辰巳之園安永二年再板本解釈データ 凡例 ・漢文の返り点は「【 】」でくくって示した。 ・漢文中の送り仮名は「《 》」でくくって示した。 ・押印部分についてはその所在を「〔 〕」でくくって示した。 ・半濁音を示す右肩の小黒丸記号は「●」で示した。    例) ひ● → 「ひ」の半濁音 ・後人による書き込みは「〔〔 〕〕」でくくって示した。 ・後人による塗りつぶし部分は「■ ■」でくくって示した。 ・音を後に長く伸ばすことを示す「引」は、本文との差別化を図るため「━」で表した。 ------------------------------------------------------------------------------- 参人述【レ】之 明和七庚寅林鐘撰之 櫓閑街 紫楼 安永二癸巳年    再 板 〔印〕〔印〕 (二オ)            自弓奄 大坂枕に楽の夢ハ     祇桑〔印〕 盧生か五拾年の 夢とやいわむ 邯鄲と 同し枕や 花の夢 (二ウ) 辰巳之園敘 京都辰巳鹿社住江都辰巳有【二】遊楽【一】夫者宇治山是者深川富賀岡之邊《二》遊情婦之郷也勤 (一オ) 悉々書集吉原《二》北国之急有《レハ》学《テ》【レ】之《ヲ》辰巳之園題《シテ》書肆何某住【レ】@北国之美君《ノ》噂《モ》不【レ】顧如【二】井之内蛙【一】吉原雀《ノ》閉【レ】雌深川 (一ウ) じじょ とみがおかはちまんぐうは。かまくらつるがおかをうつ@たてまつり。 きせんろうにゃくのしんじんひびにいよまししきおりおりのにぎやかに。 にけんぢゃややそのほか。ようじみせよしづぢゃやとうの。びふはこうふんをよそおい。 しなかたちのうつくしきをみればたのしみはほかにあらじとおぼゆる。 さるによりこのとちにたのしむゆうみんは。ほっこくのおもしろきをしらず びこくの。よしわらにくらぶればきゅうぎゅうがいちもうとやいわん。 さりながら。もちずきさけのよいごとを。そねみ。 さけずきはもちのふうみをにくむ よしわらの (三オ) くらいあってしづかなるあそびを。しらずして。このところのしろとらしきむすめふうをよろこび。 またこのとちの。わっさりとしたるたのしみを。よしわらずきはしらずと。ふかがわずきほっこくをにくむ よしわらきゃくはふかがわはげびなりとわろう いかであらそう時は水@けろんとやいわん よしわらにちゅうさんあればなかちょうどばしあり。 うちつけあればやぐらしたつくだじまあり いちぶひっぱりろくすんにはしんちいりふねいしばさんげんどうをたとえて。ここにたのしむ おいらんあればとしまあり かぶろあればこじょろうというあり やりてあればまわしおとこあり たいこもちはげいしゃという あさくさかんのんにくらぶればはちまんだいぼさつをしんずる。 (三ウ) しょうでんはすなわち。えいたいじのじちゅうにあり。 くろすけいなりに。なかちょうのいなりをたとえ。 まつだいなり@くろえちょうのいなりをいわん。 またあさひにょらいには。えいたいじのほんぞんをなぞらえん。 だいうんじまえあればえいたいじもんぜんあり。 おおもんあれば。おおとりいあり。 どてあればえいたいばしあり。 えもんざかには。やぐらしたのひのみをたとえん。 このひのみをみて。えもんをつくる。 さくらのかわりに。やまびらきというあり とうろうのにぎやかあれば。はちまんのまつりあり。 ふなやどをよぶは。むこうのひとをよぶにひとしく。 ひけよつのしずかあれば。よつさ。きなどいうことあり (四オ) よしわらにいきじあれば。このとちにたてひきあり。 ちょうにふるということあればここにてらすということあり。 てるとふるとのことにや。 おいらんごてさんのかえなあれば。ちゃやのにょうぼうを。いっとうにおば@んとよぶ そのほかおはりいんきょさんなどの。つうごんあり ここにりゃくしてまつにことごとくあらわす まこと@おつればおなじたにがわのみずのとく(@) わかしゅずきもよしわらずきもふかがわずきもあそびにかわることはあらじ。 ことわざにいうたちうすもにかいへのぼるのどうりなり。 さりながらここのきずには。はれたるゆうりあらざれば。 (四ウ) ほっこくよりきんずるときは。けいどうという。ひゃくにちあまりのおおもんびあり されど。ちょうよりきんずるともふかがわきゃくよしわらへはゆかず。 いにみずなきときは。かわみずのたすけあり。 すでにじどうは。きくのつゆにちょう@ゅを。たもちしと。ききつたえしなれど。 このそうしは。ふかがわのくわしきをかきあつめたれば。 よしわらのめをしのぶのみ しかしてあなかしこあなかしこ (五オ) はるかぜは。はなのあたりを。よきてふけ。 こころづからやうつろうとみん。 うえのあすかのはなざかり。ひぐらしのふうけい しょしょにぎやかなるおりから。きさらぎなかばのころ かやばちょう。やくしにょらいのさんけいおびただしきくんじゅのなかに げいしゃはちじょうのはおりに。くろつむぎのこそではちじょうかわりしまのしたぎはったんがけのたてよこしまのおび。はながみふくろこぎくみつおりまるがくやがほねおりのりきゅうがた かみはほんだにあらず。ちゃせんぼうにあらず でずいらずの。いきちょんとゆい せったはねずみおのくだりがわ。 ほそみのわきざしをさして。 いせやがしょうぎに。 (五ウ) こしをかける [いせやにょうぼう]しこうさん。きついおみかぎりで。ござりやす [しこう]このあいだはせきえんがはなのかいに そしてやしきにまりがありやして。 さんざんにわめきづめで。ぶらぶら こころ。これではいかんと おやだまがくれのちょんのまと。でかけやした [じょろう]それはきついごしんろう。 きょうもおさえかえ [しこう]ひさしぶりだにちょとまいろうかと。おもいやす [女房]おはようおかえり。なさりやせ <はなしのうちに> かみをおおほんだにゆい。 とびはちじょうのこそでの。すこしよごれたるに。 くろじゅずのそでぐちに。 はばせまのおびに こみじかきだいしょうを。おとしざしにさして やまおかずきんんをよこちょうにかむり。 (六オ) ひよりげたをはき。 おおきなるかおにてきたる [しこう]かみさんみねえ すごいおとこだ [にょうぼう]まだぬしをしりなんせんか じょらいさんというて。てえてえやかましのじゃござりやせん <うらもんのほうより> おくにしゅとみえて。 はないろこそでに。あさぎうらをつけ。 あらいはげたる。きむくのしたぎ くろさやのおびに。ぐんないじまのあわせばおりに。