第13章 白人と白人性

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紹介

プア・ホワイトという言葉がありますが、知ってますか?最近はワーキング・プアや『蟹工船』も流行で、プアへの注目度アップですね(昔ゲームの名前にプアプア。「ぷよぷよか!」)。

ところで、白人の身体、身体的特徴を持っていても、白人とは単純に認めてもらえない人びとがいます。「白人なのに、白人ではない人びと」が存在するのです(こういう人たちは注目の的ですね。これに関しては『白人とは何か?』第21章を参照してください。少し理由がわかると思います)。たとえば、プア・ホワイトとかホワイト・トラッシュ(白人のくず)と呼ばれる人びとです。とても貧しく、十分な教育を受けられず、社会の底辺にいる白人です。

プア・ブラックとかプア・インディアン、ブラック・トラッシュとかインディアン・トラッシュのような言葉は、一般的にありません。それは、プア(貧しい)とかトラッシュ(くず)というような意味が、すでにブラック(黒人)やインディアンという言葉に最初から含まれているからです。とんでもなく無礼なことです。しかし、歴史的にアメリカ合衆国では、多くの黒人やインディアンは貧しく、社会の最下層を占めてきました(アメリカの憲法について話したことを思い出してください)。わざわざそれに「貧しい」とか、「くず」というような形容詞をつけるのは余計なことでした。また、マイノリティに属する人びとは、基本的にダメなやつという通念がありました。日本人移民は褒めてもらって「モデル・マイノリティ」と呼ばれます。つまり、普通の、モデルなしの「マイノリティ」は基本ダメ人間、と言っているのと同じです。


要するに、ここで言いたいことは、白人という身体、容器が、白人という人種を決めるのではない例がしばしば見られる。つまり、そういうことです。そうした場合、容器ではなくて、白人としての中身、富や権力や生活様式・教養などが、白人となる資格を決めることになります。中身に疑問符がつくと、プア・ホワイトとかホワイト・トラッシュと呼ばれ、白人としての境界上、周辺領域に追いやられてしまいます。「白人なのにプア」、「白人なのにトラッシュ」という表現です。

逆に、白人という容器を持っていなくても、中身で白人として認められる例さえあります。アパルトヘイトが実施されていた南アフリカでは、日本人は「名誉白人」として認められ、白人と多くの面で同等の便益を受けていました。アメリカの黒人や非白人のスポーツ選手、中華民国の人も「名誉白人」として処遇されました。極端な場合には、白人の身体がなくても白人になれるのです。このとき、白人としての資格を与えている中身、白人となるための条件を白人性と呼びたいと思います。アパルトヘイト下の日本人は、白人の身体(容器)は持ちませんでしたが、白人性を持つものとして、白人の特権を享受しました。

南アフリカだけが特殊ではありません。ドイツ支配下のサモアでは、同じ中国人でも、自由に入国してきた中国人商人は白人(外国人)として、ドイツ人と同じステイタスを得ました。つまり一種の名誉白人です。ところが、年季契約で入国した中国人労働者は、サモア人と同じネイティヴに分類されました(『白人とは何か?』第14章参照)。アジア人もいろんなところで白人だったのです。白豪主義下のオーストラリアにも、すでに見たように日本人の学生、商人、旅行者は特別に入国を認められていましたね。


「白人」という概念を、白人の身体からちょっとばかり切り離して、白人性という概念でとらえ直してみると、あらゆる人種、民族、エスニック集団、さらに個人が、「白人」と直接関係を持つようになります。日本人の白人性、黒人の白人性、先住民の白人性という議論ができるようになります。「日本人フェミニストの白人性は?」(ちょっと過激すぎますか?日本人女性研究者が白人女性研究者のセクシュアリティティを担い、非白人女性による白人フェミニストに対する白人性批判からの弾除けになる、みたいなのをどこかで見たような気がします。)でもかまいません。日本人も白人性という概念を通して、白人問題に直接関わっているのです。ですから、「エビちゃんは白人か?」という問いも成り立ちます(よかった!本のタイトルが否定されなくて)。

中身の問題を問う。それはぼくのオリジナルではありません(これから3段落、ないほうがわかりやすいかも、でも書いちゃう)。キング牧師は、「私には夢がある。私の4人の幼い子供たちがいつの日にか、肌の色ではなく、その品性の中身によって評価される国に住むようになる夢が」と語っています。中身の尊重を目指すのは、公民権運動以来の歴史の流れです。しかし、その中身が問題です。その中身の判断基準が「白人性」だったら?

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