するな させるな 性差別

―よりよきパートナーシップをめざして―


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パンフレットの目次

 キャンパスは、院生・学生、事務官、教官を構成員とするコミュニティです。そこは、男女が互いによきパートナーとして認め合いながら、平等に能力を発揮し、また対等にコミュニケーションができる学びの場・仕事の場でなければなりません。
 大阪大学大学院文学研究科・文学部は、「性差別問題委員会」を組織し、セクシュアル・ハラスメントおよび性差別一般に関する問題の防止・解決のための取り組みを始めました。文学研究科・文学部は、性差別により生じる、いかなる人権侵害も許しません。
 このパンフレットは、性差別、とりわけセクシュアル・ハラスメントについて、キャンパス内のすべての構成員が理解を共有するとともに、被害を受けた場合の相談窓口を紹介するためのものです。

セクシュアル・ハラスメントとは何か

 セクシュアル・ハラスメントとは、他の人を不快にさせる性的な言動を指します。つまり、やっている本人がセクシュアル・ハラスメントと思っていなくても(例えば、「親愛の情を表しただけ」「軽い冗談のつもり」等)、されている側が「いやだ」と感じたら、それはセクシュアル・ハラスメントとなります。
 文学研究科・文学部では、勉学・研究上、就労上の関係を利用してなされる次の行為は、全てセクシュアル・ハラスメントとみなされます。

  1. 性的な要求に服従したことに対して、就学・就労の上で利益を与えること、または、それを拒否したことに対して、不利益を与えること。
  2. 就学・就労の上で利益を提供すること、または不利益を与えることを示唆して、性的な誘いかけを行ったり、性的に好意的な態度を要求すること。
  3. 性的な言動、掲示などによって、就学・就労環境を悪化させること。(「大阪大学大学院文学研究科・文学部 性差別問題委員会に関する規則」第2条より)
 以上のように、セクシュアル・ハラスメントとは単なる「性的嫌がらせ」ではなく、深刻な人権問題であり、教育問題であり、労働問題でもあります。
 セクシュアル・ハラスメントにはさまざまな状況が考えられます。上司と部下、教官と院生・学生という関係だけでなく、クラス、サークル、研究室内における学生同士の関係であっても、セクシュアル・ハラスメントは起こり得ます。異性間だけでなく、同性間においても行われる場合があります。また、大学での人間関係の延長上にあれば、上記に該当することが行われたのがキャンパス外や「アフター5」であったとしても、それはセクシュアル・ハラスメントです。
 なお、従来、性別による役割分担意識に基づく言動と考えられてきたことも、最近はセクシュアル・ハラスメントに含まれるようになってきています。このパンフレットでも、そのように扱うことにします。

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セクシュアル・ハラスメントの一般的事例

セクシュアル・ハラスメントには、例として、次のようなものがあげられます。

言葉によるセクシュアル・ハラスメント

行動・視線によるセクシュアル・ハラスメント

環境によるセクシュアル・ハラスメント

 以上の他にも、さまざまなケースが考えられます。たとえ上記の例に該当しなくても、相手の権利を脅かす性的言動であれば、それは全てセクシュアル・ハラスメントであるということを、よく覚えておいて下さい。
 また、ある人にはセクシュアル・ハラスメントと感じられなくても、別の人にはそうである場合もありますので、注意して下さい。例えば、文化的背景、また信仰している宗教が異なるため、同じ行為であっても、受け止め方が大きく違うことがあります。
 いずれにしろ、相手の身になって考えることが大切です。

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セクシュアル・ハラスメントを「しない」「させない」ために

セクシュアル・ハラスメントをなくすには、私たちがそれらについて十分な理解を持つことが必要です。

あなたは誤解していませんか?

セクシュアル・ハラスメントなんて、私のまわりで見たことも、聞いたこともない。

 本当にそうであれば、すばらしいことです。でも、実は身近で起こっているのに、あなたが気づかないだけかもしれません。
 例えば、日頃、「女のくせに、研究室の掃除くらいしろよ。」「男なんだから、荷物ぐらい運ぶのは当然でしょ。」という言葉を聞いたり、またあなた自身、何気なく言ったりしていませんか? ごく些細なことのように思うかもしれませんが、その言葉に傷ついている人もいます。こうした一見小さなことも、セクシュアル・ハラスメントです。
 また、被害者の人生を変えてしまうほど深刻なセクシュアル・ハラスメントであれば、かえって他者が知る可能性は低くなります。他人に知られたくない内容であったり、まわりに知られると、自分の立場が不利になったりするために、親しい友人にも相談できず、沈黙せざるを得なくなるからです。また、口外しないよう、加害者から脅迫されるケースもあります。

