研究室だより(2007.3.〜)

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■前期集中講義(07.7.31-8.3)

 7月31日から8月3日にかけて、奈良女子大学の、佐原康夫教授をお招きして、前期集中講義が開講された。
 佐原先生は中国古代史がご専門で、中国古代都市の社会史的諸相を、文献史料や考古学資料を駆使して研究されており、近著に、『漢代都市機構の研究』(汲古書院、2002)がある。
 今回の集中講義では、中国の古代文明期から漢代までの最新の研究成果を、豊富な図版資料を交えながら分かり易く解説された。そして、そうした研究成果を高校の新旧両課程の世界史教科書の記述と照らし合わせ、新旧教科書の記述やその変遷が、どの様な研究成果に基づいてなされているのか、といった事についても語られた。高校時代に習った語句や知識がどの様な研究に基づき、またそれらがどの様に塗り替えられて行くのかを知り、受講者は毎回大きな知的興奮をおぼえた。
 今回の集中講義は中国古代史の最新の研究成果を通時的に聴く貴重な機会となっただけでなく、高校の世界史教科書という我々の身近にあり、慣れ親しんだものが講義に取り入れられる事で、歴史研究と歴史教育との繋がり、そして歴史研究と現代社会との繋がりを考える機会にもなった。特に教員志望の学生にとっては、教科書の簡潔な記述の裏にある蓄積されてきた研究や表現に込められた意図を知る事が、今後の貴重な糧となったであろう。この様な講義の特色もあって、本講義には専門分野以外の多くの学生が数多く出席していた。なお、今回の集中講義は先生のお人柄を反映して非常に和やかで活気のある雰囲気の中で行われ、最終日講義後の懇親会は大いに盛り上った事を附言しておきたい。(T)

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■成吉思汗与六盤山国際学術検討会(2007.7.21-23)

 中華人民共和国寧夏回族自治区固原市にて、「成吉思汗与六盤山国際学術検討会」が開催され、中国国内外から総勢100名ほどが参集した。

 本研究室からは山本明志(博士後期課程、現在南開大学歴史学院に留学中)が出席し、22日午後の分科会「元代歴史文化」にて「元代蔵漢交通的駅站路線与臨洮」と題する研究報告を中国語で行った(事前に提出した同タイトルの論文は、検討会会場で配布された『成吉思汗与六盤山国際学術検討会論文集』pp. 189-194に掲載)。なお、日本からは山本以外に、舩田善之氏(九州大学)・井黒忍氏(大谷大学)が参加し、それぞれ報告を行っている。

 本検討会では、特にチンギス=カンが逝去した土地や埋葬された場所、六盤山におけるクビライとパクパの会見の評価などについて、多彩な報告、活発な議論が行われたことが注目される。

 また21日午後、22日午前、23日午前にはエクスカーションが実施され、安西王府遺址、秦代長城遺址、固原博物館などを参加者全員で訪れた。(Y)



安西王府址から六盤山をのぞむ


分科会で山本が報告


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■第44回野尻湖クリルタイ[日本アルタイ学会](2007.7.14-17)

 台風による大雨も地震の振動もはねのけて、本年も長野県・野尻湖畔でクリルタイが開催された。本大会は、昨年逝去された佐口透・金沢大学名誉教授を偲ぶミニ・シンポジウムが企画され、新疆出身の研究者数名を交え、内外の研究者が集う盛会となった。

 本研究室からは博士後期課程の斉藤茂雄と鈴木宏節の両名が参加し、それぞれコンフェッション(参加大会までの研究活動概況報告・自己紹介)を行った。

 鈴木は 16 日午後に口頭報告「2006 年夏期モンゴル国突厥関連遺調査報告──ハンガイ山脈周回記──」を行い、昨年夏、モンゴル高原を 3,300 km 踏査した概要を発表した(要旨は『東洋学報』に掲載予定)。

 佐口先生は新疆地域の研究のみならず、「鉄勒伝・回鶻伝」を訳注されており[『騎馬民族史 2 正史北狄伝』(東洋文庫 223)平凡社, pp. 1-26, 299-462]、モンゴルの古代トルコ系遊牧民の歴史研究にも多大な貢献をされた。先生の文献研究を継承・発展させるべく、現地調査の結果を実証研究に取り入れて行くことが期待されている。(S)


最終日のみ晴れ間を見せた野尻湖


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■山内助教 韓国調査(07.6.12-17)

 6月12日から17日まで、山内助教が
「にんぷろ」科研の韓国調査に参加した。

 今回の調査は、唐末の『入唐求法巡礼行記』や北宋末の『宣和奉使高麗図経』などに中国〜朝鮮半島航路の要衝としてみえる、全羅南道・新安郡の黒山島とその周辺島嶼の踏査を主な目的としていた。

 黒山島では、高麗時代の官衙・客館・寺院跡と推定されている邑洞集落、朝鮮時代の流謫者が居住した沙里集落などを訪れた。そしてその後、黒山島より高速船で紅島・三苔島・可居島(小黒山島)などを廻り、航路の状況を観察した。また、半島本土に戻り、木浦の国立海洋遺物展示館に展示されている新安沈船とその引き揚げ遺物や霊巌郡の南海神祠址などを見学した。(Y)


【写真1】邑洞集落で表面採集された陶磁器片


【写真2】韓国最西端の可居島(小黒山島)


【写真3】国立海洋遺物展示館の新安沈船


【写真4】霊巌の南海神祠址


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■満族史研究会で研究発表(2007.6.2)

 6月2日(土)、第22回満族史研究会大会が開催された。会場は当初、神戸大学瀧川記念学術交流会館の予定であったが、同大の「はしか休校」により、神戸国際会議場に変更された。
 本研究室からは博士後期課程の大坪慶之が参加、研究発表を行った。論題は「清末垂簾聴政下における東西両太后の意志決定と廷議─同治帝の祭祀をめぐって─」であった。

 なお、翌日、同じく博士後期課程の岡田雅志(実は大坪と修士課程同期入学)が、約1年間の交換留学(タイ/チュラロンコーン大学)を終えて帰国したことを付言しておく。(S)

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■東洋史研究室 春の遠足(07.5.17)

 近年恒例となっている研究室の遠足が、今年も行われた。この遠足の目的は、新入生が先輩と親睦を深め、研究室における生活を円滑におくることにある。今年の目的地は、元離宮・二条城京都国立博物館である。二条城では、特別展示として、「白書院の非公開障壁画展」、京都国立博物館では、特別展覧会「藤原道長―極めた栄華・願った浄土―」が開催されている。今年は、その両展覧会を観覧するという、これまでの遠足とは異なる行程であった。しかしながら、去年よりもアカデミックな内容で、満足したという声も多かった。

   

 京都の展覧会を見学した後、大阪・梅田に戻り、懇親会が開かれた。ここでは、新入生が自己紹介をするのだが、東洋史学科での自己紹介は、ただ自身の紹介をして終了ではない。彼らの自己紹介に対する、教員や先輩たちからの質問攻めがあるのだ。毎年、教員や先輩たちからの鋭い質問や、突っ込みを受けて、面食らう新入生も少なくない。今年も例年同様、応答に四苦八苦する新入生の姿が見られた。

 新入生は、これにめげることなく、普段の研究室からゼミまで様々な所で、先輩と会話をして、その見聞を広めて欲しい。我々研究室の学生・院生一同は、新入生の入室を常に歓迎している。(T)

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■合同演習入門講座(07.4.19-5.24)

 合同演習で四回にわたり、入門講座が行われた。今年度は「21世紀の歴史学」にふさわしい入門講座を目指して、構成に大幅な改善が加えられた。特に、回数を二回に増やした史学史では、対象とする時期を20世末まで拡大し、世界と日本の東洋史学史について力のこもった報告がなされた。また工具書紹介では、従来の網羅型を改め、文献を厳選するとともに、個々の書物に対して学部生向けのより詳しい解説がなされた。各回の内容は、以下の通り。

