通言総籬 解釈データ凡例:「ウ引」や「引」の記述がある場合は、引く音を本文に反映し、後ろに(ウ引)(引)と書いて原文を反映した。 ----------------------------------------------------- つうげんそうまがきじょ げんこくがげんをはくこと。 おがくずのごとくひひしてたえず。 ここにきょうでんせいろうのつうげんをずつうにのみこんで。 とみにちゃびょうしのいっさつをはく。 これてっかいがせんじゅつにあらずほうかしのこがたなにあらず。 これをみるにかたちようちゅうにあらわれこれをきくにことばぶんめんにとどまる。 (口ノ一オ) くらやみにひきいだすぎゅうだいのささやきまのあたり。 なかのちょうにわしるこまげたのおとみみにちかし。 げにもまがきといえば。 あさがおのなきはらしたるめもとにゆうべのかんしゃくをのこし。 にじゅうひちあけのながきをなげきてははなのしぼめるをうれえず。 あうよのみじかきをうらみてはさかりひさしきはなをうらやむ。 あさなあさなのわらいがおゆうなゆうなのなきがおも。 (口ノ一ウ) いろむくのえりにさしいれたるすがたに。 ひるがおのほのめくもゆうがおのいろじろなるもまといさく。 そうまがきはよくかがいにつうじてしかもかじつあいたいししんにはらわたをたつ。 われかのまがきのもとにみせさみせんのいちをうって。 ばんしんのばんをしるにいたらずといえども。 にとさんのいとぐちをひらき。 (口ノ二オ) えんじんきょうとともにきょうでんをあいすのひとふしをうたって。 いとまきをちとひねることしかり ぶんきょうじしょ じじょ われかつていえることあり。 せいろうはわがためのせっちんなりと。 それいかんなれば。 もったがやまいのふくつうになやみかねぐそをひらんがため。 しりをぼったてて。 このさとにかようことしげきがゆえなり。 (口ノ三オ) もしひんきゃくわがくそをくらわば。 たちまちこがねのうじとならん。 いちにちれいのながくそにたいくつのあまり。 このむだがきをなしてかたくそのかたきをして。 びりぐそのずるきにやわらげ。 よにそのくそのひりようをつたう。 (口ノ三ウ) つうかくというともわがまたぐらをのぞかずして。 なんぞけつのあなのひろきことをしらん。 ああくそがあきれるにあらずや。 ときにてんめいひちねんていびもうすう (口ノ四オ) さんとうやのひとりむすこ きょうばしのでんじゅつ (口ノ四ウ) つうげんそうまがきはんれい ○このしょはろんごにいわゆる。 そんしゃさんゆうをもっててたいいとす。 けだしそうまがきとだいせるは。 りゅうこうにおくれたるふるくの。 まじりなきをもってなリ ○えじろうはせいろうのとまりくなり。 よきょきょはるえどむまれうわきのかばやきといえる。 そうしをあらわしてより。 うぬぼれなるきゃくをさしてしかいう。 よってもってこのしょにかりてなとす。 きのすけしあんともにかのそうしにいづるところのななり (口ノ五オ) ○おいらんおよびしんぞうかむろのことば。 そのままをしるすがゆえに。 かたことをあらためずかなちがいをたださざるは。 そのおんのなまれるをしらしめんがためなり (口ノ五ウ) つうげんそうまがき きんのしゃちほこをにらんで。 すいどうのみずを。 うぶやにあびて。 おひざもとにうまれでては。 おがみづきのこめをくらって。 おんばひからかさにてひととなり。 きんぎんのきさごはじきに。 みちのくやまもひくきとしよしはらほんだのはけのあいに。 あわかづさもちかしとす。 すみだがわのしらうおもなかおちをくらわずほんちょうのかどやしきをなげておおもんをうつは。 ひとのこころのはなにぞありける。 えどっこのこんじょうぼね。 ばんじにわたるにほんばしのまんなかから。 (一オ) ふりさけみればかみかぜや。 いせちょうのしんみちにほうこうにんぐちいれどころという。 かんばんのすじむこう。 いつでもくろごうしに。 らんのはちうえのだしてあるは。 しらんのともをだんなとしょうず。 えどがみの。 きたりきのすけかすまい。 ほうぎょのいちぐらにおなじかどぐち。 くだすだれのそとに。 あだきやのひとりむすこ [えんじろう] <きのむじはちじょうに。 けんぼうにてとめがたのこもんをおいたうわぎ。 みっついにしまかんとうのしたぎ。 こんちりめんのらせんしぼりのじゅばん。 したぎはみなくろななこのうらえり。 うらははないろちりめんのすそまわし。 どううらはしろはぶたえ。 みはばひろきしたて。 あわせばおりくろのむじはちじょう。 まえくだりながきしたて。 ごちょうひももあやまるとかいってくろのひらうちのちょんがけ。 おびはおなんどちゃどんすのこもよう。 ずきんをえりまきにして。 なかのまちぞうり。 はちわたぐろのくつたび。 はなかいらぎのわきざし。 かみはよしはらほんだ。 すはちょうのおやじがぬいたひたい。 (一ウ) ふつかめのさかやき> おしょうさきへはいらっせえ <えんじろうかたへでいりのたいこしや> [わるいしあん] <くろちりめんのこそで。 おなんどちゃななこのはおり。 さけさびにてはなのさきあかく。 ちかめなり。 あさがおのおうぎにて。 くだすたれかたむけ> きのぼうおやどか。 えんさんがきさしったよ <とうちへはいりみれば。 あがりはなににょうぼうのさしずをうけながら。 あおちゃのはげたぬのこに。 もんどころのついているきれではんえりをかけたやつをきた。 しょうじょ。 しもやけだらけなてで。 たたきつちのながしのうえで。 ちんにゆをあびせている。> [しょうじょ] こうしているもんだよじっとしていやあれごろうじまし。 いっそうれしがります [にょうぼうおちせ] <つやなしうえだ。 あぶらじみたこそで。 くろななこのはばのひろいはんえりこびちゃななこのおび。 わきのほうへまわし。 まえだれのかわりに。 さらさのふろしきをおびへはさみ。 かみはいなぎむすび。 おはぐろをおとしてしらは これははんに。 おはぐろを。 つけようというしたくなり。 まだざえもんというじのつかぬかかあ。 このにょうぼうもとはまつばやのさるおいらんのせわしんぞうなりしがねんあけののち。 (二オ) かねてひさしいいろきゃくにて。 きのすけがにょうぼうになりしなりかみのけのうすいところと。 みみのわきのまくらだこにて。 あらそわれず。 まださとのことばがやまず> そのまんまにかいのひあたりへつれていってほさせや。 おやしあんさんよくおいでなんしたね。 えんさんかへ。 このあいだはおそうそうでござりやした。 うちでござりやすは <としかけたしごとをかたよせる> [えんじろう] ここのうちのながしはまつばやのゆどのというもんだの [しあん] ほんちょうのたなしたもありやす <きのすけはなかじきりのはしらによりかかっていて。 さみせんをしのびごまでひいている。 なりはつむぎじまのそでぐちのちときた。 うらえりのこそで。 もえぎさなだの。 したじめをおびにしているさみせんをしたにおき> [きのすけ] これはおそろいなすって。 (二ウ) さあこちらへ [えんじろう] でえぶねむそうなかおの [しあん] きゃくをにがしたしんぞうというかおだぜ。 ちょうじやだとちょうばでしかられたというかおだ [きのすけ] ゆうべはつまさんのちゃばんで。 ますやへめえりやした。 けさやっつにけえりやしていまおきやした [えんじろう] つまさんはやっぱり ふかがわのせかいかの [しあん] おみなもごうてきなやつだよ。 このごろもどこのかばんとうにかかえをして。 もらったそうだ <ふかがわにて。 かかえをしてもろうはよしはらでしんぞうをだすに。 ひとしきことなりや [きのすけ] このあいだもおともでおたきやの。 (三オ) およう。ごすけ。つるだゆう。ちょうじ。ぢんす。なかきち。 なぞという。 うぞうむぞうをひきつれて。 むこうじまがこざりやした [えんじろう] ときょうさんや。 ぶんきょうさんと。 ちがってせいろうへはとんとござらねえの。 はいかいとぎだゆうはきついもんだそうだの <といいながらこしから。 えちがわやがしたての。 あんべらの。 うちぬい。 りゅうさのねつの。 ついたさげのたばこいれからきせるをだし。 すいつけるにょうぼうはせんとくのひばちにかかっているひろしまやかんのちゃをついでりょうじんへだす。 きのすけはよりかかっている。 