かいきのうらを@け。 そでずきんを。ひらひらとかむり。 しりをしんじんばしょりにして。 きもめんのたびに。わらぞうりをはき だいしょうをかんぬきざしにさして もへぎらしゃの。つかぶくろをかけて。 ようじやのむすめのうつくしきにきをとられ。 (六ウ) からかさのたくさんなるに@きょうをさまし ちょきぶねのはやきにおどろき きんぎょのかずにあきれ。 うえきのあおあおとしたるにめをさまし。 ようきゅうのかっちりちりりんにむねをびくつかせ。 からくりのたいこにきをぬかれて。 おおきなるはなかみぶくろのおちそうなもしらず。 うかうかときかかり じょらいがかおをみると。きょろきょろがおにて。 <そでずきんをとりて> きこうにはいずかたへおこしなさるる [じょらい]こりゃあめずらしい。 ぬしゃあひとりか。 [しんござえもん]いや げせつもはつのしゅっぷゆえほうがくもぞんぜず。 やくしとやらが。きょうはにぎやかじゃと。ふくさいろうのすすめにまかせ (七オ) にぎやかなまちをとおりぬけて。 ようようたずねてまいりました [じょらい]そんなことならつれだってこようものをどうだ。 このにぎやかなことはおろそか [しんござえもん]いやはや。 とっぴょうじもねえ。こんだあむし [じょらい]ぬしはなんと。ふかがわへいくきはなしか [しんござえもん]どこへなりといきますべい [じょらい]そんならもっと。みえをしてこようものを。 い。 しったやつらにあったらずいがくれのずいにげにしよう。 ちっとようもあれどようじながしのちょんのまあそびとでよう ふねにのろうか。 にほんばしへはとおし えどばしのたむらやにしようか。 ただしにしむらのおさよがところでの@うか。 (七ウ) いやいや。のった このあいだやまとやのむすことのったわたしばのなかむらやにしよう。 しんさんこっちへ。 きなこもちきなこもち [しんござえもん]そっちへゆくのかえ <これよりじょらいしんござえもんをつれてよろいのわたしのほうへゆく なかむらやにて> [せんどうじろう]ふねかふねか [じょらい]なんのこった。 ふねかふねかとたにんがましくするな <じろう ついぞこぬきゃくなれなれしくするを じょうずものなればなじみがおに> これはおみちがえもうしました。 おつやどんおちゃをあげねえ [せんどうちょうきち]そんならおれはいってこよう。 いや とうかんぼりはなんばんがでたな [じろう]ななひゃくにじゅういちとでた [ちょうきち]なむさん やくしのもがきをくう。 このごろはななひゃくろっぴゃくが。いいわえ [じろう]きょうはどこへゆく [ちょうきち]くじゅうくりのたびうどのしまいがある [じろう]はやくしまったらめくりをうとう (八オ) [ちょうきち]のちにのちに [じょらい]あいつはどこのふなじるしじゃ [じろう]よこちょうのにしむらにおりやす [じょらい]にしむらのせんどうか。 あいつもみわすれたそうな。 きつくとしよりになったそうな。 <おんなつや ちゃをもってくる> [じょらい]いや うつくしくなった ひさしくみねえが。 とんだちゃがまになりおった。 どうだじいろでもできたか。 <しらぬきゃくゆえきみをわるがりかってへゆけば ひきかわりにょうぼうでる> [にょうぼう]ようおいであそばしました。 まずおあがりあそばしませ じろうどんふねをはやくこしらえさっしゃい <じょらいたばこのみつける にょうぼうひいれへてをあて> おひがござりますかな [じょらい]ありやすありやす [じろう]かみさん。 なかちょうのかめやまへのふみがありやしょう [にょうぼう]いまみてやろう ふねをはやくこしらえな <せんどうじろうひなわばこなどてにもって (八ウ) くわえぎせるにてふなばのほうへゆく> [にょうぼう]これじろうどん。 くわえぎせるはあぶないによ [じろう]あい <のうぼうこのまにかってへゆきてじょうさしをたずぬる じょらいてぬぐいをだしてかおをふく> [じょらい]しんござ かならず。つきなことをいうまいぞ [しんござえもん]なにさ おれらもいなかじゃあ。おじょろかいだ。 こんどもかるいざわであそんだら。 とうげまでおくってなむし。 おかえりにゃあ。かならずよらしゃりませとくれぐれいうて おおもてであった [じょらい]なんのこった ひとがきく。 そんなことはごめんだごめんだ [じろう]ふねができやした [にょうぼう]<かってより> ふねができました おいであそばしますか [じょらい]さあしんさんめえり。やしょう いやかみさん。 じょちゅうににしのみやがところの。ながうたをかいにやって。くんねえ (九オ) [にょうぼう]はい。 つや。 しんろくさんのところへいって。めりやすをかってきや [じょらい]<ふところよりぜにをだし> はやくかってきて。くれ きがしきがし <つやはめりやすかいにゆく にょうぼうさきにたちて じょらいしんござえもんふねへゆく> [じろう]さあめしませ [じょらい]<ふねへのる> しんさん のりやすぞ [しんござえもん]<ちょきははじめてのればようようとりつきとりつき> ああこりゃあ。ぶさいくなもんだ [じょらい]ころびでもせまいぞ。 ひとりころんでぬれるやつと。でまいぞ [じろう]うそはねえ。 もしかみさん。 もやいをといておくんなんせ [にょうぼう]まずちっとまちな。 めりやすがくる <げじょつやめりやすをかいいそがしそうにかけてくる> [おんな]おぼろづきと。ごしきたんぜんを。かってまいりやした [じょらい]おおきまり。 すいめ。 しげさんどうでもはだしじゃはだしじゃ [にょうぼう]<ふねのへさきをもっておしだす> (九ウ) おかえりに。およりあそばせ [じょらい]あいいってめえりやしょう [にょうぼう]いやじろうどん。 しろきやのせいすけさんのふみを [じろう]それそれそっからなげておくれなんし [にょうぼう]そんならなげるによ。 そりゃ [じろう]おっときやした <ふみをふところへいれる ふねはよほどでる> [じろう]とりかじとりかじ やんわりとやんわりと。 ええべらぼう。 あとさきみてこげえ [じょらい]しんぼうこのしんかわすじの。くらどもをみやれ。 これがみんな。さけだによ [しんござえもん]まごひょうえとは [じょらい]くにでもしっている。しんながことさ。 みついまごひょうえといっては。 しゅせきはよし。 