第10章 もう一つの北米社会
―二十世紀初頭のカナダにおけるホワイトネスとブリティッシュネス―

前の章へTOP>第10章|次の章へ

メニュー

要約

北米にはカナダとアメリカがあるが、カナダには白人性を考えるうえでアメリカとの大きな違いがいくつかある。特に重要なのは、第一に、黒人の人口比率や奴隷制の影響がカナダでは比較的小さいこと。第二に、「黒と白」より、イギリス系とフランス系の「白と白」の対立。第三に、イギリス帝国により長く留まった歴史である。

 アメリカと同様なのは移民社会ということであり、多様な人々の社会の中に「白人」と「異人」の境界線が引かれたが、境界の位置はそれを決めた人物や地域、時代によって様々だ。全般的にいえるのは、アングロ・サクソン的価値を頂点とし、これにどれほど近いかで移民の序列が決定したことである。しかしながら、その価値にあてはまったとしても肌の色が決定的だという、人種主義が根本にあった。

 「異人」とは、言葉が異なり、不潔な重労働に従事する人々と考えられ、主に東南欧系・アジア系・黒人を指した。「白人」は英語系・仏語系のカナダ生まれ、イギリス系とアメリカ人、スカンディナビア人であり、それ以外でも高い知性や技能を持てば白人に含まれた。だがそうした例外的な白人の一方で、イギリス系であっても貧困で不健全な人間は白人と見なされないこともあったのである。

 今後の課題として、「建国の二民族」でありながら異なる言語を使い、白人だが微妙な位置にあるフランス系の考察がひとつ。またイギリス帝国との関係やプロテスタント・アイルランド人などを通して、アメリカとの白人性の差異を考察し、カナダの独自性を追及する余地があるという。

用語解説

感想

ドイツ人が時代によって白人に含まれないこともあった一方で、スカンディナビア人が常に白人とされたのは、日本人からするとやや意外なことではないだろうか。どちらも異言語、プロテスタントということでは共通していて、ではなにが違うのだろう。そうした説明があればよりよかったと思う。

コメント 北欧の人々は集団の規模が小さく、英語文化への同化が早くから進展したことはあると思います。


西部農地におけるイギリス系移民の排斥が述べられたけれども、既存社会と移民の二つの性質のうち前者の視点がない。この論文の後半部分で、国家事業や経済の景況が白人性の規定要因という記述があるが、鉄道関係を別にして、カナダの社会構造はこの論文ではあまり書かれていないように感じられた。

コメント 論考の長さの関係があるので、仕方がないでしょう。


TOP 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 2021 E