たわらやそうりがかいた。 きくのはんとだなから。 まめのはいったこんぺいとうをいだし> [きのすけ] これでもあがりやし <とえんじろうがまへえへおく> [しあん] えんさんがさけをのまっしゃらねえわ。 たまにきずだよ (四ウ) [きのすけ] めいよういまのつうはげこさ <とうれしがらせる> しあんさんにゃあいいものがある。 きのうながさきやのこはんがところからすみだがわをもらった。 おちせかんをさせや。 しかしさかながなにも。 あんめえす [しあん] かんみまいのこぶまきはなしか。 あのなべのはなんだ [えんじろう] よくげびをいうやつだ [おちせ] おいしいものではなしさ。 けさのおつけでこざりやすは [しあん] <ずっとたってなべのふたをあけ> おきやあがれ。 とうふじるがかじけている。 きついまつばやのみそかどうふだこいつあ。 つめたくちゃいかぬやつだ (五オ) [きのすけ] おうたがいは。 はれやしたか [しあん] うなぎをとりにやりは [えんじろう] どうだろうということかもういじめるの <ときんからかわのまえさげから。 なんりょうをいっぺんほうりいだす> [きのすけ] あおかしろか [しあん] やっばりすじを。 ながやぎのことさ <あお。 しろ。 すじ。 みなうなぎのななりうなぎくいのつうげんなり。 にょうぼうはしょうじょにいいつけてほりえちょうへとりにやる [おちせ] はやくよ [きのすけ] ときにえんさんきょうまちのしんぞうけへのいろごともみだしになったじゃあござりやせんか [えんじろう] それでふさいでいるのさ。 にかいのうちに。 ここのわりいにょうぼうがあるからよ <とすみよしやがはったあおきんとやきがねの。 ぬのめぞうがんの。 のべのきせるでむねをたたいてみせる> (五ウ) [しあん] ぜんてえまんぎくにしょさをつけて。 とつしがあいてにするから。 はいらねえわな <とちゃかすようにうれしがらせる> [えんじろう] けさもおわりやのおとこがふみをもってきたがけいせいもんししょうとたてひきになってひっこんで いるそうよ。 なにかあわれなくさぶえいりのうしろでよもうという。 ふみだっけ <とふたへづるのりょうくちのひきかけのかみいれから。 やけばのえずをみるようにみよしへべにずりのはんぎれへかいた。 ふみをほうりだす。 きのすけはとってひらき。 としてとかいたところからさきをよんでみる。 なにかいろいろなてんとりをかき。 しよせんなかのちょうでのあいびきもきをつけるだろうしわたくしもたてひきだから。 えどちょうのかたをつけて。 いっそはれてきてくれろというぶんてい。 すえにぜひぜひということがとおばかりかいてある。 じつはばんしんとのなれあいで。 (六オ) えんじろうをいろじかけでよぶきょうげんこのごろはやるてなりと。 さとっていればきのすけはふといじょろうとおもいよんでしまい> [きのすけ] でごいのすえぜんなにかありがてえくね。 あのじょろうはたしかにはんごろしにしておきなさると。 あだをしやすにえ [えんじろう] やりてがいうにゃあ。 はれておいでなさるともにかいをごえんりょなさるともと。 かわばおりのひもをみるように。 りょうほうへくぐらせていうからどうもならねえ。 こうなってみればふびんだよきついことをきりかけもしめえから。 えどちょうのかたをつけて。 いっそおもてむいていってやろうかともおもうよ (六ウ) [きのすけ] そうなされば。 きついくどくさ [しあん] こいつれてむまいところ。 ああいろおとこにはなにがなる <そばにあるさみせんをとってつめのさきでめりやすをひく> <うた> 「みなづきもながれはたえぬうきよのきしによふねこぐちょうふりそでのかおにまがきのあとつくほどに。 はてなうきなのてならいもくさめくさめのやるせなく。 [おちせ] もしそのめりやすがこのごろひろめのあったすがおとやらかえ。 そのあとはどうだえ。 [しあん] たいあんがみょうにふしをつけたよ <うた> 「ふみのさきめのくちべにもほかへうつさぬこころとは。 (七オ) かみがみさんもどこやらも。 とうにしょうちであろけれど <あいかた> ほれたしょうこをいつみしよとおもやかたきしわすられぬわすられぬみはおもいいだしもせぬほどに。 おもうているぞえわしやほんにさっしてくだんせわしがなにおのじをつけていつかさて。 つくろいのなきなつのふじ [きのすけ] きょうでんがいっぱいに。 うがったもんくだ [えんじろう] かなやのしろたえがついぜんのめりやすはなんとかいったっけの [しあん] それはなつごろもさ [おちせ] (七ウ) はなぐもりはよんだいめのせがわさんの。 ついぜんだそうだねえ [えんじろう] まえのせがわはどうしたの [きのすけ] かんのんのじないにいやしたがかこわれたそうでござりやす [おちせ] たまのいさんはやっぱりなかのちょうにいるかねあのこもふしやわせだねえ [しあん] そうだそうさ。 じめえだそうだから。 そうおうなところをみたてにでているのだろう。 このじゅういくよしのおいさに。 ことづけをして。 よこしたっけ [おちせ] ぜんてえうわきから。 をこったことさ [しあん] おめえのようにきのさんにじょうをつくしたひとも。 あるにのう [おちせ] おやばからしい [しあん] よしはらいらいばからしいを。 ひさしぶりできいたわえ <とわらう。 にょうぼうははごいたのちゃほうじで。しあんをしたたかたたく。 このうちえんじろうはきょうまちのいろごとのうぬぼればなしきのすけはううありがてえううそうさと。 いいかげんにあいさつしているところへげじょはうなぎをかってくる。 にようぼうはかんをする> [きのすけ] おこころやすいからそのまんまだしや [おちせ] おやそれでも [えんじろう] いいわないいわな <というゆえはかまのないちろりのままいだす> [しあん] こいつあきながしのちろりだの。 しゃれたもんだ <このあいださけになりうなぎもあらかたたいらげてしまう> [きのすけ] ほんにすみよしちょうのかわじから。 ちゃいれをもってきておきやした。 (八ウ) ごろうじやし <ととだなからちゃいれをふたつだしてみせる。 つちいろいとぎりくすりのかかりあんばいをみて> [えんじろう] こいつあきょうがまだわえ。 しんべえかまんえもんだろうきんいちまいくらいかの。 こっちらはいっこうなものだとんだねきものだ。 このじゅうすきやがしのふしじんからせとのたまがわとたきなみをみせによこしたが。 もっともえんしゅうのかきつけがあったが。 よんじゅうりょうだいだめがでるのふくろはしろじのこぼたん。 ひとつはごんだゆうだっけどれもはくさきはよかった [しあん] このあいだはしばでこうげつのよこいちぎょうをみやしたいっぺんのくもにしよりひんがしよりといふごさ。 (九オ) ひょうぐもようござりやした。 てんちはやっばりふとじけだが。 ふうたいいちもんじはあんらくあんさ [えんじろう] おれにゆずってくれめえかの [しあん] はなしやすめえよ [きのすけ] かどちょうのそうろくがこうらいのごしょまるきんかいをもっていやしたっけ。 しながわのばんせんがもっているしょうかどうのほていはとんだできのいいものさ。 ばんせんといえばもしまだおめえさんにはなさねえが。 りゅうこうさんかむらたやでおおいろごとさ。 (九ウ) なんとかいうじょろうでござりやした。 このごろはむらたやのへやはおうぎやというもので。 まんせんもおつまもうたをよみやす。 [えんじろう] あそこのそのうたというじょろうをおれがかったよしんじゅくからこしたはしもとはまたあっちへかえったそうだの。 おいろといういいじょろうがあったっけ。 みょうこくじのにおうにちょうちんがあがっていたっけ [きのすけ] ただあさのけしきばかりのところだよ。 といやばでむまのいななくには。 あやまるて (十オ) おおきどのいしがきにせきだのかねのはさんであるのは。 なんだの [しあん] あれはなんのがんをかけるのさ [えんじろう] おいらはあのとちにおいてはふつうだよ。 ちっとたびもしてみようす。 とうじにいったときかたつがところへ。 いったままだ [きのすけ] ごぞんじなくってもなところさ [しあん] しかしいてきだもきみありだよ。 吉よしはらならつけとどけのふみをやろうというところへ。 