「京傳居士談」解釈データ 凡 例  ・上欄注は『 』内に示す。  ・☆は原文庵点を示す。  ・漢字の読み方については、固有名、連濁等も含めると確定できないものが多いが、いちいち注すると煩雑になり過ぎるためこれを略した。 ------------------------------------------------------------------------------ 京傳居士談 全 きょうでんこじだんじょ じょうじゃひっすいのことわりたれかはのがれんさらそうじゅのはなのいろはうつりにけりないたずらにおののこまちもあなめあなめ むかしおとこもついにゆくみちとはかねてききしかどきのうきょうとはおもわざりけり (丁付なしオ) それきょうまちのおいらんはしんしのほっくになをしられはたきょうばしのおいらんはおおくのげさくになだたかりしもふんかとおあまりみつきくづきのはじめつかたむじょうのかぜにうけだされてくるわのくがいをのがれおのじなづけてまちふうとなり (丁付なしウ) はきつけぬたびのじゅうまんおくどのわかれはいかならむや おなじみきまがたさっしたまえとかくいうわたしはまださいけんのやまがたをしょわねどほうおうのかべのおもきはしる (丁付なしオ) まがきにさけるひなぎくというしんぞっこしじゅうはってはさておきてすががきのひとてもまだひけぬ みじかきざえのしきせぬのこにあしかのまねよりほかにとりえはならのはのなにあうみやのこじにこじ (丁付なしウ) よみとひびきのにかよえどそはまんようしゅうこはやりてしゅうやおいらんのめをぬすんでへやあんどのかげにしたためふところのうちによみあわせじれったいよとかんざしとってまえがみとともにこのしょをかく (丁付なしオ) あずまがきしゃしゅじんじゅつ(@1 (丁付なしウ) 挿絵 (丁付なしオ) 挿絵 (丁付なしウ) 挿絵 (丁付なしオ) きみはいまこまがたあたりほととぎすとまことこもりしおいらんのほっくをかりたく さいぎょうもまたみぬはなのくるわかなとうそじゃごんせぬこじんのほっくをここにほんたくもくろくおわり (丁付なしウ) <しじゅうはってのちのまき> きょうでんこじだん ばかさんじんさく ○<きみはいまこまがたあたりほととぎすとまことこもりしおいらんのほっくを> かりたく てつふはじょうをなしてつふはじょうをかたむくとはけとうじんのねごととるにたらず そもかりたくのにぎわいといっぱあっちはあずけてこっちのはんえい やなぎばしからこぎだすふねはこいしいのきにうちょうてんとなりかしうらよりかえりのふねはしゅびのまつにうちをあんじあたまばかりみゆるれんじはぼくすいをへだててみめぐりのとりいににたり (一丁ノオ) わがおもうひとはありやなしやとむかしおとこそそりうたはおちゃをひくみやこどりがむねにこたううめやしきのうめぼしならですかれてすすまぬきゃくあればうしのごぜんのよだりならできざがられてのろけるきゃくあり おとこはうえにしてたたみのぐにゃつくをそしりおんなはしたにしててんじょうのよしあしをさぐる ほんみせでみせとわかるうちあればこうじきげじきをろんずるきゃくあり (一丁ノウ) おもてからかえればうらからあがりちゃやかとおもえばじょろうやのにかいなり みのわからくるたまごたまごはほんじょからでるすしうりとことばをかわしせんじゅうからかようあんまはやまのてのおやしきにつきあたる くちがかかってでるげいしゃはあいてかえるだいのものとすれちがうちゃやちゃやのあんどうきらぼしのごとくとうまらくいにおっとりまきときをどっとぞあげたりける じまわりのけんかおとたえてひっそりしたるかやのうち (二丁ノオ) △<きゃくいだはちにじゅうろくしちしんなりとしておとこもよし> ☆[いだはち]こうよくめえばんけんかがあるの うっかりひやかしてもあるかれねえ △<じょろうおのへじゅうろくしちきりょうひとがらもっともよし> ☆[おのへ]どうしいしてもちょうのうちよりそうぞうしゅうおっす もうかりたくもしみじみあきんしたよ (二丁ノウ) ☆[いだはち]なぜえ ☆[おのへ]なんだかこしをかけていんすようでものがきまりぃせんものを ☆[いだはち]それでもまたおめえいいことがあるだろう ☆[おのへ]なにがえ ☆[いだはち]いろおとこにあったりまたひとつほかにいいことがありやしょう ☆[おのへ]なんだえ ☆[いだはち]それ ☆[おのへ]おやおつうおっせえすね わたしらがようなもののとこへながくきさっしゃるきゃくしゅうはありんせんものを ☆[いだはち]ごもってえねえ わたしだといのちでもあげるよ およばぬことだが (三丁ノオ) ☆[おのへ]よくおなぶんなんすね ほんにいまどきのきゃくししゅにはゆだんがなりんせん じょろうしがみんなだまされんすよ ☆[いだはち]などといっちゃあやっぱりだますのか ☆[おのへ]ぬしゃぁよくひとにからかわっしゃるねえ にくいくちだのう と <わきのしたをちょいとつめるあとをさする> ☆[いだはち]ええいたみいってうれしい <ろうかのはちけんなにかさわってぐるりとまわりひさきがしゃうじのあいだからさすそのあかりにていだはちがかおをつくづくみてみぬふりし> (三丁ノウ) もしえわたしがねがいをかなえておくんなんし <というところへしょうじのそとよりしらはのしんぞう> もしおいらんえ <へんじなければ> もしおいらんえ ☆[いだはち]へんじをしてやんなな <ひたいへはちのじをだしふしょうぶしょうに> ☆[おのへ]なんだなそうぞうしい へえっていいなな ☆[しんぞう]あいごめんなんし <としょうじをあけてはいりもじもじしながら> ☆[しんぞう]もしおいらんえちょっと ☆[おのへ]ええじれってえこだのう もしごめんなんし <とはいだしてかやへかおをおっつけ> なんだな <こごえにて> ☆[しんぞう]あのねげんさんがちょっとおよびもうしてくれとこうしにまっていさっしゃるよ (四丁ノオ) ☆[おのへ] <つんとして> おおかたそんなことだろうとおもった きざなひとだのう <とわらいながらかんざしでまえがみをかき> あのこんやはいろおとこがきさしったからでられませんとそういってけえしな <いだはちたばこすいつけてしらぬふりをしている> ☆[しんぞう]それじゃぁわるうおっさあね そういわれんすものじゃぁありんせん <というところへわかいものりすけあわただしくきたり> ☆[りすけ]やまぎしさんやまぎしさんなにをしている (四丁ノウ) ☆[しんぞう]いまそうもうしているのだよ きついせわやきじじいだ ☆[りすけ] おいらんえちょっと <といえどだまっていればあしをばたばたして> ええじれってえぞよう ☆[しんぞう]おやきついじょうだんものだよ ☆[おのへ] <わらいながら> なんだのばからしい いまにいくわな <といわれてわかいものはゆく かのしんぞうのみみへくちをつけ> ☆[おのへ]あのきのううらあんばいがわるくってひっこんでいるからこんやはかえっておくんなんしとそういいなよ ☆[しんぞう]あい <とたつ> (五丁ノオ) ☆[おのへ]いまかしのほうでみやこさんをよばしったのはだれだえ ☆[しんぞう]かんだのいのさんにぎんばさんざいます せんじゅうとやらへはいかいにいかしったかかえりだとてこうしからおかえんなんした おいらんへよろしくとおっせえしたよ <としょうじをあける> ☆[おのへ]これさこのたばこぼんをそっちへよせていってくんな ☆[しんぞう]あい <とわきへかたづけしょうじをたってでてゆく> ○<あとはひっそりとこなたはふたりいちざ もっともしんぞうかいろうかをへだてむこうあってとこはきまりしようす こなたのきゃくはじょろうのこぬにたいくつしちいさなこえにて> (五丁ノウ) [じょうるり] ☆はなもわかばになつのよのそらもなごりとみあぐればああひく <とあくびをして> ええなぜこんやはねつかれねえかしらん じょこうしおやすみか [こなたのきゃく]☆いんやまだねやぁしねえ ちっとこっちへこねえか <じつはくるななり> ☆ちっといってはなそうか まだねるにゃぁはええ <とおびひろどけのままきたる> ☆[じょろう]わたしのきゃくじんはねてばっかりいさっしゃるよ ちっとおはなしなんしな ☆はいおまいににてじゃあねえかえ (六丁ノオ) わたしゃぁこんやはちゃにうかされたそうでさっぱりねつかれやせん ときにじょこうしきょうのかいはちゅうつくれえだのう ぜんてえあのまきはまたきおがかちじゃぁねえ このおうぎをみねえ なりたやにもらったがよくかくの <こんなこともじょろうのまえのみえなり> [いちざ]☆えんぱというおとこはそうぞうしいおとこだの ☆[じょこう] <しかたなしに> そうよ おらあこんやはなんだかねむくってならねえ <はやくいけばよいなり> (六丁ノウ) [いちざ]☆ねむいはずさ ゆうべのかわがおおもてだから <うそにもうぬがことをいわれてきゅうに> ☆[じょこう]かわてえばうめもとのおかねがこっちへくらげえしたそううだの ☆[いちざ]ううかのいっちょうめか ☆[じょこう]ちげえねえ なんでもじょろうはおおみせのばんしんをかうがとくだぜ だいいちさんだんができらあ ☆[いちざ]やまとみやとめばのかすけがなげられたはなぎぬをおれがこのごろてにいれたが ☆[じょこう]またたれかわっちがこころやすくしていたかのしんというはたけだほどのいいじょろうよ (七丁ノオ) ☆[いちざ]かのしん <とへんなかおをしてかんがえる> ☆[じょこう]おめえもまだいたらねえぜ それ <とおつなめつきをする> ☆[いちざ]ううおれがこころやすくしたけいにつかわれていたしんか ☆[じょこう]そうよ あれよ <こんなこともみえぼうのうそなるべし> ☆[じょこう]あれはあげやまちのおきんがいもうとだそうだのう ☆[いちざ]あのおきんがあれをこのごろ ☆[じょこう]おっとまったりまずうけちんからきめよう もうやっこのかばはごめんだぜ (七丁のウ) <じょろうふたりのうぬぼれあきれてきいていたがおもいだしたように> ☆[じょろう]おやおくにどんにそういいんすことを もしえじきにまいりんすよ <とはずしてゆく> ☆[いちざ]どりゃおいらもふせりやしょう <とたちながらこえをひそめ> ☆さっきのはおりいっけんをきやつらなんとおもったろう <というははおりをにかいまできてあがりさとられぬようにあああついとぬいでひきてぢゃやにもたしてかえしまげてこんやふたりのいとめなり> ☆[じょこう]そりゃぁおめえしれやぁしねえ どんないいきゃくでもはおりをちゃやにもたしてけえすというはあるやつだわな (八丁ノオ) ☆[いちざ]そりゃぁそうだがさっきおめえのじょろうがしんていということをいったがどうもげせねえ ☆[じょこう]なにしんてい しんていたあこころいきのことよ <これもおなじくやくしゃなり しんていとはここのうちにかぎりかりたくからのつうげん いろおとこのことなり> ☆[いちざ]そんなことだろうとおもった ときにじょこうしねまちとしよう このあついにだきつかれはごめんだ ひとりのほうねごころがいいのう <まけおしみをいいでてゆく さてしばらくしずまる> (八丁ノウ) ○<あしおとばたばたとかむろふたり> ☆[たけの]まつのどんたんといじわをさっせえ こんたのこともいつつけるよ ☆[まつの]そんならいっぴきやるからだまっていさっせえ <とかしぶくろからほたるをいっぴきやっとだす したへおとす> ☆あれあれそうつまむとおちてしまうよ <とこごむひょうしにやつくちからえんどうまめばらばら> ☆[まつの]いいさ うっちゃっておかっせえ <とそっととりだいじにつかんでひとりはゆく かやのうちから> ☆[おのへ]だれだ たけのか いいとこへきた れんじをちっとあけてくりゃ ☆[たけの]あい <とすこしあけ> これでようすかえ <とゆく> (九丁ノオ) △<ひょうしぎのおと> かちかちかちかちかちかかち ☆[おのへ]おやもうななつだよ なぜこんやはよがみじかいのう もしえぬしゃぁねなんしたかえ もしえもしえ <とゆすりおこす> [いだはち]☆むむむむむついとろとろした もうなんどきだの ☆[おのへ]やつざいますよ もしえぬしゃぁおなじみのとけへいかしっちゃぁねなんすめえねえ ☆[いだはち]なにきょうほりのうちのくたびれ <とはんぶんいわさず> ☆[おのへ]あいさくちはちょうほうなものざんすねえ わたしらがようなじょろうだといってそうおなぶんなんすことはおっせん (九丁ノウ) <とすこしつんとすれば> ☆[いだはち]またそんなことをいってわたしにきをもませなさるよ じつはこうだわな <としっかりだきしめる> ☆[おのへ]おやほんにかえ うれしゅうざんすよ <とまくらのしたへてをぐいといれいだはちがてをわきのしたへしかせくちとくちはだとはだ> △☆<かしのうたそそりぶし> ☆しょかいにほれてとくおびのうむすばぬえんとすえはなるう △<そとにまごつくががいわく> ☆いめえましいやつらだ (十丁ノオ) このあついにどこからぞへえってさしてやりてえ △<あさくさのかね> ぼおん △<あさくさのかが> ぶうん ○いかなるやこのけいちゅうかやはくもとなりてりょうふうにうごきひよくござはあめとなりてなみだにぬるるふさんのゆめここにありや ああ <これさなにをいわっしゃる> ○<これよりおのへいだはちたがいにおもいおもわれいだはちはかりたくじゅうかよいつづけちょうへはいってもますますかよいくるわのこんたんこのあいだのはなしさまざまあれどかみかずのおおくならんことをいといてここにはぶく (十丁ノウ) ○<さいぎょうもまだみぬはなのくるわかなとうそじゃごんせぬこじんのほっくを> ほんたく けいせいにまことないとはけいせいにうそいうきゃくやいいはじめけんとさんばせんせいはよまれけいせいにまことないとはたがいうた めぐろにのこせしひよくづかとじめぐりきちこうはうわはれし さればみそかももなかのつきはいでたまごやきのしかくもあり じょろうのまじめとおきゃくのしかくあればみそかもよしわらばかり つきよがらすはかわいとなき (十一丁ノオ) まだはようおつさあねとあけのかねさへうそをつきひのねずのばん ひまゆくげいしゃのこまげたならでながいとおもうふかりたくもいつしかもとのくるわとなるかりたくでしゃっきんをしょってひっこんだこあればかりたくでさどからでさっしゃるきゃくじんをつかまえてひっこんだこあり (十一丁ノウ) なじみがねにきをもむむすこあればはつがねにはずかしがるしんぞうあり つきがねにきをつけるおいらんあればほうばいにきがねをするつきだしあり とかくかねのうきよかねがほしいなあはうめがえばかりにあらず たがいにあいたいよびたいのかずかさなりてこいのやまよりしゃくきんのやまたかくなり (十二丁ノオ) こすにこされぬものびせっくたがいにみのつまりとなりしいだはちはきのうからのいつづけ たいこげいしゃのさわぎもいまのみにはおもしろからねどやんやといってざしきもひけびょうぶのうちしずかなり <いだはちはてをくんでものいわずおのへはひざにもたれてなみだぐんでいる うわぞうりのおとばたばたと> ☆[ほうばいじょろう]いってもようざんすかえ <なきがおをかくして> ☆[おのへ]あいよくなくってちっとおはいりな ☆[ほうばいじょろう]ごめんなんし (十二丁ノウ) <とはいる> ☆[ほうばいじょろう]いださんよくおながしだね ☆[いだはち]こうのろけてもすえのどうなるもんだねえ ☆[ほうばいじょろう]すえはいわずとたがいのむねにさ ほんにぬしたちのみのうえにせめてみっかでもなってみとうおすよ <とみみにはさんだきんかんのほおずきをとってふきながらおのへがかおを見て> ☆[ほうばいじょろう]おやぬしゃぁいっそかおのいろがわるうおっすよ ☆[おのへ]けさからずつうがしてなりいせんからさっきこのうらさんにかみをくずしてかいてもらいんした (十三丁ノオ) <とめにうるむなみだをかおをそむけてまぎらしたばこすいつけてふたくちのみまたすいつけてやる じょろういただいてひとくちのむ はたく> ☆[ほうばいじょろう]わたしゃぁこんやはまことにいやなきゃくじんざんすよ ☆[おのへ]こないだのうらかえ ☆[ほうばいじょろう]いんえはつでおやしきさ こんやあからだがわりいといいんしてもしょうちしめえ いちどはじゆうにならざあなりんすめえ つらいことだのう <とがくむくのしつけをかんざしでひきぬく> ○<しんぞうふたりさんのいとがいたじめのじゅんばんにつかまったようなこえをだしてかけきたりやにわにしょうじをあけそうにする> (十三丁ノウ) ☆[ほうばいじょろう]なんだよそうぞうしい ☆[しんぞう] <ためいきをつきながら> あのねひさやまさんのきゃくじんがへびをふところへいれてきんしておっかけんすものを <とまたおもてにかいのほうへにげてゆく これはきゃくじんすわちょうでかってきしへびなり> ○<ひきちがえてまたしんぞう> ☆もしおいらんえこさがきのうのへんじをもってきんしたよ <このこさんはしんぞうかむろやりてげいしゃなどかわゆがりてくわしあるいはさけなどやるなり またふみなどたのむじょろうもあり くるわじゅうごぞんじのこころよしなり> ☆[ほうばいじょろう]さっきとっておいたいまさかをやってくんな かみにつつんでようだんすのうえにあるよ (十四丁ノオ) ☆[しんぞう]あい <とゆく> ☆[ほうばいじょろう]おやようだんすのうえじゃぁなかった もしえたんとおたのしみなんし ☆[いだはち]まあいいじゃぁねえかえ ☆[ほうばいじょろう]でもまたおじゃまをしては ☆[おのへ]おやきついこったよゆうさんならば ☆[ほうばいじょろう]いえいえわたしらはぬしたちのようにしのうのいきようのというひとはござりいせん またのちほど <とたってゆく うらめしそうなかおをして> ☆[おのへ]ひとのこころもしらずいいきだよ <とじれてしごきのはしをくいさく> (十四丁ノウ) ☆[いだはち]またかんしゃくか ひさしいものだ ☆[おのへ]ひさしいものといえばぬしゃぁどうしてもおかみさんをもたっしゃるきかえ ☆[いだはち]またぐちをいうよ こないだもいったとおりたとえうちをおいだされてもてめえとそいとげるといったじゃぁねえか したがおふくろがおれがことばかりおもっていてこのごろはろくろくおまんまもあがらねえ (十五丁ノオ) ☆[おのへ]さぞおっかさんがわたしをうらんでいさっしゃろうねえ わたしがなけりゃぁごくろうもしなんすめえに おもえばおもえばもったいないとしってもおもいきられねえというのはなんというあくえんざいましょう あのおとといのおくすりはとどきんしたかえ あれはりょうにひっこんでいるはなやまさんがなおりいしたおくすりでござりいす (十五丁ノウ) なにやまいにでもようざいますとさ もしえきんすけがなにかねだったじゃぁごさりいせんかえ あんまりあつかましいおやじだよ そしてあそこのかみさんはぬしがいかしったらおかしなことをいいんしたじゃぁござりいせんか <いだはちはしじゅううつむいてものいわず> ☆[おのへ]ぬしゃぁひとにばかりくちをきかせてなぜだまっていなんすえ ええ (十六丁ノオ) <とくびをふるわしひざへくいつく> [いだはち]☆ああいてえてめえのしんじつはわすれやあしねえ ☆[おのへ]かのものはまにあいんしたかえ ☆[いだはち]あれかあれはごりょうにぶになったからかのはなしのをやつとおやじやよはちがめをぬすんでくりまわしおふくろのきものにしのぎをたしてようようかたをつけた ☆[おのへ]そしてちゃやのほうはちっともおすませなんしたかえ (十六丁ノウ) ☆[いだはち]ちゃやにしんるいはさしおいてきんじょにぎりのわるいのがひゃくからもあろうがおれがいまのみでひゃくどころかさんもんのくめんもできるものか このごろはおやじのかおつきがわるくなったももっともだ てめえにもそんなざまをさせいいきゃくをはなれさしたもみんなおれがわるいからここのにかいもきょうぎりだとおもえばてめえにももうあわれめえ (十七丁ノオ) <といいさしてうつむく なみだがぽちりとじょろうのかおへかかる> ☆[おのへ]もしえ <とかおをのぞいてみてともになみだぐみひざにかおをあてしばらくことばなし ややありて> [おのへ]ぬしにいおういおうとおもっていんしたが <とつをのみこみ> ☆あのげんのすかんぴんがぜひぜひわたしをねびきするとさ にさんちのうちそうだんがきまりいす しょせんわたしはぬしにゃぁそわれんすめえ (十七丁ノウ) これまでのえんとあきらめておりんす <となみだでかおへまつわりしみだれげをさゆうへみすがみではらいくちびるでいちまいとっててのひらにまるめかんでたてかけたことへぶっつける> ○<しょうじのそとより> ☆おいらんえおくにどんがちょっと ☆[おのへ]いまにいくわな <といだはちがかおをみて> [おのへ]いわずとしれたぬしのことざんしょう もうこうなっちゃぁやりてしでもねえしょでもすこしもこわいことはおっせん ぬしのおそばにいられねえくらいならわたしゃぁいきているきはありいせん (十八丁ノオ) <とふとんのしたからかみにつつんだかみそりをだす> ☆[いだはち]はててめえそういうきか てめえにいいだしにくいからかくしていたがじつはおれもこうだ <とおなじくふとんのしたからみじかいわきざしをだす> ☆[おのへ]<びっくりして>おやこうまたこころのあうもいずもとやらのかみさんにみはなされんしたろう ぬしとしねばかのげんへもつらあてにもなりんすしおもいのこすことはござりいせん したがぬしのおとっさんやおっかさんになんといいわけがありんしょう (十八丁ノウ) ☆[いだはち]そりゃぁおなじこと てめえのおやたちもおれをうらむだろう そんなことをいまさらいってどうなるものか りょうしんへかきおきをしねえか ☆[おのへ]そんなことをしていんすとまたじゃまがはいりんしてしにおくれんす (十九丁ノオ) ☆[いだはち]それもそうか <とひとこしをひきぬきしがぶるぶるふるえておもわずてをはなす> ☆[おのへ]きのよわい はやくころしておくんなんし わたしゃぁかくごうしていんすよ <とはげまされてまたとりなおす> ○<そとよりききなれぬこえにて> ☆いってもよしかな <おのへはあせるいだはちはおもわずぬきみをかくす しょうじをさらりとあけていふうりんりんたるいずこのつうじんつかつかとはいりてすわる> ☆ときにおのさんいださんぜんざいぜんざいといいてえとこだね まずわたしがながだんぎをするからおやじのこごとおふくろのいけんだとおもってきいてくんな (十九丁ノウ) まだおめえがたにゃぁおちかづきじゃぁねえがわたしはねぜんぺんしんじゅうはってをかいたさんとうきょうでんだよ きょねんこのしゃばのくがいをのがれてめいどというとこへくらげえしたがおめえがたにゃぁのがれねえなかだからこんやじぞうのぼうさんとえんまのおやかたとさんにんいちざできたのもおおかたこういうことだろうとおもってのことよ (二十丁ノオ) ひととおりはなさねえけりゃぁわからねえがおめえたちはふしぎなえんだぜ まづいださんのおとっさんというはしじゅうはってしんのてのいのさんまたおっかさんというのはしんのてのさきおかさん おめえがたのめえじゃぁちっといいにくいがあいほれのちくるいかんたまごのしかくというなかわっちゃぁあとづきからつきのものをみんせんからいっそくろうだよという (二十丁ノウ) あくるとしごしんぞさんになってうんだがこのいださん おめえがことしにじゅうしちになるからにじゅうはちねんむかしだ またおのさんのおとっさんはしじゅうはってしっぽりしたてのえいさん(二十一丁ノオ) じゅうろくのつきだしえどはなさんにとうとううちをらくじょうさせえどはなさんをみうけしてあさくさへんにわびずまいのうちもうけたがこのおのえさん それからえいさんがわずらってよくあるやつだがおやのためにみをしずめてなじみかさねたがいださん ふたりのおっかさんはじょろうしゅうふたりのおとっさんはおっかさんたちのいろきゃくさ (二十一丁ノウ) しょうべえをしたものにはめずらしくできたこどもはいまこういうなか なんとふしぎなえんじゃぁねえかの またおのさんにいやがられるげんさんというおやしきはしじゅうはってみぬかれたてのかちゅうものおやしきげんごというひとのむすこげんざぶろうというひとさ かのげんごどのはにょうぼうをもってからまじめになりしょせんじょろうはかうものでなしとさとってただにょうぼうだいじをしんこうしてさずかったがいまのげんさん (二十二丁ノオ) かんせいにねんよりことしにいたっておやげんごごじゅういちになりやす