秋田茂教授(人文学研究科人文学専攻)が紫綬褒章を受章することが決定しました。

令和4年秋の褒章において、人文学研究科人文学専攻の秋田茂教授(先導的学際研究機構 グローバルヒストリー研究部門長)が紫綬褒章を受章することが決定しました。大阪大学公式ホームページ

紫綬褒章は科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた方に授与されます。

秋田 茂 教授のコメント

秋田茂教授_2022.jpg この度、思わぬ形で名誉ある賞をいただき、光栄に存じます。私は、200310月に旧大阪外大から文学研究科(現・人文学研究科)に移籍して以来、新たな世界史である「グローバルヒストリー」研究の確立と発展をめざしてきました。今回の受賞は、グローバルヒストリー研究の重要性が、社会的に認知されたものとして、非常にうれしく思います。

 もちろん、グローバルヒストリー研究は一人ではできません。私の研究は、内外の多くの方々との協力・共同研究を通じて初めて実現できました。この間、研究教育の両面で常に支えていただいた桃木至朗名誉教授(現・日越大学特任教授)をはじめとする日本の研究仲間、さらに国際共同研究を展開してきたロンドン大学(LSE/IHR)、ケンブリッジ大学、ハイデルベルク大学、テキサス大学、ネルー大学、梨花女子大学、南洋理工大学、中国社会科学院世界史研究所等の友人諸氏にも、改めて感謝いたします。

 今後も、大阪・日本・アジアから、世界の学界に向けて積極的な情報発信を行い、阪大のプレゼンスを示していきたいと思います。皆様のさらなる御協力、よろしくお願いします。

研究内容

 私の本来の研究はイギリス帝国史、特に帝国内での英領インドの政治経済的な再考でした。二度のロンドン大学での在外研究を経て、研究の枠組みは、アジア国際関係史、比較帝国植民地史に広がりました。それが、2000年代になって顕著になった歴史学自体の「グローバル転回」(Global Turn)のなかで、現在のようなグローバルヒストリー(新たな世界史)研究に発展したのは、自然な流れでした。

 現在グローバル化が急速に進展するなかで、世界の主要大学はどこも、グローバルヒストリー/世界史研究を戦略的に重視し、競争と協力を展開しています。私は、阪大が得意としてきた関係史の手法を駆使して、「アジアから考える」(From Asian Perspectives)視点を重視してきました。歴史学研究では、高度な実証性と明確な主題の設定が不可欠です。第一次史料を追い求めて、世界中のArchives, Research Libraries等を訪ね歩き、そこでの生の史料や人々との楽しい出会いは、私の研究の原動力になっております。

 阪大では、先導的学際研究機構(OTRI)のグローバルヒストリー部門長として、毎月のセミナーと国際会議の開催等を通じて、研究成果の発信を行っています(詳細は、https://www.globalhistoryonline.org/を参照)。とりわけ、先月まで7年間会長職を務めた「アジア世界史学会」(Asian Association of World Historians : AAWH  https://www.theaawh.com/ )を通じた研究活動は、アジア諸国の友人や研究仲間の「応援団」を増やすうえで、非常に有益でした。

 さらに元同僚の桃木名誉教授のイニシアチィヴで始まった、阪大歴史教育研究会に関わり、高大・社学連携として、第一線で活躍されている教育現場の高校の先生方と親しく議論・対話することで、歴史学の有用性(actuality)についても常に考えるようにしています。