【どもり】
◎狂言「どもり」(北原保雄・小林賢次『狂言六義全注』 勉誠社 平成3.7.5による)
それがしは、どもりの事なれば、申事の、わけが、きこへまらせぬほどに、うたひぶしにて、あれがもってまいった物を申てきけまらせうと云(狂言六義)
我はもとよりどもりにて、言葉のさたのかなわねば、小歌ぶしに、委細の事を申なり、めづらしかりし御さたかな(狂言六義抜書)

わ、私は、ど、吃で、ものが、ゆひにくうござります。謡節で云へば、申しようござる。謡で申しましょ。聞いてく、くだされませ。
アド、如何にも、謡節でいうて聞かせ。聞かうぞ。(狂言記拾遺巻2)

(済人)誠に云分をさせたい物じゃが。夫に付て、どもりといふものは謡はうたふ物じゃが、そなたは謡はぬか。
(シテ)中/\、諷ひまする。
(済人)夫成らば諷ぶしに掛って云わけをさしめ。(虎寛本中p316)

『大蔵虎明本狂言集の研究』中 s48.7.20北原保雄・池田廣司 表現社p187
わたくしは、どもりで御ざるに依て、いひわけをゑ致すまひと思ふて、さやうの事を申かくるとぞんずる程に、うたひぶしにかかって、申わけを致してきかせまらせう

天正本には「謡で」とはない。
大系本はこの曲なし。『不審紙』もたいしたことなし。


これは、『武家共通語と謡曲』の注です。