一文塊 凡 例   筑紫方言の左横に添えられた江戸語は【 】でくくって示した。   傍線のつけられた促音、撥音、拗音は、≪ ≫でくくって示した。   紋・印・花押は△で示した。曲節記号は可能な限り忠実に翻刻したが、不可能な箇所はもっとも近い文字(例:z)で表わした。   歌の三重は▲で示した。   「様」の合字は◆で示した。   漢文のレ点は、「レ」(かぎかっこ付きのレ)で示した。   三行書きは★< >で示した。 ------------------------------------------------------------------------ 解釈における凡例  ・会話文の末尾に付く「引」や四声は〔 〕に括った。 (例)アゝ上声 → ああ〔じょうしょう〕 ・不明の箇所@を洒落本大成で補い解釈した場合、参照した部分を@( )と示した。 (例)二階{かい}へ来@ → にかいへ@(きたり) ------------------------------------------------------------------------ くるわこっけいいちもんにんぎょう (見返し) じょ とんやへおくるふじのやまはみかんかごにたんまれり (丁付なしオ) さくしゃきんたろうせんせいいなかにんぎょうをつくりふじよりたかきくものうえまで (丁付なしウ) もさひかせさとのたえなるうろたえをたえなるふみにあらわしなをいちもんにんぎょうという (丁付なしオ) ぶんかよつのうのとししひつ ともくに △△ (丁付なしウ) きんたろうあらわす こころあらんひとにみせばやつのくにのおおさかは。おのずからひびにせんぞうまんぞうふくそうして。こうえきをなし。かつしょこくにざいをおくりかぶつをあつめていちをなす。 そのはんじょういまさらいうもおろかなり。 かかるところをまだしらぬいのつくしにござったにぬしさごべえなるもの。にしばまのといやにとうりゅうして。おおさかのめいしょめいしょをてだいがあんないにてほうぼうとめぐり。くれかたにりょしゅくにもどりて (上ノ一オ) [さごべえ]おやっと【ごくろう】でございもうす。 みもだれ【くたびれ】もうした <といやのだんなまんぞうかどぐちへでむかいて> [まんぞう]これはこれはおはやいおもどり。まずまずおくへ。おとものもかってでおやすみ [はちえもん]やや【はいはいなり】 <とさごべえがともはちえもんかってへゆく。まんぞうはさごべえをおくへともないて> [まんぞう]さてさごべえさま。 きょうはおくたびれでござりませう [さごべえ]さちさち【さてさて】きゅう【きょう】は。あんがい【あちら】。こんがい【こちら】。さるき【あるき】もうしたが。どうとんぶりのしばや【しばい】は。あした【あす】つうはなんのきょうげんをしもうす (上ノ一ウ) [まんぞう]ここもとではおなじきょうげんをいつまでもいたします [さごべえ]おなじきょうげんを。しちよりもうしても。けんぶつはありもうすか [まんぞう]はいはい。まいにちおなじひとはみにゆきはいたしませぬ [さごべえ]さちさち【さてさて】ひろかところ。きゅう【きょう】もよかひを。しもうすかたのかんばんに。このよかひ【やいと】をすれば。たちまちしすることみょうなりとかいてある。 みやこのちというものは。ついしねもうすことも。じゆうざりもうすか [まんぞう]いやそれは。ぢすることみょうなりとかくを。しするとかきあやまりのうえに。にごりまでおとしておきました。 (上ノ二オ) そそうなきゅうやでござります <このあいだにといやのにょうぼうはやしょくのぜんをもちいでて> [にょうぼう]もしきょうはおくたびれあそばしたで。ござりましょう。まずぜんおあがり [さごべえ]なにぜんを。くえといいもうすか [まんぞう]いやごはんよろしゅうおあがり [さごべえ]やや【はいはいなり】。これはおせわで。ございもうす <としるのふたをとりかかりて> [さごべえ]んにゃんや。このしるは。たもりもうすまい (上ノ二ウ) [まんぞう]なぜにでござります [さごべえ]きゅう【きょう】。まちをさるき【あるき】もうしたが。どじょうくぎ。すっぽんばりと。あんどんにかいてあるので。これのにさい【てだい】どんに。なにかとききもう≪しゃ≫あ。しるのことで。これのごていはすはまじい。すきもうすとききもうした。 もしこのしるがどじょうくぎ。すっぽんばりどもでございもうせば。はらほげ【はらにあなあけ】もうしては。なりもうさぬ [まんぞう]これはそでつもないことおおせられます。 それは。どじょうくぎではござりますまい。 (上ノ三オ) しるのじのへんを。かねへんにかきあやまし。ましたのでござりましょう [さごべえ]なにじゃか。まちしょうべんじゃの。くせものどころじゃの。 いやめだましかえどころがあれば。またかおのしかえというて。さるき【あるき】もうすやら。さちさち【さてさて】。はんかなところで。ぐざりもうす [まんぞう]まずまずごはんはおきづかいなされずと。よろしゅうおあがり。 さてこんばんは。かのしんまちへおとももうしましょ [さごべえ]やや。おくにもとへ。ものばなしの。たねにしもうす。 (上ノ三ウ) あれ【そなた】とまかりもうそ <とめしもしまい。ふろへもはいりてしんまちゆきのいでたちには。ちゃのりゅうきゅうじまのあわせに。くろちりめんのひとえばおり。もんどころはのりやのかんばんのごとく。つかみじかきわきざしをよこたえ。こよいをはれとおとこをしたてたり> [さごべえ]ごてい。なんとそろっかい【そろそろ】ひんで【いで】もうそう。 [まんぞう]さあさあおしたくがよくば。まいりましょ [さごべえ]よい。はちよ [はちえもん]やや。 <とやっこいでくる> [さごべえ]わが【そち】も。つるるで。すいぶんそそうのないように。しもうせ [はちえもん]やや。みどもみやこはつで。ございもうせば。よかことごていさま。たのみあげもうすで。ございもうす [まんぞう]これはこれは ごていねい。 (上ノ四オ) さあさあおいでなされませ [さごべえ]よい。かかさま。ねんの。いりやれよ [にょうぼう]もうおいでなされますか。 わたくしがたのだんなはさけがすぎますと。とんとたわいで。もししつれいがござりましては。もうしわけがござりませぬ。 どうぞすごされぬように。はばかりながらおたのみもうします [さごべえ]なにがわりや。 みがちえのうて【つれだちて】。まかる【まいる】に。おおえいぐらいは。ございもうさぬ [にょうぼう]さようならおしずかに [さごべえ]やや。もどって。あいもうそう (上ノ四ウ) <とさんにんはといやをでてみちみち> [さごべえ]ごてい。 しんまちのたゆうは。あげだいぎんな。なんぼなんぼか [まんぞう]たゆうはろくじゅうきゅうもんめでござります [さごべえ]あのよひとひが [まんぞう]さようさよう [さごべえ]ねびきはございもうさぬか [まんぞう]いやあげだいはおさだまりでござります。 そのほかおやまげいこたいこもちのことは。みおづくし。ともうすほんにいさいにかいて。ござります。 おなぐさみにとりよせて。ごらんなされませ [さごべえ]さようかな (上ノ五オ) 挿絵 (上ノ五ウ) 挿絵 (上ノ六オ) <とこのうちににしぐちのいどのつじにきたり。 いどがわにゆきあたりて> [さごべえ]ほっしょう【あきれたこと】やれ。 つじにみずぶろが。うつせてある。 はちよ。 もどりにゆどもひいて。だれ【くたびれ】をやめよね [はちえもん]やや [まんぞう]これからすなばのうどんそばへ。おともいたしましょか [さごべえ]ごぶれいざれども。あねじょどもを。はやうみとうして【みとうて】。のし【なり】もうさん [まんぞう]さようなら。みょうばんのことになされませ <さごべえはひげあぶらのあんどうをみつけて> [さごべえ]なにひげあぶら。 またこんがい【こちら】に。くれはべに。 はちよ さちさちひろかところ。 (上ノ六ウ) ひげにあぶらを。ひんなするやら。 