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日本学

これまで日本文化の研究では、日本の固有性や特異性がことさら探究されてきた。しかし、それは近代日本が西洋を自覚するプロセスのなかで“美しい日本” “伝統の日本”といった形で構築してきた想像の所産ではなかったろうか。日本という地域の歴史や文化、思想を孤立した特殊なもの、あるいは自明なものとみるのではなく、一国史・単一文化の枠を突破し、異質な文化との相互交流・摩擦のコンテクストを踏まえた比較や、フィールドワークに依拠して研究する視角が求められている。日本学研究方法論ゼミでは、多くの留学生たちとともに、互いの文化や民族、性を越境し横断する、開かれた多様なディスカッションの場となることをめざしている。

教員紹介

教授 杉原達 教授 平田由美 教授 北原恵教授 宇野田尚哉

准教授 北村毅准教授 安岡健一

教授 杉原達

すぎはら とおる
1953年生。1975年京都大学経済学部卒業。1977年大阪市立大学大学院経済学研究科前期博士課程修了。博士(経済学)。1977-91年、関西大学経済学部助手、専任講師、助教授、教授を経て、1992年大阪大学文学部助教授、1997年同教授、1998年大阪大学大学院教授。
専攻:日本学/文化交流史。
p_sugihara
研究紹介
ドイツ・オリエント関係史研究から、日本・アジア関係史研究へと歩みを進めてきて約30年になる。最近では、在日朝鮮人史研究や中国人強制連行問題から、近現代日本の姿を見ようとしている。以前は社会構造史分析を中心にすえていたが、近年はそのような分析も大切にしながら、一方でその社会がおかれている世界的・同時代的な関連をみるとともに、他方で一人ひとりにとっての歴史の意義を問うようになってきた。日暮れて道遠し、の感はあるが、コツコツとやっていきたい。
メッセージ
日本というものを、自明なものとしてあらかじめ見定めてしまわないで、さまざまなレベルで亀裂線をもち、それらの依存と摩擦の中で成立してきたし、今もせめぎあっているという点を考えてみてほしい。そして、自分の「現場」をもちつつ、越境する知のありかたを、手さぐりをしながらじっくりと追求してほしいと願う。テーマは無限にあるだろう。自分が本当に探究したい課題をみつけること、そこにキラリと光る個性を出してください。
主要業績
『移民・難民・外国人労働者と多文化共生――日本とドイツ/歴史と現状』(有志舎、2009、共著)、『帝国への新たな視座――歴史研究の地平から』(青木書店、2005、共著)、『中国人強制連行』(岩波書店、2002、単著)、『越境する民――近代大阪の朝鮮人史研究』(新幹社、1998、単著)、『オリエントへの道――ドイツ帝国主義の社会史』(藤原書店、1990、単著)
概説・一般書
『岩波講座 アジア・太平洋戦争』全8巻(岩波書店、2005-06、共編著)、『日本社会と移民』(明石書店、1996、共編著)、『異文化の交流』(大阪大学出版会、1996、共著)、『歴史と啓蒙』(J.コッカ著、未來社、1994、共訳)、『ドイツ中間層の政治社会史』 (H.A.ヴィンクラー著、同文舘、1994、共訳)

2016年 7月更新

教授 平田由美

ひらた ゆみ
1956年生。大阪外国語大学外国語学研究科修士課程日本語学専攻修了。博士(文学)(京都大学)。京都大学人文科学研究所助手、大阪外国語大学助教授、同教授を経て、2007年10月より大阪大学大学院文学研究科教授。
専攻:日本文学・文化研究/ジェンダー研究
p_hirata
研究紹介
言語・文体の変容、ジャンルの興亡、読者層の拡大や新たなテクノロジーによるメディアの興隆など、近代のエクリチュールは地殻変動ともいうべき大きな変化を経験した。そうした事態にあって、「日本文学」の「近代」とは何であったかを主題として、「前近代」と呼ばれる時代との断絶と接続のふたつの局面から、文学テクストの生成メカニズムを考察してきた。近年はテクストをとりまくコンテクスト、たとえば文学をめぐる言説や制度の政治性、文学ジャーナリズムやメディアの権力性をも含めた〝近代という問題〟を考えたいと思っている。
メッセージ
自分自身がその真っ只中で生きているせいで見えにくくなっている現実の中から、論じるべき問題の在りかやこんがらがっている箇所を見つけ出して丁寧に解きほぐしながら考えること、その作業を借り物ではないやり方で思考し手垢のついていないことばで伝えようとすること――すごくむずかしいけど、チャレンジングだと思わん?
主要業績
『「帰郷」の物語/「移動」の語り:戦後日本におけるポストコロニアルの想像力』(伊豫谷登士翁との共編、平凡社、2014);『女性表現の明治史―樋口一葉以前―』(岩波人文書セレクション、岩波書店, 2010)
概説・一般書

