大阪大学考古学研究室では、大阪府と兵庫県にまたがる摂津西部の猪名川流域をフィールドとして古墳時代の有力豪族層の動向を解明する調査を進めています。
 今年度は、9月3日から28日にかけて大阪大学豊中キャンパスに所在する待兼山古墳群の調査を行いました。調査は、科学研究費補助金によるプロジェクト「21世紀初頭における古墳時代歴史像の総括的提示とその国際発信」(基盤研究(A)、研究代表者福永伸哉)の一環として待兼山古墳群の築造実態をとらえることを目的とし、下記の3地点において発掘調査を実施しました。

地点1:既に破壊消滅したとされる前期古墳の待兼山号墳が所在したプール北西部付近
地点2:待兼山丘陵の尾根上に位置する待兼山2号墳付近
地点3:かつて古墳時代前期の二重口縁壺が出土した阪大総合学術博物館北西部付近

 発掘調査の結果、地点1・3においては古墳と関連する遺構は検出されませんでしたが、地点3では土師器が発見されており、今後周辺の状況を把握する必要があります。  地点2に設定した調査区では、盛土と推測できる土層が確認できました。測量調査によって判明した周辺地形の形状をふまえると、待兼山2号墳を確認できたこととなります。今回の調査では、調査区も限られており、また出土遺物がわずかであったっために、古墳の規模や時期を特定するには至りませんでしたが、今後も継続的に待兼山古墳群の実態について調査を実施して行ければと考えています。  なお、発掘調査の経過や調査成果の速報については、日々の調査成果をご覧ください。 ※ここで紹介する調査所見はあくまでも未確定のものであることにご注意ください。発掘現場ではさまざまな可能性を考えながら慎重に掘り進めて行きますが、あらたな事実の発見、調査団内での議論によって、前日までの解釈が大きく変わることがしばしばあります。 ※大阪大学考古学研究室のホームページはこちら