
比較文学は、主に西洋と日本の近代文学の相互関係を研究する学問です。ただ個々の作品の影響関係を貸借表や成分表示のように並べるだけではありません。そうした「西洋」の近代文学を受容する必要が生まれた文学のグローバリゼーションという大前提や、それに対する抵抗や独自の変容についても検討する必要があります。
例えば、オリエンタリズムやジャポニスムといった西洋の東洋に対する関心は、日本でどのように交錯したのか、その結果、「日本」や「西洋」という枠組み自体が、どのように作られ、変化していったのか、そのような相互交渉を扱うことこそが比較文学の本領といえます。
このほか、ある主題について世界の文学を横断するテーマ研究、絵画と文学などのジャンル間交渉、世界の各帝国と(脱)植民地主義をめぐる問題も比較文学の対象となります。したがって、近代文学といっても、狭義の小説だけではありません。絵画、演劇、映画および漫画も含む広義の物語とその越境が研究対象になります。
いずれにせよ、一方ともう一方とを比較する以上、その両方について綿密な調査と実証が欠かせません。そして両者の比較を可能にするだけの確かな外国語運用能力と厳密な方法論も求められることになります。
教員紹介
教授 橋本 順光
はしもと よりみつ (日英)比較文学/英国地域研究 日英におけるジャポニスム・黄禍論・旅行記の研究。 |
- メッセージ
- 「もしこれを見ているなら、私は拉致されています」という北欧の活動家の映像が2025年6月に報道され、話題になりました。死を前にした手紙や瓶詰の手記など、19世紀欧米の書簡体小説では定番の表現です。漱石も『心』で活用し、読み手との距離を強調しつつ、それを乗り越える語りの力を描きました。今は送信予約が容易な時代。「グエー死んだンゴ」という日本の投稿も同じ文脈で注目されました。物語では陳腐化した小道具が、日常の重要な手段として活用されていくのか、それとも新たな物語を生みだしていくのか、両報道はその転機を象徴しているのかもしれません。
2026年 5月更新
准教授 鈴木 暁世
すずき あきよ 日本近代文学/比較文学 日本近代の文学、日本文学とアイルランド文学(英語圏文学)の相互交渉 |
- メッセージ
- 文学作品は、文化や言語を越えたさまざまな刺激のなかから生み出されます。文学者たちの創作の糧となった想像力の熱い奔流と交感、その理由を問うことは、世界文学の潮流の中にある日本近代文学の姿とその魅力を活写することにつながるでしょう。作品を読み、資料を発掘することによって得られた知見に基づいて、越境する想像力の源泉を問うことが私の研究の大きな原動力です。日本近代文学研究のフィールドは、世界に広がっているのです。
2022年9月更新
はしもと よりみつ
すずき あきよ