セクシュアル・ハラスメントを受けた人は、その人自身にも原因があるのではないか。

 セクシュアル・ハラスメントとは、一般的には強者がその地位や権限を利用して、自分に逆らえない立場にある弱者に対してする性的言動です。つまり、権力関係に端を発しており、被害者の個人的資質を原因とする問題ではありません。その人がセクシュアル・ハラスメントを受けた理由を強いてあげるなら、「弱者である」ということになります。被害者側に責任がないことは明白です。

セクシュアル・ハラスメントと思われることをされていても、抵抗も抗議もしないままでいるのは、実はその人がそれほど嫌がっていないからだ。

 これが、最も陥りやすい誤解かもしれません。
 セクシュアル・ハラスメントをされた時、大抵の場合、被害者は大きなショックと恐怖のため、身動きもできなくなります。記憶喪失になる人もいるのです。そして、加害者に苦情を訴えたり、抗議をしたりすると、相手が「単位を出さない」「昇進できないよう妨害する」などという形で報復してくるのではないかという強い不安と恐れのため、また「自分にも落ち度があったのではないか」という自責の念があるため、抵抗することができず、その後も、繰り返しセクシュアル・ハラスメントを受け続けるというケースも少なくありません。
 被害者がされるがままになっているからといって、「嫌がっていない」「実は喜んでいる」などと解釈するのは、大変に大きな誤りです。自分ではどうしようもない事情のせいで、抵抗したくてもできないのです。

セクシュアル・ハラスメントを「しない」「させない」ために

セクシュアル・ハラスメントをしない

セクシュアル・ハラスメントは、絶対にしてはいけません。

 上の地位にある人は、自分の言動が、下の者に大きな影響を及ぼすことを常に自覚して下さい。自分はたとえ冗談のつもりでも、相手が深く傷つき、悩む可能性があります。自分の権力を利用し、弱者の働く権利、研究する権利を侵害することは、犯罪に等しい行為です(レイプなど性暴力に至れば、本当に犯罪です)。
 同性同士、また女性から男性に対するセクシュアル・ハラスメントもありますが、特に多いのは男性から女性へのケースです。男性側が意識しなければならないのは、女性は男性と対等なパートナーであり、力で支配する対象ではないということです。相手に好意をもっていれば、どんな行動をとってもよいわけではありません。自分や自分の大切な人(家族や恋人など)がされたら嫌だと思うことは、絶対にしないで下さい。常に相手の立場に立って考えることが、人間としてのルールであり、エチケットです。

セクシュアル・ハラスメントをさせない

 セクシュアル・ハラスメントを、決して許さないようにしましょう。「これぐらいのことで」と見過ごしていくと、さらに被害者を増やし、深刻なセクシュアル・ハラスメントを招くことになります。「見過ごす」ことは、加害者に荷担しているのと同じです。例えば、女性だけにお茶くみや掃除をさせる等、いわゆる性別の役割分担意識からくる「慣行」も黙認してはいけません。もしそのような押しつけがあれば、勇気を出し、すぐに相手に忠告しましょう。
 小さな努力を積み重ね、セクシュアル・ハラスメントをさせない、許さないという環境を作ることが大切です。

 セクシュアル・ハラスメントは、長年の社会的慣習や性別による役割分担意識に根ざすため、残念なことに、どこにでも起こりうる問題です。セクシュアル・ハラスメントのないキャンパスにするためには、男性も女性も、一人一人がそうした慣習等に目を曇らされないよう注意すること、そしてお互いの人格を尊重し、信頼できるパートナーとして認め合える関係を築いていくことが大切です。

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セクシュアル・ハラスメントを受けたら・受けている人がいたら

あなたがセクシュアル・ハラスメントにあったら

 「自分にも隙があったのではないか」などと自分を責める必要は全くありません。他人の行為は、あなたの責任ではないのです。
 あなたは決して悪くありません。悪いのは、あなたを傷つけ、人権を侵した加害者です。

セクシュアル・ハラスメントを受けている人がいたら

 まず、相手の話を最後まで聞いた後、「自分はあなたの味方だ」と被害者を安心させ、勇気づけて下さい。「それはあなたの気のせいじゃないの?」「そんな話、信じられない」などと、軽率なことは決して言わないで下さい。被害者は傷つき、悩み抜いた末、勇気をふりしぼって、あなたに打ち明けたのです。それでは、相手をますます追い込むことになります。
 そして、相談窓口に同行したり、また必要な時には証人になりましょう。その際には、被害者のプライバシーを守ることを決して忘れないようにして下さい。