だいのものをおくりやす [きのすけ] いやもうだいのものがきちゃあおおさわぎさ。 こわがるものはおたかしょうのおとまりいやがるものはいつつがはりにしょうめんをはるの。 (十ウ) にぎやかなのはえびすこうさ。 みこしをこしらえてにかいじゅうをかづくうちもあり。 めしたきおとこをえびすにこしらえて。 はやしたててありくうちもありやす。 ぜんてえしろうとしばいのはやるところさ [おちせ] もしまえかたはまつばやでもたびたびきょうげんがござりやしたねえ [しあん] 丸えびやなぞにもよくあったよ [おちせ] ぼくがさんがくどうで。 たまやのさんぞうさんがごろうで。 だいもんのしろべえさんがすけなりで。 (十一オ) おかしいことがござりやしたっけ [きのすけ] きょうげんといえばそうじゅうろうまつがろっけんのおさくをきれて。 ふるいしのとよくらえこっていくそうさ。 おかしいじゃあねえかねえ [えんじろう] あいつがなかずでめっかちのじごくをかったときほど。 おかしいことはなかった [おちせ] もしでえぶきなっくさいよ。 さんやそこじゃあねえか [えんじろう] ほんにしばいのゆきがろうそくへふったというにおいだ。 それおしょうぬしのはおりだそうだ [しあん] さあさあこいつあおおさわぎだかかあにしかられることをしだした (十一ウ) [きのすけ] もちっとのことでもろせをたのみにいくところだ [しあん] しゃれどころではねえわな [えんじろう] やけぼこりでいいのさ <このあいだにょうぼうのてりょうりにて。 たまごのあつやきにわさびじょうゆ。 ふるなすにもりくちのかくやうめざけのあんばい。 えんじろうしあんへちゃづけをいだす> [えんじろう] なるほどおしょうはよくくうぞ。 ぬすびとにはきまった [しあん] もしまつばやじゃあこうめのあおいのをだすのう [きのすけ] あれはつけめさ。 おうぎやのせんべいの。 ちょうじやのちょうあしのぜん。 よつめやのかすていら。 たけやのみずがいしずかたまやのえましむぎ。 (十二オ) こいらはつけめさ [しあん] ちょうじやじゃあねえが。 はてなといいてえところだ [きのすけ] はやりことばもあじなものだ。 ちよっといいだすとむしょうにはやるよ。 このごろのはやりはおうぎやのきこうさん。 ちょうじやがはてな。 ぶしやれまいぞ。 おたのしみざんす。 まつばやがじやあおっせんか。 たまやのおにのくび。 だいもんじやのしらあんもよくいうよ。 さまということをせといゝやす。 えちぜんやはしんにということをたんというね (十二ウ) [えんじろう] ちょうじやのにってんさんと。 きれいでざんすよと。 まつばやのやまでらと。 さかことは。 いつのまにかすたったの [きのすけ] いまでもほうぼうでいうものは。 しったかさ [しあん] おちさんおめえはよくしってるだろう。 おおかなやのしょうがつのしきせはなんだっけの [おちせ] たしかじがくろでいろいりのはなたてわき。 かどのつたやがたかのもようさ。 わかなやがわかまつにかすみ。 なかおうみやがはなごうしでござりやす。 (十三オ) つるやはぼたんのすそもようのときもあり。 ひじりめんのむじのこともござりやす。 かどのたまやはぼたんさ。 まつがねやがさくらがわさ。 まつばやのくじゃくしぼりと。 おおえびやのほうおうがよくまちがいやしたっけ [えんじろう] おうぎやのじゅうにひとえちょうじやのわかまつにがくはよくひとがしってる [おちせ] せがわさんのつきだしのときは。 いつでもかれいでやつはしにかきつばたのもようでごさりやすだいもんじやのつきだしはいつでも。 (十三ウ) とかくさかなのもようさ [えんじろう] しょうがつがんじつにれいにでるのは。 おおびしやばかりだの [おちせ] さようさ [きのすけ] つきだしのときへやもちばかり。 うちへのこるはどうしたわけだしらん [おちせ] あれはさわかりやせんよまつばやはぜんてえかてえうちでござりやす。 じょろうしゅにうわぞうりをはかせやせんいまでもはくものは。 せがわさん。 まつひとさん。 へやもちでふたりばかりござりやしょう。 そしてれいびにはみんなぞうりさ。 (十四オ) くしこうがいもちゅうざまでぞうげまきえでござりやす。 さんやでえぶいぶるによ。 ちっとさしくべればいい [しあん] ちょうじやもかてえうちだよ。 きゃくのまえはうわぞうりをてにもってとおるの。 きゃくのこねえじょろうはつるしがとぼるとなかのちょうへださねえね。 にかいにしょうべんじょのふたところあると。 はしごをにわからあがるようにつけてあるは。 ちょうじやばかりだ [きのすけ] まるえびやにははしごがふたところあるによ。 おうぎやのしょうべんじょほどとおいのはあるめえ。 さむいじぶんなぞはてえぎだよ。 はんひちがかっぱをきてとこをまわすもひさしいだらけだ。 たまやもかてえうちさ。 そしてはやくみせをひかせるうちだよまつばやじゃああねじょろうのことをわっちらんというねおうぎやじゃあざしきでといいやすちょうじやじゃああねじょろうのそのあねじょろうのことをおおきいおいらんといいやす [えんじろう] たまやといえばしせきが <こむらさきがことなり> しょうぎはあがったかの (十五オ) こんじゅうがぶつがきょうかくのまぜで。 にばんまけたそうさ [えんじろう] きんぎしょがをやるきだの。 けいせいにもいろいろなくせがあるものだ。 きさかたが。 みずかがみのめりやすがすき。 せがわがちゃのゆ。 うたぎくがじぐちのてんとり。 すがわらがうめをたち。 わかづるがはいかい。 ひなづるがだんじゅろうびいき。 まつひとがどうしたのだえ。 ちょうざんがちょっとみな。 たきがわがみっつしっぽうのもんどころをかえず。 ここのえがかぶろのほかにおとこのこをかかえておくことなどは。 (十五ウ) いまでのうがちだ [しあん] こんじゅういまどのぼくががりょうへめえりやしたら。 いづつやのせんぺい。 くわれきまつやのぎょみんいづみやのこえん。 いのじいせやのせいら。 ながさきやのこはん。 おはりやせつひさ。 かんぼくといういしゃ。 そうしょうのとりゅう。 なぞがきていて。 ばいしでんの <ばいしとはすがわらがことなり> はいかいをしていやした。 いなぎもげんじのかきいれにこっていやすよ。 じないのおたみがしんでちからおとしさ。 (十六オ) ぼくがもつりにばかりかかっていやす [えんじろう] きょうはにじゅうろくにちだのあさってはみかわじまのふどうへいこうぜえ。 きのぼう [きのすけ] めえりやしょう [えんじろう] あとげつのふどうほどけいせいのでたことはおぼえねえ。 のうきのぼう。 まずきさかたか。 たわらやのよしのにしきどのわかづるがでるしななこしがでるしななさとがでるしおうぎやのかたうたがでる [きのすけ] いわこしもでやした。 からこともたしかみかけやした。 げいしゃもでえぶみかけやした。 (十六ウ) あさおにこまじ。 おりせ [えんじろう] ひょうごやのおくにもきたっけ。 なるほどげいしゃははんじょうだ。 けんばんにそばがたえぬはずだ <ざしきへとうでるとけんばんでいちぶがそばをかうなり> [しあん] もしらげつがいもうとはいづうめと。 ようじやのおいくを。 そうじめへにしたというかおだねえ。 あれでうすいもがねえといいむすめさ [えんじろう] なにいいものかうすいもどころか。 ひめじがわのもんがらというつらだ。 ときにちよっとよっておおばなしになった。 (十七オ) ちょうどいいじぶんだの。 もうひるみせのおみきどつくりもひけたろう。 きのぼうあいばつせえ。 こんやはいちょうめのつもりだのうおしょう [しあん] おちさんきのさんをあずかるによ。 おれといっちやあふりしんのいちやつきでもさせるこっちゃあねえいろおとこのていしをもつとこころづかいだよ [おちせ] だいじのもんだがおかしもうしやしょう <とはいえども。 このごろよしはらからきたふみを。 ちらとみたゆえ。 きのすけがいろごとのできたことをしょうちでいる> [きのすけ] おともをいたしやしょう。 (十七ウ) おちせきものをだしてくりや <ときのはいっちょうめときいてあいたくちへもちなり。 にょうぼうはつうゆえいろめにもださず。 たってとだなのかさねだんすのひきだしから。 ゆうきじまのうわぎくじゃくしぼりにせきちくあられのへりをとったしたぎ。 