粋好伝夢枕 ------------------------ 粋好伝夢枕 天 粋好伝夢枕題言 兼好法師にはあらねともつれ/\なるまゝ独{ヒト}りともし灯の下につくねんと髭{ヒゲ}を見しり見ぬ世今の世の事をむしやくしやと思ひつゝけしに (一丁ノオ) フト彼{カノ}書に玉の盃底{ソコ}なき如しと笑ひ給ひしに気つき我も今より粋の道を学{マナ}ばんと思ひ立しかと 悲{カナシイ}哉元より知レた卑我{ヒガ}左衛門 とんな事か粋じややら木根{ヤボ}じややら闇雲{ヤミクモ}なれは (一丁ノウ) 日比信{コロシン}する摩利支天{マリシテン}ではなふてマイス天を祈念{キネン}しつゝツイとろ/\と目睡中夢{マトロムウチ} 夢ともなく現{ウツヽ}ともなく陳粉漢{チンフンカン}の老翁忽然{コツセン}と顕{アラハ}れ手に奇{アヤシ}の一巻を携示{タツサヘシメ}して曰善哉/\ (二丁ノオ) 汝野暮{ナンジヤボ}を恥{ハヂ}て粋の道ニ入らんとす 神明其志を納受し給ひ我を使{チヨク}として秘密{ヒミツ}の巻を与{アト}ふ 汝謹而此青表紙を熟{トツクリ}と覗{ノゾキ}置は譬{タトヘ}四匁の線香{センカウ}を煙{タキ}八分の蝋燭{ラウソク}を点し九尾金毛{キウビキンモ}ニ囲繞{トリカコマ}るゝ共うつゝ三太郎と成り (二丁ノウ) 嗟{サ}/\与嗟{ヨササ}/\の嗟{サ}と嫌{キラ}はるゝ事なく天晴{アツハレ}粋の本釜となり ウンテレカンの嚏{クサ}メするのてれ幕なし 努{ユメ}/\怠{ヲコタ}ル事勿{ナカ}レ (三丁ノオ) 我は是異見{イケン}曾我{ソガ}に説{トキ}たる処の実唐土{ケニモロコシ}の東坡居士支那{トウバコシカラ}にも粋の有もの也 トかき消ス如くウスどろ/\にて失{ウセ}給ふ 茫然{ボウゼン}として奇異{キイ}の思ひをなし傍{カタワラ}を見れは一巻の書有 (三丁ノウ) 恭{ウヤ}/\しく披{ヒラ}き閲{ミ}れは妙なる哉奇成哉 臥竜{コウメイ}も知らぬ女郎の謀計楠公{バウケイクスノキ}も及はぬ芸狐{ゲイコ}の機密{カラクリ} 其外青楼娼肆{ヨビヤヲキヤ}の楽家穴蟻{カクヤアナアリ}の這{ハ}ふのも陰虱{ツブシ}のいる迄 掌{タナコヽロ}を指{サス}が如く一ツとして洩{モラ}らす事なし (四丁ノオ) アヽ我為の六韜三略{リクトウサンリヤク} 是さへ有は没{ハマ}ル事無{な}ひ 粋か川へ落る事なひ女郎花{ヲミナメシ}有かたし/\と 戴{イタヽク}所を背{ウシロ}から奪{トラレヌ}ぬ先{サキ}に是{コヽ}に冩{ウツシ}置ぬ 見る人嘲弄{クサ}して引裂{サキ}き二階屑{カイクズ}と一所にする事おゆるしジヤヘト爾云 (四丁ノウ) 自序 もろこしの韓信{かんしん}は股{また}を潜{くゝり}て漢をひらき今時の娼子{げいこ}は股{また}を開て金銀{かね}をとらん 竹田のからくりは箱{はこ}を開{ひらい}て人形{にんきやう}を出す (五丁ノオ) 娼子{けいこ}のからくりは昨日{きのふ}着{き}た衿掛{ゑりかけ}もけふは七ツ屋の蔵{くら}を見せん 扨お客{きやく}のからくりを開{ひら}き見れは真節{しんせつ}を元{もと}として坐古寐{さこね}チヨイ幕{まく}のみを願{ねがふ}や 嗚呼{あゝ}怖{をそる}べし 実{げ}にクワイ/\の世{よ}の中にやあらん 穴賢{あなかしこ}/\ 