オーストラリア辞典
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Braddon Clause,“Braddon's Blot”

ブラッドン条項、「ブラッドンの汚点」


 オーストラリア憲法第87条のことで、1897年から1898年のオーストラレシア連邦憲法制定会議Australasian Federal Conventionにおいて、タスマニア首相エドワード・ブラッドンによって提案された条項。連邦政府と各州との1901年から1910年の間の財政協定。

 この条項の定めるところによると、連邦発足後の10年間、連邦政府は連邦の権限として定められた関税収入と物品税収入の最大25%だけを確保できることになった。25%を越える部分と、25%の連邦の取り分のうち連邦が消化できなかった収入については、各州に納められることになる。こうした取決めに対する反対者らによって、本条項は「ブラッドンの汚点」と否定的に呼ばれた。

 本条項のねらいは、統一的な関税に基づく各州間の自由貿易を保証し、加えて、各州の既得権益に対して、中央政府がそれに介入することへの不安を和らげることにあった。また、西オーストラリアはその地理的特殊性という事情から、例外的に関税を課す権利を引き続き認められた。

 しかし実際には、防衛や社会保障の領域における、この10年間の連邦政府の関与の拡大に伴って、本条項はその本来の意味を失っていった。とくに1908年の最高裁判所の決定において、連邦政府は歳入の25%をすべて完全に確保する、と定められたことによって、連邦政府の介入はますます促進された。そして続く1909年に、連邦と各州間とに交わされた協定において、各州の歳入は、「人口1人当たりにつき25シリング」と定められ、これによって翌年、ブラッドン条項は廃止されることになった。

 平野孝展00