ただでくれはべにという。 あんどんがでちょりもうすが。これよりうえやすい。べにはございもうすまい <このうちににしぐちのもんへくると。すしみせや。さつまいもうりが。こえごえに> [すしや]こけらずしがああむまいこっちゃぜ〔引〕むまいこっちゃぜ〔引〕 [いもや]ぬくぬくがほっこりほっこり [さごべえ]よいごてい。よけてとおりもうせ。 ほこりほこりといいもうす。 あのかまのなかから。ほけ【ほこり】のでるを。みやいもうせ [まんぞう]いやあれはいもをむすゆげで。ござります (上ノ七オ) [はちえもん]んにゃんにゃ。そんでも。こんがいな【こちらの】にさいが。こけらくずで。あぶない。こっちゃと。いいもうす [まんぞう]はははははははこのもんからがしんまちでござります。 いやさごべいさまが。どっちえかみえぬ。さごべいさまさごべいさま [さごべえ]いやみは。しゅうべん【しょうべん】の。ばっちおる <とさごべえはしょうべんしながら。ふとみたところがばんどころゆえ。びっくりして。おずおずばんどころのまえへてをついて> [さごべえ]これはおやくじょ【やくしょ】まえとも。ぞんじもうさで。そそうしもうした。 (上ノ七ウ) おゆるしゃって。たもりもうせ <ばんにんはがてんのゆかねどそうじてたしょのおやま。もんをでいりのとき。そのところをことわるなり ばんにんはそのことかとこころえて。ほりえかとたずぬる [ばんにん]ごうしゅうかな [さごべえ]いやきゅうしゅうで。ございもうす <まんぞうはこれをみつけておおいにあきれ> [まんぞう]もしなにをしてござる。がいぶんのわるい <とひったててゆく> [さごべえ]よいごてい。 あんどんがふとかこと【だいぶん】。ございもうすが。ひのもとや。かつおや。いつつや。ひのくにや。たいじゅう。くれはしや。とかいてございもうすは。みなそのいえいえのみょうじで。ございもうすか [まんぞう]さようさよう (上ノ八オ) [さごべえ]またしろいあんどんが。ございもうすが。ひどもわるいかたかの [まんぞう]いえいえこれはおきやでござります [さごべえ]さちさち【さてさて】。おおさかはひろかところ。しちやがございもうせば。おきやもございもうすか [まんぞう]これはみょうじゃ。 ははははははは <かつおやのにかいにはけんがはずむときこえて> すゆむ。 さんな。 ちえい。 おお。 [さごべえ]ほっしょう【あきれたこと】やれ。 このにかいに。ものいさかいか。たたきあいもうすかげを。みやいもうせ [まんぞう]いえいえあれはけんをうつので。ござります (上ノ八ウ) [さごべえ]なるほそ。かつおやのけんな。なますにつかいもうすで。ございもうそ [まんぞう]ははははは おくにのはいっけんでごぞんじじゃに。ちゃりをおおせられます [はちえもん]よいだんな。 ひだりにいりもうすかたのあんどんに。ひはち。なつはち。はきちと。ことろし【おおぜい】な。にんじゅのみょうじのあるいえどもで。ございもうす <とたいこみせのあんどうをみて。あきれていると。きんちゃくきりがはちえもんのくびすじへ。こいしをちょいといれると。やっこはつめたさにみをふるわし。びっくりして> [はちえもん]ほっしょう【あきれたこと】やれ。あれぞあれぞ <とうろついているところをまたこいしをいれる> やれやれ。 ひやかなものひやかなもの。 <とつめたいいしを。からだをちいそうしたり。いろいろとわるみをしてしたへぬかしてしもうひょうしに。やっこがしょじのさいふもいっしょにおつるを。きんちゃくきりはてももらさず。さいふをしめこのうさぎとする (上ノ九オ) ○くけんのほうからかぶろたいきち△このもんのはこちょうちんをさげたたかすまやのおとことうたをうとうて [かぶろ]うた▲ちらとみそめしおくみがすがた。 とうていちどはしのばにゃならぬ。 しのびぞこのてもしあらわれて。ながいかたなできらりょとままよ。 ほっとけほっとけや [はちえもん]よいわこ【こどもあがりをいう】。いっときあかりを。みせてたもれ [おとこ]あいあい <とはこちょうちんをやっこにかす> [はちえもん]はてめんようなことで。ございもうす。 いまここでやくたい【さいふ】にせん【ぜに】のいれて。あやし【おとし】もうしたが (上ノ九ウ) <とうろうろさがす> [おとこ]なにをいうやら。 きちがいじゃそうな。 おいこちはきゅうようじゃ <とちょうちんをひったくりゆく このうちにかぶろたいきちまんぞうをみつけて> [かぶろ]まんさんどこへゆきなます [まんぞう]たいきちか。 こんやはおきゃくのおともで。いつつへゆくが。そちのたゆすは [かぶろ]きょうはたかすまやのやくそくでおます <とききてまんぞうかぶろになにかささやくと> [かぶろ]<うなずき> もしはよう。いつつへゆきなんで <といいすててさきへゆくおとこをよびて> せんきちどん。 まちなんで〔引〕 <とはしりゆく> (上ノ十オ) [はちえもん]このくらずみ【くらがり】で。さぐらるるものか [さごべえ]よいはち。 わが。なにをしちょるかい [はちえもん]やくたいの【さいふと】。せんの【ぜにを】。あやしもうした【おとしました】 [まんぞう]それはおおかた。きんちゃくきりがとったのでござんしょ [はちえもん]あのきんちゃくきりが。やくたいでもきりもうすか [まんぞう]きるともきるとも。 かみいれいんろう。たばこいれ。なんでもあたりしだいに。きるのじゃ [はちえもん]さちさち【さてさて】ひろかところ。 きんちゃくきりともうすから。きんちゃくばかりと。おもや。やくたい【さいふ】まできりもうす [さごべえ]よい。 (上ノ十ウ) はちよ。もはやさぐらずと。はからいことはからいこと【よしにせいよしにせい】 <ととおりすじをひがしへさしてゆくと。やっこはのきしたのほしみせやをみつけ。こはふしぎやな。かみいれ。きんちゃく。いんろう。たばこいれ。あるいはさいふ。きせるづつなんやかやならべたててあるゆえ。さてはこいつきんちゃくきりなりとこころえ。やっこはいかりのがんしょくにて。ほしものやをひっとらえ> [はちえもん]こな。ぬすと【ぬすびと】 しょじかじな。すどもの【ぬすみもの】を。ならぶるからは。みがやくたいも。わがの【われが】。おっとったであろ。 みどもにわたせ <ほしみせやはおもいもよらず。とらえられそのうえに。ぬすびとというにおおきにはらをたてて> [ほしみせ]このやっこの。どきちがいめ。 おれをぬすびとじゃと。ぬかしあがったぞよ (上ノ十一オ) <とやっこをたたきかかる> [さごべえ]よいにさい。 そうするなするな [まんぞう]やれまたんせまたんせ <とりょうほうへひきわけて> これはちえもんどん。 めっそうなことをいうひとじゃ。 このひとはうりものみせじゃうりものみせじゃ <といえどがてんせず> [はちえもん]みが。やくたいをだせだせ <というをまんぞうさごべいに。わきへつれてゆけとしかたでしらすと。さごべえさしこころえ。やっこをかたわきへつれてゆく。 まんぞうはさそくのちえをいだして> [まんぞう]これほしみせやさん。 これはえらいまちがいじゃ。 あのおひとがたはさいごくがたじゃが。おくにではぬすびとのいみょうを。ほしみせというじゃ。 (上ノ十一ウ) こりゃみせにあるものを。ほしそうな。つらつきじゃと。いうことじゃげな [ほしみせ]ふん [まんぞう]またおおさかでのほしみせは。あのほうで。きんちゃくきりというじゃ。 これはしろものをやすうまけてうり。きんちゃくのそこを。たたかせるということで。きんちゃくぎりというげな [ほしみせ]ふうん [まんぞう]され。あのやっこどのが。いまのさきさいふをとられ。はらをたてているところに。なにごころのうきさまのみせをみて。おれがほしみせがあるというたを。やっこどのが。ぬすびととこころえて。いまのようにいうたのじゃ [ほしみせ]はあん [まんぞう]やっこどんもきがつきて。みがやくたいやくたいと。あやまれるから。りょうけんしなんせ [ほしみせ]なんといいなんす。 