文政十二のとし 市中庵 華月 (六丁ノオ) 挿絵 (六丁ノウ) 爰{こゝ}に武庫{むこ}の浦湊{うらみなと}川の辺{ほと}りは其むかし楠公{くすのきかふ}の戦{たゝか}ひ給し場{ば}にそありしに時代{したい}換{かわ}れば品かわるとやらて今や男女戦{たゝかい}の花里{さと}にやなりぬ 我つら/\此花里{さと}の軍法{ぐんはふ}を考所{かんごうるところ}其後{そのゝち}聞伝{きゝつたへ}しは茶立{たて}女と唱{とな}へ軍女を集{あつめ}けるか中{なか}にとも娼{げい}子或{あるい}は女郎なとゝありける (七丁ノオ) 此女郎と言ふは客{きやく}毎{ごと}に情を商{あきの}ふこと是{これ}我{わか}か業{きやう}とや言{い}わん また娼子{げいこ}と唱{となへ}しは酌{しやく}人の替{かわ}りとせしものにて坐敷{ざしき}淋{さび}しくなれは三味線{みせん}太鼓{たいこ}抔{など}にて其場{ば}に陽氣{ようき}をふくまし坐{ざ}を面白{おもしろ}おかしくたもつが是{これ}娼子{けいこ}の業{ぎやう}なり (七丁ノウ) 併{しか}し我客{わがきやく}のふては身捌{さばき}に追{おは}るゝなり 故に我便{わがたよ}りとせしはいかにも深実{しんじつ}にして一器量{きりやう}あるべき人柄{から}を見込{みこみ}て随分{ついぶん}したがふべし (八丁ノオ) さすれは外方よりどのよふに金銀{かね}にて頬張{つらはろ}ふか 業平{なりひら}のよふな男か粋好{すいこう}の口車に乗{の}りに来{こ}ふか 竜{りやう}に翅{つばさ}の勢{いきおひ}して客を振事{ふること}妓{げい}子の意氣地{いきぢ}とやいわん 扨今時の娼{げい}子は三弦{み}も弾{ひ}かず 酒も呑{の}ます (八丁ノウ) 坐敷{ざしき}は淋{さび}しふしてたゞあの客には尻眼{しりめ}を遣{つか}ひ こちらの客には様子{よふす}を仕{し}たり ちよど田舎{いなか}ものが店附{みせつき}買{かい}に来{き}たよふな顔{かほ}して アノ客とろふか此客とろふかと一向{いつこう}見苦{みくるし}きさまなり たま/\に三弦{み}弾{ひけ}ば其歌{うた}にわしのすきなは此坐{ざ}にあれと人眼{め}有ゆへはつかしいなぞと我方よりいや身をつけ (九丁ノオ) ほんに坐頭{さとう}が丸太橋{まるたはし}わたるよふニどふやらすると転{ころ}びそふでちつとつゞないが其かわりに節季{せつき}がつゝなふないといふいれ合{あわせ}も有れど 是{これ}では芸子{げいこ}が女郎になりそふな (九丁ノウ) また此比{ごろ}横{よこ}町には女郎が芸子になつたもあり 誠{まこと}に三千世界{せかい}遣{や}り繰{く}り狂言{きやうげん}のよふにおもわるゝが 扨{さて}古{ふる}ふ勤{つとめ}ての娼子さんの言ゝしやを聞ば 今は結句{けつく}若{わか}ひお子{こ}がよふ転{ころ}んでしやがなるほど思案{しあん}仕{し}て見れは矢{や}はり其方が徳{とく}しやと言ふ事は第{たい}一華{はな}か売{うれ}るしさすれば親方{おやかた}はよろこぶ (十丁ノオ) ツイ弍歩{にぶ}ツヽ貰{もろう}ても五人あれは弐両弐歩有 ほんにおふた子に教{おし}へられて我{わた}しも当世流{とうせいりう}の芸子になりましたがマア此節季はどんなものじやとおもひじや 