ひじりめんのじゅばん。 くろうえだのはおり。 これはえんじろうにもらったのゆえ。 にょうぼうのつうにておわむきにきせてやる。 ぜんのすけはきてしまい。 かみいれをふところへいれ> [きのすけ] ちよっとびんをなでつけてくりや <にょうぼうはさしている。 にぶほどするつげのくしでなでつけ。 まつばかんざしで。 びんのところをまきこむ> [しあん] <うた> 「むすぼれし。 ちすじをわけてみだれがみてにとりどりのものおもい [きのすけ] おきやあがれ [おちせ] さあようござりやす。 あれせわしない [えんじろう] ここのうちのとだなが。 ちょうざんがつぎのまというもんだの <きのすけはゆこうびょうぶ(@)にかかっている。 わかまつやのわかづるがだしたもちつきのてぬぐいをとってたもとへいれ> [きのすけ] さあおいでなさりやし <えんじろうしあんたってかってへいづる> [おちせ] おやしあんさんやけあながめにたちやせんは。 もしづきんはよしかえ [きのすけ] こうともししちょうさんのところからひとがきたら。 たつのくちへでもいったといっておきや。 それもよしこれもよし <とそこらをみまわしながらかってへいで> なにかわすれたようだわえ <とすこしかんがえて> おおそれそれふくいちょうのとよくにがところからひとがきたら。 わすれずにこのじゅうのやしきのをにぶやるのだよ (十八ウ) <とだんはしごのこひきだしからうらづけをだし> こいつもはかなくなったす <とはいてでる。 ちんがあとについてでそうにするしょうじょはだきながら。 えんじろうと。 しあんがぞうりをなおす> [しあん] これゆびぬきがおちてるよ [えんじろう] ちかめがとんだものをみつけだしたおちさんいってきやす [おちせ] さようならごきげんよう。 おっとおつむりがあぶねえ [きのすけ] さあおさきへ <このあいだやなぎばしよりおおさんばしまでせんちゅうのしゃれよしはらようじのふさならであまりながながしければここにもらす ○そのに きょうこのごろはいたこやかるいざわではやるじぶん。 きうえだぞろいにゆかたをしたぎ。 こいちゃざやのそでくち。 もへぎさなだのうらつきでとんだあやまる(@)なりにしのくぼのがぜんぼうだにや。 ほんじょのわりげすいあたりでみかけるてあい。 くらやどでいやがられるなまつうどもにさんにん。 りょうほうへわかれてどてのはしをとおりながら。 ひとりのにほんざしくわえぎせるをはたいて [さとかぜ] あれあれみさっせえ。 (十九ウ) たなかのほうから。 さんまいのはやかごがくるが。 いまじぶんなぜあねえに。 いそがせるだろうの [かぎょう@] ほんになにものだろうのこいつはげせねえわえ <といううち。 はやかごはどてのきわまできたり。 またたなかのほうへ。 かづきもどす> [ともじろう@] あれみさっせえ。 かつぎもどすぜへへきこえた。 あれはたしかかこをかきならうのだ [さとかぜ] なるほどそういえば。 なかにへんなやつがのっている [かぎょう] なんになってもならいのいることだの。 これこうがところにこうほうはしょうしょうなしか。 こぎくをいちじょうかいてえ。 (二十オ) おれはすこぶるすこぶるしゅうふうだて [ともじろう] せいろうのきゃくが。 そんなけびなものをもつものか。 きんならいっくらもある。 けいせいのわるがみを。 かすりごうしとさっせえな [かぎょう] それでもかみがねえと。 なにかふところがいねえようだ [さとかぜ] これかみをゆうなら。 ここのかみいどこがいいぜ。 こっちらのかみいどこは。 へただぜ [ともじろう] このこうさつばはよくできたのう。 はちじゅうりょうかかったということだ。 どういうもんだろうの [かぎょう] こうとくじのもんじゃあねえか (二十ウ) <としゃれながらきたり。 あとよりわるいしあん。 きたりきのすけまんなかにはさまれてえんじろう。 きたりゅうのでんがくおうぎにて。 ゆうひをよけながら。 きれいごとにてゆうゆうとくる。 なまつうどもは。 あとをふりかえりふりかえりみて。 えもんざかをおり。 なかゆびとくすりゆびで。 ひたいをくるりとなでてみて。 はなをちんとかみ。 うわまえのえりさきをひとつひっぱりいきすぐる> ○かわたけのながれはたえずしてしかももとのきゃくにあらず。 さとにうかるるむだびとは。 かつきれかつなじみて。 ひさしくくることなしといえども。 つきだしからなじみてねんのあくるまでくるきゃくもまたすくなからず。 なにがどうだかわからねど。 ただひとのきをつりあぐるおおよせこよせのくるわのなとりが。 すらりとおならびなされて。 (二十一オ) よいなかのちょうのゆうげしき。 ひだりのたけむらにひして。 みぎがわのななけんのきをなぶ。 はでなあそびをするがやがまえ。 このときまじめなるらんとしゃれながら。 かどぐちより [しあん] このあいだはおせわでござえした [えんじろう] おしょう。 むう(@)のひょうごやにいるのが。 ちょうじやのつきだしだ。 よっぼどせがわというばがあるによ [きのすけ] かおるとはまずながうつくしい <といいながら。 さんにんあがる。 げじょはてをふきながらいで> [げじょ] これはおそろいなすってようおいでなさりました。 もしえんさんがおいでなさりましたよ (二十一ウ) <にょうぼうおふじかってよりでる。 おえんとちゃつむぎのこそで。 くろななこのおび。 かみはきょうぐる> [にょうぼう] ようおいでなされました [えんじろう] しゅじんはどこだ [にょうぼう] ただいまおざしきへ。 まいりました。 ほんにえどちょうからたびたびおひとでござりました。 よほどおひさしぶりでござりますね [えんじろう] ひさしぶりもてえそうだ [しあん] よしはらじゃあしごにちこねえと。 ひさしぶりのようだそふうさ [にょうぼう] もしえんさん。 きょうまちになにかおせかいが。 おできなすったそうでござりますね。 あんまりおうわきをなされますな。 それでおひさしぶりだともうしますのさ <とさんにんがこしのものをとってちゅうごしになっていて。> (二十二オ) ねえきのさん [えんじろう] いんにやよそれにもわけのあること。 どうでしまいはろくなことには。 なるめえとおもって。 こっちへはさたなしにした [にょうぼう] それはようござりますが。 もしえどちょうへでもしれましては <とすこしまじめでいう> [きのすけ] そのおせけえもすんだことだそうだ。 もうここきりのことさ [にょうぼう] さようなら。 ようござりますけども <とたてかみだなのよこてかたなかけへわきざしをかけ。 しょくだいをともしてあぶりをかたよせて。 さかづきだいをまんなかへだす> [えんじろう] いのじいせやのにかいにうしろをむいているのはだれだ [にょうぼう] おうぎやのおうぎのさんでござります [きのすけ] ぶたいはなれたものさ (二十二ウ) [しあん] つたやのさんしゅう。 つるやのありはら。 このはるのつきだしはどれもあたりだ。 ちょうじやのめいざんをこのじゅうむこうじまでみかけやしたが。 ななこしというきみがござりやす [えんじろう] ちょうじやといえば。 みさやまもとんだうつくしくなった [にょうぼう] まつばやのをはやくみとうござります。 <このうちすいものすずりぶたどんぶりいろいろでる> ちつとおすいなされまし [しあん] サアはじめなさへ [にょうぼう] さやうなら <とさけになる。 ととえんじろうへまたさかづきまはる。 にょうぼうへさししゅくぎをする。 みなひととおりりさかづきすみ。 このあいだにまつだやを。 しまいにやる> [えんじろう] むこうとおるはとうべえじゃねえか [しあん] とうべえとうべえがさんにんとおる [きのすけ] おきやあがれ [えんじろう] これこれとうべえとうべえ (二十三オ) [しあん] でたがねえとうべえとうべえ [きのすけ] とうべえますとうべえはままのもみじ(@)かな [えんじろう] これちっとだまらねえか <とうべえはいのじいせやのまえあたりでききつけかけてくる> [とうべえ] これはどなたかとぞんしました。 ごきげんようござりますか [えんじろう] どこぞへいくのか [とうべえ] ひなづるさんのおざしきへまいります [えんじろう] ざしきでなくばはなそうとおもってさ [とうべえ] それはざんねんでござりますまつぞう。 