桃木 至朗 教授 


  • ももき しろう
  • 1955年神奈川県出身、京都大学大学院修了。
  • 1991年に旧教養部に着任、94年に文学部に配置換え。2010年からCSCDに移籍し、文学研究科/文学部を兼任。
  • 専門はベトナム中・近世史を中心とする東南アジア・海域アジア史。大阪大学歴史教育研究会の代表を務めている。
  • 主要著書
    •  『歴史世界としての東南アジア』山川出版社(世界史リブレット 12)、1996。
    •  『ベトナムの事典』(共編)、同朋舎、1999。
    •  『チャンパ ――歴史・末裔・建築――』(共著)、めこん(めこん選書 5)、1999。
    •  『岩波講座 東南アジア史 別巻 東南アジア史研究案内』(池端雪浦ほか編集 / 桃木至朗ほか編集協力)、岩波書店、2003。
    •  『海域アジア史研究入門』(桃木至朗編)、岩波書店、2008。
    •  『歴史学のフロンティア――地域から問い直す国民国家史観――』(共編著)、大阪大学出版会、2008。
    •  『わかる歴史・面白い歴史・役に立つ歴史――歴史学と歴史教育の再生を目指して――』大阪大学出版会、2009。
    •  『中世大越国家の成立と変容』大阪大学出版会、2011。
  • e-mail: momoki@let.osaka-u.ac.jp
  • ブログ: ダオ・チーランのブログ・パシフィック



主な開講講義・演習(2011年度)


(1)共通教育科目

・基礎教養科目「市民のための世界史III」(1学期、金曜5限)

高校で世界史を十分に学んでいない学生(世界史をまったく履修しなかった学生だけでなく、世界史Aで歴史の断片しか学べなかった学生、世界史Bで暗記に終始し歴史像や考え方が身につかなかった学生も含む)を主な対象として、アジア史(日本史を含む)を中心とした世界史のとらえ方を紹介します。


・基礎セミナー「ベトナムの歴史と社会」(1学期、集中)

 全学部の学生を対象にしています。短期間でベトナムの言葉・歴史・社会・文化などの要点を学び、紹介する練習をします。ベトナム留学経験者、在日ベトナム人などの協力をあおぐ予定です。


・国際教養科目「平和の問題を考える」(1学期、金曜1限)

 多分野の教員による、平和に関するリレー講義です。講義は戦争と相互理解という二つの大テーマから構成され、それぞれの専門家が分担して授業をおこないます。私は、(1)「民族」「国家」などを絶対の基準とする、(2)アジアを軽視する、というこれまでの歴史学の2つの問題点を克服することが、平和と相互理解に不可欠であることを講義します。




(2)文学部

・「歴史研究の理論と方法」(1学期、水曜2限)

 日本史・東洋史・西洋史3専修が共同で実施する共通必修科目です。史学系2年次生を主対象として、世界史(東洋史・西洋史)・日本史を区別せずに歴史学全般の研究動向を把握することを通じ、3年次以降の専門研究に備えることを目的とします。教員志望、歴史学とは何か知りたい、などの目的をもつ他専修、他学部の学生も歓迎です。


・「東南アジア史英語演習」(通年、水曜5限)

 主に学部学生を対象に、英語力と東南アジア史の基礎的知識を養成することを目的とした演習です。

 本年度は、Southeast Asia in the Fifteenth Century: The China Factor (ed. Geoff Wade and Sun Laichen, Singapore: N.U.S.Press, 2010)に収録されている、Roxanna M. Brownの東南アジアの沈船と陶磁貿易に関する論文をテキストとして取り上げます。


・学部・大学院共通講義「中世大越の首都と地方」(2学期、水曜1限)

 10世紀に中国から自立した大越で、最初の長期王朝となった李朝(1009-1226)の首都昇竜(タンロン)のプランと機能、地方支配のあり方の2つのテーマを通じて、中世大越の国家構造をさぐります。




(3)大学院

・大学院講義「歴史学のフロンティア」(通年、木曜3限)

 国際公共政策研究科と共同で開講している、歴史学の方法論に関するリレー講義です。1学期のテーマは、帝国とグローバルヒストリーです。私は、ベトナム、朝鮮半島、日本列島などで展開した「中国周辺の小帝国群」について話します。


・大学院「東南アジア史演習」(通年、火曜5限)

 大学院生対象の演習です。英語論文とベトナム語論文の講読をそれぞれ隔週でおこないます。

 英語論文は、Lieberman, Victor. 2009. Strange Parallels: Southeast Asia in Global Context, c.800-1830, volume 2: Mainland mirrors: Europe, Japan, China, South Asia, and the Islands (Cambridge: Cambridge University Press, 2009)をテキストとします。本テキストは、比較史の方法によって、近世以前を含むユーラシア全体の歴史を構想した点、その比較の基準を周辺部の東南アジアから抽出した点、環境・気候や疫病などの テーマに積極的に取り組んだ点、ユーラシア全体の歴史を語るために各地域に関する先行研究を摂取する方法などの点で、グローバルヒストリーの中でも異彩を放つものです。授業では中国史、インド史などの章を中心として取り上げ、それぞれの地域の世界史への位置づけとそれに関する研究動向を通じて、東南アジア史のとらえ方を再考します。歴史学の新しい方法論を考える材料として、東南アジア以外の地域・分野を専攻する参加者も歓迎します。

 ベトナム語論文は、ベトナム伝統医学の簡略な通史であるS? th?o l?ch s? y h?c c? truy?n Vi?t Nam (Vi?n Y h?c C? truy?n Vi?t Nam編、Nh? Xu?t b?n Y h?c, 1999 ) の各王朝時代の章を輪読します。


・大学院「世界史演習」(通年、土曜午後)

 この授業は、「大阪大学歴史教育研究会」(http://www.geocities.jp/rekikyo/)の活動の一環として開講されるもので、原則として土曜日の午後におこないます。

 今年度は、前半にグローバルヒストリーおよび世界史と日本史の統合、後半に環境、気象、疾病と医療など文理融合型の新しい歴史学の焦点となっているテーマを主に取り上げる予定です。


・大学院CSCD科目「歴史のデザイン」(1学期)、「歴史の構築学」(2学期)

 全研究科の大学院生や社会人を対象に、歴史に関する研究・教育の現況と課題、将来展望についての発表や討論をおこないます。

 1学期はアジア史をテーマにします。これまでの日本の歴史学と歴史教育(日本史・世界史を問わず)は、アジア(とくに中国・朝鮮半島以外)を軽視してきました。本授業では、それはなぜか、これをどのように変えてゆく べきか、アジアとのコミュニケーションのためになにを学ぶべきかなどについて、内容・方法の両面から討議・考察します。それを通じて、最新の研究成果を専門家以外にわかる/おもしろい/役に立つ言葉で発信し語り合うすべを探ります。




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