オーストラリア辞典
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Bulletin

『ブレティン』


 19世紀末に誕生した有名な週刊の文芸雑誌。オーストラリアにおける文化的なナショナリズムの成長に寄与したと言われる。

 1880年のシドニーで、ジャーナリストのジョン・アーチボールドJohn Archibaldと、ジョン・ヘインズによって、創刊された。彼らは、オーストラリア固有の芸術の育成を目指した。ブッシュの風物を題材とする詩や、短編小説、挿絵が誌面を構成した。政治的な性格の強い雑誌で、オーストラリアの連邦化を支持し、白豪主義を主張した。また一般的に労働党に近い立場に立った。詩人のヘンリー・ローソンや、バンジョー・パターソンらが活躍。1880年代終わりまでに、部数を伸ばし、「ブッシュマンのバイブル」として親しまれ、遠隔地に住む読者からの投稿も誌面を賑わせた。1896年には、アルフレッド・スティーヴンズAlfred Stephensが、見開きに文芸批評欄「レッド・ページ」を設け、評判になる。1899年から1902年にかけての南アフリカ戦争(ボーア戦争)では、イギリスを批判し、ボーア人を支持した。

 1910年以来、プライアー家が『ブレティン』の編集にかかわり、1927年からはそのオーナーとなる。1920年代になると、編集者はとくに防衛問題をめぐって、イギリスの帝国主義を支持するようになり、きわめて保守的な雑誌に変化した。1930年代には、小説家のヴァンス・パーマ、キャサリン・スザンナ・プリチャードらが活躍した。1939年までに、雑誌の人気は衰えた。1950年代には、絵入りの表紙がついた小さな雑誌へと体裁を変えた。1960年に、コンソリデイティッド・プレスが買収。現在は、『ニューズウィーク』と合併され、政治欄、芸術欄、ビジネス・金融欄などから成る雑誌となり、毎週水曜日に発行されている。

 戸渡文子00