とうじ。 しゃみこや。 がぶつがまいっておりますから。 ぬけにくうござります。 こんばんはやはりいっちょうめでござりますかもしきのさまとらけんはどうでござります (二十三ウ) [きのすけ] またまかそうと思って。 いそくならいってきねえ [とうべえ] さようならごめんなされまし <となにかせわしくまたかけてにちょうめへはいるにちょうめよりたけやのうたぎぬでてくるあとよりうたぎくでてくる> [えんじろう] おしょうむこうからくるのはだれだとおもう [しあん] たけやのうたぎぬさ [きのすけ] こいつはきつい。 それではきんがんとはおもわれねえはえ。 [しあん] かおもちょうちんのもんどころもわからねえが。 かぶろがみみのわきへくろいいとをさげているのはうたぎぬとだいもんじやのはたまきばかりさ [えんじろう] あじなところにめききがあるの [にょうぼう] おふたりながらたけやのせんりょうばこで。 ござります [しあん] うたぎくがじぐちはどうだの [にょうぼう] もうひとつあがりませんか。 えんさんおちゃづけわえ [えんじろう] ふくちゅうまんまんさ <しあんちょうしいじってみて> [しあん] もちっとあつくしてくんなさえ <いわしときすのほうろくやき。 かわりのすいものでるふたをとってみて> [きのすけ] いやあかもせんば。 はつきだいこん。 ありがてえわえ。 [しあん] りょうるもんだよ <というところへたきがわがかぶろくる> [めなみ] もしえおふじさんに。 おいらんでおっせえす。 あのけさのふみをとどけておくんなんしたかと <のれんをひっぱりながらいう> [にょうぼう] むむそうもうしてくりゃ。 けさほどみほぞう(@)にもたせてつかわしましたが。 おるすだともうしてごへんじはまいりませんと。 もうしてくりゃ <とかってのほうをむき> のうみほぞうごへんじはこなんだのう <かってより> [みほぞう] まいりませんまいりません [めなみ] そんならあの。 (二十四ウ) そうもうしいしょう [にょうぼう] ちっとあそんでいかねえか [めなみ] しかられんすよ [えんじろう] これあのこや [にょうぼう] めなみあなたがなんとかおっしやるよ [めなみ] なんでおざりいすえ [えんじろう] おいらんととうじさんによくいってくりや [めなみ] あいそうもうしいしょう <とでていく> [にょうぼう] とんだりこうなこでござります。 みほぞうやそのおくりものは。 たまやのたがそでさんのおざしきへいくのだよ。 そしてみつさんはななつにかえらっしゃるそうだから。 かごやがきたらさんちょうだよ <そっちこっちするうちえんじろうがあいかたまつだやのおいらんおすかわむかいにくる まゆはすいうのごとくはだはしらゆきのごとくこしはれんそのごとくははがんばい(@)のごとしえんぜんとしてひとたびわらわばようじょうをまどわしかさいをめいす そのふぜい。 (二十五オ) でんちょうのかたばみやきゅうべえがぬった。 からいとのそうぬいにだてもんのうちかけしろじゆすのへりとりむく。 かみはてがらわげ。 かみのうえはこまものやのみせのごとく。 かぶろのかみひとりは。 はりうち。 ひとりはやっこしまだ。 うつくしくかみゆいの長二ちょうじがてぎわをみせ。 ふりそでしんぞう。 かわなみせわしんぞうたまゆう(@)。 つきそひきたるばんしんたまゆう。 おいらんのえもんをなおし。 うちかけのさがりたるをなおしえんさきへこしをかける。 おすかわにっこりとわらい> [おすかわ] おふじさんどうなんしたえ <といったばかり> [にょうぼう] さあおいらんおあがりなされまし [おすかわ] ここがようすよ [たまゆう] えんさんよくおいでなんしたね [きのすけ] いつもうるわしいおかおつきね [しあん] なにかむしょうにきれえでござりやす [たまゆう] なぶっておくんなんすなおがみんすにええ(引) <といううちまつだやわかいものせいじ。 ちょうちんをけし。 おたのみもうしますとでていく。 たまゆうはちゃじのずきんのながづつらから。 きせるをだし。 たばこをつけておいらんにわたす。 またつけてえんじろうみなみなへやるおすかわかぶろのみみへくちをつけて。 なにかいいつけてやる [おすかわ] いのじいせやにときょうさんがいさっしゃるから。 (二十五ウ) おれがいうとって。 よくおいでなんしたといってきや <かぶろはむかいへいく。 あげえんのしたからいぬがのびをしてでる> [かわなみ] おやあわっちといえば。 びっくりしいしたよ [にょうぼう] このおさかづきはわたくしがおあづかりもうしましょう。 おゆきやすぐにつれもうしや [えんじろう] ごちょうとばんりと。 おしづやおきちをよびにやってくだせえ [にょうぼう] かしこまりました <げじょちょうちんをともしさきへでる。 けいせいもたちみなみないずる> [にょうぼう] さようならおいらん [おすかわ][たまゆう] おやかましゅうござりいした [にょうぼう] どなたもごきげんよう <みなみないっちょうめへまがりさきへいくきのはちよつとまつだやのみせさきへより> [きのすけ]いがわさん。 なつさとさん。 どうなすった。 なにかしんになってかきなさるね (二十六オ) [いがわ][なつさと] でえぶみちがちこうおすね [きのすけ] こんやはえんさんのつきやいさ <というところへ。 じまわりにさんにんみえさきへきたり> [じまわり] なんだあかいべべにあおいべべにしろいべべをきてここのみせはなんのことはねえ。 げかのくすりばこというもんだ <とあくげんをはきゆきすぎる> [なつさと] ええすかねえぞよう(ウ引) [きのすけ] のちほどおめにかかりやしょう <とまつだやへはいる。 みなみなのうれんのそばまでいき。 うちはどんどんとにぎやかにてともべやのまえにおいらんたちのちょうちんならべてありながえはかべにおいをかけてならべ。 まわしかたはたきひにあたりおおがまのうえのじゅうにのとうみょうはけんびし。 やまじゅうごとびょうのやまをてらす [ちゃやおんな] げんべえどんげんべえどん <といいながらみなみなのはきものをそろえあがる。 そうはなのふだのはってあるしたの。 ちょうばに。 ばんとういへいじいで> [いへいじ] げんべえげんべえ。 おきゃくじんだぞよ。 <みなみなはしごをあがる(@)。 あとじりにてじょろうしごにんのこえで。 えんさんよくおいでなんしたと。 くちぐちにいう [げんべえ] すぐにざしきへいれもうそう <とさきへたてゆく。 だれぞかぶろおおふうじのふみを。 ひょうしぎにうちながら> (二十六ウ) [かぶろ] たのもどう(ウ引) そっちでさっきからよばっしやるぞよ <ひとりの> [かぶろ] こんだあどけへいく [かぶろ] ながさきやへいくわ [かぶろ] さがりいい(引)す <おすかわはいつのまにかどこへかなくなり。 ばんしんたまゆう。 ふりしんかわなみ。 つきそいざしきへはいる。 かぶろはおいらんと。 しんぞうと。 じぶんのこまげたをもち。 うめばちをかいた。 てんすいをけのうえへおく> ○そもおすかわがざしきのこのみ。 なかのまのかざりやぐはにしきのやまのごとく。 いちめんのことははるかにみるたきににたり。 かこいのじょうがまはまつかぜのおとかとおどろき。 ゆこうのこそではかいでのもみじしたるがごとし。 ほんまのてんじょうにはしきのくさいろいろ。 おのおのはなのてがらをみせ。 はりつけにはしゅれんをえがいてうんじょうにちかしちんきんぼりのつくえに。 (二十七オ) ぎしのぼくちょうをちらし。 こげつまんようのそうしをならべいきょうしほうにくんじてだいじんのかみはなここにつき。 たつのくびなるたま。 つばくらめのこやすがいも。 ここにもちきたるべしとおもうばかりざしきのまんなかにぎんしょくをてらし。 しゅまきえのたばこぼん。 さんぼうのさかづきだい。 かけばんなおしてある> [しあん] いえなはまつをもってし。 もんどころはかしわをもってし。 とこばしらはくりをもってす (二十七ウ) [きのすけ] さあむずかしいことをいいだした。 このからかみはだがかいた [たまゆう] べんしゅうさんがおかきなんしたよ [えんじろう] もうとまりはしれたから。 