やっこがくにではぬすびとを。ほしみせといい。またおおさかでのほしみせは。やっこがくにではきんちゃくきりというかな [まんぞう]そのとおりのまちがいじゃほどにりょうけんしたがよい [ほしみせ]こらやっこめ。おれはほしみせじゃない。きんちゃくきりじゃぞよ [さごべえ]やや。 これはこれは。 (上ノ十二ウ) けらいがそそうもうした。 きんちゃくきりさま。 ごめんごめん [ほしみせ]えいわい。 りょうけんしてこまそ [まんぞう]そんなら。きんちゃくきりさんのごりょうけんがついたか。 まずまずめでたいめでたい [さごべえ][はちえもん]きんちゃくきりさま。 おわかれもうす [ほしみせ]<はいはい>。 しずかにゆきなされ <とほしみせやにわかれここをゆきずぎて> [さごべえ]さちさち【さてさて】がおれ。みがくにはもちろん。にほんこくじゅうにないことを。ごていのちえで。はちがそそうのなんの。のがれもうした <やっこもがてんゆきたれば> [はちえもん]さてさて【さちさち】ばかな。ものうりどんで。ございもうす。 (上ノ十三オ) あたまのひとつやふたつ。ひんなぐっても。ごていのちえではなんののがれもうすに [まんぞう]あまいやつでござります。 いっぱいくらわせました [さごべえ][はちえもん]<ははははははは わははははははは> [さごべえ]<よいよい。> こうしのなかに。うつくしいわがよめじょ【じょろうのこと】。たくさん。ひんならんでいもうす [はちえもん]やや。 あんがいにも【あちらにも】。きらっ【きらり】と。しちょりもうす [さごべえ]やあ。 そのむかいにも。ことろし【おおぜい】な。にんじゅのあねじょたちが。いもうす [はちえもん]よい。 (上ノ十三ウ) ごていさま。これはじょろうやのかんばんで。ございもうすか [まんぞう]<いやいや> これがかの。みせつきじょろうというのじゃ <さごべえはこれをきいて> [さごべえ]ふうん <としばらくうちながめ。しあんのてい> なるほどなるほど。 まめをつぶすというこころで。みそつきとなずけたもんで。ありもうそう [まんぞう]<イエイエ。> みそつきではござりません。 みせつきでござります [さごべえ]さようかな <とこのうちに。むこうからてんじんのじょろうにさんにん。かぶろをつれて。からりからりのげたのおとにさごべえはうちながめて> いまの。ひんならんでいもうしたが。みせつきじょろうでこのあねじょたちはおおかた。うろつきじょろう。 (上ノ十四オ) またうそつきじょろうも。ありもうそう [まんぞう]ははははははは ひがしぐちのもんへさんじました [さごべえ]これよりむこうへ。ひょいとゆきもうしても。あそびどころが。ございもうすか [まんぞう]これはごもっとも。 こよいははじめてのおいでゆえ。しんまちばしのよみせを。おめにかけましょうとぞんじまして [さごべえ]さようかな。 なにとらのかんばんか。 さちそのむかいは <とはりがたやにならべたてたるをみて。おおきにきもをつぶし> [さごべえ]よいはちよ。 あれをみやいもうせ (上ノ十四ウ) [さごべえ]やや。 <とこれもみてびっくりして> ほっしょう【あきれた】やれ。 これはりゃんりゃん【おとこのしろもの】のきりうりで。ございもうすか [さごべえ]んにゃんにゃ。 ありゃあ。まおとこのごくもんで。ありもうそう [はちえもん]さようかな [さごべえ]さちまた。これは。やよ【ばば】がふくべをもちよるにんぎょうが。でちょりもうす。 わかりもうしたわかりもうした。 とらのかんばんのでちょるは。わとうないどんで。これはははじょのごいんきょの。かんばんとみえもうす [まんぞう]<いえいえ。> とらはせんりもにおうびんづけあぶらや。 (上ノ十五オ) ここはよねまんじゅうやで。ござります [さごべえ]さようかな <としんまちばしのにしづめにいたれば。おうらいのひとおおぜいたちどまり。しばいのかんばんや。かいちょうふだを。かみゆいどこのあかりにてながめいり> [みちゆきびと]なになにごじゅうにちがあいだ。たいゆうじかいちょう [さごべえ]よいわかいの。 ごじゅうにちがあいだ。たゆうをかいもうすという。たかふだで。ございもうすか [みちゆきびと]<いえいえ>。 たいゆうじというてらで。ごじゅうにちがあいだかいちょうあるのじゃ [さごべえ]んやんにゃ。 そんでもそのたかふだのしたを。みやいもうせ。 まさだゆう。ふもとだゆう。たくみだゆうと。あげもうすたゆうのなが。かきつけてございもうす (上ノ十五ウ) [まんぞう]これはまた。なにをおおせられます。 あれはじょうるりしばいの。かんばんで。ござります <とこのうちに。しんまちばしのなかほどまで。きたり> [さごべえ]よいごてい。 このくろかあんどんのうちに。ほかけぶねの。あなほが【あけ】いたとは。なんざりもうす [まんぞう]これはちょうめいがんで。ござります <とまんぞうは。たけだのこうじょういうように。ござりますござりますと。ござりますづくしゆえ。いろいろしあんすれども。おおさかことばでていねいにあいしらうには。ござりますよりとんとほかに。ことばがござりませんゆへ。ござりますにおおきにこまりますで。ござります> [さごべえ]くろふねのあんどんに。しょうべえまるとはよかなつけもうした (上ノ十六オ) [まんぞう]<いえいえ。> いのちながいというちょうめいがんで。ござります [さごべえ]なに。いのちながいちょうめいがんちょうめいがん <とあんじても。ねやでたのしむくすりと。いうことはしらず。 ただじゅみょうをたもつくりと。ひとりがてんして> これはよかくすりで。ございもうす。 よかごてい。 おみもしりやるとおり。みがむすこも。よわいらしいで。ちょうめいがさせもうしたい。 いっぷくかいもうそう [まんぞう]<こごえにて>えらいすけべえじゃ [さごべえ]<こりゃこりゃ> くすりかいもうそう。 かわりはなんぼなんぼか。 [ちょうめいがん]こづつみがにじゅうよんもん。 おおづつみがよんじゅうはちもん (上ノ十六ウ) [さごべえ]これはげじきに。ございもうす。 ひゃくもんがたたもりもうせ。 さち【さて】もちいかたは。ゆでのむがよいか。せんじてもみもうすか [ちょうめいがん]<いえいえ。> ついあたまへ。ぬりつけますので。ござります <このあいだまんぞうおおてれなれば> [まんぞう]<もしもし> ひとが。きょろつきます [さごべえ]ひとがきょろつきもうすより。みがむすこの。よろつきもうさぬくすりを。かいもうすので。ございもうす <とくすりをかい。さてむかうをみて> さちさち【さてさて】。にぎにぎしい。ちゃんと。ふじゆうは。おざりもうさん。 (上ノ十七オ) 挿絵 (上ノ十七ウ) 挿絵 (上ノ十八オ) このよみせは。どこまで。つづきいもうす [まんぞう]はい。にっぽんばしまでで。ござります [さごべえ]なににっぽんのはしまで。ございもうすか。 さちさち【さてさて】それは。はてしもないことで。ございもうすから [まんぞう]これぎりにいたしまして。かのあそびどころへ。まいりましょ [さごべえ]よかよか <とひがしぐちのもんへもどり。あわざのほうへさしてゆく> [さごべえ]よい。 これにも。ふとかこと【おびただしう】。みせつきが。ございもうす。 はちよくらむかくらむか【くるかくるか】 [はちえもん]やや [まんぞう]さてこのむこうのよこまちに。そばやができましたが。いながわせんせいをはじめとして。めいかのしょがをあつめました (上ノ十八ウ) [さごべえ]なにしょうがのいりもうすそばは。めずらしいことでございもうすの <とこのはなしのうちに。やっこがみえねば> はちよお〔引〕はちよお〔引〕。 まんぞうどん。はちがくらまぬくらまぬ【こぬこぬ】 [まんぞう]ようござります。 いつつへまいってから。たずねさせたら。ついしれます。 まあおいでなされませ <とまんぞうは。さごべえをともない。いつつへゆく ○やっこはしゃくしかけのおやまに。