八木{やぎ}さんとこでひんつけ尺長{たけなが} (十丁ノウ) それに嵐の店て鱣{うな}ぎの頭{あたま}大吉ではゆまきの裏{うら}に仕{し}た紅木綿代{べにもめんたい} また千里では巻鮓{まきすし}長{ながい}ひなり 四五へんもたべ山廣{ひろ}にうどんとだしから八百宗には芋{いも}のおわし おはなさんとこへも遣{つか}ひの賃{ちん}払{はら}ふたところが跡{あと}に壱朱が三ツと明石札{あかしふだ}が拾匁斗りとあるゆへこれでお雛{ひな}さんを買ふてどふはづんだとおもふてじや (十一丁ノオ) たつた一合{ごう}の白酒{しろさけ}を部屋中{へやじう}がお雛さんの盃{さかつ}きて給{た}べて居{い}た処へうちわやのおきちさんが来{き}てじや有て きのどくな千倉{ちくら}で鉢組{はちぐみ}をとつてじやあつたゆへ (十一丁ノウ) それからまた酒をかいに遣{や}るやら鮓{すし}とりに遣るやら長吉{ながきち}でにしん昆布巻{こぶまき}とるやらあちらからは豆腐{とふ}買やらそつと雪{ゆき}ひらを持{もつ}て来{く}るやらそろ/\替{か}へ三味線出{いだ}してその名の当歌{あてうた}を弾{ひい}てうけたりうけさしたり (十二丁ノオ) さしつ押へつ仕{し}て居ル其中へおもんさんがお出て一寸{ちよと}耳{みゝ}かしてと言ふてじやゆへ参{さん}じた所{ところ}か袂{たもと}から小判{ばん}そつと出して 是は路次{ろじ}の口からじや と壱匁来たは扨は此間坐古寐{ざこね}の客{きやく}に喰{く}ひ逃仕{にけし}られしとおもひ鼻挟{はなはさん}て居たを此お客心有て銀子{かね}くれてゝ有たは真{ま}事に蒔{まか}ぬ種{たね}は生{は}へぬとは此事なりと笑になつて (十二丁ノウ) 夫より口合の狂歌{きやうか}を こけりやこそいとゝ娼子の目出たけれ と讀{よみ}て居るを折節{おりふし}門{かど}口に聞て居{い}る娼子{げいこ}我事{わがこと}とおもひて此事聞きすてがたしと大きニ腹{はら}を立{た}て どや/\と内へ這{は}入 (十三丁ノオ) 姉{あね}さん一ト口に言{ふ}ておくれな そんな芸子とは違{ちがい}ます とて既{すで}ニ喧嘩{けんくわ}ニならんとせしをお紋{もん}さんやおきちさんの挨拶{あいさつ}にてどふやらこふやら此場{ば}はむりやりに帰{かへ}したる所へ (十三丁ノウ) おちよぼどなたぞくじ引てお一人リおこしらへなされといへば おゆるしじやナア おゝかたこんな客は時ぐらひ買{か}ふて三味せんは弾{ひき}づめにさしてろく/\に歌もしらずニはしくれ聞て来{き}ては邯{かん}たんひけのらうさいが聞{きゝ}たいのと仙人{せんにん}がり (十四丁ノオ) たま/\に線香{せんこふ}か詰{つ}メになれば深切{しんせつ}らしい顔{かお}して内證{ないしやう}で聞{きい}てくれいのなんのといふものじや と口/\に悪{わる}くちいふて出ゆけは 次{つぎ}に名指{なざし}の呼{よび}出しを 茶屋を何所{どこ}じや とたずぬれは 好{すき}なお茶屋 と聞{き}くよりも 鼠啼{ねすみなき}きして飛て行{ゆ}く (十四丁ノウ) 石に口壁{かべ}に耳{みゝ}ある世{よ}の中に唯{たゞ}慎{つゝ}しむへきは陰{かげ}口の悪{あ}しき事には寸善{すんせん}しやくま 