だい(@)のみにするがいい <このうちまわしのさかずきちょうしもちきたり。 ろうそくのしんをきりていくところおさだまりのつう。 なかいすいものもちきたる。 ちゃやのおんなちょうちんをけし。 はきものといっしょにろうかへおくきのすけにあがるふりそで> [なつはま] まささんよしなんしいつつってはしごへふだをはらせんすにええ(引) <といきをきってかけくる> [しあん] きゅうじつのゆやをみるようにでえぶはしゃぐの [きのすけ] そんなにさわいだらまた。 やりてがみせしゃみせんのいちというこえで。 りくつをいおうが [なつはま] それでもからかいんさあなえんさんよくおいでなんしたね。 おゆきどんどうした <とちゃやのおんなのかたへとりつくあとよりしあんにあがるふりそでなついろくる (二十八オ) [えんじろう] このこたちふたりはむしょうにうつくしくなったよ [たまゆう] あいさいっそいろけずきんしたよ。 れいじつもふりそでのあとおさへは。 ぬしたちふたりさ [えんじろう] はやくつきだしになったところをみたい。 そのときはしらぬかおだらうの。 なついろさんのしょにちは。 をふかたおしやうがするだろう [しあん] あいさそのときになるときもののあんじがござりやす。 うわぎはまぐろのたきのぼり。 むくはぼたもちのちらしさ [なついろ] よしておくんなんしばからしい [たまゆう] おゆきどんひとつのまつせえな [なつはま] どれおれがついでやらうよ [ちゃおんな] いいえここへおくんなさりまし (二十八ウ) [なついろ] ひとつのまっせえ [きのすけ] おいらんはどけへいかしったいままでいさしったようだか。 もうどけへかみえななった。 ほととぎすのようだ [えんじろう] まつだやのけいせいもだろうそくをみるようにおりふしたちぎえがするてあやまるよ [たまゆう] わっちらんはいまいっしょうのきゃくじんのところへ。 あいさつに。 したざしきへおいでなんしたよ。 ことのやよびもうしてきや。 かわなみさんたばこを。 だしておくんなんし [かわなみ] このひきだしかえおっせんよ [たまゆう] ええじれってえ。 そこにあるからおみなんし [しあん] ききようかるかやをみなえしときこえるわえでえぶじぐちがごじょうたつだ (二十九オ) [たまゆう] それでもじれっとうおすあな <というところへ。 するがやのおとこ。 おくりものもちくる。 しゅのちんきんのまるぼん。 あらいしゅのかくひらはたまごぼり。 さんぎてのどんぶりには。 はづけにきじょうゆをかけたやつ。 これでちゃづれといわぬばかりけいせいへのてんとり。 ちゃやがつうなり> [ちゃやおとこ] えんさんにしちえもんもうしますこんばんはようおいでなされました。 ただいまたまやのおきゃくじんをおさめましてそれへまいります。 まっぴらごめんなすってくださりましと。 もうしつけました。 そしてたまやでこむらさきさんがあなたへよろしくと。 おっしゃりました <ともじもじしてかえるところへおもてざしきのおいらんかみはしのぶわげささりんどうのへりとりむくばかりうちかけにしてくる> [とめやま] えんさんよくおいでなんしたね [えんじろう] いやあとめやまさんどうなさりやした。 (二十九ウ) はなしがあるからちょっとここへおいでなせえ [とめやま] まあちょっといってのちにまいりいしょう <とかたのあたりでちょっといろけをみせ。 おくにかいのほうへゆくいれちがっておすかわみすのはながみでむねをあおぎながらきたる> [おすかわ] もうなんだかわからぬことのききてになってまいりした [きのすけ][しあん] おいらんこれはどうでござりやす [たまゆう] これこれはまいりしたえ [おすかわ] きいしたきいした [たまゆう] じゃあおっせんかえ [おすかわ] あいさ [しあん] おめえがたはしゃあねえかのかはねへかのと。 だいおんじめえのとうじゃああるめえし <みなみなわらう> [おすかわ] もしへしたでめりやすのほんをもらってまいりした。 (三十オ) ながさきやでぶんきょうさんがおひろめなんしたのでおすいっそあだでようよ [たまゆう] おやおみせなんし。 すがおとやらいうめりやすかえ。 はやくおぼえとうすねえ [おすかわ] まあのちにおみなんし <このうちぜんでる。 きうるしのわん。 せいひつむしくいのかいせきぜんにてふたつきまつだやゆえしょくもつはびなり。 こんだてはここにりゃくす ちょくばかりはまつだやのつけめにて。 れんこんのらんぎりなり。 はしははこねからとりよせるはぎのさきをけずったのなり。 これもここのりゅうぎなり。 みなみなはらはよきゆえ。 ちゃびんとともにならべたばかり。 ぜんはざしきのすてこぶねとなる。 ここへおんなげいしゃ。 やおきちおしず。 たいこもちごちょうまり。 するがやていしゅ。 ひちえもんきたり。 おおさわぎになる。 このところのしゃれ。 あまりそうぞうしくて。 ききとれぬゆえ。 ここにりゃくすそうこふうするうちひけをうつゆえ。 えんじろうがとこをおさめ。 きのすけ。 しあんも。 それぞれのざしきへいきげいしゃたいこもちみなみなかえる。 おすかわがつぎのまをたてきりちょうあしのぜんをとりまき。 しんぞうとも。 げびぞうをはじめるすずりぶたのうえにくわえのまるには。 こほうかのいしゃのあたまのごとく。 ししたけのうまにはてならいぞうしをひきさいたるににたり。 (三十ウ) ようらくでのふたちやわんのなかは。 ふるなすのつけたのにきじょうゆをかけたやつ> [かわなみ] しあんさんはどふなんした [なついろ] いっそもうよいきってねてしまいいしたいっそすかねえちかめぼうずで。 おすよ。 すかねえぞようう(ウ引) [かわなみ] おやばからしい。 なにもたべるものが。 おっせんよう(ウ引) [なついろ] となりへうめづけをとりにやれば。 ようしたねえ。 これこれそのこはだれだ。 このどびんへちゃをひとつもってきてくりや。 いいこだぞよう(ウ引) <といいながら。 はしのかわりにした。 まつばのかんざしを。 あんどうへ。 つつさして。 ふいてさすおすかわかかぶろはりょうざしをぬいて。 りょうしのふたへいれて。 ちがいだなへおき。 ねまきをおびへはさみ。 おいらんのくしかうがえをしまい。 ひをいれてきたりそこらをかたずける> [たまゆう] もういってねや。 またながひばちへあたってべんべんとおきていめえよ (三十一オ) <ながひばちというは@かぶろのあたるひばちもっともしたにあり> [かぶろことの] さようならおやすみなんし <くろもじのようじをくいながら> [しまうら] たまゆうさんたまゆうさんちよっとかおをおだしなんし [たまゆう] なんでおすえ [しまうら] あのねあのね。 これこれがさっきみせえまいりしてね。 あさってこようともうしいしたよ。 ぬしにもよくいってくれともうして。 おしゃべりをだしきってまいりしたぬしにもとんだうらみがあることのはのといってまいりしたよろこんでおくんなんし [たまゆう] わっちといえばかたつきしぬしのきなんすのをまちきっておりいさあなあ。 このじゅうのふみ(@)をとどけてくんなんしたとおっせえしたかえふみ(@)さんもあんまりすかねえふにんじょうだよ (三十一ウ) [しまうら] はらをおたちなんすな。 ぬしがつれもうしてきいすとさ。 あさってはしまっていろとって。 まいりした [たまゆう] ぬしといえば。 うれしがりきっているの [しまうら] それでもうれしゅうおさな [たまゆう] それはそうとかわなみさん。 さっきやまさきのひとに。 ひながたをやっておくんなんしたか [かわなみ] もってまいりしたよ [たまゆう] きょうはにじゅうろくにちだね。 うれしゅうおす。 あしたはかみあらいびでおすよ <というところへしんぞういっちょう。 しゃくをおさえながらきたる> [いっちょう] たまゆうさんえごしょうでおすから。 なんぞくすりをおくんなんし。 (三十二オ) いっそもうしゃくがいたくってなりんせん <とかおをしかめていう> [しまうら] わっちらんのところにきおうがんがおすから。 まあざしきへおいでなんし [たまゆう] ぬしのきゃくじんは。 おかえんなんしたじゃあねえかえ [いっちょう] まつさんはかえりしたがたへえどんがおくりにしてやろうから。 でろとって。 なつはなさんとたみのとさんと。 