさむきなさい. (二十九オ) またそうたかおつきやおかなくわりくねえじゃ. [おだい]わるくってもよくってもいいのさ [おくえもん]そだにはらをたてやるな. いきびのむしんもやんだらよすべし. もちっとこぢさよりやれてば <とひきよせる> [おだい]どうともつかいねんし [おくえもん]<はなごえにて> そのそでをのけなさい [おだい]したがくずれていてえから. どのきゃくしゅにもこうしておりやす. なんのかくのといわずとはやくしめえなんし <となさけもかぎも@きあしらいなり> (二十九ウ) <このところのならいとてはおとはたたきおびただしくこっけっこうこっけっこう> [おかの]あれとりがなくわな [ちゅうしち]はてないたとって. どうするもんだ. いどころさえしれていりゃあ. またいつでもあれらあさ [おかの]そりゃあそうだけれど. よのあけるがしみじみいやだ [ちゅうしち]おれだとってうれしかあねえのさ [おかの]なにうちへけえってむすめごにあうとおもって [ちゅうしち]またしょうこりもなくそんなことを. このくちがあるからやかましい. [おかの]ふさいでくんな [ちゅうしち]しれたことさ. こうしてふさがあ (三十オ) <と.ちうといふ@@きこ@しは.なんのおとやらまたひっそりとなりけれはおくよりはみれんなしに> [おくえもん]こ.り.やちゅうこうもうひがしがまかくなった. おきやれおきやれ <とたかよばわりおかのちゅうしちはたのしみもそこそこ> [ちゅうしち]もうおけえりなさりますか. <こごえになりて> いめえましいけえらざあなるめえ. [おかの]どうぞこんやきてくんな. わたしがほうでしまっているよ [ちゅうしち]さっからじつあかくしていたが. ふみをつけたむすめといっしょにするとってないしょうに. そうだんがある. なんにせい. こんやきて. あいたいずくでりょうけんしょうはさ [おかの]りょうけんとってどうしなさる (三十ウ) [ちゅうしち]はていきてそうかしんでそうか. はなれねえりょうけんをさ. [おかの]それほどにおもってくんなさるか [ちゅうしち]はてしれたことさ <とこくうむしょうにありたいことばかり> [おくえもん]あ.り.や.とりがきっこうきっこうなくは. さあいくべい [おだい]むかしゃあわちげえわちげえとないたそうさ. <ちゅうしちははおりをきながらろうかへでるかのはしおしおとついてでるめのくぼみしはうまいことなり> [ちゅうしち]もしおだいさんとやらゆうべはとんとはなしにもめえりやせん. これからあまたおこころやすく [おだい]おたのんもうしやす <はしごとんとんわかいもの> [きすけ]はいおこしのもの. (三十一オ) おはきものは. どうでござります. [ちゅうしち]ぞうりゃああなたうらづけはわっちさ [おくえもん]こ.り.や.わけへふとねまにあるてっぺんぶくろをとってきてくんさい. [おだい]なにをえ [おくえもん]てっぺんぶくろもし [おだい]なんだかむちゃだす <といいなからはしごをあがりわらいながらばたばた> なんだとおもったらずきんのことさ [おくえもん]これ.や.おせわ [おだい]おりょけえもうしやした [おかの]<こごえにそっと> かならずばんによ [ちゅうしち]むむしょうちさ [きすけ]ようおいでなさりました (三十一ウ) くぐりどのがらがらも. とざさぬみよの. おいさほし. かぐらのたいこのどろつくに. やこえのとりのとうてんこう. まことやかんここけふこうして. とりおどろかぬきみがよの. めでたきはるのおわらいぐさと. かいつくるものならし. <こうへん>しょうがいちおっていでく (三十二オ) ------------------------------------------------------------- 注)データ中の@(判読不能文字)について 九ウ十 @=cf. 大成355上6「お」 十一ウ十 @=cf. 大成355上16「さ」 十八オ十六 @=cf. 大成358上16「つ」 二十三ウ二 @=cf. 大成360上3「た」 二十三ウ十四 @=cf. 大成360上8「り」 二十九オ四 @=cf. 大成362上10・割注「う」 二十九ウ十三 @=cf. 大成362下4・割注「な」 三十ウ一・割注 @@聞@=cf. 大成362下12・割注「音の聞へ」