写真を見ること、写真を撮ること、写真に撮られることは、私たちの日常生活の一部になっています。
さまざまなメディアで目にするイメージが写真であるかどうか意識することもなくなってきたかもしれません。
それほど日常の中に溶け込んでいる写真が、他方で〈芸術〉─それを日常に楔を打ち込むようなものと仮定して─のとても重要なメディウムになっています。
それはなぜなのでしょうか?いつから、そしてどのように日常に楔を打ち込んでいるのでしょうか。
絵画が中心的なメディウムであった視覚芸術に写真が加わったことで、イメージの制作方法が拡がっただけでなく、イメージの見方、そして日常の中でのものの見方も変わり、〈芸術〉という概念が大きく拡がりました。
本授業では、まず19世紀に誕生した写真の歴史と主要な写真論と視覚芸術の変遷を辿りながら、
写真によってなされた〈芸術〉の拡張を確認し、さらに写真による現代アートが提起する諸問題を考えていきます。
そのために、受講生には「芸術的な写真」を探してきたり、自分で撮影してくる課題や、写真の中に何を見ているか、そこから何を感じ、何を考えるかを言葉にして分析する課題を出します。
具体的な学習目標は以下の通りです。
(1) image、picture、photograph、photographyという言葉の違いを理解して、使い分けられること。
(2) 19世紀以降の西洋美術における主な絵画と写真の表現方法を見分けられること。
(3) 写真の美しさや格好良さの背後にあるものを追求する姿勢を持つこと。
(4) 視覚芸術を通して、私たちの「視覚性=ものの見方」を省察すること。