  第一回:史学史@ 世界編 《日本における東洋史学の淵源とその展開》

  第二回:史学史A 日本編 《日本における東洋史学ならびに関連諸学問の歩み》

  第三回:工具書紹介

  第四回:漢籍解題 《史料と史料批判−明清期を中心に−》

 学部生は、この入門講座を手がかりに、日々の演習・卒論の執筆に邁進されたい。また、院生には、よりよい入門講座を目指して、発表内容のさらなる改善を期待したい。(O)

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■春期ソフトボール大会 悲願の優勝!(07.5.4)

 ゴールデンウィークも終盤にさしかかった5月4日(金)、猪名川河川敷グラウンドにおいて、文学部研究室対抗ソフトボール大会が挙行された。昨年からの課題である「打線の細さ」を解消すべく、今回はかつての主砲&エース「山O」と、謎の商社マン「U川」が助っ人として参加してくれた。

 強風に見舞われる中、1次予選リーグを2連勝で通過し、決勝戦に臨んだ東洋史ナイン。決勝の相手は剛速球投手を擁する日本文学チームであったが、その投手を打ち砕き見事優勝の栄冠を勝ち取った。

   第一試合 日本史学戦 ○11−6
   第二試合 日本語学戦 ○11−6
   第三試合 日本文学戦 ○6−5

 詳しくは
『続ソフトボール実録長篇』巻四、二〇〇七年春之条を参照されたい[2007.06.04.公開]。

     

 東洋史チームの優勝は実に三年ぶりであり、優勝の原動力は日頃の練習に裏打ちされた堅固な守備力であった。これからも日々の練習を怠らず、連覇を目指すのだ。来たれ、東洋史黄金時代!(Y)

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■斯波義信先生 大阪大学名誉教授記念講演(07.4.24)

 本研究室でかつて長年にわたって教鞭を執られ、昨年文化功労者となられた斯波義信先生(現東洋文庫理事長)が、この度大阪大学より名誉教授の称号を授与された。これを記念して、去る4月24日(火)文学研究科において,記念講演会が催された。

 斯波先生は中国社会経済史を専門とされ、今回の講演も「中国と商業」というテーマでお話をいただいた。中国社会の変動・発展と商業との関係性を、長期的な時代の中でとらえ、様々な事例を挙げて丁寧に語られた。斯波先生の温和な語り口による明敏な講演内容に感銘を受けた者も多かった。改めて斯波先生に感謝申し上げたい。(Y)

     

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■新年度ガイダンス(07.4.5)

 4月5日(木)、東洋史研究室新年度ガイダンスが行われた。今年度は学部2回生3名、転部による学部3回生1名、外部からの院生(博士後期課程)1名、研究生1名が阪大東洋史の門を叩き、新たなメンバーとして加わった。

 今年度も引き続き山内晋次助教が司会・進行を務め、各教員が今年度開講される演習・講義などを紹介された。2007年度もそれぞれの課題、それぞれの目標に向かって精進してほしい。

 なお今年度は、佐原康夫先生(奈良女子大学)に前期集中講義をお願いしている。(Y)

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■研究会発表(07.3.24-25)

 年度替わりの、3月24〜25日に開催された第七回「遼金西夏史研究会大会」(於 大阪府吹田市・関西大学)で、齊藤茂雄(現D1)が研究発表を行った(25日)。

 表題は「隋末唐初における突厥の活動─第一可汗国後期のオルドの位置─」であり、修士論文の一部を披露した(右写真)。


 また、会期を同じくする第八回「倭寇の会」(海上交流史フォーラム/於 福井県小浜市)において、大谷昇平(現M1)も研究発表を行った(24日)。

 表題は「東南アジア近世後期のシャム湾沿岸─海上航路とその役割を中心に─」で、卒業論文の内容をまとめた発表であった。

 今後も研究会・学会等に積極的に参加されたい。(S)

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大阪大学大学院・文学研究科・東洋史学研究室