比較文学は、主に西洋と日本の近代文学の相互関係を研究する学問です。ただ個々の作品の影響関係を貸借表や成分表示のように並べるだけではありません。そうした「西洋」の近代文学を受容する必要が生まれた文学のグローバリゼーションという大前提や、それに対する抵抗や独自の変容につい
ても検討する必要があります。
例えば、オリエンタリズムやジャポニスムといった西洋の東洋に対する関心は、日本でどのように交錯したのか、その結果、「日本」や「西洋」という枠組み自体が、どのように作られ、変化していったのか、そのような相互交渉を扱うことこそが比較文学の本領といえます。
このほか、ある主題に従って世界の文学を横断するテーマ研究、絵画と文学といったジャンル間交渉、世界の各帝国と(脱)植民地主義をめぐる問題なども比較文学の対象となります。
いずれにせよ、一方ともう一方とを比較する以上、その両方について綿密な調査と実証が欠かせません。そして両者の比較を可能にするだけの確かな外国語運用能力と厳密な方法論も求められることになります。
教員紹介
教授 橋本 順光
はしもと よりみつ (日英)比較文学/英国地域研究 日英におけるジャポニスム・黄禍論・旅行記の研究。 |
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- メッセージ
- 「こうなってくるっていうと政治家は科学者に席を譲るしかないでしょうな」と総理がつぶやく映画があります。その名は『妖星ゴラス』(1962)。惑星が地球に衝突するとわかり、科学者の報告に政治家が絶句するのです。ここには科学者こそが国の利害を越えて危機に対応できるという、H.G. ウェルズ以来の世界政府幻想が読み取れます(なおゴラス衝突回避策はかいけつゾロリでも転用されています)。世界の変化はしばしば作り手の予想を裏切りますが、それだけ意外な作品が意外な光を放ちます。そんな錬金術にも似た発掘や分析を目指しています。
2022年 9月更新
准教授 鈴木 暁世
すずき あきよ 日本近代文学/比較文学 日本近代の文学、日本文学とアイルランド文学(英語圏文学)の相互交渉 |
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- メッセージ
- 文学作品は、文化や言語を越えたさまざまな刺激のなかから生み出されます。文学者たちの創作の糧となった想像力の熱い奔流と交感、その理由を問うことは、世界文学の潮流の中にある日本近代文学の姿とその魅力を活写することにつながるでしょう。作品を読み、資料を発掘することによって得られた知見に基づいて、越境する想像力の源泉を問うことが私の研究の大きな原動力です。日本近代文学研究のフィールドは、世界に広がっているのです。
2022年9月更新