中岡成文 教授 (ナカオカ ナリフミ) 


 


1950年生まれ。京都大学大学院文学研究科哲学専攻博士課程単位修得退学。文学修士。福岡女子大学専任講師、大阪大学助教授などを経て、1996年9月、大阪大学大学院教授。2000年4月より医学系研究科「医の倫理学」教授を兼任。2005から2年間、大阪大学コミュニケーションデザイン・センター(CSCD)初代センター長。

「 ヘーゲル弁証法、解釈学、ハーバーマス、システム論、フランス現代思想などの西洋思想のほか、京都学派(西田幾多郎、田辺元、三木清、高山岩男)の哲学、 1930年代思想(日欧米)にも関心を持つ。1990年代後半からは鷲田清一氏らとともに臨床哲学のプロジェクトを充実させることに力を注いでおり、 とくに医療・看護・介護関係の社会人とつきあったり、哲学カフェにかかわったりしている。「医の倫理学」やコミュニケーションデザイン・センターにかかわった経験から、「ほんとうの内容をもったコミュニケーションを促進するスキル」を重視したい。
「動きながら考える」を標榜しているが、私自身もともと実践的なタイプだったわけではない。本を読むことが好きであってもちろんいい。ただ、エネルギーをそれだけに限定せず、現場からの風に敏感に反応する元気と責任感のある若者に会いたい。他方、勉強し、研究したことがそのまま仕事に結びつきにくい現状には心を痛めている。しかし、ともかくチャレンジしなければ、道は開けない。」(大阪大学大学院文学研究科紹介2012-2013より)

「大阪大学は多くの先駆性を持っていますが、その一つは医療の理念を語る「医学概論」を医学部においたことです。ところが、その初代担当者は、のちに文学部のフランス哲学の教授となられた澤瀉久敬(おもだかひさゆき)教授だったのです。哲学はこのように社会に対して、他の学問領域に対して、積極的にかかわることができるし、専門分化が進んだ現代だからこそ相互の対話のコーディネートをする務めがあるのでしょう。哲学は「深さ」を極める学問だからこそ、「広さ」を語り、実践することもできるのだと思います。
ところで、私は倫理学専修の教員で、医学系研究科の医の倫理学も兼任しています。いくつかの医学系の倫理委員会に招かれていますが、「やってはならない」ことを指示するのが倫理と誤解されているようです。過度に規制的にならず、人間の自己変革的エネルギーを尊重する、「元気のでる倫理」はないものでしょうか。」(『大阪大学文学部紹介2012-2013より』)

●小さい頃の夢:野口英世のようなえらい医者になること(父が開業医だった影響がある)(大阪大学文学部紹介2011-2012より)

●嫌いな食べ物:おいしい「酒の肴」が大嫌い(『大阪大学文学部紹介2012-2013より』)

●研究の視点(『待兼山論叢 哲学篇』2012より)
6月に台湾を再訪し、中央研究院(英語名 academia sinica)で開かれた「漢学国際会議」という私にとっては異郷に(だから二重の異郷に)足を踏み入れた。恐る恐る養生論について発表し、学問スタイルの違いを含めて多くの刺激を受け取った。臨床哲学を始めたときもそうだったかもしれない。自分(たち)で開墾する異郷。その臨床哲学が、私の哲学研究にとっての故郷であるヘーゲル哲学とどう結びついているかを論じたい。これが今の希望である。

●研究の視点(『待兼山論叢 哲学篇』2011より)
「「臨床哲学」にとって研究とは何か、金曜6限の授業でも取り上げられるようになってきた。私の場合は移民(在住外国人)、福祉ものづくりやALS患者さんのコミュニケーション、難聴者(と)のコミュニケーションなどの問題について取り組んでいるが、こういった「座学」ではない活動がどのような意味で研究となり、表現され、共有されるのか。また、それを教育プログラムと連動させることができるのか。これらにある程度答えていきたい。」


【2013年度 担当授業】

Japanese Philosophical Thoughts in Global Contexts
英語で考える The Relationship between Environment and Technology
現代の生命倫理・法・経済を考える(渡部健二、松川正毅、加藤和人、中島和江、上島悦子、神出計、荒尾晴惠、中山博之、池邉一典、舘村卓)
世界の思想
生命倫理学(加藤和人、霜田求、村上靖彦、山中浩司、平井啓、テスト教員K06、連合小児発達学研究科教員)
超域合理性論
臨床哲学ネットワーキング
倫理学の研究方法
Ethics in English 2013
倫理学基礎
自己変容の哲学
臨床哲学研究


【2012年度 担当授業】

Culture Issue within Global Context(全学教育推進機構)
現代の生命倫理・法・経済を考える(吹田開講) (全学教育推進機構)
世界の思想(全学教育推進機構 )
倫理学基礎 (全学教育推進機構 )
生命倫理学(連合小児発達学研究科)
超域合理性論(未来戦略機構)
Ethics in English  
臨床哲学ネットワーキング
倫理学の研究方法
ヘーゲル哲学を読みぬく
自己変容の哲学
臨床哲学概論
臨床哲学論文作成演習


【2011年度前期 文学部授業】
 - 倫理学・臨床哲学講義:自己変容の哲学 水曜6限
 - 倫理学演習:Ethics in English 2011 木曜2限
 - 倫理学講義:臨床哲学概論 金曜5限
 - 倫理学演習:倫理学の研究方法C 水曜5限
 - 倫理学・臨床哲学演習:臨床哲学ネットワーキング 金曜6限


【近年の主な業績】

● 論文
(共著)

  • What Does Clinical Philosophy Practice?" 輔仁大学(共著)『哲学興文化』428, 哲学興文化月刊誌社, pp.49-61, 2010/1  
  • 「いま、看護倫理教育に求められる視点」(『漢語展望』33-10, メジカルフレンド社、pp.12-18, 2008/9)

(単著)
  • 「弱さの構築ーー死生の臨床哲学へ」『死生学研究』(日中国際研究会議「東亜細亜の死生学へ」、東京大学大学院人文社会系研究科グローバルCOEプログラム「死生学の展開と組織化」,pp.179-192, 2009/3)

● 著書

(共著)
  • 『中日国際学術討論会論文集ーー東亜生死学』(三元社、pp.104-103, 2009/3)
  • 『いま〈哲学する〉ことへ』(岩波書店、pp.233-251, 2008/5)


(編著)
  • 『岩波講座 哲学 知識/情報』(岩波書店、pp.1-13, 2008/10)



→ 過去のその他の業績



【近年の科学研究費の獲得状況】
  • 2012年度〜2014年度、挑戦的萌芽研究、代表者:中岡成文、研究課題番号:2465200、2012年4月1日〜2014年3月31日(予定)、額(2012年度)780千円
    「自己変容の哲学と対人援助」
  • 2004年度〜2007年度、 基盤研究(B)、代表者:中岡成文 課題番号:16320005、総額:11680千円
    「新しい公共的対話モデルの有効性の検討」
  • 2002年度〜2003年度、基盤研究(B)、代表者:中岡成文、課題番号:00137358、# 総額:4000千円
    「公共的対話を深めるための哲学的方法論―ソクラティク・ダイアローグを中心として」