かねはたくさんあり (十オ) まごひょうえさんのことだ <ふねはえいたいばしのきんじょへゆく> [じろう]もしだんなおずきん [じょらい]<ずきんをとりて> しんさんずきんをとりねえ [しんござえもん]ずきんをなぜとる [じょらい]@@はふなあらための。ばんしょだ。 みねえ くれかたからはこれにひをともす。 このはしがえいたいばしというのだ はししたからみえるが。せんだいがし。 こちらのひのみのしたをはいるとはちまんのうら。にけんちゃややぐらした(@)などへゆくて [しんござえもん]やぐらしたとやらは。 くにもとでのはなしにはやけたときいたが [じょらい]やけたとて。できねえでなるものか。 なかちょうもやけたがりっぱにたった。 やぐらしたなどはまえかたはかくしまどであったが。 そうごうしになって。すとんだもんだ。 どばぢばかりやけなんだが またやけたからやけぼとりやらで。またりっぱにできよう (十ウ) [しんござえもん]これちょぴりとしたところは。なんじゃえ。 [じょらい]これははちざえもんじまという。 むこうがつくだじま [しんござえもん]ここにもあるか。な [じょらい]いやここはりょうしばかりいる じょうろのあるは。はちまんのむこうのさ。 しんちもちかし いしばもちかけれど。 しんちなどは。げびじゃて。 のうせんしゅう [じろう]いやそのように。きたなくもござりやせん。 しんちのはりまやなどはよくいたしやすよ。 こどもはそろっているなり。 おんなどもも。よくいたしやす。 ちっとおいでなんし [じょらい]こいつは。はりまやにいろがあるな。 もうせんでもかぶるなよ [じろう]つがもねえ。 そんなことするのじゃあござりやせん。 (十一オ) だんなどこへおい@なんす [じょらい]されば。どこがよかろう なかちょうにしようかどばしにしようか。 かわべの@すめがはんしろうをまねるもひさしいもんだ。 やまもとにしようか。 やまもとははらがちいさいから。おばな@にしよう [じろう]いっそ。かめやまへおいでなんせ [じょらい]いいやおばなやおばなや [じろう]いなばや。 おなじみならさきへおいでなんし [じょらい]さあしんさんあがんねえ [しんござえもん]はやいもんだ。 ゆめのようにきた [じょらい]そんならさきへゆくぞ しんさんこっちへきねえ <じょらいとしんござえもんしんみちよりおばなやへゆく またちょききたりかわぎしへつく> [せんどうちゅうご]かめやまかめやま。 ええふけいきなかめやま <ようようかめやまにてききつけておんなくる> [おんな]ちゅうごどんごくろう ちょうきょうさん。おいでなんした (十一ウ) [ちょうきょう]このあいだはおせわ [おんな]おかげでおもしろう。しばいをみやした [ちょうきょう]これはおれいで。いたみもろはく <ちょうきょうはおんなとつれだちてかめやまへゆく ちゅうごふねをしまいて> [ちゅうご]これこれじろう そしらぬかおをするな [じろう]どうだちゅうご ひさしいの。 いいことでもあるか [ちゅうご]とんといけねえ。 ゆうべもやかたにいいのがあるからいたりゃ。てふりあみがさになった [じろう]おいらもすそつぎのちょうじやでめくりをうって。ろくしちひゃくまけて。 それからおもてのはるおかでこまがあるからまわしたら。はんぶんばかりまけはかえった [ちゅうご]そりゃあまずよかった。 なんとそっちのきちは。どこにいるの [じろう]このあいだきけば。のぶとふねをのるときいたが。ついぞみかけねえ [ちゅうご] (十二オ) あいつもいけねえ。 とうなすだよ [じろう]とうなすだか。ちゃがまだかわからねえやろうだよ。 きゃくがまっていよう のちにきやれ [ちゅうご]どのようなきゃくじゃ [じろう]なんだかあまおちのきしゃご。みたようにしゃれのめすよ [ちゅうご]そんなやつもくがいさんねんとつきあってつとめたがいい [じろう]のちにのちに <じろうはしんみちよりおばなやへゆく ちゅうごはふねをしまう> [おばなやむすめおなか]どうだじろうどん きついものだねえ。 まえのおまつどんがいねえけりゃ。かめやまへばかりいきなさるな [じろう]こりゃあめいわく。 きゃくしさえこようといえばいつでもまいりやす [おなか]うそをつきねえ <はなしのうちにおくよりおんなきたり> おなかさんしこ@さんの。ちょっときねえと [おなか]よこざきしてか (十二ウ) <おなかはざしきへゆく じろうもかってのひにまたがってあたる りょうりばんもきゃくおおぜいゆえいそがしそうに> [りょうりばん]はちすけどん みずをたのみやすぞ(@) [はちすけ]あいみずくみも。てえてえではねえ [りょうりばん]おまつどん すずりぶた。もっていきねえ。 おくへはまだすいものがでるによ <きゃくしごにんきたる> [わかいりょうりばん]おなかさん。 おまつどん。 おきゃくがあるによ [おんな]これはごろべえさん ようおいでなんした [ごろべえ]きょうはおやしきから。おいであそばした。 ずいぶんそまつのないように [ごろべえ]だんなおあがりあそばせ <きゃくはのこらずおくざしきへゆく> きゃくのふうていは。おだいみょう(@)の。かってようにんともいうかっこうにて。 おなんどちゃ。はぶたえのこそでに。あさぎむくのしたぎ。ちゃいろのおび。りっぱなる。だいしょうにて。きょうおうぎをぱちつかせ (十三オ) かみをあわせび@@@@@ゆいをしかくにまき。 そうじゅうろうずきんをもちきたる。 あとに@@いて。ふたりくる。 これはかってようにんのしたやくてだいと。いうなりのおとこぶりにて。 ぐんないじまのわたいりばおりに。こもんのちちぶぎぬのこそで。 ひとりは。ふとりのはおりにうえだじまのこそで はるかあとより。さんとめのぬのこに。こはくじまのおび。 てにかいきじまのふろしきづつみをもち。かってにいようとするを [きゃく]これこれちょうすけ。 さけでものみやれ [ちょうすけ]はい <あとにつづいてゆく これはかってようにんのこづかいてつけなかまなるべし> ごにんながらざしきへゆく [きゃく]さあみんなたいらにたいらに [よにん]はいはい <このあいだにたばこぼんなどでる> [きゃく]これこれ。 やしきはやしきここはここじゃ。 たいらにしたまえ [よにん]はいはい (十三ウ) <おんなはちさかずきすずりぶたもちでる むすめおなかちょうちもちきたる> [ごろべえ]だんなひとつめしあげられましょう [きゃく]しからばはじめて <いっぱいのみてつぎのおとこへさす> [つぎのおとこ]でんろくどの. おさきへ <さけをのむところへおんなきたり> [おんな]ごろべえさん おひゃくさんはさしでいなさりやせん [ごろべえ]ああだれこれはねえ うつくしいのをそろえてたのみやす [きゃく]これはざんねん.