一人{ひとり}が聞は二人となり既{すで}に喧嘩{けんくわ}となるべき所をお吉さんおもんさんの挨拶{あいさつ}にてその日は済{すま}せしが (十五丁ノオ) 扨内へ帰り此こと親{おや}方へ噺{はな}せしも 親方もどちらひいても部屋{へや}中の不和{ふわ}なりと此事チト取揚{とりあけ}ぬ様子{ようす}と見へたり それより咎{とがめ}し娼子衆{げいこしう}寄合{よりやい}はや/\行司宅{きやうしたく}へ願あり (十五丁ノウ) とつめかくれは行司 是は娼子衆願の儀とは何事にて有けるや とたづねければ 別{べつ}の義{き}にてはなく候 桃{もゝ}の揚{あげ}とてお茶屋方へ御礼に歩行{あるき}候所 フトそしりはなしを聞候へは 今時は若手{わかて}がよふ転{こけ}るの坐古寐{ざこね}でさしたのと内からはなし 此{この}事若{もし}町衆{まちしう}へ聞{き}こへなば私{わたくし}とてもおなしよふニ相なり候へば余{あま}り口惜{くちおしく}そんじ候 (十六丁ノオ) 此分{わけ}きつと御正{たゝ}し下さるべし と聞て行司衆申されけるは 願の義一チ/\承知{しやうち}いたしたが先此方より聞たゞし追而{おつて}沙汰{さた}いたすべし と有て (十六丁ノウ) 其日は銘々{めい/\}家{や}かた/\へ帰りける跡{あと}にて段/\聞合し候へはなか/\妓{女中}より芸{けい}子の客多し 是では余り嶋{しま}の見だりと行司大キニ腹立{はらたち}いたし早々千秋庵{せんしうあん}へ芸子惣寄{そふより}と遣{つかい}ひのもの触{ふれ}さし候へは部屋{へや}/\の小娼{こども}ら何事にやあらんとたゝあんずるもあれば勇{いさむ}も有 (十七丁ノオ) おもひがけなき見拵{こしら}へ かね附見しまひ髪じや ソレよねさんあんどやひいさん一寸{ちよと}よんできての ぞつきんがかやつた水おくれと うろたへる其中ニ風呂{ふろ}あがりの降{ふ}リ開{おめこ}しやう/\寒{さむ}さもいとわず自{じ}まへの衣裳{いしやう}をひろげたて襟{ゑり}を懸{かけ}るかはづしたか (十七丁ノウ) ホンニ夕部{ゆふべ}の無心{むしん}の礼状とゝけわすれた揚{よび}屋のことわり 是も書たしこちらも仕{し}たし 上を下へと三重なりにける もはや午時過{ひるすぎ}にもなりぬれば行司衆はしめあまたの娼子千秋庵へとこゝろざす (十八丁ノオ) 挿絵 (十八丁ノウ) 挿絵 (十九丁ノオ) 此千秋庵と言ふは元と吉野の少々忠五{たゝいつ}と申人の別業{しもやしき}にて有ける所{ところ}也 先やかたは二階{にかい}作りにして裏{うら}は湊川の松風琴の音を調{しら}べん 東は大海ニして大船の帆柱{ほはしら}家の棟{むね}に見へたり (十九丁ノウ) 西に当{あた}りて黒雲のことくまい上りたり コハふ思議{しぎ}なりと立より見ればたゝ土{つち}ばへの煙{けむ}りほう/\たり 前ニ流るゝ水音{おと}の耳{みゝ}へも入らぬ流{なかれ}の身のうへ 垣根{かきね}に咲し山吹の心も解{とけ}ぬ有頂天{うちやうてん} 自{じ}まへ衣裳{いしやう}の底{そこ}たゝき天狗{ぐ}の鼻{はな}やおた福{ふく}の鼻{はな}もませりてつめかくる早クワラ/\と下駄{た}の音 (二十丁ノオ) 未{ま}だしたなでの愛{あい}さかり 