いちざでおすよ [たまゆう] むむはつか [いっちょう] あいさ。 ざとうのぼうずで。 さけをよくのみいすよ。 さっしておくんなんし。 わっちといえばなぜこねえに。 (三十二ウ) びょうしんになりいしたろうねえ [しまうら] えいじんさんに。 みておもらいなんしたかえ [いっちょう] やっぱりしゃくだとおっせえしたよ。 それでもあんまりひっこむとこしもとにするとおっせえすから。 きょうもむりに。 みせへでえした [たまゆう] しまうらさんここのつぎのまへしのびをおこめなんせんか [しまうら] よしいしょうよ <とはなすうちときはうつり。 やっつもすぎてくらまわりのひょうしぎかっちかっちとうってまわれば。 みなみないずくへかなくなってしまい。 しょうべんじょのきわには。 かけばんとさかずきだいおくりもののからやまのごとく。 みずだいのかめつんとしてうしろをむき。 えどちょうにちょうめあいおいやごぜんめんるいどころとかいた。 そばのせいろう。 れんじにさみしく。 にちょうつづみごばんにんぎょうのさわぎもいつしかしずまり。 おくざしきにてことのね。 さえわたる。 きくじとうは。 なつんどかつまおとと。 いままでしゃれたるざしきもたまりのてんじん。 いびきのおとはかいるのなきごえにまぎれ。 ひのようじんのかなぼう。 あんまのこえもしづまり。 くさもきもけいせいもねて。 ばけものとほととぎすとねこばかりおきているころ。 よるはしんしんとふけわたるおりよしとしんぞうがあいずにけいせいのうしろすがた。 (三十三オ) きたりきのすけがびょうぶのうちへはいるこのところのみょういさくしゃしばらくあずかりなり。 このほんをみるひと。 たいていおんすいさつあれかし。 むこうざしきはしねしのうというなかとみえまわしびょうぶのたいこうぼうもよだれをながすばかりのむつごと。 ぽっちぽっちのはなしごえ> [じょろう] それおみなんしふとんのそとへおちなんすな。 まあこつちらをお向{むき}なんしおむきなんし [きゃく] あやまったら。 ふしょうながらむいてやろう。 むかせられるはおんならずむいてやるのをおんにしてだ [じょろう] おとこごころのにくいのもうれしきほどのやぼとなりいしたのさ。 さああやまりいすから。 おむきなんし。 さみしゅうおさあな。 ぬしにききもうしいすことがおすにえ。 ゆうべどけへおいでなんした。 きょうまちかえ [きゃく] ふうおつなことをいうの。 きょうまちのねこがあげやまちへかよったうわさはきいたが。 おれがきょうまちへいったさたはまだきかなんだ (三十三ウ) [じょろう] よしておくんなんし。 とめがわさんがなかのちょうでみかけたと。 おっせえした。 さあほんとうにおっせえし。 おっせえし。 おいいなんせんと。 くすぐりいすにえ [きゃく] これさよさねえか。 ぶちのめすぞよ [じょろう] そりゃあうそでおすが。 ほんにぬしゃあ。 わっちをよんでおくんなんすきかえ [きゃく] このごろはでえぶ。 ぐちになったぜ [じょろう] それでももし。 ぬしのとっさんやかかさんが。 ふしょうちなときは。 どうしんしょうねえ。 それをおもうと。 しにとうおすよ [きゃく]それよりまださきがまるにねんみつきというものだから。 そのうちにはそっちに。 とんだことができるだろう [じょろう] よくつもっておみなんし。 (三十四オ) ごねんこのかたわっちがみのためにもわるし。 ぬしのためにもわるいと。 たびたびあきらめてみても。 おもいきれんせんものを。 ほんにあくえんでおっしょうよ。 ぬしもそうおもっておくんなんし。 あれさまたねなんす。 はなへこよりをいれんすにえ [きゃく] これさあやまったよ。 こんやはむしょうにねむい。 たばこをすいつけ}てくりや。 てめえおれがことばかりそんなにいうがおれがかおのたたねえようなことをするなよ。 こんなのろいくをだすようになっちゃあ。 たまらねえ [じょろう] まだそのようにおうたがいなんすなら。 (三十四ウ) このうえへゆびのにほんやさんぼんは。 いといいせん [きゃく] てめえにゆびをきっててもらったとてくろやきにして。 むしぐすりにはなるめえし。 しおをつけてやいてもくわれねえ [じょろう] そんならどうすればようす。 じれっとうすにえ [きゃく] なにかあじにえきもねえことをいいだした。 すこしはらがきたわえ。 さっきそこにあったのはなんだ [じょろう] しきりばでおすよ <しきりばとはうぐいすもちのことなり> [きゃく] そいつはあやまる。 れいのこうめのかりかりするので。 ちやづりにしよう [じょろう] これこれたへえどんたへえどん。 これさごしょうになるからのちゃづけぜんをいちぜんこさえてきて。 (三十五オ) くだせえ。 <かかるせかいにひきかえてとなりざしきはだいかんしやく> [じょろう] あれさおよしなんししゃくがいとうすよ。 さわってもおくんなんすな。 けがれんすぬしゃあわりいしゃれだよ [きゃく] そんならどうしても。 あのきゃくをきれることは。 ならねえな [じょろう] それがきにいらねえで。 ぬしかおいでなんせんでも。 きれることはなりいせん。 わっちやしょうじきぬしのすいりょうのとおり。 あのきゃくじんにほれていんすわな [きゃく] でえぶてめえはしらばけに。 ごうてきをいうな。 それじゃあもうりょうけんがならねえわえ [じょろう] りょうけんとは。 りょうほうのてにけんをもたせることかえ。 (三十五ウ) あぶのうおす。 およしなんし [きゃく] なんだこいつあ。 いいかとおもやあがって。 おれがこういうくをだすひになっちゃあ。 かくごうしろ。 まずでえいちこのまくらのもんどころもきにくわねえ。 このきもののすそもようのあたりもはくじょうしてしまえ [じょろう] これさそねえにあしげにしなんすな。 だいじのいろおとこのもんでおさあな [きゃく] こうすりゃあどうするこれへ。 しょうぶがたなのみをみるように。 しろいこばかりぬってつらばかりうつくしくっても。 いきしにのねえじょろうはきれえだこのじょろうはこのくらいなやつ。 (三十六オ) こいつはこのくらいなやつと。 てえげえじょろうのねうちをしてっきやってやれば。 いいかとおもって。 おかへあがつたかっぱをみるようにぐにゃぐにゃするじょろうはこっちから。 おさらばだわえ [じょろう] さあさあそれをきこうばっかりでおすそんなきにいらぬじょろうなら。 はやくおさらばをして。 おかえんなんし [きゃく] けえろうがけえるめえが。 うっちゃっておきやあがれ。 おれがいちゃあそねえにこわいか。 どうりでぶるぶるふるえるな。 これへなかのちょうのなにやのうらにゃあ。 せっちんがなんげんあって。 (三十六ウ) なにやのうらにゃあはきだめがいくつあると。 よつでにわかざりのかかつているじぶんから。 きつねのまいこむじぶんまでみつぶとんのうえにおしづまっていりゃあ。 どけえいってもいろおとこいっぴきのやくはしてくるおとこだあてめえのかおをふむにはてまひまはいらねえあとでうまるめえぞよ [じょろう] ぬしゃあかみくずひろいかえよくかんじよやはきだめをしっておいでなんすおとこいっぴきといいなんすからはただしいぬのむまれがわりかえおやきみのわるいじゅずかけとやらなべかぶりとやらじゃおっせんかえもういいなんすことがなかあ。 ゆるりっとおやすみなんし (三十七オ) <といいながらまくらとはながみをもちでていく。 きゃくははらがたってならねども。 せんかたなく。 ねるにもねられず。 あんどうのむだしょをよんでまじまじしているうち。 ななつのひょうしぎもなりてときうつり。 たなかのほうのてらでらにてはじゃんじゃんのはんしょう。 おもわれるのもあきられぬのもつまるところはみなあそびのもよう。 えんじろうはよいより。 きょうまちのわけにておすかわとおふくぜつそれもおすかわしょうとくえんじろうをすかぬゆえ。 いささかなことをてにしてねるつもりの。 みなきょうげんにて。 うちのまえのまつかざりをみるようにうしろあわせのしらかわようねよるはさらりとあけてれんじ のすきまからさしこむあかりに。 ながもちのほこりきらめくかわたれどき。 