びんしけん ごろひょうがおなじみを.みようとおもうたら [ごろべえ]まただんな わるくちばかり <すいものでる じょろうあねきたる しょうじのかげよりこごえに> [じょろう]おなかさん [おなか]さあきねえ <じょろうよにんきたりてならぶ きゃくはいちばいのんでおんなにわたす おんなさかずきをかみざのじょろうにわたす じょろうさかずきをよこにまげてちっとのんでおんなにわたす おんなはつぎのおとこへさかずきをもちゆく つぎのおとこのんでこごえになりて@@めへ@@ふておんなにわたす おんなさんにんめへもちゆく じょろうのんでおんなにわたす またおんなさんにんめのきゃくに@@@@@@@@のんでおんなにわたす おんなふたりめのじょろうにさかずきさす じょろうのんでごろ@@@@@@ @@@@@さしづめよ@@@@@@@@@> [きゃく]ちょうすけちょうすけ. どこへなどいって.たのしめたのしめ (十四オ) @@@@@@@@@たで。ようござります [ごろべえ]@しのみやのせん@@@@@まえの。おうぎやへいかんせ [ちょうすけ]いえも [きゃく]いけいけ [ごろべえ]さあさあ <むりにちょうすけをひったてせんどうといっしょのどうまえへやる> [ごろべえ]にぎわいにげいしゃをよびましょう。 これおまつどん。 だれぞたのみやす [おんな]はおりにいたしやしょうか おとこげいしゃにしやしょうか [ごろべえ]むめたゆうが。よかろう [おなか]おまつどん。 むめたゆうさんをききにやりねえ [女]アイ <おんなはむめたゆうよびゆく あとはじょろうときゃくべつべつになりざもすこししらけているところへむめたゆうきたる> [むめたゆう]これはごろべえさん。 おひさしぶりで [ごろべえ]まちがいひさしゅうおであいも。いたさぬ@ やまでのんだままかな [むめたゆう]さようさ みやもと。いらいで。ござりやす (十四ウ) [きゃく]ちかづのため。さそう [むめたゆう]これはありがとうぞんじます [ごろべえ]なんぞ。おもしろいものをたのみやす [むめたゆう]ふうりゅうの。まごぶしを。おききなさりやしたか [ごろべえ]よかろうよかろう [むめたゆう]とよまるさん。 ちょうしをあわせねえ [とよまる]よしよし <むめたゆうはなをかみせきばらいなどする ざとうとよまるさみせんにかかる> [むめたゆう]えへん △うたいはしらず。 ぎだゆうは。しらぬわれらがふつつかに。 うたはもとよりしらいとの。なにわの [おなか]ごろべえさんえ。 むめたゆうさんに。このあいだはやるおいらをきつねが。はらませたといふ。うたをあてみぶりをさせなんせ [ごろべえ]むめさんむめさん@きつねがはらませたに。しなさい (十五オ) [むめたゆう]はい こいつはちとつらいねえ [きゃく]しょもうしょもう <むめたゆうぜひなくきつねのみぶりをする> [むめたゆう]とよまるさん。 うたひねヱ <つつてんつつてん> △おいらをきつねがはらませて。ごてになろとは.わしゃやです。 やですやですやでもです。 しんじつ。やあでは.なけれども。 ひとめはづかしけりゃ。わしゃやです。 やですといふことは。いわねえもんです [おおぜい]ははあ [きゃく]これはいっきょうこれはいっきょう いっぱいのみたまえ [むめたゆう]これはこれは <さかずきをいただく おなかさけをつぐ> おっと。ござんすござんす [おなか]むめたゆうさんのひさしいもんだ [むめたゆう]いやもうとんとさけがいけやせん。 ゆうべも。ふたみやでけんさけの。あいてをしたりゃ。 こえはでえなしに。なりやした (十五ウ) [ごろべえ]ひとつばかりはよかろう [むめたゆう]いえひとつござります [おんな]ごろべえさん。 ちとあちらへ。おいでなんし [ごろべえ]なるほどなるほど。 だんなちとおやすみあそばせ <きゃくすこしめれんのていにみえて> ううまずまず <おなかおまつむめたゆうくちそろえて> ちとげしなりませ <ごろべえむすめきゃくはみなみなとこえゆく> [じょろう]むめたゆうさん。 つきだしのこといちざしなさったか [むめたゆう]いいえいちざはいたしやせんが。 このあいだなかがわでうしろから。みかけやした [じょろう]すかねえこだねえ [おなか]まだなれねえからさ [じょろう]いけるのじゃあねえ [むめたゆう]おかんさんのくさすも。ひさしいもんだ <おおぜいくちをそろえて> ああらっちもねえ <みなみなとこへゆく きゃくとこにてこごえに> [きゃく]このささら。さっとすてて。さそうらえばああぷう <じょろうきたり (十六オ) きゃくそらねいる> [じょろう]もしもし [きゃく]ああきつくようた <じょろうたばこのみてきゃくにのみつけてだす> [きゃく]これはこれは <たばこのむ いちざのじょろうさんにんながらきたる> あなた。おやすみなんし おかんさんおやすみなんし [じょろう]あいおやすみなんし <みなみなとこへゆく おかんびょうぶひきまわして> まだおさむう。ござりやすねえ [きゃく]さればさ。 あさばんははださむい <などといいていろいろにおもしろきしうちあり> [となりざしき] [じょらい]しんぼう。 おもしろいか [しんござえもん]いなかとはちがったものだ <といいながらやまはんしだしてはなをかむ> [じょらい]これこれ。 ぬしのかみはそでねえ @ぎくにしねえ。 こぎくをかおうなら。ばくろまちの。かみやごろべえがところがいい。 たばこも。りょうによんきんぐらいのこくぶがいいによ。 においぶくろのようなものはな。 むろまちの (十六ウ) きりやさん@ょうがところから.とりねえ. @@きせるをはらせるなら. いけのはたよりよねざわまちのむらたがところがいい. ぬしははいかいも.すこやらかしたな [しんござえもん]くにでちっとばかり.してみたが [じょらい]そんならそうしょうへでしいりを.しねえ. ぞんぎでも.きんらでも.ぎとくさいでんなりとこじゅうなどもよし. きくどうなりと.きのあ@にしねヱ. みなおいらがこころやすくするから.ついできるこった. しゅにくやとうすみのようなものは. こばいえんがところから.とおってとってやろう. ろうせきをか@なら. よっかいちより.おやじばしのやごろうがところでかいねえ ふでもしきょうがりゅうなら@なりこうじの。