浜渦辰二 教授 (ハマウズ シンジ) 


   


プロフィール


1952年生まれ。1984年、九州大学大学院文学研究科哲学専攻博士課程単位修得退学。文学博士(九州大学)。1989年、九州大学文学部助手。1991年、静岡大学人文学部助教授、1996年、同教授を経て、2008年4月より現職。

「もともと、現象学の創設者であるドイツの哲学者フッサールを中心に、その周辺の現象学、哲学的人間学、解釈学などの現代ヨーロッパ哲学のなかで、間主観性の問題、自己と他者の問題、コミュニケーションの問題などを考えて来ました。そうした専門の研究をベースにしながら、現象学との関わりのなかで精神医学や看護学にも関心を持ち、現代社会における「いのちとこころのケアに関わる臨床哲学」という構想をもちながら、ここ数年、「ケアの人間学」「北欧ケア」「間文化現象学」といった共同研究にも携わっています。 私の研究遍歴を振り返ってみると、臨床哲学の基礎体力を養う「哲学の現場」で修行を積み、「越境する知」から「ひとごとではない知」を経て、臨床哲学のヴァリアントとしての臨床人間学からフィールドとしての「ケアの人間学」へと展開し、現在は、「ひととひととの間に関する額」である倫理学から「いま、臨床は哲学を求め、哲学は臨床を求めている」と考える臨床哲学へと繋げていくことを考えています。どこかで皆さんの研究の軌跡と出逢うことを楽しみにしています。」

(大阪大学大学院文学研究科紹介2012-2013より)

「高校2年の時、親が『百科事典』を買ってあげようというのを断り、その代わりになぜか、当時続々と公刊されていた『世界の大思想』(河出書房)全29巻を買ってもらいました。高校時代、内容がよく理解できないまま、デカルト『方法序説』、パスカル『パンセ』などを、パラパラと眺めていました。当時私は理系クラスにいて、彼らが二人とも数学や物理学の本でも名前が出てくるので気になっていたからでしょうか。しかし、高校時代、倫理社会という科目には何の魅力も感じませんでした。実を言いますと、倫理社会のテストの時、白紙答案を出して、先生から職員室に呼び出されたことがあります。高校時代の成績表を見ると、倫理社会の成績が群を抜いて最低で、10段階評価の2でした。その私が、いまでは、倫理学の講義をするために教壇に立っています。当時の私からすれば、成績が最低の科目を自分の職業として選んだことになり、人生とはこういうものかと思っています。」

(『大阪大学文学部紹介』2013-2014より)
→  浜渦辰二個人HP

●2020年に何をしていたいか?:晴耕雨読とパン作り。(『大阪大学文学部紹介』2014-2015より)
●もし研究の道に進まなかったら?:ドイツパンを焼く道を究めたかった。(『大阪大学文学部紹介』2013-2014より)
●無人島に持っていくものは?:とりあえず、パソコン、周辺機器、ネット環境の一式が欲しいですね。(大阪大学文学部紹介2012-2013より)
●座右の銘:転んでもただでは起きない(大阪大学文学部紹介2011-2012より)


研究の視点(『待兼山論叢』より)


・2015年
今年度は、代表になっている共同研究「北欧在宅ケア」および「実社会対応プログラム」の最終年度でまとめをしないといけない。その一環で、昨年の北海道の調査に続いて、今年は有志学生達と8月に沖縄の調査を行った。9月には、フィンランドのヘルシンキ大学で「現象学と対話」「老いの間主観性」について、スウェーデンのヨーテボリ大学で「パーソンセンタード・ケアの間主観性」について、計三つの研究発表(英語)で行った。

・2014年
今年度も、代表科研「北欧在宅ケア」のほか、5つの科研に共同研究者として参加している。のみならず、共同研究「実社会対応プログラム」の代表も務め、さまざまな企画をこなしているほか、9月には有志学生たちと北海道のべてるの家に調査の予定。また、10月には、「北欧在宅ケア」研究の一環として、スウェーデンのウプサラ大学でのセミナーならびにリンショーピン大学認知症研究センター主催の国際会議にて発表の予定。

・2013年
「北欧在宅ケア」と「欧州看取り」の2つの科研プロジェクト調査のため、1週間ヘルシンキ、1週間ミルトン・キーンズ(英国)に滞在予定。日本では7月に「ケアの臨床哲学」研究会主催でシンポ「超高齢社会のなかで在宅での看取りを考える」、11月に同じく「地域ケアを考える」を開催予定。私自身は10〜12月ハイデルベルク大学で教壇に立つため、11月シンポにはスカイプ参加の予定。