 行動を起こすのは、とても勇気がいります。しかし泣き寝入りしてしまえば、加害者は被害者に責任をとらないまま、安穏と普段と変わらぬ生活を続け、さらに第二、第三のセクシュアル・ハラスメントを繰り返すことでしょう。
 声をあげれば、味方になってくれる仲間ができます。小さな勇気を積み重ねていけば、理解者はさらに増えていき、必ず、キャンパスからセクシュアル・ハラスメントを排除することができます。

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(付)大阪大学大学院文学研究科・文学部 性差別問題委員会に関する規則

(目的)
第1条 性差別問題委員会は、キャンパスのすべての構成員が、セクシュアル・ハラスメントおよび性差別一般についての認識を深め、男女が互いに平等に能力を発揮し、対等にコミュニケーションができる環境を実現することを目的とする。

(定義)
第2条 この規則において、「セクシュアル・ハラスメント」とは、以下の行為をいう。

  1. 性的な要求に服従したことに対して、就学・就労の上で利益を与えること、または、それを拒否したことに対して、不利益を与えること。
  2. 就学・就労の上で利益を提供することまたは不利益を与えることを示唆して、性的な誘いかけを行ったり、性的に好意的な態度を要求すること。
  3. 性的な言動、掲示などによって、就学・就労環境を悪化させること。

(任務)
第3条 委員会の任務は次の事項とする。

  1. セクシュアル・ハラスメントおよび性差別一般の防止に関する研修・啓発・調査。
  2. セクシュアル・ハラスメントおよび性差別一般に関する相談、および迅速な調査と救済。
  3. 必要に応じて、研究科長・学部長に報告し協議する。

(組織)
第4条 委員は研究科長・学部長が指名し、教授会が承認する。
2 委員は教授会メンバー4名、事務官1名、助手1名とし、ジェンダー・バランスに配慮する。
3 委員の任期は1年とし、再任を妨げない。
4 委員会に委員長を置く。委員長は、委員の互選とする。
5 委員長は、必要な場合には、委員以外の者の出席を求めることができる。

(相談窓口)
第5条 本委員会は、学生および教職員のセクシュアル・ハラスメントに関する相談窓口を設置する。
2 相談窓口における相談員の任務は、セクシュアル・ハラスメントに関する相談に応じ、関係者のプライバシーを厳守し、必要な場合には本委員会と連携をとりつつ、迅速に対応することとする。
3 相談員は、本委員会の委員6名からなる。

付則
この規則は、平成11年4月1日から施行する。

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相談窓口について

 人事院は、国家公務員法に基づき、セクシュアル・ハラスメントに関して、平成10年11月13日に人事院規則を制定しました。11年4月1日から施行される同規則は、セクシュアル・ハラスメントの防止および排除のための措置や、問題解決に向けての具体的方策を細かく定め、社会的関心を喚起しています。
 大阪近辺では、以下のような相談窓口があります。全国規模でセクシュアル・ハラスメントおよび性差別問題についてのネットワークが整備されつつあります。(受付時間、料金等については直接問い合わせて下さい。)

常設人権相談所

キャンパス・セクシュアル・ハラスメント全国ネットワーク

性暴力裁判全国弁護士ネットワーク
関西

カウンセリングルーム

 大阪大学大学院文学研究科・文学部性差別問題委員会は、全委員が相談員として、セクシュアル・ハラスメントおよび性差別一般についての相談に応じています。相談に際しては、プライバシーを固く守り、その内容については秘密を厳守します。委員は、任期中も退任後も、情報を決して他に漏らしません。訴えに対して、事実関係の確認、被害者の救済など、可能な限り迅速に対応します。
 セクシュアル・ハラスメントについて相談をしたり、また証言をした人が、不利益を受けることはありません。一人きりで悩まないで、どうか勇気を出して、相談に来て下さい。

性差別問題委員会委員・相談員(研究室の場所・電話番号・E-mail address)

※阿部真弓と小川孝生のファックスは共同利用のため、プライバシーが守れませんので、この二人にはファックスを送らないで下さい。


発行日  1999年3月31日
発行者  大阪大学大学院文学研究科・文学部 性差別問題委員会
URL  http://bun109.let.osaka-u.ac.jp/~naoko/SH/home.html
印刷   株式会社天理時報社

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