「ことばをひらく」(『文学』11巻4号、岩波書店、2010)http://www.iwanami.co.jp/bungaku/1104/hiroba.html


2016年 11月更新

教授 北原恵

きたはら めぐみ
1956年生。大阪大学経済学部卒業。同志社大学大学院文学研究科(美學及び芸術學)修了、東京大学大学院総合文化研究科博士課程(表象文化論)満期退学、学術博士(東京大学)。2001年甲南大学文学部助教授、2004年同教授、2008年大阪大学大学院文学研究科准教授、2012年より現職。
専攻:表象文化論/ジェンダー研究
研究紹介
表象文化論、美術史、ジェンダー論。視覚表象の社会における機能や、視線が構築する権力関係の重層的な構造分析に関心があります。日常を取り巻くビジュアル情報――たとえば、お菓子のラベルから絵画にいたるまで――を、ジェンダーやセクシュアリティ、民族、人種、階級などの視点を中心にして読み解く作業のほか、最近は、戦争表象の研究に取り組んでいます。
メッセージ
芸術は、日常での当たり前の決まりごとを目に見える形にして疑問を起こさせる力を秘めていますが、同時に、世界のあちこちで続く戦争や疫病、貧困などの悲惨な状況は、文化がないから起きているのではなく、文化があるからこそ起きているという側面があります。自分自身の立つ根拠をも掘り崩すこわい作業を始めませんか。
主要業績
『アート・アクティヴィズム』『攪乱分子@境界』(インパクト出版会)、『アジアの女性身体はいかに描かれたか』(編著、青弓社、2013年)、「消えた三枚の絵画――戦中/戦後の天皇の表象」(『戦争の政治学』倉沢愛子他編、岩波書店、2005年)、「米国プロパガンダ・ポスターにみるナショナリズムとジェンダー」(上村くにこ編『暴力の発生と連鎖』人文書院、2008年)、「《御前会議》の表象」『甲南大学紀要・文学編』151巻、2008年)、「元旦新聞にみる天皇一家像の形成」(『性の分割線』青弓社、2009年)、「《遠近を抱えて》の遠景と近景」(『アート・検閲、そして天皇』社会評論社、2011年)、「〝モダン″ と〝伝統″ を生きた日本画家・谷口富美枝(1910-2001年)」『待兼山論叢』48号、2014年度)。1994年から雑誌に、社会と美術、視覚表象「アート・アクティヴィズム」を連載中。
概説・一般書
「フェミニズム・アート」「フェミニズム・アート批評」(『岩波女性学事典』2002年)、「ファッション広告」(『グローバル化を読み解く88のキーワード』西川長夫他編、平凡社、2003年)、「美術史を書き直す」(『女性とメディア』北九州市立男女共同参画センター“ムーブ”、2005年)、「現代アートとジェンダー」(『ジェンダー・スタディーズ』牟田和恵編、大阪大学出版会、2009/2014年)。

