美学研究室は、美学思想をさまざまな芸術とのつながりか
ら理解することを重視してきました。現在はさらに、美学という学問がいかに日常生活とかかわりを持つのかにも関心を向けています。美学が積み重ねてきた議論は、分野を横断するアートを考察するうえで有効ですし、デザインの歴史について考える手がかりにもなります。今日ますます芸術を定義するのが難しいのは、周縁がたえず更新されて輪郭が定まらないからでしょう。ならば、芸術をその周縁から考えるのは一番有効な方法です。そして、既存の芸術ジャンルに制約されない美学こそが周縁分野に足を踏み入れることができます。
文芸学研究室は、芸術学の一分野として文学(文芸)や作家の思想を取り扱います。アリストテレス『詩学』などの西洋古典文献から連なる文芸学の潮流を重視することから西洋古典学も扱いますが、関心の対象は幅広く、古今東西の文学や思想・文学論も視野に収めており、文芸学研究室に所属する学生の研究対象は多岐に渡っています。文芸学は「文芸学という学問自体がどのような学問であるべきか」という問いを内在する学問でもあります。文芸学の名の下で取り組む一人一人の研究が、文芸学という学問を発展させていくという側面があり、研究室では日々切磋琢磨がなされています。
教員紹介
教授 高安 啓介 教授 渡辺 浩司 准教授 田中 均 准教授 東 志保
講師 西井 奨
教授 高安 啓介
たかやす けいすけ 美学/デザイン史/デザイン論 近代工芸論、近代デザインの歴史、デザイン美学、農と食のデザイン、視覚伝達理論、現代デザイン論 |
- メッセージ
- 今日ますます芸術を定義するのが難しいのは、周縁がたえず更新されて輪郭が定まらないためでしょう。 それならば、芸術をその周縁から考えるのは有効な方法であるはずです。 そして、既存の芸術ジャンルに制約されない美学こそ、周縁にある感覚世界に足を踏み入れることができます。 美学研究室においてデザイン研究がおこなわれる理由もそこにあります。 陶芸・衣服・家具・展示・建築・景観・印刷・映像など、芸術かどうか際どいからこそ面白いのです。
2020年 8月更新
教授 渡辺 浩司
わたなべ こうじ 文芸学/西洋古典学 古代ギリシア・ローマの詩学と弁論術、および弁論術から美学への変容 |
- メッセージ
- 詩学と弁論術を研究しています。日本ではあまり聞いたことがない学問かもしれませんが、西洋においては古代ギリシア・ローマからの長い伝統を持っています。内容も、悲劇や喜劇、叙事詩についての考察や、修辞や文章構成法、記憶術、崇高論など多岐にわたっています。意外に面白いです。
2023年 1月更新
准教授 田中 均
たなか ひとし 美学/芸術理論/西洋近代美学史 ドイツ・ロマン主義を中心とする芸術理論の歴史、芸術への「参加」の理論。 |
- メッセージ
- 「よく知っているつもりなのに、ひとに尋ねられるとうまく答えられない」
時間についてこう述べたのはアウグスティヌスですが、美学の主題である芸術や美にも同じことがあてはまります。 - 「芸術」とはモノなのかコトなのか、それとももっと抽象的な存在なのか。「美」とは美しいものの性質か、それとも美しいと思う心の状態なのか。フィクションだと知りながら物語に心動かされるのはなぜか。こうした美学の問題、みなさんはどう考えますか。
准教授 東 志保
あずま しほ 映画・映像研究/比較文化論 フランスを中心とした記録映画の研究/映画と都市、映画と旅の関係。 |
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- メッセージ
- 高校生の頃に映画の魅力に取り憑かれ、その後フランスをフィールドに映画を研究するようになりました。今でも映画館に行くと、安心するような、ワクワクするような、不思議な感覚にとらわれます。映画を楽しむことは、映画の歴史を学んだり映像を分析することとは相容れないように思うかもしれません。しかし、映画を見る喜びから、世界への探究心も生まれるのです。スクリーンの中と外を繋ぐような授業をできればと思っています。
2021年 6月更新
講師 西井 奨
にしい しょう 文芸学/神話学/西洋古典学/ラテン文学 ラテン文学作品におけるギリシア・ローマ神話の表象。 |
- メッセージ
- 古典語(ギリシア語・ラテン語)で書かれた西洋古典文学作品を読むことや、その翻訳を良い翻訳で読むことは、それ自体で意義深いものであり、大きな喜びを得られるものです。だからそういった作品を読むことが何の役に立つかなどと問いかけることは、それ自体、読むことの価値を貶めてしまうことになると考えています。しかしそれでも、古典語を学び西洋古典文学作品を読むことは、この現代社会の抱える様々な問題に立ち向かっていくうえでも、きっと本質的な意味で助けになってくることだと思います。
2022年 9月更新