せんちんしと.いうがあり (十七オ) [しんござえもん]そんなことよりさみせんが.ならいたいものだ [じょらい]そりゃあなおなおやすいこった. ぎだゆうさみせんなら. ごはちでも.とみはちでも. ぶんごぶしなら. もじとよでも.もじひさなりと.よしまちのたけざわそのもよし [しんござえもん]もじきよとやらは.どうしたの [じょらい]なにもじきよか. いまではなかむらひでまつが@ょうぼうになって. こをもってかみさんかぶだ [しんござえもん]どこにいるの [じょらい]かしの.とみたやというのがそだ. いまはわきへこしやした [しんござえもん]やくしゃが.ちゃやをするかの [じょらい]するのだんか. こまぞうがうちは.こうらいやという よしちょうににん@ょうつかい.にしかわしげさぶろうが.ぞうしがえやと.いってあり (十七ウ) そのほかに.なかむらやしまごろう.よろずやしんよろずやはいちまつ. たけいせやというはいんきょしたいせたゆうがうちじゃ。 かのこもちはまたたろうおとはちときょうだいが@せじゃ. かどのやおやはおおたにひろうえもん. いまではにんぎょうと.にしきえをうりやす. いくらもこんなるいがある <しったじまんにいろいろのことはなすところへじょろうきたる> [おちょう]これおとよさんゆうべはねえ [おとよ]おもしろかったねえ [じょらい]どこで [おとよ]むめもとでさ [じょらい]むめもとはごうせいなもんだ。 やくぐらしたなどはのこらず。むめもとのじだ ねづにもみせがあり. よしちょうではこどもやなり [おちょう]とよくにさんのうちだねえ [じょらい]とよくにをどうして.しっている [おちょう]いつぞやけんすもうのとき (十八オ) でなさったねえ [おとよ]それそれむめのもんつけて [じょらい]とよくにがけんときては.すごいもんだ [しんござえもん]ひがくれるじゃねえか [おとよ]まだななつすぎで.ござりやしょう <しょうじひきたてびょうぶひきまわし> おちょうさんおやすみ(@)なんし <ろうかばたばた> [おんな]おちょうさんおちょうさん ちよっときねえ [おちょう]なんだえ <おちょうはしごきのなりにてでる> [おんな]しこうさんがきなさったに [おちょう]みとおしにか [おんな]いいえよこざしきで <おちょうよこざしきへゆく じょらいはきをまわしろうかにたちぎきする> [おちょう]おまえはさっききなさったじゃねえか [しこう]うらのせきぐちにせいべえや@ちゅうこうがいるゆえつき@@に.いままでいた [おちょう]またおいかさんをよびなさったか [しこう]おいかはわきへでた [おちょう]ききにやるやつさ (十八ウ) [しこう]かえりそうもねえか [おちょう]ぶさだから。とまりはしやせん [しこう]そんならまたうらへでも。いってこよう [おちょう]なにさかみさんの。へやにでも。ねていなさりやせ [しこう]それもひさしいもんだ [おちょう]なぜそこに。いなさりやす 「じょらい」さけにようたから <ねどころへゆく すめぬかおつきにてうたうたふ> かわいおとこにあうときは。すかぬこちらがしこなしに <またおんなきたりてしょうじごしに> [おんな]おちょうさんあけてもよしか [おちょう]なんだねえあけねえ [おんな]せけんとこのをこひきのかくりかえしねけをとこりきにきつた [おちょう]いきまかにしきこくりかえしうくさかんかくりかえしもこつてくくりかえしるくかくりかえしをかそこれけまかてけと (十九オ) いきうくてくくりかえしれけなかさかいき [おんな]そういいやすよ <おんなしょうじひきたてかえる またまもなくきたり> [おんな]おちょうさん。 ちょっときねえ [おちょう]なんだの <おちょうはでてゆく じょらいちょうしのくちよりさけをのむ> [おちょう]おおよくよぶこった <というておちょうとこへいる じょらいまじめになりてすめぬかおにている おちょうはこころづきていろいろとつとめる> [おちょう]たばこのみ。なさりやせんか <じょらいへんじもせずにらみつけている> [おちょう]おまえのかおにゃあなにかきつくできやしたねえ。 これにゃあわこくばしの。じつろこうを。つけなさりゃあいい [じょらい]そりゃあいろおとこのすることだ <ちょうゆびにてじょらいがかおをつきながら> [おちょう]おまえほどいろおとこなりゃあいい [じょらい]なんのこった。 このふんばりめは。いいかとおもってくいのめすな <といいながらてをたたく> [おなか]あいい [じょらい]これおなかさんとやら このばいためさげてくんねえ (十九ウ) [おなか]どうなされます [じょらい]あんまりこころいいとおもってなんのかのとちゃにしやあがる そのうえやろうのねつけ.をみるやうにふとんとおればかりおいてろうかばかりそそりゃあがる [おなか]おちょうさん おまえもどこへいきなさった [おちょう]どっこへもいきはしやせんが となりざしきでたばこのんだばかりさ [じょらい]なんだ こいつはうぬがいいようなことばっかりぶちころされんな <すずりぶたをふりあげる> [おなか]おちょうさん おまえはあっちへいきねえ <おちょうはかってへゆく おんなどもきたる しんござえもんおびとりはだかにてでる> [しんござえもん]どうだどうだ [じょらい]まあききねえ ぬしもしっているとおりだ そのうえいまもとなりでたばこをのんだのうまをのんだのと おれがめをば (二十オ) こんぺいとうのつけめたいこにだとおもうそうな ひとをつけにした <みなくちをそろえて> なにさ あのこもそのようにわるくするきもねえけれど [じょらい]なんだ うぬらまで。あげさげをとりな <じろうかってよりききつけとんできたる> [じろう]どうでござります。 あのこがきにいらざあ。ほかのこでもおよびなんし まずきなおしにひとつおあがりなんし [じょらい]ここのどぶざけがくらわれるものか <といいながらおおざらをほうりだす じろうしんござえもんようようだきとめければ> [じょらい]とめるなとめるな <じろうしんござえもんようようとだましてむりにかた。にかけてつれゆく> [じょらい]ぬしたちはどこへつれてゆく このぶんじゃあおとこがたたねえ [じろう]そんなこといわずとつくだのひがしやへでも。いきましょう [しんござえもん]いやもうすぐにかえろう もんがやかましい (二十ウ) [じょらい]もんがどうするもんだ. くいつきはしまいし [じろう]それでもぬしが.