第75回 美学会全国大会

生きることの美学

近年の美学はますます考察の対象を広げつつあるようにみえます。 芸術以外の「日常」の現象に目が向けられるようになっており、芸術作品のような対象物だけでなく、 人々の生のいとなみに「美的価値」を見出そうという関心も見直されつつあります。 そこで本大会では、こうした美学の広がりをとらえつつ、一人一人の知見を持ち寄りながら、 今後の美学の展開について意見を交わしたいと考えています。 特別企画にあたっては、次の課題をとくに意識しています。 ① カントを振り返りながら現代美学の拡張傾向について議論をおこなう。 ② アート作品と切り離せないアーティストの生ついて考察する。 ③ 社会福祉とアートの関係について問い直す。 ④ 幸福(ウェルビーイング)の本質について思案する。 以上の点について皆さまと考えを交換できますならば幸いです。

実施予定

10月12日(土)研究発表、総会、映画上映会
10月13日(日)研究発表、若手発表、シンポジウム、ポスター発表、懇親会
10月14日(月)研究発表、若手発表

特別分科会:カントと美的なものの拡張

カント生誕 300 年を記念して、一般発表の分科会の一つをカント特集としたいと考えており、 一般発表においてカントに関連する発表が集まることを期待しています。 つきましては、カントにかかわる発表をお考えのかたは、それが分かるように要旨を書いていただき、 通常どおり一般発表の申込みをしてください。若手発表はその対象外とします。 分科会では、カントにおける「美的なもの」の議論をあらためて検討しながら、 現代において芸術以外の対象にも「美的なもの」が見出されるなか、 現代美学にとってのカントの意義について意見を交わすことができればと考えています。

特別展覧会:今に生きるラスキン

大阪大学中之島センター4階ギャラリーにて特別展を開催します。 ジョン・ラスキンは、美術家であるとともに社会福祉活動に力を注いだ人物であり、 本展覧会では、大阪ラスキン・モリスセンターの所蔵資料をとおして、 ラスキンの芸術への眼ざしや、社会への関わりや、環境保護への足がかりを明らかにします。 展覧会ではさらに、ラスキン設立による聖ジョージ・ギルドや、 日本のスタジオエルの取り組みに注目して、 ラスキンの思想がどのように社会活動へと波及してきたかを合わせて紹介します。 ラスキンの言葉 There is no wealth but lifeを基調として、現代社会を見直すきっかけになればと思います。

シンポジウム:社会福祉とアート

社会福祉の領域においてアートは、個人の心のケアや、社会包摂のように、何かの目的にたいする手段として語られがちですが、 アートはたんなる手段ではないという以上に、現実世界に生きる人々の活動のうちに融解しているという局面もあるように見受けられます。 本シンポジウム企画では、関係者との議論をとおして、何にもかえがたいアートの価値や、 アート作品と切り離しがたい作者の生や、社会活動そのものの魅力について考えながら、 幸福(ウェルビーイング)の意味について議論をおこないたいと考えています。 そしてこの議論をとおして美学のあらたな局面が切り開かれることを期待しています。

ポスター発表:研究交流会

研究者どうしの交流をおもな目的として、ポスター発表会をおこなう予定です。 全部で 30 本程度のポスターを募集します。発表会では、定められた時間において複数のポスター発表を同時におこなうものとし、 発表者が5分程度で研究の紹介をおこなったあと、訪れた人と意見を交わすというセッションを何度か繰り返します。 美学会にふさわしい内容ならばテーマに縛りはありませんが、審査をとおして発表の可否を決定します。 ポスターはパワーポイントなどで A4 で作成いただきデータを主催者に送ります。 詳細については後日メールおよびホームページでお知らせします。