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第4回全国高等学校歴史教育研究会のご招待

大阪大学21世紀COEプログラム「インターフェイスの人文学」

「世界システムと海域アジア交通」班 

魅力ある大学院教育イニシアティブ〈ソーシャルネットワーク型人文学教育の構築〉

「大阪大学歴史教育研究会」

謹啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

さて、大阪大学大学院文学研究科の史学系では、文部科学省21世紀COEプログラム「インターフェイスの人文学」(代表:鷲田清一副学長。平成14-18年度。ホームページ:http://www.let.osaka-u.ac.jp/coe/)の取り組みの一環として、日本史・世界史(東洋史・西洋史)の壁を破る新しい研究と、その成果の高校・予備校など教育現場への反映などを計画し、後者の活動の中心として、全国の高校歴史教員を対象とした夏休みの研究会を過去3回開催しました(平成15年度「シルクロードと世界史」、16年度「アジア史と日本史の対話」、17年度「新しい歴史学と歴史教育」)。さいわいこれらは、毎年全国から70-110名(3年間の実数で31都道府県200名強)の高校教員にご参加いただき、参加された教員や地方の研究会組織と事後もやりとりが続くなど、高大連携の新しい形態として一定の評価をいただくことができました。一方、昨秋には文部科学省の新プログラム「魅力ある大学院教育イニシアティブ」に大阪大学文学研究科が応募して採択された「ソーシャルネットワーク型人文学教育の構築」(平成17-18年度)の一部という形で、「大阪大学歴史教育研究会」(http://www.geocities.jp/rekikyo/)を立ち上げました。これは、上記研究会の成果も踏まえながら、高校教員のリカレント教育への参画を通じて、狭い専門に立てこもらない優れた研究者の養成をはかる取り組みで、小規模の研究会を長期間継続することを意図しています。この両者が共催する形で、別紙プログラムのように、第4回の夏休み研究会を開催する計画を立てました。

夏休み研究会の中心的なねらいは、なんだかよくわからないままに事項や年代を羅列する歴史教育とは違った、大きな流れにせよ個々の事項にせよ「考え方や背景がわかる」「像を結ぶ」歴史教育を実現するための土台造りにあります。それは、通常の学術講演会と教育方法研究会の中間的な位置づけをもちます。主催者の性格上高校教育の方法・技術そのものには踏み込めませんが、かといって最新の専門研究の紹介に終始するつもりもありません。そのため研究会では、最新の研究をふまえるが、過度に詳細・個別的でなく、むしろ歴史学の全体を見すえた巨視的な講義と、それに対する質疑・討論をおこないます。また過去3回とも、詳しい質疑を通じて大学側が学ぶこと、考えさせられることが多々ありました。今回は、そのような研修の双方向性をさらに強め、研修内容を大学側の教育改善や若手研究者のトレーニングに結びつけるため、昨年同様に過去の研究会の成果を活かした授業実践の報告なども行い、次年度以降の継続開催を意識した経験交流・討論のプログラムを充実させる予定です。

新学習指導要領の内容の大きな変化、「世界史のとびら」「主題学習」の導入など高校歴史教育をめぐる最近の動きは、大手教科書の記述の急変が示すように、従来型の「新しい部分は敬遠して受験指導に集中する」(センター入試の場合、リード文は読まない)対応ではもはや乗り切れないところにきていると思われます。が、それにしたがって高校教育を刷新するには、受験界の保守性や、教育界・アカデミズム双方が「全体を見渡す」習慣と能力をひどく欠いていることなど、さまざまな障害が立ちはだかっています。その結果、たとえばシステム論・ネットワーク論や社会史などの新しい内容が、古い欧米中心主義や閉鎖的一国史観など「1周遅れ、2周遅れ」の何種類もの枠組みと入り混じった形で教えられ、かえって高校生や受験生を困惑させ、「歴史離れ」を助長しているように思います。激動する現代世界に、青年たちをそのような状況で送り出すことの危うさは、高校の先生方が日々感じておられることでしょう。もとより数回の研究会ですべての主要問題を取り扱うことは不可能ですが、私たちのプログラムは、個々の「新しいネタ」の提供だけでなく、それを生かせる新しい枠組みの構築と、そのための「古いネタ、古い枠組みの整理」を、強く意識しています。

過去の研修会はそれぞれテーマを立てて行ってきましたが、とりあえずCOE最終年にあたる今回は、その主要メンバーが斬新な研究成果を要約して紹介し、「阪大史学」の新しさを示すことを主題とします。その内容が、最近の教科書や大阪大学以外の入試問題にも影響しつつあることがご理解いただけるでしょう。

会場・日時・プログラムと講師陣はこちらのページの通りです。会場は70名あまり収容できますので、広く全国から世界史・日本史をご担当・ご専門とされる先生の参加を募集します。過去の研修会にご参加いただいた先生、初めての先生のどちらでもけっこうです。単なる受け身の受講ではなく、新しい歴史教育に向けた共同作業の参加者としての積極的なご応募をお待ちします。なお、参加費・教材費などはすべて無料です。遠方から初めて参加される方で必要な方には、旅費の一部を主催者側で支給いたします(予算の関係上、繰り返し御参加の方には原則として支給できません。あしからずご了承ください。)。ただし、参加にあたって以下の義務がございます。

旅費の計算や書類の発給などに時間が必要ですので、参加申し込みの締め切りは5月17日(水)必着とさせていただきます。お手数ですが、同封の申込用紙・アンケート項目のすべてにご記入のうえ、下記事務局までご返送願います。申込用紙・アンケート用紙の書式にのっとっていただければ、電子メールでもかまいません。

なお、申し込み多数の場合は、都道府県のバランスや予算などを考慮して、主催者側で参加者を選考させていただきますので、あらかじめ御諒承下さい。選考結果は6月初旬までに応募者全員に通知します。

また、誠に勝手ながら、当方で宿泊施設の手配は行いません。恐れ入りますが、選考結果の通知が届き次第、各自で速やかに宿泊先を確保していただければ幸いに存じます。

以上、ご高配のほど、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

謹白

2006年3月15日

大阪大学大学院文学研究科(世界史講座)・教授 桃木至朗