大阪大学西洋史学研究室

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留学体験レポート

2005年11月
大阪大学文学部西洋史学専修

留学体験記

 以下のレポートは西洋史学専修3年生の留学体験記です。
 留学を希望されている方は、参考にしてください。

ロンドンでくねくね

 私は2004年の4月から2005年の4月までイギリスのロンドンへ留学していました。
これから、もしくはこの先いつか留学したいと思っておられる方には、留学することについていろいろと考えるところもあると思います。そこでこの場をお借りして、少し自分の経験をお話してみたいと思います。

留学のきっかけ

 私は入学始めの文学部でのガイダンスで、当時の学部長のお話をきっかけに留学を本格的に考え始めかもしれません。狭い日本、特にひとつの大学の中へ閉じこもっているばかりではなく、一度外から日本や自分を眺めてみるのが大切であるから学生諸君は外に出てみなさいという内容であったと思います。

 文学部では3回生以上の学生に交換留学の制度があります。私も最初はそれで外国へ勉強に行ってみようと思っていました。しかし、経験された方もいると思いますが、一回生の授業が自分が思っていた大学の授業とは違っており、一体何のために大学へ来たのかと自分について見失ってしまいました。そんなときに、新聞で18歳以上の学生であれば誰でも申し込める奨学金の募集を見つけ、受けてみるだけ受けてみようと、あんまり先のことを考えずに申し込み、面接や作文などの試験を受けてみると合格しました。

留学用の奨学金は、それほど多くはないのですが、いろいろな企業や団体などによって運営されています。しかし、ここで気をつけなければいけないのが、というよりも我慢しなければいけないのが、行く場所がかなり限られてしまうということでしょう。私の場合は、アメリカのシアトルかイギリスのロンドンに絞られていました。あとは留学時期が限られてしまうということでした。

留学の準備

 さて、奨学金を得た私はうれしい半分、困りました。まずは、自分自身の中で準備しなければいけないことが増えたからです。
 まずは、大学へ入ったなりすぐに留学する心の準備。そして英語の準備です。前者については前々から外国で勉強するということに関して興味があり、出来るだけ早い方がいいとも考えていたので、心の準備は簡単でした。三年後というのが一年後に早まっただけです。

 英語に関してはあとで泣くことになりますが、受験も終わってすぐだし、大丈夫だろうという気持ちがありました。留学するに当って、TOEFLを一定以上の点数を出さないと無理なのかと思う方もいるかもしれませんが、留学プログラムによってはそれほど考慮されないことがあります。かといっても、ある程度の点数は取らなければ意味はないですが。目安として、私が、留学前のTOEFLはCBTで180(300満点)でした。このレベルなら日本人大学生の平均的な数字です。(ちなみにアメリカへ大学院留学するには250を要求する大学もあります)そんなわけで、英語も取り立てて出来たわけではありませんでした。

  

トラブル

 大学への書類の提出など、いろいろややこしいこともありましたが、いよいよ晴れて出発です。
   学生ビザの申込書を在日イギリス大使館に提出し、あとはビザが下りるのを待つだけです。ところが、出発を1週間後に控えた3月の終わりになっても届きません。しかも、電話が通じない。この辺りから、イギリスはなんか怪しいぞと思い始めました。これは後に大当たりになりますが。そして出発の3日前にようやく届きました。
   こうしてようやくロンドンへ向けての準備が整いました。

ロンドン橋落ちた

 留学生生活で面白くもあり大変なのは、慣れないところで生活です。
 私の場合、生まれて初めての一人暮らしでした。住んでいたところは、ロンドンの中心部にあった大学の寮でした。寮には全体で200人ほど学生が住んでいました。ほとんどが外国からの生徒です。日本人は同じプログラムで来た10人だけで、他は“外人”でした。キッチンとトイレ、シャワー室が共同で部屋は一人部屋でした。
 外国人の学生は、ものすごくリラックスして留学というものを捉えていました。言葉がそれほど苦にならないというのもあったかもしれません。が、楽しむことが出来るときに楽しもうという感覚があるのでしょう。

 留学のプランとしては最初の6ヶ月、つまり4月から3週間の夏休みを挟んで9月の終わりまでは、留学先の大学の機関である語学学校のようなもので“英語の勉強”をします。そのときにクラス分けテストがあるのですが、そのときの結果はひどいものでした。
    決定したクラスはintermediate。下から2番目です。そして授業の内容はまさしく日本での中学校レベル!かなりのショックでした。ひとつは、それだけしか出来なかった自分へ。もうひとつはここまで来て、このレベルかい、ということでした。しかし、この考え方の間違いに後で気付きました。

慣れるが一番

 最初のテストが良かっただけに上のクラスにいってみたら、そこは日本人だらけで会話の練習も日本人相手だったという人もいました。
 その点intermediate classは話せるけど、文法はめちゃくちゃな外国人で一杯でした。その中で、発言を求められ、しかも、復習をみっちり出来たので、2ヶ月で最初のクラスが終わるころには外国人のめちゃくちゃさとパワーに慣れてしまいました。しかし、英語はまだまだ聞き取れないし、話せません。
   でも、次第に話すのが苦にならなくなってきました。ロンドンへ到着したては怖くて(話せないし、それで相手に不快感与えたくもないので)同じキッチンの学生と顔を合わせるのも嫌でした。それでも2ヶ月も過ぎると、次第に街にも慣れ、リラックスできるようになってきます。

