中国哲学は、かつては漢学、漢文学ないし支那学という名前で呼ばれていましたが、戦後、新制大学の制度に叶うように、漢文学のうち、思想研究に特化して新しく立てられた学問分野です。
中国哲学は、哲学のローカル版・地域版ではありません。哲学・思想は、地域的であると同時に普遍的であり、その普遍性はだいたいのところ、「知」というものが地域間を相互に流れあっている中に形成されます。長い間、文字(漢字)を共有してきた漢字文化圏(中国・日本・朝鮮半島・ベトナム)の精神文化、さらには人間存在の根底に流れるモノの考え方や感じ方を「そもそもの観点」から探る、「中国哲学」という一つの固有の学問なのです。
本専修では、漢文(中国語ではない)の原典を通じて、中国の思想・科学・宗教・文化・芸術などの諸事象を学びます。大学というところは、スーパーの切り身魚でない本物の生きた魚を味わうところです。切り取られた知識、他人に味付けされた知識の表層を嘗めるだけでは自分の知識とはいえません。手つかずの「原典の海」へ足を運び、自らの手で獲った知識こそ、本物の「知」となり自身の「哲学」となります。それは一生失われることのない確かな宝物なのです。本専修では、そのための海の泳ぎ方、魚の釣り方を学びます。漢文アレルギーがなければ、誰でも学べます。一緒に原典の海へ行って本物の魚を捕ってみませんか。
教員紹介
教授 辛賢
![]() 経学思想史/易学哲学史 儒教経典が各時代にどのように解釈され、受け継がれていったのか、その経学史・哲学史を探る。 |
- メッセージ
- 近代以降、西洋の学術と文化の流入により、私たちはそれまでの儒教の権威の枠組みから自由な価値判断ができるようになりました。しかし、これはそれまで長い間培われてきた儒教の伝統から脱却したことを意味するものではありません。むしろ、20世紀以降、西洋の新しい価値観の流入は、受ける側の伝統的思想の上に変容をもたらし、全く新しいものを生み出すことさえありうるからです。今日の我々において中国古典研究の持つ意味は何か、この問題について考えていきたいと思います。
2023年 9月更新