きをつかいなさりやす [じょらい]きをつかってもいい. うっ@ゃっておけ. すすはきにゃあでる [じろう]まあなんでもおいでなんし <ようようとだましふたりしてふなばのほうへゆく> [わかいもの]どうも.いけねえきゃくだ [しこう]とんだにぎやかなきゃくじゃ [おなか]いえもういけるのじゃ.ござりやせん. さあにかいへおいでなんし <おちょうおなかしこうさんにんにかいへゆく> [おちょう]おなかさん そろったとんちきだねえ [おなか]おまえがなんのかのと.いいなさるから.わたしゃそばで.きをもみやした [しこう]やろうかいとみえる <おまつきりて> [おんな]わたしも.よしちょうのたわらや.にもいやす. しんみちのにもんじやにも (二十一オ) さんよねんいやしたが. あのような.わかしかいはみやせん [しこう]ひょうたくれ. ゆうでくの. そろいだ <おちょうおなかくちをそろえて> ついぞねえ [おなかおまつ]しこうさんおちょうさんおやすみなんし [しこう]もちっとはなしねえ [おなかおまつ]のちにめえりやしょう <おなかおまつかってへゆく おちょうしょうじをひきたて> [おちょう]ちゅうべえさんせいべえさんはまたせきぐちにかえ [しこう]きょうは おかるとおりえといちざしてむめたゆうで.さえていた [おちょう]おまえはだれを.よびなんした [しこう]たれをよぶものだ <おちょうしこう@ひ@をしたたかつねりながら> [おちょう]さあいいねえいいねえ [しこう]ああいおういおう [おちょう]だれをよびなんした [しこう]ここからいったおおさかじょろうさ [おちょう]あのこはどこにいるねえ [しこう]なにやにいるか (二十一ウ) [おちょう]なはなんというねえ [しこう]おつるとかいった [おちょう]なに なをわすれるものだ <などといいていろいろおもしろきしうちことごとくあり おりからろうかばたばたと> [きゃく]どうだ. またさしかなさしかな [おなか]あい ひるから.でていなさりやす [きゃく]また.でものか [おなか]おまへはまた.いままでどこに.いなさりやした [きゃく]おもてやぐらに.いやした [おなか]@もてはえいらくやにかえ [きゃく]なに あのような.ばけものやしきへいくものだ [おなか]なに. いまじゃあでやしねえ [きゃく]おわりやで.めずらしいものを.よびやした [おなか]だれをえ [きゃく]このごろなだいの.ろくぶじょろうさ [おなか]おつなこだねえ. そしてつれしはえ [きゃく]ほかの@のは.どばしのつ@やへいったから. おれひとりきやした [おなか] (二十二オ) そんならだれぞ.よびなんし [きゃく]げいしやを十人斗{はか@}よんでくんねヱ [おんな]とんだこといいなさる. よしよし わたしがいいように.しよう [きゃく]おまつどんでなけりゃあ.ならねえ <おあつはげいしゃよびにゆく> [きゃく]おいせさんは.どうしたねえ [おなか]あのこはねえ. しちさんといろをしてねえ. かぶつていなさりやす <おんなおまつきたる> [おんな]しちべえさん こうよびにやりやした. りちゅうさんとしげさんと.むめたゆうさんがきなさりやす [きゃく]よしよし [むめたゆう]とよまるさん こっちだこっちだ. こりゃしちべえさん おいでなさりました <りちゅうざしきゆくとひとりすもうのまねをする> [りちゅう]すもうとろうならこう [しげたゆう]かないかないかない@せん。 (二十二ウ) めくめく。めくらに [きゃく]とんだことだ とんだちゃがま [むめたゆう]ちゃがまちゃがまかまがまたりのだいじん [しげたゆう]だいじんだいじんだいじんのところへけがはえた [りちゅう]はえたはえたはえたとはものくさたろうがむすめかえ [おおざい]ははあ [むめたゆう]おさかなにひとつでますところがなかむらのなかぞう [おおぜい]よかろうよかろう [むめたゆう]△みなさまのごひいきにて。 いちろうべっとうと。たいにんしたるさえもんすけつね [おおぜい]いよ/\ [おなか]ひでつるさんとはおそろしい [きゃく]しげさん ひとつたのみやす [りちゅう]わたしがでましょう △とうべえさんが@はなさん@はなさんといいなさっても おはなさんはやですやですと。いいなさります [おおぜい]きつしきつし [きゃく]きくかきくかえへん △こいつはこいつはこれでやぼならしようことがねえ (二十三オ) [しげたゆう]だんなのさんぱちはりちゅうさんのよりすごいわえ [おんな]もししちべえさん。 だれぞおよびなんし [きゃく]こんやはさえひととおりにしよう [りちゅう]さえひととおりのめいほう ほほおう [おんな]よびやすよ [むめたゆう]およびなさるのさ [しげたゆう]よびねえよびねえ [きゃく]さわぎねえさわぎねえ <おんなはじょろうよびにゆく りちゅうとよまるしげたゆうむめたゆうつれぶしにてうたう> △とうなすほどのちのなみだ おちてかぼちゃにゃあなりゃしよまい きたきたきたきたさのさぬきのこんぴら <じょろうきたりしょうじのそとより> [じょろう]おなかさん [おなか]さあさあきねえきねえ <じょろうきたる しちべえさけをのんでさす> [じょろう]ちとおあげもうしやしょう [きゃく]まずまず [りちゅう]おこうさんにはまたわたしはまちがって [じょろう]はいおたのみもうしやす (二十三ウ) [りちゅう]これはこれは [きゃく]りちゅうさん いっけんまいろう [りちゅう]さあめえりやしょう [きゃく]ごうさい [りちゅう]ろまでえ [きゃく]はま [りちゅう]ろまとってえ [きゃく]きゅうやあ [りちゅう]とうらいとってえ [きゃく]かなわぬかなわぬ <おちょうしょうべんにゆきてとなりざしきにぎやかなればそっとみければなじみのしちべえなり なだいのじょろういるゆえにきゃくはしらぬふりにてざしきへゆく> [おちょう]おゆるしなんし [おなか]おちょうさん のみねえ <おこうたばこのみつけておちょうにやる きゃくさかずきをもっていけれは> [きゃく]ひとつあげようか [おちょう]はい [しげたゆう]おちょうさん。 なかがわではひどいめにあわせなさったねえ [むめたゆう]なにけんか <おちょうたばこのみながらてでひげをなでるまねしながら> [おちょう]なにそうもねえのさ <おなかきせるふりあげておちょうをたたくまねして> [おなか]ひげなでの。