熨斗目{のしめ}の衣裳の着{き}てこなしは末{すへ}たのもしく見へにけり 続{つゝい}てきたるその中に人の眼に付さしものはチトぼつてりの笑顔{ゑかほ}よし 是にまけじと後よりかんとふ縞{しま}の襟{ゑり}かけにさす笄{かんざし}やかうがいや櫛{くし}は鼈甲{べつかう}に六歌仙{ろくかせん} (二十丁ノウ) アレ/\そこへ賑{にぎ}わしく顔は市山声{こへ}迄{まで}もしほから声の其くせに先正月の書{かき}あげは一と定{さだ}まる手からもの なんぼひくても高見ゆる鼻を延{のば}して入にけり 是につゝきて大勢の中に内着{うちぎ}て漉髪{すきかみ}の何にもさゝずすつぱりとしやう事なしの粋顔て心の内の淋{さび}しさも千秋庵にそ入にけり (二十一丁ノオ) 最早{もはや}娼子衆残{のこ}らす相揃{そろい}候 と年行司へ申候へは行司申しけるは みな/\別{べつ}の儀{ぎ}にてはなく候 さる芸子より餘{あま}りみだらの事有故{ゆへ}せいりやくのうへ呵{しかり}くれよと願出たり (二十一丁ノウ) それより段々内意{い}を以{もつ}て省略{せいりやく}いたす所中にもおなし部屋{へや}の客を取{とり}或{あるひ}は我方より付文したり または弐調鞁{てふつゝみ}の口でさしたの座古寐{さこね}の口餅搗{もちつき}の口なとゝ嶋中のひやうばん (二十二丁ノオ) それに腹{はら}の子をみつにした娼妓{こども}も有といふ事は皆{みな}空{そら}にもせよ マア芸子たるべきものが客の数{かず}多{おゝく}てはいかんでないか かりそめにも七八人の客{きやく}取モシとやなど煩{わずろ}ふたらどしやうと思ふぞや 皆{みな}我身大事親方大事急度{きつと}たしなむべし と呵{しかつ}てそれより願出し娼子{ことも}たつぬれど誰{たれ}か願たやら一向分{わか}らす (二十二丁ノウ) あまり/\不思議ゆへ生{なま}木屋にて伺{うかゝ}ひもらへばこれは売{うれ}ぬ芸子衆のへんねしの魂{たましい}が寄集{よりあつめ}たるにてあらんと言ふ 此事能々考{かんかへ}て見れは前々と違ふて今の芸子衆はどれも是もうつくしきゆへ惚{ほれて}人か多{おゝい}のであろふ (二十三丁ノオ) と実{ま事}にかんしん仕て居たと思ふうち 短{みじ}か夜{よ}の遠寺の鐘{かね}ゴン/\と耳{みゝ}へ幽{かすか}に眼{め}を開{ひら}き見れは烏{からす}カア/\春雨{はるさめ}の一夜を夢{ゆめ}で明しけりであつたか テモマア不{ふ}しぎと枕{まくら}を見れはこんたん夢{ゆめ}の枕とあり (二十三丁ノウ) 何にもせよと枕の当{あて}開{ひらい}て見れば コハいかに又も芸子や茶屋の穴{あな}客までまくりあげ書{かき}つくしたる反古紙{ほふごかみ}集{あつめ}て見れば都合{つごう}一巻{いちくわん}手をぬらさずと後{のち}のまき (二十四丁ノオ) くわしきは見て志{し}り給へ 粋好伝夢枕天之終 (二十四丁ノウ) ---------------------------------------------- 《注》 ・丁番号はみえなかったので、洒落本大成第二十八巻にみえる丁番号に拠った。 ・「芸」「学」「広」の字体は、実際は「藝」「學」「廣」と旧字体になっている(洒落本大成では「芸」「学」「広」)。 ・二丁ノウ「蝋」は、実際は「虫×(鑞の旁)」。