研究計画


◆研究方法

@ 年数回の「中世カトリック圏君主権の神話的・歴史的正統化」研究会、3年目の同名の国際研究集会を通じて、緻密な討論を行う。研究会には1名の連携研究者、1名の国内研究協力者の参加を求める。国際研究集会には、ヨーロッパの研究協力者の参加を求める。
A 研究分担者はそれぞれが専門とする王国、地域の中世盛期・末期における、君主の神話的・歴史的権威確立の諸問題について概論的な知識を相互に提供し、共有財産とする。
B 各王国・地域の神話・歴史に共通の分析項目を設定し、より緻密な相互比較を行う。
C 研究分担者が行う個別研究は、最終の報告書によって刊行するが、それぞれ相互批評のコメントを付し、研究の共同性をいっそう高める。
D 本研究のホームページを開設し、研究会の内容を逐次公開する。

◆年次予定

平成23年度には、以下のことを主要な活動とする。
@ 各王国における王権・王朝の正統化における神話・歴史の利用について、全般的な研究状況を各分担者が調査し、報告する。また、その神話・歴史の比較分析を自覚的、方法的に検討する。
  1) 比較研究が可能となるためには、共通の分析項目を設定する必要がある。現時点では、その項目として以下のようなものを考えている。神話・歴史物語の構成要素としては、自らの集団としての起源と現在の領域への移動・定着、キリスト教受容、王統の起源と継承および宗教的聖性の獲得、先王たちの治績。またそれらを直接に表現するメディアとして著作、儀礼、美術、建築など、それらを広域に流布するメディアとして、説教、芸能、演劇など。また、こうした物語の発生と変化のメカニズムの説明要因として国内の政治権力構造、対外関係、支配圏の地政学的条件など。さらに最終的には、その神話・歴史が王権の権威確立と正統化に果たす機能、またエトニ形成に果たした役割である。この項目建てについても研究会の中で改良の余地を検討するが、共通の項目に分節化しつつ比較するという方法は維持する。
  2) カトリック圏規模での比較への中間段階として、各国の特性を近接諸国と比較することも重要である。これらの王国・地域を包む中位のグループとして、旧フランク諸国、北欧諸国、イベリア半島諸国、中欧諸国といったものが考えられる。これらグループに共通する傾向を把握することも必要となるだろう。
A 各分担研究者はヨーロッパの研究協力者と連絡をとり、研究計画の概要について理解を求める。
B 各分担者はヨーロッパ出張を行い、それぞれの設定するテーマにしたがって史料・文献の収集、モニュメント等の実地観察に務めるとともに、研究協力者及びその他の研究者と面談して、必要な情報を収集する。

平成24年度については、以下のことを主要な活動とする。
@ 各分担者は、比較史的分析から生じる問題、あり得べき影響関係の問題などを意識しつつ、各王国・地域の概観について二度目の報告を行う。
A 各分担者は個別研究の課題を確定し、二回目のヨーロッパ出張を行って自らの個別研究に必要な史料、文献の収集と現地調査を行う。
B 各分担者は、この年度の終わりに、各国王朝・王権の正統化における神話・歴史利用についての概観、また中世カトリック圏の中でのそれぞれの特徴についての報告をいったん纏め、ホームページで公開する。

平成25年度においては、以下のことを主要な活動とする。
@ 各分担者はまず個別研究についての中間発表を行う。
A 初冬に「中世カトリック圏君主権の神話的・歴史的正統化」を主題とする国際研究集会を実施する。この国際研究集会は、同年度西洋中世学会の分科会として実施し、このテーマについて広汎な中世学研究者の意見を求める場とする。各分担者はここで個別研究の本発表を行う。ここではヨーロッパの研究協力者にも発表を求め、さらに前年度にまとめた報告を提示し、各国中世史の研究者のみならず、思想・美術・文学など広汎な領域の研究者とともに検討する。

平成26年度においては、以下のことを主要な活動とする。
@ 報告書「中世君主権の神話的・歴史的正統化」(仮題)を作成する。比較史的研究の報告書であるので、その点でどのような成果が得られたのかが明確にされねばならない。そこで各人が 1)各王国・地域の中世盛期・末期における諸問題の概観、2)個別テーマ論説、3)ヨーロッパの研究協力者の報告の翻訳と解題の3点の原稿を作成する。個別研究の末尾には、メンバー、国内研究協力者のうちから1〜2名が批評を加える。各論の論旨にとって図版がかなりの重要性を持つことが予想されるので、印刷費は多めに設定する。

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