ひっとらえられて> [おやま]やっこさんあそびんか [はちえもん]なにやすみんか。 (上ノ十九オ) みはだれ【くたびれ】もうさぬ [おやま]だれというのは。ざこばのふちょう。 ひゃくかにひゃくか。そのきまりは。うちでのこと。 まあはいり <とむりむたいに。はとべやへひきこむ> [はちえもん]さちさち【さてさて】。 むりをしもうす。ねじょどんで。ございもうす <そのうちに。とをしめ。そとからかけがねをかけられ。はちえもんはとをおしてみれども。あからぬゆへ> [はちえもん]あんと【なんと】しょう。しばらくやすみもうすで。ございもうす <とあがりぐちにこしうちかける> [おやま]これこちらへ。あがりんか <とてをとりてうえへあげようとする> [はちえもん]んやんにゃ。 これがよく。ございもうす [おやま]えらい。まだな。やっこさんじゃ。 (上ノ十九ウ) <とむりにてををとりて。うえへあげる> [はちえもん]さようなら。ごめんくだされませ <とこわごわはいあがり。りょうてをひざにおきて。しょんぼり。としているを> [おやま]これよこに。なりんか <はちえもんびっくりして。どうするのかと。いよいよこわみがたちて> [はちえもん]んにゃんにゃ。 これがよく。ございもうす <とふるいふるいいえば> [おやま]おまえもきたけじゃあるまいし <とまたぐらへてをさしいれると> [はちえもん]わあい。 ひとごろしよひとごろしよ。 みがりゃんりゃん【おとこのしろもの】を。ぶちぎりもうすたくみで。ございもうしたか。 まおとこどもは。することでは。おざりもうさぬぞ。 だいじのことだいじのこと。 りゃんりゃんの。ごくもんにあげるおぼえは。ございもうさぬ。 (上ノ二十オ) おぞいことおぞいこと【おそろしいおそろしい】 [おやま]おおなんじゃぞい。やかましいやっこじゃ。 ええぎえんのわるい。 あたいまいましい。 <さあさあ>がしんな。どやっこ。とっとと。いにあがれ <ととのそとへつきだされて> [はちえもん]<やれやれ。> ひったまげ【たまぎるなり】もうした。 おぞいことおぞいこと <とそこらをうろうろとみて> <わいわい。> だんなが。どんがいか【どちへか】。おゆきやった <とほうぼうたずね。みせつきのかどに。おおぜいぞめきのわかいものが。いるをみつけて> <こりゃこりゃ。> おみたち。 ものといもうそう。 みがだんなは。どちらへおゆきゃったか。しらせて。たもりもうせ (上ノ二十ウ) [わかいもの]これやっこきさまがだんなの。ばんじゃないわい。 けたいなばけものじゃ [はちえもん]んにゃんにゃ。 ばけものじゃ。ございもうさぬ。 にんげんのだんなで。ございもうす [わかいもの]<いやいや。> われがだんなにゃ。はながあるまいがな [はちえもん]なにはなは。ひとつございもうす [わかいもの]そんならめは [はちえもん]めはふたつながら。ございもうす [わかいもの]くちは [はちえもん]くちかの。くちはくちはくちはくちは。 おおあんぜ【あんじ】でもうした。 ひとつひとつ [わかいもの]みみは [はちえもん]ごきで。はしでに。ひとづつございもうす [わかいもの]ははははははは (上ノ廿一オ) そんなら。やっぱりひとじゃ。 これとおりすじの。うらないに。みてもろうたら。じきしれじゃ [はちえもん]やや。 これはなんとも。ごわざんで【おむずかしゅう】。ございもうそ [わかいもの]<あいあい。> ようおいで。 おとといごんせ [はちえもん]やあ。 なにがわりゃ【さて】 <とていねいにれいをのべとおりすじへもどり。うらないをたずねる> [わかいもの]いまの。ふぬけやっこの。うらないみにゆきあがったを。きいてこう。 みなこいこう <とにさんにんぞめきのわかいもの。やっこのあとをしたいゆく。 やっこはうらないをみつけ> [はちえもん]<もしもし> みどおしさま。 うらないものをみて。たもりもうせ (上ノ廿一ウ) [うらない]<あいあい。> はあ。まづきこうはとうしょのうまれでは。ござらぬの [はちえもん]やや。 きゅうしゅうもので。ございもうす [うらない]そうであろ。 いまはこきょうをはなれ。かみがたにござろうがの [はちえもん]さようでございもうす。 いまはこのおおさかのしんまちで。うらないをみていもうす [うらない]そうであろ。 されうせものは。なんじゃな [はちえもん]ばけものでは。ございもうさぬぞ。 ひとでございもうす <うらないぬからぬかおで> {うらない]めうえか。めしたか [はちえもん]だんなで。ございもうす [うらない]ふうん。 (上ノ廿二オ) してだんなをうしのうたは。いつのことじゃ [はちえもん]たがいまでございもうす [うらない]つれがあるかな [はちえもん]といやのごていと。あそびに@(まかり)もうした [うらない]よいよし <とぜいをいだしいただきて> じたいおやまはかねあるによる <とさんべんとなえぜいを。とりて> [うらない]ふうん。 ほんけいはりか。 りはさと。 かははな。 さとのはななら。このうちでは。たゆう。 はあ。おてまえのだんなはたゆうをかいにいたのじゃ [はちえもん]ほっしょう【あきれた】やれ。 さようで。ございもうす [うらない]へんけいは。むさしぼう。 (上ノ廿二ウ) これすなわちはりまのくにのさん。 このさんのうえはよついつつ。 いつつはすなわくけんちょう。 このほうがくを。たずねさっしゃれ [はちえもん]よかみとおしさま。ごれいは。かさねてもうそう [うらない]ああこれこれ。 けんりょうをおいてゆかしゃれ [はちえもん]けんりょうとは。つくえのうえにすずりと。ひんならんで。ございもうすが [うらない]ええぜにをおいて。ゆかしゃれ [はちえもん]さて【これは】しさり【したり】。 このうらかたには。せん【ぜに】のいりもうすか [わかいもの]うまいことをいうがきじゃ。 ぜにとらずとだれが。みてやるもんで (上ノ廿三ウ) [はちえもん]ごもっともで。ございもうすが。みがせん【ぜに】のさきにすどわろ【ぬすびと】に。おっとられもうしたで。もちやいもうさぬ [わかいもの]ぜにがなきゃ。かねやれかねやれ [はちえもん]おけた【おほける】ことを。いやりもうす。にさいどんたち [わかいもの]なににさいじゃ。おのれはうらないの。くいにげじゃぞよ [わかいものにさんにん]どやせどやせどやせどやせ <とくちぐちににいうと> [はちえもん]よいそんがいに【そないに】。じんばらかいて【はらをたてて】。やきゃんな【きをもむな】。 あんと【なんと】しょう。 これにまめぎんの。もちよるで <とたばこいれのそこからつゆがねひとつだいじにつつみたるを。おしそうにいだし> (上ノ廿三ウ) [はちえもん]これでこらえて。たもりもうせ <とうらないにわたすと> [わかいもの]えいはえいは。 かんにんしてこまそ。 いつつはこれからにしじゃ。 あしもとのあかいうちに。はようゆけゆけ [はちえもん]やや <とこばしりして> やれやれひったまげ【たまぎるなり】もうした。 おぞいことおぞいこと【おそろしいおそろしい】 <わかいものはやっこがあとをみおくりて> [わかいもの]ああほよああほよああほよああほよ <というにはちえもんはあとをもみずにしへさしてにげゆき。まなごやへ。ちとはいりて> [はちえもん]ごめんなされ [ばんとうせんぞう]なんでござります [はちえもん]これはきゅうしゅうもので。ございもうす (上ノ廿四オ) [せんぞう]ええいそがしいわい。 まあとおっておくれ [はちえもん]んにゃんにゃ。 ものもらいでは。ございもうさぬ。 ものといもうしとう。ございもうす [せんぞう]いそがしいに。なんじゃえ [はちえもん]うつつと。いうは。ございもうさぬか [せんぞう]うつつは。だいぶんあるわいな [はちえもん]そのうつつは。どれで。ございもうすの [せんぞう]いやうつつにも。ながあって。うつつさたろうじゃの。いやゆめのうつつじゃのというが。なんという。うつつを。