・2012年
7月下旬、「教室の近況」にあるように、ハイデルベルク大学で4つの講演を行った。それぞれ異なる内容だが、繋がっているテーマでもあり、それらを繋ぐキーワードは、「二人称の死」であった。前から気になりながら論ずる機会のなかった和辻の「間柄」論について話す機会を得たこと、ドイツで3年前に法制化された事前指示書の最新情報に触れることができたこと。大きな収穫を得る機会を与えられたことに感謝している。

・2011年
「いまは、現象学・ケア・倫理の三本柱で「臨床哲学」を考えています。フッサールの翻訳を抱えつつ、「間文化現象学」「ケアの現象学」「北欧ケア」(代表)という3つの科研に関わりながら、「ケアの臨床哲学」研究会として「高齢社会における○○を考える」という連続シンポジウムを運営し、「看護倫理」の編集にも関わり、今秋〔2011年秋〕は、日本倫理学会で「ケアとシステム」について、関西倫理学会では「直観」について、それぞれ発表の予定です。」


【近年の主な業績】

● 論文
単著

  • 「生老病死と共に生きる―ケアの臨床哲学にむけて―」(日本哲学会編『哲學』、知泉書館、No.66、2015、45-61)
  • 「ドイツにおける事前指示書の法制化の内実―自律と依存を両立させる試み―」(静岡哲学会編『文化と哲学』、第32号、2015、1-17)
  • 「グリーフケアのために―臨床哲学からのアプローチ―」(グリーフケア研究所編『グリーフケア』、第4号、2016、1-16)
  • "Intersubjectivity of Ageing -- Reading Beauvoir's The Coming of Age "(臨床哲学研究室編『臨床哲学』第17号、2016、23-35)
  • "Dialogue in Husserl's phenomenology and psychiatry"(科研報告書『定常型社会におけるケアとそのシステム』、2016、61-70)
  • "Intersubjectivity of Person-centred Care: a phenomenological perspective"(科研報告書『定常型社会におけるケアとそのシステム』、2016、71-82)
  • 「二つの「臨床哲学」が再会するとき」(『臨床哲学とは何か 臨床哲学の諸相』、2015/1、262-279)

共著

  • 浜渦辰二、永山亜樹、永井佳子、稲原美苗、永浜明子「精神障がいをもつ人たちを地域で支える取り組み(2)沖縄訪問研修報告」(臨床哲学研究室編『臨床哲学』、第17号、2016、154-188)
  • 「精神障害をもつ人たちを地域で支える取り組み――「べてるの家」訪問研修報告」(臨床哲学研究室編『臨床哲学』、第16号、2016、158-253)



● 著書

編著
  • 『シリーズ生命倫理学 第14巻 看護倫理』(丸善出版、2012/7)
  • 『〈ケアの人間学〉入門』(知線書房、2005/10)
  • 「特集 北欧ケアとは何か 看護研究への示唆」(『看護研究』Vol.45-05、2012/8、428-474)



● 翻訳

  • フッサール『間主観性の現象学Ⅲ その行方』(浜渦辰二・山口一郎 共監訳、筑摩書房、2015)
  • フッサール『間主観性の現象学Ⅱ その展開』(浜渦辰二・山口一郎 共監訳、筑摩書房、2013)
  • フッサール『間主観性の現象学 その方法』(浜渦辰二・山口一郎 共監訳、筑摩書房、2012)
  • フッサール『デカルト的省察』(岩波書店、 2001/12)



→ その他の業績

【近年の科研費等獲得状況】
  • 2016年度〜2019年度、代表者:浜渦辰二、基盤研究(B)(一般)、課題番号:16H03346
    「北欧現象学者との共同研究に基づく人間の傷つきやすさと有限性の現象学的研究」
  • 2013年度〜2015年度、代表者:浜渦辰二、基盤研究(B)(海外学術調査)
    「北欧の在宅・地域ケアに繋がる生活世界アプローチの思想的基盤の解明」
  • 2010年度〜2013年度、代表者:浜渦辰二、基盤研究(B)、課題番号:22401016
    「北欧ケアの実地調査に基づく理論的基礎と哲学的背景の研究」
  • 2005年度〜2007年度、代表者:浜渦辰二、基盤研究(B)、課題番号:17320005
    「対人援助(心理臨床・ヒューマンケア)の倫理と法、その理論と教育プログラム開発」
  • 2013年度後期~2015年度前期、代表者:浜渦辰二、課題設定による先導的人文・社会科学研究推進事業「実社会対応プログラム」
    「ケアと支え合いの文化を地域コミュニティの内部から育てる臨床哲学の試み」