第3章 白人性と世界構造
―二つの白人性―

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要約

集団としての白人の形成を対象として論じるためには、白人の属性(白人性)を二つの側面(種類)に区分することが有効であるとされる。その第一は白人種の身体に代表される特殊性に、政治的、経済的優位、社会的、文化的卓越の根拠を求めるものであり、第二は、白人国家、白人中産階級の基準が人類普遍の基準、文明の基準、文化の標準として示され、その点では、見かけ上、白人の身体からは離れた白人性である。このように二種類に分けられた白人性であるが、筆者によればそれらは「一枚の白紙の裏と表」のようなものであって、互いに他の存在を必要としているものであり、同時に存在することによって社会的力を持ち、歴史的に重要な役割を果たしてきたと論じられている。

 次にこの二種類の白人性は、危機的白人性とドミナントな白人性として類型化され、19世紀以後の世界を解読するためのキーワード、つまりものさしとして機能することとなる。前者の担い手となってきた者は周縁的白人集団、すなわち白人労働者階級であり、アメリカ、オーストラリアなど白人定住植民地である。後者は世界システムにおける中心(本国)と白人中産階級が主体であるとされる。これら二つの類型化された白人性は歴史の場面で、その現われ方は、どちらかが強まり、ほとんど他の影響力が弱められている場合でも、本質は白人性を両面で支えている。この点の理解を助けるために筆者が掲げている「白人性の類型表」は参考になる。

 この観点から、筆者は多文化主義をリベラルで寛容な多文化主義型白人性として議論した。それは白人性を普遍的な人間性として提示したのであって、文化の多元性を承認し多様な文化の担い手に普遍的白人性への道、つまり白人の身体性は矮小化され、非白人に「白人のようになることが可能になる」道を開いたとしている。しかしながらこのように開かれた(かにみえる)白人性は、帝国主義的支配や文明化の使命と矛盾することはないので、対外侵略や攻撃の正当化の理論的裏づけともなりえるのである。

用語解説

感想

現在アメリカの行っているイラク戦争を見るとき注目すべき問題提起である。

コメント そうなのかも。


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