たずぬるのじゃえ。 (上ノ廿四ウ) [はちえもん]んにゃんにゃ。 うつつともうすあげやをたずねもうす [せんぞう]うつつという。あげやがあったら。こちらもゆきたい。もんじゃ ははははははは。 はあん。 おおかたいつつのことで。ござんしょ [はちえもん]よいそのいつつのことで。ございもうす [せんぞう]いつつは。このにしのつじをきたへいて。またにしへゆくと。おおきなにかいざしきの。あるところじゃ [はちえもん]やや。 これは。ごわざんで【おむずかしゅう】。ございもうそう。 ごれいはかさねてもうす <とていねいにじぎしてまなごやを。たちいで> (上ノ廿五オ) <やれやれ> おぞいことおぞいこと【おそろしいおそろしい】 いつつをわすれもうしたらまたまめぎんのおっとらるるで。ございもうそうに といいいいくけんちょうへゆき。うろうろたずぬる じょうかんおわり (上ノ廿五ウ) きんたろうのぶる さてさごべえは。はちえもんにわかれてより。まんぞうがあんないにていつつへきたり。 にかいのにしのざしきでそろそろたてかけ。げいこもまだしっぽりものをひいている <やっこたずねきて> [はちえもん]にかいざしきとなろうたが <とだんだんにしへゆき> いや@(しれ)もうした@(しれ)もうした このにかいにだんなのこえが。しちょりもうす <と@(かどから。だいおんじょうにて)> <こりゃこりゃ。> おだんなおだんな。さごべいさまさごべいさま [げいこさんにん]うた▲@(よべどこたえず)やまほととぎす (下ノ一オ) [はちえもん]これはわいたこと【ごうがわいたこと】。きこえぬか。 ただしまたみどもにものをおもわせるので。ございもうすか。 <こりゃこりゃ。> だんなだんな [げいこさんにん]歌▲つきやはもののやるせなや [はちえもん]さちさち【さてさて】まだきこえぬそうな。 いやあんぜつき【おもいだした】もうした <とだいおんはりあげ> おおい〔引〕。 すみよしまるにゃい〔引〕 <さごべえはにかいにてこのこえをきき> [さごべえ]よいはちか。 や。わかあ。どんがいくろうたか【どちへいたか】。 ついしれなんだ。 いまてんまをやるぞ [たいこひはち]はああだんなのおともかな。 すみよしまるやあいとききましたで。おくげさんのまよいごをよぶのかと。ぞんじました (下ノ一ウ) [まんぞう]ひはちたいぎながらくるわはじめてのおともじゃほどに。きさまよいようにはかろうてくれはかろうてくれ [たいこひはち]かしこまりました <としたへおりやっこをともべやへともないて> もうしまんさんが。おっしゃっでてござります。 わたくしにまいり。おきにいるようにせいとのおおせでござりますが。りくつ【きだるのこと】をひきあいましょうか [はちえもん]あそびどころで。りくつをいうては。やぼでございもうすとききもうした [たいこひはち]はははははははさようならごしゅださせましょう (下ノ二オ) <とさかないろいろいだしもてなす ○にかいには> [なかいおそめ]もしまんさん。 あなたにたゆうさんがた。おすすめもうします [まんぞう]よかろよかろ。 かりにやれやれ [さごべえ]<いやいや> みははつじゃで。むしんないわぬ。 こよいはたゆうをかりもうさずに。あげもうそう [たいこひはち]これはだんなおちなことおおせられます [さごべえ]なにおちおち。 おちとはなにかな [たいこひはち]おちとは。あたりましたともうすことで。ござります [げいこちゅう]はばかりながら <とさごべえにさかずきをさす> [さごべえ]あいしもうそう (下ノ二ウ) [まんぞう]ちとさなぎひめ。 ぞめきをひけひけ [げいこさなぎ]もうぞめきなんすか <とさんにんはさみせんのちょうしあわせて。なにかうなずきあい> ちちちり。てちちり [げいこさんにん]うた▲しものじょろうしゅのいうこときけば。 [まんぞう][たいこひはち]なんとした [げいこさんにん]うた▲あすはおたちかおなごりおしや [まんぞう][たいこひはち]うそであろちちちり。てちちり [げいこさんにん]うた▲わしがとめたとおもうておくれ <ともべやにて。やっここのさみせんを@(きき)ておおきにうかれ。そろそろともべやをでてにかいへ@(きたり)。> とこのまへあがりて。みなみなのうかれを。くわえぎせるに。てをくんで。よねんのうながめているを。ふとまんぞうみつけて> (下ノ三オ) [まんぞう]やあはちえもんどんがいつのまにやら。とこのまへちゃっとあがってじゃ <というにみなみなこれをみて> ★<ハハハハウウウウウ ヘヘヘヘヘワワワワワ ムムムムムホホホホホ> [さごべえ]よいはちよや。 わがあ。ぶれいもので。ございもうす [はちえもん]なにがあまりのおもしろさに。たかみからけんぶつの。しちょりもうす [まんぞう]<まあまあ> ここへきて。いっしょにいっぱいやったがよい <とはちえもんもともにしゅえんにつらなる ○このあいだにたゆう。ひきふね。かぶろ。おおぜいふすまのかげにいて。なにかわちゃわちゃこえがするかとおもうと> [ひきふねみのぶ]たゆさんおかし <ときくとげいこさみせんしたにおき。ざしきがじっとしずまる。 なかいは。かしとさんをわがまえにおいて> (下ノ三ウ) [なかいおちか]これへおかし <というと。たゆうはふすまのかげよりでて。なかいのまえにきゃくにたいしてざし。さかずきをとりあげ。のむようにしてそのままいるなり。 これをかしぶりととなえて。うちかけのさばきよういろいろくでんあることとぞ> [まんぞう]さごべえさま。 ようごろうじませえ [さごべえ]やや [なかいおちか]つちやくれぬいたゆす <となかいが。かしにきたるたゆうのなをいうと。まんぞうりょうしすずり。ひきよせて> [まんぞう]くれぬいはそのうにうえても。かくれなきごきりょうじゃ <とたゆうのなをしたためおく> [ひきふねしんよ]たゆさんおかし [なかいおちか]これへおかし <またまたたゆういできたりて。さきのごとくする> (下ノ四オ) [なかいおちか]たゆすおむつかし <たゆうはまんぞうをちょっとみて。えみをふくんでいる> [なかいおちか]ひがしののうぎやほうざんたゆす [たいこひはち]<こごえにて> ほうざんはつときもにこたえますであろ <とまんぞうにあてていう> [まんぞう]<ちゃっとこうたで> ▲しらずしられぬなかなれば <とまぎらかして。またかきとめる ○ぜんたいこのほうざんたゆうは。まんぞうがあいかたなれど。さごべえにはふかくかくし。なかいにのみこませ。げいこもたいこもちもしらぬかおにている。 たゆうは。よいにかぶろがまんぞうにおうてことづけをきき。ここへはきたれど。さごべえにかくれあることなれば。ざしきへゆくにゆかれず。 よそながらかおをみるというこころで。このざしきへかしにくるというはせんまんむりょういろのこもるところなり> [さごべえ]ごてい。 いまのたゆうが。みがのぞみでございもうす (下ノ四ウ) <とききてまんぞうは。こころのそうどうなれど。さずがはまんぞうそしらぬかおして。ちょっとなかいへめくばせして> {まんぞう]いまのたゆすとめてたも <なかいもぬからず> {なかいおちか]ほうざんすはこよいは。なりませんほかのたゆさんがたに。しなませ [さごべえ]んにゃんにゃ。 なりもうさんたゆうが。なぜにみがざしきへ。ひんでもうした [なかいおちか]もしかりかしは。あるならひでおます。 ほかのにしなませ <とさごべえきいて。かしかりはあるならひによばり。これをおしていうたところが。やぼといわれんもくちおしく。まけおしみに。なにかぐずぐずいうていると> [しきふねはやま]たゆさんおかし (下ノ五オ) 挿絵 (下ノ五ウ) 挿絵 (下ノ六オ) [なかいおちか]これへおかし <こたびはしんぞうたゆうにて。かのはちもんじをふむとかねるとかいうむつかしごとあり。 しんぞうのうちはこのことあるとぞ> [なかいおちか]にしののうぎや。きくさとたゆす [まんぞう]きれいきれいおおきれい。 