きんきんか@@@@ [おちょう]いやいってめえりやしょう あなた。ゆるりと。 おこう@@。おなかさん。みなさんこれに (二十四オ) <おちょうはとこへゆく> [りちゅう]といましょうといましょう [むめたゆう]とわしゃれとわしゃれ [りちゅう]ちからは(@) [むめたゆう]まさむね [りちゅう]こそでは [むめたゆう]はぶたえ [りちゅう]はおりは [むめたゆう]ちりめん [りちゅう]おとこは [むめたゆう]ごんざえもん [りちゅう]おんなは [むめたゆう]ごんすけ ははあまたまけた [りちゅう]どうだ。 すごいものか [しげたゆう]ばけるで。まいろう [りちゅう]きたまえきたまえ [しげたゆう]ばけるはばけるは [りちゅう]ちゃがまは [しげたゆう]やくゎんと [りちゅう]むすこは [しげたゆう]こっさま(@) [りちゅう]かぼちゃは [しげたゆう]とうなす [りちゅう]むすめは [しげたゆう]かかさん [りちゅう]ははあ おそろおそろ [しげたゆう]どうだどうだ <かねなる ごんごん> [きゃく]あかるそうな。 かえろうかえろう <じょろうおなかくちをそろえて> まだまだ。 もちっと。おいでなんし [むめたゆう]かえろひょこひょこみひょこひょこ (二十四ウ) <とよまるさんげんひき@@ しげたゆうりちゅうむめたゆう> △むぴょこ.ななぴょこ.やぴょこぴょこ.ここのぴょこぴょこ.とぴ@@ぴょこ.しょんがえ━ [きゃく]かえろうかえろう <しげたゆうむめたゆうりちゅうともども> まだ.おそ@は.ござりやせん [きゃく]いやいや. かえりやしょう <どやどやとかってへゆく おなかはさきへゆきてせんどうをおこす> [せんどう]ふねはとうに.きていやす [りちゅうむめたゆうしげたゆう]はい よう.おめしなさりませ <きゃくはふねにのりかえる げいしゃはのこらずかってに@している> [となりざしき] <きゃくてをうつ> [おんな]あいい [きゃく]かえるから.ごろべえを.よんでたもれ [おんな]はい ごろべえさんごろべえさん [ごろべえ]おいおい [おんな]おかえりなされ.ますと [ごろべえ]よしよし. かごはきているかの [おんな]あい とうから.まって.いやす [ごろべえ]さあでんろくさん.しんすけさん. かえりやすぞ <きゃくはおりなどきてざしきへいで (二十五オ) でんろくしんすけめをすりながら> [きゃく]ねむそうな.かおじゃ [ごろべえ]おなかさん. おさけをもってきて.くれねえ [きゃく]さけよりかえろうかえろう <きゃくさきにたちてゆく @よりじょろうのこらずおくる> [おんな]おこしのものを <めいめいわきざしなどさしかごにのる ごろべえあとへたちかえり> [ごろべえ]これおまつどん. ちょうすけさんがきなさった.ならしずかにあとからきねえと.いっておくれ [おんな]あいあい [じょろうよにん]あい おはばかり.もうしやした [おなかおまつ]ようおいで.あそばしませ <きゃくはみなみなかえる よこざしきにてしこうもめをさます> もうよがあけた [おちょう]きょうは.いても.よかろう [しこう]かえらにゃ.ならねえ <おちょうおびしめてしこうにはおりなどきせて ふたりろうかへでる> [おなか]おかえり.なんすか [しこう]このあいだにめえり.やしょう [おなか]そんなら.ふねをいいつけや.しょう [しこう]ふねじゃあめだつからかちがようござりやす [おんな]おかえりなんすか (二十五ウ) <ぞうりをなおす> [しこう]これははばかりはばかり <しこうでてゆきければおちょうなにかようありげに> [おちょう]しこうさんしこうさん [しこう]なになに <しこうたちかえる おちょうおよびごしになりてみみにくちをあてて> なな [しこう]よしよし。 からすなくかあかあ からすのこえに。めはさめて。 のこるはまくらばかりなり。 かんたんはごじゅうねん これはいちにちいちやのたのしみもきえて あとなきゆめとなりにけり       つうごん ○ばからしい                ○うそはねえ ○ようあてなさった             ○どうしようのう ○けしからねえ               ○ほんにか ○ああらっちもねえ             ○きいてあきれる (二十六オ) ○よくいうものだ              ○よしか ○ついぞねえ                ○おきのどくはえのあたま かずさもめん    @うのなききゃくを | かぶる     もうせんをかぶることなり    いう        |         しばいよりでたるげんなり ひょうたくれ    あしききゃくをいう | いきなおとこ  おとこにかぎらずすい                     |         たということなり とんちき      みぎどうだん    | だいきち    しょうのわるいというこ                     |         となり ゆうでく      いなかものをいう  | くろい     やくしゃひょうばんきより                     |         でたりきちのことなり ほんじょのあなぐら しつぶかをいう   | しろい     みぎどうだん@のことなり ながざお      あしくすると    | むしがいい   おしのつよいことをいう           いふことなり    | でもの       みぎどうだん    | くいのめす   あやなすことまたばかに                     |         するをいう (二十六ウ) ちょちょら     べんこうにてあやなす| うっちゃっておけすすはきにはでる           ひとをいう     |    ちゃら       うそつ@ひとになぞら|   かまわぬといふことなりもののみえぬとき           えていう      |   いふことをしょじにもちゆるなり みぎのるい.もっぱらに.もちゆるほかに. からことと.なづけてごいんをもっていうことひとのしるところなれどここにあらわす   あかさたなはまやらわ このとおりへ  か   いきしちにひみゐりい このとおりへ  き   うくすつぬふむゆるう このとおりへ  く   ゑけせてねへめえれゑ このとおりへ  け   をこそとのほもよろお このとおりへ  こ (二十七オ) みぎのごとく.かきくけこの.