比較文学

hikaku.jpg 比較文学は、主に西洋と日本の近代文学の相互関係を研究する学問です。ただ個々の作品の影響関係を貸借表や成分表示のように並べるだけではありません。そうした「西洋」の近代文学を受容する必要が生まれた文学のグローバリゼーションという大前提や、それに対する抵抗や独自の変容についても検討する必要があります。

例えば、オリエンタリズムやジャポニスムといった西洋の東洋に対する関心は、日本でどのように交錯したのか、その結果、「日本」や「西洋」という枠組み自体が、どのように作られ、変化していったのか、そのような相互交渉を扱うことこそが比較文学の本領といえます。

このほか、ある主題に従って世界の文学を横断するテーマ研究、絵画と文学といったジャンル間交渉、世界の各帝国と(脱)植民地主義をめぐる問題なども比較文学の対象となります。

いずれにせよ、一方ともう一方とを比較する以上、その両方について綿密な調査と実証が欠かせません。そして両者の比較を可能にするだけの確かな外国語運用能力と厳密な方法論も求められることになります。

教員紹介

教授 橋本 順光 准教授 鈴木 暁世

教授 橋本 順光

p_hashimoto.jpgはしもと よりみつ
(日英)比較文学/英国地域研究
日英におけるジャポニスム・黄禍論・旅行記の研究。
メッセージ
食材でおなじみのホヤ。最初はオタマジャクシみたく泳いでいたのが、岩などに固着すると背骨も脳も消えてあの姿に。19世紀末、この変化は「退化」の典型と考えられました。H・G・ウェルズはホヤをヒントに未来の生物を想像し、さらに持ち家を買って身を固めた男も同じだと揶揄しました。約百年後、デネットの『解明される意識』以降では、正規雇用になるや研究しなくなる学者が、時にホヤに例えられます。ホヤは環境に最適化しているだけなのに、つい私達は安易な物語を作ってしまいます。文学研究はこんな物語に左右されない訓練にもなると思っています。

2024年 6月更新

准教授 鈴木 暁世

p_suzukiAkiyo2019.jpgすずき あきよ
日本近代文学/比較文学
日本近代の文学、日本文学とアイルランド文学(英語圏文学)の相互交渉

メッセージ
文学作品は、文化や言語を越えたさまざまな刺激のなかから生み出されます。文学者たちの創作の糧となった想像力の熱い奔流と交感、その理由を問うことは、世界文学の潮流の中にある日本近代文学の姿とその魅力を活写することにつながるでしょう。作品を読み、資料を発掘することによって得られた知見に基づいて、越境する想像力の源泉を問うことが私の研究の大きな原動力です。日本近代文学研究のフィールドは、世界に広がっているのです。

2022年9月更新

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