かんのりふじん。ようきひ。おののこまちも。はだかで。はだしで。てんてんてんまをまうであろ <といまのてれかくしに。このたゆうをよばそうとおもい。まんぞうはむしょう。やたらにほむる> {さごべえ]こりゃごてい。 みはこのたゆうをあげもうそう [まんぞう]これはようござりましょう。 おちかしんぞうさんはようとめませとめませ (下ノ六ウ) [なかいおちか]ああ〔にっしょう〕 <このああのへんじに。ことごとくかわりあり。 ここにしるす △うかめのああきょしょう △うたがいのああじょうしょう △じきしょうちのああにっしょう △がってんがてんのああひょうしょう これらみなしせいをもってしらしむ ○さてなかい。たゆうをとどむれば。ひきふねたゆうをともないいでて。ちょっとなかいにささやきさごべえがとなりへたゆうをざしめ。つぎにひきふねかぶろとすわる> [たいこひはち]もしだんな。 しんぞうさんとはぎえんで。ござります [まんぞう]これからいかりをおろして。あそびましょあそびましょ [たいこひはち]まんさん。ざんじごしんぱい。 まずたゆうさんもさだまりまして <とまんぞうがあいかたを。さごべえがかおうというたときのことを。よそながらいうを。さごべえはなにもしらず> [さごべえ]なにからなにまで。ごていのおせわで。ございもうす (下ノ七オ) <というにひはち。げいこさんにん。かおをみあわせ。こころのうちでくつくつとわらう> [なかいおそめ]もしたゆす。 ひとつのみなんで [ひきふね]あなたへあげなんで [たゆう]ああ〔きょしょう〕 <たゆうさかずきをとりあげ。ちょとのんでさごべえにさす> [さごべえ]これはありがたい。 あいしもうそう <とさごべえは。さけをのむうちに> [はちえもん]よいねじょ。 おみがつかいもうすようじを。みにたもりもうせ [げいこ]これはきたのおます。 ほかのをあげましょ [はちえもん]んにゃんにゃ。 おみのつかいもうしたがよくございもうす [まんぞう]これはみょうじゃみょうじゃ (下ノ七ウ) [たいこひはち]<よおよお。> はちさんに。ほれられてさまほれられてさま [げいこ]これいなひはちさん。 なにいいじゃいな [まんぞう]あのようにはちどんが。ほしがらしゃるようじじゃ。 あげませあげませ [げいこ]それでも。きたのおますもの [まんぞう]そのきたないところが。しょうねじゃ。 あげませあげませ [さごべえ]これははちが。いっしょうのおもいでで。ございもうすから。しょもうさっしゃい [まんぞう]あげませあげませ [げいこ]さよなら。しつれいながら (下ノ八オ) <とようじを。ていねいにふいていだすと> [はちえもん]やや <とようじをおしいただき。なんのくものう。きせるをさらえる> <はははははは わわわわわわ ふははははは> [まんぞう]こいつは。たまらぬたまらぬ [たいこひはち]えらおもしろじゃおもしろじゃ [まんぞう]いやおもしろついでに。おとといいちのがわのしばいへおともしていた。あらきちかくざえもんの。ものまねがききたい。 [たいこひはち]あのわたくしにものまねかえ [まんぞう]しれたこと [たいこひはち]はいさよならおさとさん。ちょとねりやくを [げいこおさと]ああ〔ひょうしょう〕 ひはちさん。あらきちがえいぜ (下ノ八ウ) [たいこひはち]またあくを <とちょとたたくまねをする> [げいこ]★<わわわわわわわ ほほほほほほほ へへへへへへへ> <このたいこ。あらきちはえせぬゆえ。げいこに。まじめにせらる。 @(げいこ)さみせんとりあげ> [げいこさんにん]うた▲いめがえに。はつねやさしきうぐいすのち。ちん。つてん。つ [たいこひはち]ものまね▲いままたごへんじがいせば。かまくらへのぎはたつべきがささきがくびはにせものなりとたちまちろけんし。これまでくだきしこころはみずのあわ。 ときをまってささきたかつな。まことはここにと。きっていづるそのときに [まんぞう]ああひはち それはくざえもんじゃ。 あらきちせいあらきちせい (下ノ九オ) [たいこひはち]だんなまでがおなじように [げいこなかい]ひはちさん。 あらきちまっていますあらきちまっています [さごべえ]なるほどくざえもんどんも。よくにもうしたが。あらきちがみがのぞみでございもうす [まんぞう]だんなのおおせはそむかれまい。 あらきちせいあらきちせい <げいこは。ちゃっとひはちがほかへ。そらさぬように> [げいこさんにん]うた▲ちちよははよとよぶこえきけばち。ちん。てん。つてん。ち <ひはちは。あたまかきかき> [たいこひはち]ものまね▲おとたかしおとたかしたにむらことうじ。 してじょうないにへんはなきや [まんぞう]みょうなあらきちじゃな (下ノ九ウ) <ときくとそのまま。ひはちたちあがり。ちゃっとほかえそらして。でたらめに> [たいこひはち]さんぞうろう なまずのみぎわに。ひょうたんがまえ。こいつをとらんともようすところに。れいのおおひげぐっとふりたて。むにむさんにぬらめくを。ちょいとおさえりゃ。ぬらりとぬけ。ひょいとおさえりゃ。またぬらりと。とちょうばかりひきしおに。ひょうたんかまえておいゆけば。なまずはここぞとやっこさん うた▲いかにあほうとひげふりて。みずのふかみへつん。つん。てん。ち。はいりけり <このあいだしじゅうげいこ。さみせんのあしらいあり> (下ノ十オ) [さごべえ][まんぞう]<ははははははは わははははははは> [まんぞう]こいつは。おかしいおかしい <とひはちにはなをやり> だんなから。うかせ【やれ】とのおおせじゃ [たいこひはち]ありがたのつきが。はやいづるでござります <このうかれのおもしろさに。はちえもんはしょくがいにもたれ。うつつをぬかし。みていたところが。しょくだいがこけて。ろうそくがはちえもんのあたまの。まんなかへおちければ> [はちえもん]<やれやれ> あついことあついこと [さごべえ]やれろうそくが。はちがあたまへおちをとりもうしたか [はちえもん]そのおちをはやくとりのけてくれもうせ あついでめいがおわりもうすおわりもうす [さごべえ]よいくやみもうすな (下ノ十ウ) ながいきのしもうす。くすりがありもうす <とさいぜんのちょうめいがんを。やっこがあたまへ。ひんなすって> しばらくこらえていもうせ。 ついなおりもうす <というにようようおちつき。みなみなもとのざになおる。 やっこはあたまをかかえ。じっとしている> [まんぞう]まずおさまりまして。おめでたい。 このいわいに。おねだりもうすことがござります。 どうぞおくにのうたが。うけたまわりとう。ござります [さごべえ]んやんにゃ。 みどものくにのうたは。おもしろくない。 はからいことはからいこと【よしにせいよしにせい】 [たいこひはち][げいこ][なかい]どうぞきかしなませどうぞきかしなませどうぞきかしなませどうぞきかしなませどうぞきかしなませどうぞきかしなませどうぞきかしなませ [さごべえ]そんがいに【そのように】もうすから。うたいもうそう。 (下ノ十一オ) ねじょたち。おやっと【ごくろう】で。ごさいもうすが。しゃみのひいてくれもうせ <とききてげいこ。さみせんを。めいめいてにとりあげながら。なにをひくことやらしれぬゆえ。たがいにかおをみあわしているにさごべえはいさいかまわず。うたうゆへ。よいかげんにちょうし。あわしている> [さごべえ]うた▲けんじゃおかいりやる{z} たのむぎゃうれる{z} よいさよいさ なにをちからにむぎかろか。 さんさほ〔引〕 [まんぞう]みょうじゃみょうじゃ [たいこひはち]これはおちじゃおちじゃ [さごべえ]しまのこんぱいどんな{z}。よかよめをもちやった{z}。 よいさよいさ しまじゃいちばんなはほそじょ。 (下ノ十一ウ) さんさほう〔引〕 <ときにふしぎややっこがあたま。ひょこりひょこりと。うごくゆへ。きをつけてみなみるに。いよいよひょこりひょこりとうごく。 このときいちどにたちさわぎ。これただごとにあらず。 