ごいんのじをつけいうなり. たとえば.きゃくというときは.ききやかくく またおんななどとはねるときは.つけじにてはねるなり. おんなはおこんなとおのじへつく. このじを.はねるなり. せいだくは.ほんじに.じかににごるなり. このほかに.しつけきつけなどといいて.そのときに.おうじて.いちじおきに.つけるなり. しれざることを.いうとき.はやくこのことを.かんがうべし. またこのとおしことばも@つけていうときは.いかようにも.はやくいわるるなり しょにんしるところなれどもしらざるもののたよりにと (二十七ウ) ここにあらわす    ○とんだちゃがまのべん これはやなかかさもりにありしおせんがうつくしきをみてかおとかおとみあわせ よきおんなともほめられず ちゃがまになぞらえてとんだちゃがまといいだしたるとなり    ○どうやくゎんとばけるべん おせんひきのいてのちやましたにみずちゃやでる またこのうつくしきおんなにたとえとんだちゃがまがやくゎんとばけたというなり    ○ひとりでころんでなくというべん これはうしのかおみせきょうげんにさかたさじゅうろういいしことなり これをいまもつばらにはおんなげいじゃまたちゃやふなやどのにょうぼうむすめじょろうのめをしのびてころぶというつうげんあり なくというはなみだをだすということにや くわしくあらわすときはしもがかりとなる よってりゃくしてあらましをしるす (二十八オ)       夢中散人 安永二年         寢言先生著〔印〕  癸巳再板         〔〔九五店〕〕 ■芳町@道南@三軒目■ 〔〔和田氏〕〕      ■本屋八左衛門■               ■板■         ■同 清  七■ (二十八ウ) --------------------------------------------------------- 注) 五ウ9    @=糸×委 二十六ウ7下 @=白抜きの「吉」 三オ2 欠損 「し奉」か? 三ウ4 印刷不鮮明 「か」か? 四オ2 印刷不鮮明 「は」か? 四ウ4 印刷不鮮明 「さ」か? 四ウ6 印刷不鮮明 「に」か? 四ウ7 本文には「とく」とある。本来ならば「ごとく」となるべきところを、合字「こと」の第一画が落ちているか? 五オ4 印刷不鮮明 「し」または「じ」か? 六ウ6 印刷不鮮明 「つ」か? 七オ1 印刷不鮮明 「。」か? 七ウ9 印刷不鮮明 「ら」か? 十ウ2 判読できず 十ウ5 「やぐら下」の「や」の右肩部に濁点のような二点あり。あるいはカタカナの「ニ」か? 十一ウ1 汚れ 「で」か? 十一ウ3 印刷不鮮明 おそらく「む」。 十一ウ4 印刷不鮮明 おそらく「や」。 十二ウ9 印刷不鮮明 「志厚{しこう}さん」か? 十三オ2 汚れ 「たのみやすそ」は「たのみやすぞ」か? 十三オ7 判読できず。「だいめう」と推測し本データでは「だいみょう」と入力。 十三ウ1 洒落本大成本文では「髪を合{あわ}せひんにて。元結{もとゆひ}を。」とあるところ。そのうち「んにて。元{もと}」に相当する個所に、十四ウ1の破損部位「[長助]イヱ御酒…」の一部「助]イヱ御」が上から貼り付いている。 十三ウ2 洒落本大成本文では「跡{あと}につゝいて。」とあるところ。そのうち、「つゝ(つヾ?)」に相当する個所に、十四ウ2の破損部位「舩頭{せんとう}と。堂前{どうまへ}の。」のルビ部分等が上から貼り付いている。 十四オ8右 欠損 洒落本大成本文では「小声になりて三人目へといふて」とあるところ。 十四オ8左 欠損 洒落本大成本文では「盃渡ス三人目の男」とあるところ。 十四オ9右 欠損 洒落本大成本文では「兵衛は」とあるところ。 十四オ9左 欠損 洒落本大成本文では「人目の新造へきまる」とあるところ。 十四ウ1 欠損 洒落本大成本文では「[長助]イヱ御酒戴{いたゝい}たで。やうごさります」とあるところ。 十四ウ2 印刷不鮮明 おそらく「{にしのみや}」。 十四ウ2 欠損 洒落本大成本文では「船頭と。堂前{とうまへ}の。」とあるところ。 十四ウ9 欠損 句点があると思われる。 十五オ9 汚れ 「梅さん/\」の部分に他の丁の一部が貼り付いている。 十六ウ7 汚れ 汚れにより判読できないが「{こぎく}」か? 十七オ1 印刷不鮮明 「{さんりやう}」か? 十七オ1 印刷不鮮明 判読できず 十七オ5 印刷不鮮明 「る」か? 十七オ8 印刷不鮮明 「{かう}」か? 十七オ9 判読できず 「{おなり}」か? 十七ウ5 印刷不鮮明 判読できず 十七ウ9 印刷不鮮明 判読できず 十八オ3 汚れ 「み」と思われるが汚れが強く判読できず。 十八ウ4 「休」のルビは「{やみ}」のみで「す」に該当するルビなし 十八ウ8 解読できず 「々」、「こ」、「。」? 十八ウ8 解読できず 「{つきあい}」か? 二十一オ3 印刷不鮮明 「{うつちやつ}」と思われる。 二十一ウ7右 汚れ 洒落本大成本文では「{お長志厚かひさを}」とあるところ。 二十一ウ7右 汚れ 洒落本大成本文では「{お長志厚かひさを}」とあるところ。 二十二オ5 印刷不鮮明 判読できず 「{おもて}」と思われる。 二十二オ9 印刷不鮮明 判読できず 「{もの}」と思われる。 二十二オ9 印刷不鮮明 「鶴(雨×隹×鳥)」のルビに「{る}」が加わるか? 二十二ウ1 判読できず 「{り}」か? 二十三オ1 印刷不鮮明 判読できず 洒落本大成本文では「ま」とあるところ。 二十三オ7 印刷不鮮明 判読できず 洒落本大成本文では「お」とあるところ。 二十四オ9 欠損 洒落本大成本文では「にくいの」とあるところ。 二十四ウ1 欠損 洒落本大成本文では「さん」とあるところ。 二十四ウ2 「力」とあるが、あるいは「刀」か? 二十四ウ6 文脈上は「とっさま」が正しいか? 二十五オ1右 欠損 洒落本大成本文では「掛」とあるところ。 二十五オ2 欠損 洒落本大成本文では「よこ」とあるところ。 二十五オ3 欠損 洒落本大成本文では「く」とあるところ。 二十五オ5左 印刷不鮮明 洒落本大成本文では「咄」とあるところ。 二十五ウ2左 判読できず 洒落本大成本文では「跡」とあるところ。 二十六ウ3上右 判読できず 「ぜ」か? 洒落本大成本文では「せ」とあるところ。 二十七オ2上右 印刷不鮮明 洒落本大成本文では「く」とあるところ。 二十七ウ8 印刷不鮮明 「口」か。洒落本大成本文では「口」とあるところ。