またしじゅうはってやすいてのりふうはたでくうむしもすきずきでかのくらのとをひきとったがさんねんめにころりとやられだんだんつまらなくなってとうとうここのわかいものとなりりすけということしこれもごじゅういちだよ (二十二丁ノウ) なんとあのじぶんからいくりゅうこうすぎたろう このほんのさくしゃばかさんじんなざあまだどこにいたかしれやあしねえ どへいあめがじぶんのひっこみかむろもくちをむぐむぐするおばあさんとなっているしどうでありますときいろなこえをしたつうじんもまげをゆやへおとしてくるろうじんとなりやした (二十三丁ノオ) おびやきもののいろごともさめるにはやくあきるにやすくあたまのものをこせえてやるとかわるというにちげえなくくしかんざしのなりかたちすたればはやりはやればかわりみじかいはおりがながくなりながいはおりがみじかくなりけんぼうごもんをきたひとはむすこのなりをやかましくいうようになりやした (二十三丁ノウ) それだからすけだかやをひいきなおばあさんがばいこうびいきのまごむすめといじりあいやす とぼけたばあさんからねぼけたか せんせいのはやるじぶんをおもえばむかしだといったらそりゃあたよあたぼうというだろうがこれはしたり はなしにのりがきてとんだことまでいいだした (二十四丁ノオ) このしんじゅうというやつがやぼのうえなしといっちゃぁだれもしんじゅうするものはねえがありゃぁわかぎのいたりでそのときのへんさ 『みるひといわくあたぼうわるしばばあをいうなということをしらぬかばかさくしゃめ』 それだからみなせえ どのしんじゅうでもしなねえでもいいのがわるいきをだしやす (二十四丁ノウ) またあっちへいってふうふになられようとおもうがこれもあてのないことよ あみださんやしゃかさんのこそでぬうたりちんしごととおさめしんしちにゃぁいうがしばいのようにゃぁいきやせん よくあるやつだがはんざをわけてまっているぞえ (二十五丁ノオ) あのぶらぶらしたはすのはのうえへどうしてふたりのられるものか くほんれんだいよりごしきのはなふりといっちゃぁたいそうだがひとかどのはなふるほどおもしろくもなし さんぞんぶつらいこうもふたりかむろをつれたおいらんのどうちゅうほどはおちがきやせん みみょうのおんがくもふたあがりいたこほどにゃぁさえず (二十五丁ノウ) ひゃくみのおんじきもあさがえりのちゃづけほどにゃぁくえやせん いくらいってもおなじこと いとしいもかわいいもしんでしまっちゃぁはなしはねえからしぬというしゃれはよしなせえ はてどっちのおやたちもむかしのわけしりやぼはしねえ きをながくもちなせえ わたしもあっちへいっておおきにこころぼそかったがあさくさのおにたけたけのつかのとうしというものがこのごろあっちへきてまたはなせやす (二十六丁ノオ) <おにたけとうしきょねんこじんとなれり> ああおおきにながばなしをした そんならいださんおのさんそのつもりでしゃばのごひいきおこさまがたおじょちゅうさまがたへよろしく ほんじょのおやかたりゅうていのしゅじんにもよくいってくんな (二十六丁ノウ) おさらばよ <とゆくとおもえばこれふたりがそいねのゆめにしてとなりざしきをそうじするおとにめをさまし> ☆[いだはち]こうおつなゆめをみたよ ☆[おのへ]わたしもへんなゆめをみんした <とたがいにゆめあわせをして> ☆[いだはち]そんならそちがおやたちは ☆[おのへ]あいしじゅうはってのしつぽりしたてなかにできたはわたしざんす してまたぬしのおやたちも ☆[いだはち]しじゅうはってのおくのしんのて ☆[おのへ]またかのげんは ☆[いだはち]みぬかれたて (二十七丁ノオ) ☆[おのへ]わかいしゅりすけはやすいてと ☆[いだはち]あつまるところは ☆[おのへ]ひとつところ ☆[いだはち]おもえばおもえばこのほんのしじゅう ☆はってふしぎなえんであったなあ △とこのまのかけものかぜで ○かたり 〔さくしゃいわく〕 いよごりょうにんさまありがたいともうしやす <しじゅうはってのちのまき> きょうでんこじだんび (二七丁ノウ) 広告 (二十八丁ノオ) 広告 (二十八丁ノウ) --------------- @1 読み方不明。