たぬきのしわざか。なににもせよ。おおそうどうなりと。やすきこころなきに> [はちえもん]<なきなき> もしもし。だんな。 みがあたまが。しぜんとおえもうして。ぴりぴりとしもうすわ [さごべえ]みなみな。おさわぎなさるなおさわぎなさるな。 はちはいのちおわりもうすから。ながいきしもうすように。しんまちばしのちょうめいがんの。ひんなすっておいたで。ございもうす [おおぜい]ええめっそうな <とみなみなきもをつぶすうちになかいおそめは。めったにてをたたく> (下ノ十二オ) はい〔引〕 <とこめろがあがってくると> [なかいおそめ]たらいに。ゆをもってきてもってきて [たいこひはち]これはよう。おきがついたおきがついた。 しかしよくごあんないじゃな [おおぜい]★<わわわわわわわ ははははははは あはははははは> <よろこばしぐすりを。つけあやまれば。ゆにてよくあらうというあななり。 このうちにゆをもちきたり。 はちえもんがあたまを。おおぜいしてあらい。はちえもんようようきげんなおれば> [まんぞう] さて。これをはねにいたしまして。さごべえさまちと。おやすみなされませ [はちえもん]こよいはどんななんに。あいもうそうも。しれもうさぬ <とつぶやきつぶやきしたへゆくと。まんぞうもざをたつ (下ノ十二ウ) げいこ。たいこも。さごべえにあいさつしてざをたつ。 このときたゆうひきふねともにたつ [なかいおそめ]さごさんもし。ちとおやすみなませ <となかいとかぶろは。さごべえをひとまへいざなえば。きんびょうをたて。どんすのよぎふとんを。しきかさねたるに。さごべえをざさしめて> [なかいおそめ]もしおやすみ <となかいはいでゆく> ○さごべえはそこらをば。みまわしみまわし。しばらくもんぜつのかたちなり。 かぶろは。せきへきのずのかけものを。みつけて> [かぶろ]もしあのかけもののずは。なんで [さごべえ]やや。 あれはとうじんどんが。ふねにのちょり【のり】もうすので。ございもうす <おなじく。ふをみて> {かぶろ]あのうえのほうにこまかいじが。たんとかいておますのは。なんで [さごべえ]あれはおきょうで。ございもうそう [かぶろ]とうじんさんのおきょうともうすと。なんのがんがかないますへ (下ノ十三オ) [さごべえ]ねごとの。やみもうすがんの。かないもうそ [かぶろ]<おおいや。> もしわたしゃ。ねごとをいうていっこうひきふねさんに。しかられます。 どうぞあのおきょうを。おしえてくれなませ [さごべえ]んやんにゃ みはひるばかり。ものまなびを。しもうしたで。こんがいな【このような】くらずみ【くらがり】のよは。じがわかりもうさぬ。 はからいことはからいこと【よしにせいよしにせい】 [かぶろ]ああ〔じょうしょう〕 そんなことはしりません。 おしえてくれなませおしえてくれなませ (下ノ十三ウ) <とむりむたいに。いうゆえ。さごべえも。あたまかきかき> [さごべえ]あんと【なんと】しょう。 あんどんのひをかかげもうせ <ととこのうえにあがり。りょうてを。かけもののさゆうにして。かべにつかえ。あしをつまだてて。そろそろよんでみる> [さごべえ]なに。 みずのえいぬのあき。しちがつ。むんにゃむんにゃ。のぞむ。むんにゃむんにゃ。こ。よ。きゃく。むにゃむにゃ。ふね。あそぶ。おいて。なんじゃ。あかかべのしたか。 いやもなんじゃが。くらずみ【くらがり】で。みゆるものでは。ございもうさぬ。 ひをかかげかかげ [かぶろ]いっこうあこうおますがな。 まだくらうおますならここをあけます (下ノ十四オ) 挿絵 (下ノ十四ウ) 挿絵 (下ノ十五オ) <とかぶろは。ひるのようにおもい。しょうじをあけると。かぜがうちへはいって。あんどうのひがたちまち@(きえて)。まっくらやみ。 かぶろびっくりして> [かぶろ]あれえ〔引〕あれえ〔引〕あれえ〔引〕あれえ〔引〕 <といいざま。しごべえがあしを。つまだてている。したのほうからふどしが。ぶらぶらしてあるを。かぶろはくらがりに。これをつかまえ。こわいがいっぱいゆえ。ここをだいじと。ふどしをひっぱりて> [かぶろ]あれえ〔引〕あれえ〔引〕 [さごべえ]ああいたたたたたたた ばけものが。でちょりもうすか みがふぐりをしめきりもうす。 やれたすけて。たもりもうせたもりもうせ <このおとに。いつつやはおおさわぎにて。りょうりにんをはじめ。めしたき。しもおとこ。はちまきにかしらをかため。てんでにぼう。ちぎりきにて。にかいへあがり。ちょうちんほしのごとくかがやかし。よくよくみれば。さごべえはよつばいになり。かぶろはふどしをもちここをだいじと。りょうほうへひっぱりおうたありさまは。のがいのうしをむりやりに。ひいてかえるがごとくなり。 (下ノ十五ウ) みなみなこれをみて。いちどにどっとわらいをもようせば。かぶろもきがつき。ふどしをなはす。 さごべえもめんぼくをうしない。すごすごもとのねまにざしたれば。みなみななにかささやきあい。くつくつわろうてしたへおりると。ようようしきふねたゆうをともないきたり。 さごべえにたいしざさしめて [ひきふねはやま]ゆるりとやすみなませ <とかぶろをつれてひきふねでてゆく> [たゆう]もしちとおよりなんで [さごべえ]やや <といえども。たゆうがいうことがてんゆかず。まじめになっているを。たゆうこころえまずねさせて> [たゆう]もしあんた。 おもわくがおますで。おましょ [さごべえ]やや。おもわくは。こんねんなさとうを。ふとかこと【だいぶん】のぼせもうす <このうちに。たゆうたばこを。つけて> (下ノ十六オ) [たゆう]もしたばこはえ [さごべえ]んにゃんにゃ。 きょねんたばこで。そんぎんのしもうした [たゆう]<いえもし> たばこのみなんで [さごべえ]おみ。ふき【のみ】ゃれ <たゆうがてんがゆかず。すいつけたたばこゆえむさいとこころえ。そでにてふきていだす> [さごべえ]んにゃんにゃ。 ふきやれふきやれ <というて。たゆうのせなをなで。かおをながめて> [さごべえ]おみすいたかおみすいたか【わしがすきかわしがすきか】 [たゆう]きのうすいて。かみはきょうでおます [さごべえ]んにゃんや。 かみはきょうじゃといいもうすが。きょうばかりかみでは。ございもうさぬ。 みがくにからは。おおさかもかみかみとねんじもうす (下ノ十六ウ) [たゆう]あんたかみがみさんを。しんじんしなますは。みょうけんさんで。おますかえ [さごべえ]んにゃんや。 みがははじょのなは。みょうじゅでこそあれ <このとき。したのなかどに△このもんのはこちょうちんを。さげたかすまやのこめろ。よびたてして> [こめろ]ほうざんすかぶろしゅう。 た{上一}い{z}きち{一z}た{下}いきちた{上一}い{一}きち{一z}た{下}いきち{z}た{上}い{上}き{上} ち{上} <とさごべえはききつけて> [さごべえ]たゆう。 あのようによびたつるは。このうちにたれぞ。めどもまいとらかしたか。 やねからでも。ほたりおちたか [たゆう]ああ〔じょうしょう〕 なにいうなますやら (下ノ十七オ) [さごべえ]なますなら。かつおのいおのこと <とこのあいだたがいにくいちがいにてわからず。つうじのいりそうなことなり ○さてまんぞうは。よびたてているたゆうを。かりやひめとしているに。やつどりのなかぬさきどころか。やっとてまえに。よびたてられ。なごりおしんでわかれるという。せつないきょうげん ああままならぬ。みじゃわいな ○ときにさごべえは。ちかがつえにて。みぎのぎをもようさんと。いろいろこころをくだけども。たゆうはゆうゆうとして。とりあへねば。おおきにはらをたてて> [さごべえ]こよいはざしきへいて。あそびもうそう [たゆう]そうしなますか <とてをたたく> [かぶろ]あい〔引〕 <とかぶろきたる> [たゆう]あんたは。ざしきであそびなますほどに。したへそういうておじゃ [かぶろ]ああ〔にっしょう〕 <とたつとしばらくして。なかいおそめいできたり> (下ノ十七ウ) [なかいおそめ]もしひはちさんも。