臨床哲学 

臨床哲学について

 (研究分野)臨床哲学(通称:臨床哲学研究室)は、鷲田清一氏らの呼びかけにより多方面で動き出した〈臨床哲学〉の試みを引き受け、1998年4月より、哲学講座倫理学研究室から名称を改め、現在にいたるまで、さまざまな研究・活動を展開しています。
 臨床哲学は、哲学研究の内部で特殊な「ディシプリン」=専門の確立を目指すのではありません。私たちは、従来の哲学・倫理学研究を有用な資源として活用し、欧米および近代日本の倫理思想、道徳理論、現代の社会哲学、文化理論などの精密な解読・批評を実践し、さらに、そこで表現されている「問い」や「概念」を社会の具体的な文脈に再び置き直して問い直したり、社会のさまざまな場所において対話や議論を通じて「問い」や「問題」を掘り起こしたりする活動に乗り出しています。
 私たちは、研究者の枠をこえた〈共同研究〉というスタイルを重視しています。すなわち、研究者が孤独に自分だけの知的好奇心を満足させるだけにとどまらず、例えばケア、医療、介護、教育、芸能、セクシュアリティ、科学技術、環境などのテーマについて、実際に社会でそれらに関わっている人たちと対話や議論をおこなっていくなかで、「何が問題であるのか」を探し出し、研究プランをデザインし、それを遂行しようとします。
 2005年4月からは、教員が大阪大学に新たに設置された「コミュニケーションデザイン・センター(CSCD)」と連携しながら、大阪大学大学院生・社会人を対象とする対話教育に貢献するほか、当研究室を母胎にうまれた市民団体「CafePhilo(カフェフィロ)」との密接なネットワーキングを通して社会活動に参加し、「社会に生きる哲学」を実践しています。