野中古墳とは

武器と武具

1:4号短甲
写真1:野中古墳から出土した短甲
甲冑は5世紀の古墳を代表する副葬品です。最新鋭の技術によって製作された甲冑は、当時の中央政権によって配布されたと考えられています。野中古墳では11領の短甲とそれに付属する冑が出土しています。これは全国でも第2位の甲冑の出土量です。
出土した短甲は大きく3種類です。そのうち2つは三角板鋲留短甲(さんかくいたびょうどめたんこう)・横矧板鋲留短甲(よこはぎいたびょうどめたんこう)と呼ばれる短甲で、共に5世紀を代表する短甲です(写真1)。

鋲留短甲に用いられている鉄鋲で留める方法は、それまで用いられていた革紐で鉄板を綴じ合わせる方法におきかわる先端技術です。これらにはそれぞれ頸甲(あかべよろい)と肩甲(かたよろい)が付属しており、なかでもそのうち1つには鉄製草摺(てつせいくさずり)という珍しい武具が伴っていました。

甲冑変遷図変更点

『古墳時代の猪名川流域』(池田市歴史民俗資料館、2010年刊行)より転載しました。

3:8号襟付短甲
写真2:野中古墳から出土した襟付短甲
もう1つは三角板革綴襟付短甲(さんかくいたかわとじえりつきたんこう)(写真2)と呼ばれ、背中から首にかけての部分を守ることのできる短甲です。全国でも10数例しか出土しておらず、野中古墳ではその内の3例が出土しました。

また、冑では小札鋲留眉庇付冑(こざねびょうどめまびさしつきかぶと)(写真3)と革製衝角付冑(かわせいしょうかくつきかぶと)の2種類が出土しています。
4:7号・4号眉庇付冑
写真3:野中古墳から出土した眉庇付冑
鉄地金銅張三尾鉄
写真4:鉄地金銅張三尾鉄

『仁徳天皇陵古墳築造』(堺市博物館、2009年刊行)
より転載しました。

三角板鋲留短甲と横矧板鋲留短甲には小札鋲留眉庇付冑(こざねびょうどめまびさしつきかぶと)と呼ばれる冑が付属し、三角板革綴襟付短甲(さんかくいたかわとじえりつきたんこう)には革製衝角付冑(かわせいしょうかくつきかぶと)が付属しています。この革製衝角付冑には鉄地金銅張三尾鉄(てつじこんどうばりさんびてつ)(写真4)という装飾品が付属しており、11領の甲冑の中でも特別な3領の甲冑であったと考えられます。

鉄地金銅張三尾鉄
写真5:鉄剣・鉄刀

防具だけではありません。
野中古墳では153本の鉄刀と16本の鉄剣、そして約740本の鉄鏃が大量に出土しています(写真5)。そのなかでも鉄剣3本と鉄刀9本は、11領の甲冑に付属するように出土しています。