 そうして10月からの学部授業に入りました。確かにこれは語学学校とは全く違い、現地の学生と一緒に普通に私たちが学部の専修のような授業を取るのです。このころには何とか英語も聞き取れるようになっていました。
 こうしたみっちりとした勉強と同時に、旅行や観光もしました。観光といっても、そこに住んでいるのでロンドンの美術館や博物館(入場料はほとんど無料!)に行くときは、よく手ぶらでぶらぶらと行きました。

留学のポイント

 ここまで留学時の体験談を書いてきたわけですが、留学するためのポイントとしてまとめてみます。
留学への問題

1、お金の問題 2、時期の問題 3、可能性の問題 4、帰国後の問題 5、自分自身の問題
大きく分けるとこの五つが代表的なものだと思います。

地獄の沙汰も

 まずお金の問題ですが、これはある程度は覚悟しないといけないかもしれません。なかなか全額を負担してくれる奨学金や留学プログラムもありません。あっても数えるほどでしょう。でも、これは考えようによっては将来への投資と考えると気持ちも楽になるし、親にも言い訳が付くかもしれません。

時期は選べ

 第二に時期の問題があると思います。これについてはなるべく早く行けば行くほどいいと思います。特に学生の間であれば、留年しても大学には在学できますから、時間的には余裕はあると思います。会社へ入ってからキャリアアップのために留学している日本人の人もいましたが、やはり、気持ちに余裕がないし、あと英語ももう一度最初からやり直さなければいけないことにもなるかもしれないので、学生身分で行くよりも大変だと思います。あと、卒業後に留学するのもひとつの手ですが、日本で帰国後就職する時に新卒条件のところにはエントリーできないので苦労していた人もいました。

 なので、学生身分で行くのが一番楽でしょう。それはつまり、学生であるときが一番チャンスであるということです。

ともかく動こう

 可能性の問題としたのは、いくら海外に勉強しに行きたいと思っていてもチャンス、がなかなか見つからないということに関してです。
 私は留学カウンセラーでもないのであまり詳しくは分かりませんが、インターネットで検索してみるだけでも、留学斡旋機関はいっぱい出てくるはずです。あとは自分自身の目的に合わせて選ぶだけです。
 行きたいと思っている人は、日ごろからそのことを考えて、いろんなものに目を通して、または耳を傾けて情報を逃がさないことです。世の中には留学したい人なんか山ほどいます。なので、こちらから働きかけていろいろな行動を起こさないと、機会は留学したいと思っている人の方へいくだけです。

帰国後

 帰国後の問題です。これは学生の間なら、足りない年数を余分に行けばいいのですから、あまり問題ないかもしれません。でも、私の場合、1年終了後留学したので、共通教育の語学の単位を取らなければなりません。

 単位的な問題で言えば、休学すると単位認定が面倒くさくなるというか、いろいろ書類を通してやっと認めてもらえるという感じなので、それだったら結局、一年余分に在学しなければいけないので頑張って一から取った方がいいでしょう。それか先生に掛け合って学校の制度自体を改革していただくしかないでしょう。

 あと就職に関して言えば、時期が3月、4月に活動時期が来るので、1年間の留学であれば、9月から行って8月末に帰ってくるのがいいかもしれません。

本当に行きたいのか

 あとは自分自身で行きたいかどうかというところです。親には迷惑な話かもしれませんが結局将来は自分自身の問題になってくるわけで、さすがに誰も他人の将来に関しては責任とれません。つまり、あの時留学しておけばという自分自身の残念さや後悔というのは、自分自身で納得するしかないということです。簡単に言うなといわれる方もいるかもしれませんが、それほど留学というものはいいということです。

 それは自分以外の周りの人の羨望または外国生活という響きだけでいいなあと周りの人に言われたり、または就職の時に他人との違いになって有利だということではありません。

 前にも言ったとおり、日本人の学生で留学経験者なんて数え切れないほどいるし、帰国子女の人も含めれば、ある程度、英語で生活できる人なんて周りにいっぱいいるかもしれません。そうではなくて、留学して得られるものというのは、自分の国を外から見つめることが出来るということ、そして自分自身も見つめなおすということ、いろいろな考え方にぶつかるということ、ということです。

自分さがし

 自分の国を見つめなおすということに関しては、日本の中と外とでは日本に関しての温度差は歴然としているということです。あと、自分の国について自分が何も知らなかったんだということがよくわかりました。

 そして外国人と接することで、他人に分かってもらうことがいかに難しいかがわかります。
 違うバックグラウンドを持つ(文化的にも生活環境でも何でも)人たちと接して、悩んでいるうちに、どうしても一人でゆっくり考える時間がふえます。そうしている内に自分自身について考えることが多くなり、例えば将来についてなどにも深く考えることができます。

 何もかもがしっかりしていない所、例えばロンドンではバスと地下鉄に時刻表はありません。遅れるのが普通です。そんなところで暮らせば、いやでもいろんなことにたいして鈍くなって、よい意味でも悪い意味でも神経が太くなったと実感します。

留学の勧め

 留学を考えている人、全く考えてなかった人、どうしようか迷っている人、悩んでいる人はぜひ留学してみてください。

 留学というのは言葉で言うのは簡単でも、実際にはいろいろと難題があります。それを解決したり、適当にやり過ごしたり、何らかの対応をしているうちに何か掴めるものがあると思います。
 最後は抽象的になってしまいますが、そんなに留学に関して堅く、真剣に、難しく、考えるのは一旦置いて、リラックスして留学先の楽しい生活を思い浮かべて想像してみてはいかがでしょうか。そして一歩を踏み出すのです。