2022年度 第13回「日本学術振興会 育志賞」 受賞

独立行政法人日本学術振興会
第13回「日本学術振興会育志賞」に、
文学研究科 文化形態論専攻 中国哲学専門分野の
六車 楓さん が選ばれました。

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六車 楓 さん(文学研究科文化形態論専攻 中国哲学専門分野)
【博士課程の研究テーマ】
  古代中国の身体観―新出土医学文献の読解を軸に―

2023年3月2日(木)に、日本学士院(東京都)で授賞式が行われました。
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文学研究科 文化形態論 中国哲学専門分野
湯淺邦弘 教授のコメント
 1300年続いた中国の官吏登用試験「科挙」は、本試験だけでも「郷試」「会試」「殿試」の3段階からなり、合格率わずか数パーセントという超難関です。育志賞も、研究科内の選考、大学内での選抜、そして日本学術振興会での最終審査という3段階で進められ、六車楓さんの奮闘が、私にはこの科挙と重なって見えました。
 六車さんは、中国古代の新出土文献(竹簡資料)の解読を通じて、心と体、健康と疾病、生と死という重要な問題を探究しました。こうした普遍的な研究テーマが新型コロナウイルスの世界的な感染状況を受けて再注目されたという一面もあるでしょう。もちろん、これまでの研究実績と将来性が高く評価され、このたびの受賞に至ったと思います。
 またその過程では、多くの方々のご支援をいただきました。大阪大学では、若手研究者を育てるための支援システムが整っています。六車さんの活躍に刺激され、人文系からも続々と受賞者が出ることを大いに期待します。

受賞者 六車 楓さんのコメント
 このような名誉ある賞をいただき、大変光栄に存じます。これまでご指導くださった湯浅邦弘教授をはじめとする全ての先生方、研究室の先輩・後輩の皆様、そして応募に際しお力添えいただいた大阪大学の職員の皆様に、厚く御礼申し上げます。私に関しましては、「志を育む」という賞の名の通り、これからますます研究に努めるようにと励ましてくださる意味合いで、この賞を賜ったと思っております。
 私は近年中国で発見が相次いでいる新出土文献を用い、古代中国の人々が有した身体や病気に対する考え方を研究しています。博士後期課程の3年間は新型コロナウイルスの流行下にあり、世界中の人々が自分の身体や健康と向き合うことの多くなった時期でした。病気に対して不安を抱える人々が多い今だからこそ、古代中国の身体観を研究する意義を見出せるのではないかと日々考えながら、研究を行ってまいりました。多くの方に支えていただいたことを忘れず、今後も古代中国の人々の声に耳を傾けながら、研究に邁進いたします。
竹簡(古代中国の書写材料)レプリカ.jpg竹簡
(古代中国の書写材料)
レプリカ

◆「育志賞」を目指す皆さんへ
 
「育志賞」とは、上皇陛下の天皇御即位20年に当たり、社会的に厳しい経済環境の中で、勉学や研究に励んでいる若手研究者を支援・奨励するための事業の資として、上皇陛下から日本学術振興会に御下賜金を賜り、それを受けて、将来、我が国の学術研究の発展に寄与することが期待される優秀な大学院博士課程学生を顕彰するため平成22年に創設された賞で、今年度が13回目となります。
 令和4年度は、全国の大学や学会から選抜され推薦を受けた166名の内、六車さんを含むわずか18名が受賞しましたが、ほとんどは理系の研究者で、人文系の受賞はきわめてまれな例です。
 研究テーマは「古代中国の身体観─新出土医学文献の解読を軸に─」というもので、いわゆる新出土竹簡の読解を踏まえた思想史研究です。これまでの漢文研究というと、カビの生えたような古い本を読むというイメージもありましたが、1980年代頃から出土文献の相次ぐ発見によって様相が一変し、伝来のテキストと新出土の竹簡資料とを突き合わせる研究が主流になりつつあります。大阪大学中国哲学研究室は、世界に先駆けてそうした研究手法を確立し、授業カリキュラムにも取り入れてきました。

中国哲学研究室 湯淺邦弘