【國學と國語學】
我國で江戸時代に興った國學は、古典の研究に基づいて、外來の要素の混じない純粹の日本國民の精神や生活を明かにするのを目的としたもので、その方法及び範圍に於て獨逸のPhilologieと一致する所が多いからして、之を日本の文獻學と見るものもあるが、國學に於ては、古典解程の基礎として古語の研究を重んじ、各方面の研究が進むと共に、古語研究を國學の一部門と認めるに至ったが、その國語研究は、成果に於ては稱讃すべきものが少くないに拘らず、その理念に於ては實用的語學の域を出なかったもので、今日の國語學とは性質を異にするものである。それ故、今日の國語學を以て、國學の一部門とするのは不當である。實際、國語や國文學其他が、日本精神や國民性の研究に用立つ事は疑無い。しかし、それは、之に資料を供するといふだけである。同じ國語を取扱っても、國語學は之とは違った目的をもった別種の學である。
【參考書】
(國語學一般)
國語學概説 安藤正次
國語學通考 安藤正次
國語學概論 龜田次郎
國語學概論 小林好日
國語學精義 保科孝一
(國語學の歴史に關するもの)
國語學史 保科孝一
日本文法史 福井久藏
近世國語學史 伊藤慎吾
國語學史 吉澤義則
國語學史 時枝誠記(岩波講座日本文學の中)
(一般言語學に關するもの)
言語學概論 安藤正次
言語學概論 神保格
言語 イェスペルセン著、市河三喜、神保格譯
言語學原論 ソスュ―ル著、小林英夫譯
國語教育の基礎としての言語學 石黒魯平
(フィロロギーに關するもの)
A. Boeckh: Encyclopaedie und Methodologie der philologischen Wissenschaft. 2. Aufl. 1886.
H. Usener: Philologie und Geschichtswissenschaft. 1882.
K. Elze: Grundriss der engischen Pholologie 2. Aufl. 1889.
H. Paul: Grundriss der germanischen Pholologie 2. Aufl. 1901.
G. Groeber: Grundriss der romanischen Pholologie 2. Aufl. 1904.
英語學とは何か 中島文雄(京城帝國大學法文學會第二部論纂第四輯)
(國學に關するもの)
日本文獻學 芳賀矢一
本居宣長 村岡典嗣
契沖傳 久松潜一