したではどっしどっしとこめをつくおとねずのおとこはあんどうをひきにくるいれかわって> [ちゃやおとこ] えんさんおむかいにまいりました [えんじろう] ふうああもうそのじぶんかの [ちゃおとこ] おっしゃったよりはすこし おそいくらいでござります [えんじろう] きのやしあんはどうした [ちゃおとこ] きのさんはただいま。 おしたくをなすっておいでなされます <というところへしあんがあいかたのなついろざしきへおいたはおりをとりにくる。 あとよりしあんおきてくる。 きのすけもみすのかみにてかおをふきながらおきてくる。 なつはまもあとよりきたる> [えんじろう] さあすぐにかえろう (三十七ウ) [なつはま] はおりのえりがおれんせん。 おまちなんし [しあん] おいらんはでえぶおつかれの <といえどもおすかわはたわいなし。 みなみなろうかへでる。 ねずはにかいじゅうのかみくずをはきあつめ。 あんどうはせんがくじのせきとうのように。 ならべてある> [きのすけ] このかみくずをもやしておくとおぎゃあおぎゃあというやつができやす [しあん] こうかみくずをはきあつめたところは。 ひつじのへどといふもんだ [えんじろう] いいいい <とはしごをおりる。 いたばなにふみがならべてあり。 はしごのしたにはおくりもののからつみかさねてあるちゃやおとこぞうりをなおす> [ちゃや] おまえさんのは。 このふたえばなをで。 ござりますかね [なつはま][なついろ] このあいだにおいでなんしえ <くぐりをがらがらとんとみなみなでる> [えんじろう] おおきにおそくなった。 かごははいっているか [ちゃおとこ] いれておきました [しあん] とんだわるいこころもち。 ふつかえいになりやした <たまやにてはもうおおどをあけ。 (三十八オ) こうしをきれいにあらいて。 しきいにしおをもってある。 りょうりばんさかなをかっている> [りょうりばん] このいかはあおりじゃあねえか [さかなうり] なにまいかさ。 かながわだあみなさへ。 このあついことを。 あおりやするめいかだと。 やすいわな。 [りょうりばん] だれかれんつに。 したがいい [さかな] なにさとんだことをいいなさらア。 このちくしょうめしっしっ。 このあじやあどうだえ。 いいいおだあみなさえ。 なまむぎだあ。 はねだでもこういうたけながはねえわな <というをよそにきき。 さんにんはするがやのまえまでくる> [えんじろう] こしのものをだしてくりや [ちゃおとこ] まあちっとおよりなされまし [きのすけ][しあん] すぐがようござえしょう [えんじろう] そうさそうさ [ちゃおとこ] さようならと <くぐりよりうちへはいりさんにんのこしのものをだしてわたす。 むこうのひょうごやなぞにては。 もうみせをひらきわかいものあげえんをふき。 (三十八ウ) のうれんをかける。 たけむらのまえにはなふだをはがした。 あとのあるせいろうつんである。 かしのきゃくやっつをうってあがるてやい。 ふじみちょうのかたよりふたりづれにてかえるひとりはきりやのよこてのしょうべんじょ。 むこうのはめへしょうべんで。 ののじをかきながら> [きしょう(@)] こうてつえまてえ。 いっしょにええべべ。 ゆうべわがおんながきてないうにゃあな。 きいてくんなさえ。 てつさんというものはわからねえものでござえやす。 こんじゅうさよじさんにいっぽんかりてたてひきをしてあげてやったに。 こんやもしらんかおをしていやす。 あんまりおしがつええ。 やっつをうってあがるきゃくはみんなあのくらいなもんだ。 なんのかのといやあがったからな。 おれがないいかげんにとじりをあわせておいたぜ。 あいつあとうもろこしを。 よこぐわえにしようという。 つらだなあ <ふじみちょうがしはやっつにみせをひくゆえやっつをうってあがるとすいっぽんにてすむこれこみずなきゃくのすることなり> (三十九オ) [てつ] ほんにそういったかとんだきまぐれじゃあねえか。 こんじゅうはにしゅぎんをほうりだして。 さけさかなつけてあすんできたあ。 あいつがいうなあごねんほどあとのこったあ。 こんじゅうもな。 きらずにあみをいれていったやつで。 ほぞをひちはちへえつけやあがった。 あすこのやてえぼねは。 おおかたあいつがくらいつぶしてしまうだろう、 あのずうてえをみやなまといもちにすればいいぜ。 ええくさびをそぎたくなった <というはせついんへいくことなり> [きしょう] なんでもばんにゃあとらやへあがるべべざえ。 こいつあおもいつきだっけなおもいつきだっけな (三十九ウ) ええ(引)とゆきすぎる。 だいもんのくちばんにんのひをたいてあたっているてすりによりかかって。 こぶまきのにこごりというしんぞう。 しもげたようなかぶろ。 きゃくをつけている。 これまじりみせいかの。 じょろうとみえるなり> [しんぞう] <おゆなちょうしのこえにて> どうなんしたえ [きのすけ] おひさしいのなにいまじぶんまでうかうかしているきゃくがあるものか。 いいかげんにしてけえりねえ。 とんだねむそうなめだ。 みずのえさんによくいってくんねえ [しんぞう] おさらばえ <えんじろうしあんきのすけさんにんは。 えどぶしをうなりながら。 だいもんをでる> [ちゃおとこ] かづさやあ(ア引) [かご] あいここでござりやす <としらたまやのたなしたのあたりにて。 へんじをする> [えんじろう] なぜこっからのせねえ [ちゃおとこ] こうさつができてから。 だいもんのきはへかごがなりません <むこうよりいずみやのむすめげじょをつれ。 あさまいりよりかえる> [えんじろう] おゆうさんでえぶおはやいおいでの (四十オ) [ゆう] おやえんさんどうなされましたけさはさんやのしょうぼうじのびしゃもんさまへまいりました [えんじろう] こえんさんによくいってくんなさえ [ゆう] さようならおしずかに [かご] さあめしまし [ちゃおとこ] おはきものはついたかさようならこのあいだに [えんじろう] よくいってくりや [かご] こっちらのだんなおはおりをもちっとおいれなされまし [かご] ぼうぐみよしかどっことな <とかごさんちょうともにあぐる> ○おくられていきちょうちんとわかれみちにきくかねとはかたげてみればつりあわぬだいじんきゃくにこいとろうおくるけいせいどうしんじゃものもらいどしあさはなし。 (四十ウ) くちよりけむのいづるころ。 たつやいまどのかわらけむ。 すわるよつでにさんにんは。 にほんづつみをひとつさんに。 いそがせてこそ <三重引> ゆくそらの さんとうきょうでんげさく そうまがきたいび ------------------------------------------------------------- 注) 十六オ二 こんぢう→45下14 こんちう 十七ウ七右 此ころ→46下7右 此ころ 二十オ二 だろうの→46上12 たろうの 二十一ウ二 なふ→46上12 なろぶ (洒落本大成にも注あり) 二十一ウ五 むふ→46上15 むかふ (同上) 三十八オ二右 紙くづ →57上7左 紙くつ @1やまいだれ×肖 @2くさかんむり×焉 @3のぎへん×豊 @4廛×おおざと @5虫×羌 @6虫×良 @7女×良 @8言×包 @9こざとへん×攵 @10髟×大×夕 @11魚×白 @12多×゛ 歌い出しの記号は「で表した。 解釈データ注 18ウ@:ゆこうびょうぶ・・衣桁屏風? 19ウ@:あやまるなり・・あやまりなり? 20オ@:かぎょう・・人名「花暁」、仮に「かぎょう」とよんで処理。 20オ@:ともじろう・・人名「友次郎」、かりに「ともじろう」とよんで処理。(ゆうじろう?) 21ウ@:むう・・「むこう(向こう)」か? 23ウ@:もみじ・・「紅葉」仮に「もみじ」とよんで処理。「こうよう」の可能性あるか? 24ウ@:みほぞう・・「三保蔵」かりに「みほぞう」とよんで処理 25オ@:がんばい・・「含貝」仮に「ガンバイ」とよんで処理 25ウ@:たまゆう・・人名「玉夕」かりに「たまゆう」とよむ。(近代日本文学大系11所収では「玉ゆふ」とあり) 26ウ@:あがる・・「上る」あがる?のぼる? 28オ@:だい・・「大のみ」だいのみ?おおのみ? 31ウ@:@・・「總」か?「すべて」?「ソウ」? 31ウ@:ふみ・・翻刻データは「文」だが、原文は漢字「文」なのか? 31ウ@:ふみ・・翻刻データ「文」だが、「丈」の可能性もあるか。 39オ@:きしょう・・「鬼勝」仮に「キショウ」で処理