げいこさんがたも。よびにやりました まあざしきへ。ゆきなんで <とさごべえを。ざしきへともなえば。たゆうはいしょうあらためにしたへおり。かぶろがさいぜんに。ふどしのはなしをききて。あほうらしく。さごべえがとんといやになり。そばへもゆかず。なおはなしをさせてきいている。 にかいにはしゅこうを。とりそろえ> [なかいおそめ]もしおひとつ <とさかずきをさす> [さごべえ]やや。 あいしもうそう <とさけはのめども。みぎのいちぎあいすまねば。おおふさぎ。 ことにたゆうはそばにいず。ひきふねばかりゆえおおきにいれて> [さごべえ]たゆうは。どんがいくろうた【どちへいた】 [ひきふねなかい]ああ〔じょうしょう〕 <ひきふねも。なかいも。がてんゆかず。かおみあわせている。おりから。こめろがきて。なかいになにか。ささやく> [なかいおそめ]もしひはちさんも。げいこさんもなりません。 (下ノ十八オ) そとのげいこさんがたに。しなませ <とききて。さごべえいまはこらえかね> [さごべえ]なに。みんなこぬともうすか ぜんたいわれどもが。みどもをあなずるか。 くぼか【ふかい】ところにゃ。ゆかんぞ。 みもおくにでは。にのざとさがらぬやつ。 おんなにばかもどかしに。せられては。すまぬすまぬ [なかいおそめ]そうおっしゃらずと。ひとつおあがり <とむりに。ついで。つぎめをしおに。ざんじすかさんとおもい。さけのうむにかかわらず> [なかいおそめ]これはおしあわせ <とせきをたたんとするを> [さごべえ]よいねじょ。 まてまて つぎめをしもうすに。おしあわせといいもうすは。みがいっぱいさけをよけいのみもうすを。しあわせといいもうすか。 (下ノ十八ウ) さちさち【さてさて】。むさいことむさいこと。 げすじょで。ございもうす。 いよいよ。じんばらかいて【はらがたって】。のし【なり】もうさん <とへんくつものの。ねちじょうごにて。なかいもひきふねもきげんをえとらねば。ばんとうのおすぎ。おこめ。たゆうをつれきたり。 かねてのひじゅつをつくし。いろいろときげんをとれども。なかなかしょうちせねば。いまはおおきにもてあまし。ああままよ。どうもしようが。ないと。ひとりぬけ。ふたりぬけ。とうどうなかいのおそめと。さごべえと。さしむかいになり。いよいよさごべえは。おおのみにて。したもまわらず。なかいひとりを。いじるうち。はやしののめも。ちかければ。いまはなかいもたまりかねおおいきをついでにげゆけば。さごべえもいじりくたびれ。ぼうぜんとして。ねぶりをもようす> (下ノ十九オ) からすが。かあかあかあかあ。 すずめが。ちゅうちゅうちゅうちゅう <となくにさごべえはねぶりをさまし。あたりをみれば。さけさかなは。そのままにとりみだし。そばにひとりもねば。なおもはらにすえかねててをむしょうにたたけば。おおぜいのこえで> はあい〔引〕 <といえども。ひとりもざしきへこず> [さごべえ]ええがきや。げどうどもが。 はいはいと。へんじきりかえしながら。ここへはくらまぬ【こぬ】 <とまたてをたたく。 またおおぜいが> はあい〔引〕 <といえども。ねからこず> [さごべえ]ええ <としたつづみうちて> まらくっそ。ねじょどもが。なにをむんじりむんじり【ぐずぐず】と。しておる <とにかいから。なかどを。みおろせば> はちぼうずがおおぜい。はあい〔引〕 (下ノ十九ウ) <さごべえはこれをみて。おおきにわらう。 このこえにまんぞうげんかんのとをひらき。はちえもんはともべやのしょうじをあけて。うかがうに。はちぼうずは。たちまち。てっぱつ。ころも。かさ。しゅじょう。ぼうずかずらを。ぬぎすつるに。しだいふどうひはち。はきち。なつはち。ほどきち。ちきちなんどいう。たいこもちなりければ。たゆう。ひきふね。かぶろも。なかいも。うかれでて。ともにざざめき。たちけるに> [たいこひはち]もしもしさごさん。 あなたのごきげんおおきにそんじ [たいこはきち]ねじても。こじても。なおらねば [たいこほどきち]まっこうせいとまんさまが [たいこちきち]ひそかのごげぢ [たいこなつはち]そのさしずをはずさずごきげんなおり <みなみないちどうに> おめでとうぞんじます (下ノ二十オ) ばつ ちはやぶるかみのやまとなるにしのみやにましますでくじんじゃはすなわちそのえびすのぐうきょにとなりてくぐつしのそしんなりまた (下ノ二十ウ) にんぎょうとだいしてあらたまのはるしょしがはつうりちぢのこがねのつるがしわのもんにもとずきてこばんよたわらよこぬかあめのしきりとふるながきひの (丁なし一オ) つれづれにかさにかえてげたはくあしはこたつへなげだしひじをまげてのたかまくらもたかねのはなやみたばかりととぎにんぎょうにかわるひとつ (丁なし一ウ) あらかねのつちにんぎょうはいにしへいまみやのおきながきょうのぼりかえりさのそでにしてちょうせきのとぎとせしくさのいおりもかのえびすのおやしろのかた (丁なし二オ) ほとりなりかれとこれとをひとたばねにちよにやちよにさざれいしづにえびすがみをちょうにとじてしひつのしゃれぼんよろずよのよろずをしるいちもん (丁なし二ウ) ならんかしといふ ぶんかよつ ひのとうのはる むつき ぶんちょうしゃ まんし △ (丁なし三オ) なにはきんたろうぞうはん△ (丁なし三ウ) ------------------------------------------------------------------------------------------ 《注》    @の置き換え  JISコードにない漢字   ・上ノ十五ウ4 @=片×旁  その他   ・上ノ廿二ウ3 @@@=不鮮明。大成では「まかり」   ・上ノ廿六オ5 @@=不鮮明。大成では「知れ」(161上5)   ・上ノ廿六オ6 @@@@@@@@@=不鮮明。大成では「ト門(かど)から。大音声(たいおんじやう)にて」(161上6)   ・上ノ廿六オ7 @@@@@@@=不鮮明。大成では「よべどこたへず」(161上7)   ・下ノ三オ7  @@=不鮮明。「き+」か?大成では「きい」(162上7)   ・下ノ三ウ1(データでは下ノ三オ)           @=不鮮明。大成では「り」(162上8)   ・下ノ九オ2  @@@=不鮮明。大成では「げいこ」(164下7)   ・下ノ十五ウ1 @=不鮮明。大成では「き」(167下5) その他   ・下ノ十六オ3 【のみ】は、「ふ≪きや≫れ」の「ふき」に附されたもの 洒落本大成との異同  本文の異同     下ノ二ウ1(データでは下二ノオ)         ・ルビ欠落        御酒   → 大成161下10 御酒{しゆ}    下ノ四オ5・ルビの濁点欠落    硯{す+り}   → 大成162下4 硯{す+゛り}    下ノ四ウ1・割書き濁点欠落    含{ふく}んて  → 大成162下7 含{ふく}んで    下ノ四ウ1・一字欠落         入      → 大成162下7 入る    下ノ四ウ5・句点あり?      花魁{たゆふ}は。→ 大成162下11 花魁{たゆふ}は    下ノ四ウ5・ルビ         言傳{ことづけ} → 大成162下11 言伝{ことづて}    下ノ九オ2・           歌妓       → 大成164下7 歌奴    下ノ十八ウ6・濁点欠落      さんじ      → 大成169上5 ざんじ    下ノ十九オ6・ルビ欠落      仕やうが。    → 大成169上12 仕{し}やうが。    下ノ十九ウ1(データでは下ノ十九オ)          ・ルビの濁点欠落   茫然{ほうぜん} → 大成169上14 茫然{ぼうぜん}  ページの異同    跋「丁なし一オ」→ 大成の跋「二オ」    跋「丁なし一ウ」→ 大成の跋「二ウ」    跋「丁なし二オ」→ 大成の跋「一オ」    跋「丁なし二ウ」→ 大成の跋「一ウ」