2017年 9月更新

教授 宇野田尚哉

うのだ しょうや
1967年生。1993年大阪大学大学院文学研究科博士前期課程修了、1996年同後期課程単位修得退学。博士(文学)。2000年神戸大学国際文化学部講師、2001年同助教授,2007年同大学大学院国際文化学研究科准教授。2010年より大阪大学大学院文学研究科准教授、2017年より同教授。
専攻:日本思想史
研究紹介
近世・近代の日本思想史を専門に研究しています。もともとの研究テーマは荻生徂徠を中心とする18世紀日本の儒家思想ですが、近年は近現代の諸問題も扱っています。思想史を研究する場合、ある思想家がなにを考えていたのかを正確に理解することも重要ですが、その思想が社会のうちに投げ出されたときそれを受け止めた人々がその思想をどう生きたかを明らかにすることもまた重要です。私は、後者の側面に重点を置きながら、〈思想の社会史〉と特徴づけることのできるような研究を行っていきたいと考えています。
メッセージ
テキストをその歴史的背景と絡めあわせながら読み解くことにより、その時代とその時代を生きた人々とを総合的に描き出すような歴史叙述をしてみたいと思っていますが、一筋縄ではいきません。テキストに沈潜するのでも、テキストを歴史的背景に還元するのでもないような読みの水準を、文学や歴史の研究を志す方々といっしょに探っていければと思っています。
主要業績
『彦根城博物館叢書6 武家の生活と教養』(共著)彦根城博物館(2005);『身分的周縁と近世社会5 知識と学問をになう人びと』(共著)吉川弘文館(2007);『近世の宗教と社会3 民衆の〈知〉と宗教』(共著)吉川弘文館(2008年);『宗教から東アジアの近代を問う』(共著)ぺりかん社(2002);「成立期帝国日本の政治思想」『比較文明』19(2003);『復刻版ヂンダレ・カリオン』別冊(共著)不二出版(2008)ほか。
概説・一般書
『「在日」と50年代文化運動』(共著)人文書院(2010)ほか。

2017年 8月更新

准教授 北村毅

きたむら つよし
1973年生。2006年早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。博士(人間科学)。2007年早稲田大学高等研究所助教、2009年同准教授。2010年早稲田大学琉球・沖縄研究所客員准教授。2015年より現職。
専攻:文化人類学・民俗学、オーラルヒストリー
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研究紹介
他者の体験を聞くことに興味をもって研究してきました。聞き書きやオーラルヒストリーと呼ばれる手法です。民俗学者の宮本常一は、民俗学を「体験の学問」と評しました。この言葉には、フィールドワークを通した調査者自身の「体験」という意味だけではなく、人の「体験」を見聞きする学問であるという意味も含まれているのではないかと思います。すなわち、民俗学者は、他者の「体験」を見たり・聞いたりすることを通して、自らの学問的体験を培ってきたといえます。私は、沖縄などで、戦争体験者の生活史や地域の精神医療・福祉を担ってきた人びとの体験を聴き取ってきました。そこから研究という狭い枠組みを超えて、多くのことを学んできました。聞き書きには、どんな本にも書かれていないことを自分の体で知る面白さがあります。そこから自分の研究を切り拓いていく楽しさに魅了されて、今日に到ります。
メッセージ
日本学には、幅広いテーマと視点から「日本」について探究している人びとが集っています。彼らの研究には共通して、いったい「日本」とはどこからどこまでなのか、そもそも「日本」固有の文化などあるのか、はたして「日本人」と名指される存在とは誰なのかといった問いがあるように思います。「日本」の文化や民俗について見識を深めたいという動機で日本学の門戸を叩いたのにもかかわらず、いつの間にか、先の根源的な問いに行き着くようです。とはいえ、この問いに正しい答えなどはなく、重要なのは問いつづける過程です。自文化、ひいては自分の「当たり前」をどんどん学び捨てて(Unlearn)いただきたいと思います。
主要業績
『死者たちの戦後誌:沖縄戦跡をめぐる人びとの記憶』(御茶の水書房、2009年、単著)、『沖縄における精神保健福祉のあゆみ』(沖縄県精神保健福祉協会、2014年、編著)、『戦争社会学の構想:制度・体験・メディア』(勉誠出版、2013年、共著)、「戦争の記憶と感情の問題:沖縄の「戦後」と震災後が交差する場所から」(『ワセダアジアレビュー』、13号、2013年)、「「沖縄の精神衛生実態調査」の医療人類学的研究:疫学調査から歴史経験を読み解く」(『琉球・沖縄研究』、第5号、2017年)
概説・一般書
『沖縄学入門:空腹の作法』(昭和堂、2010年、共著)

2017年 9月更新

准教授 安岡健一

やすおか けんいち
1979年生。2009年京都大学大学院農学研究科博士課程卒業、2011年農学博士(京都大学)取得。日本学術振興会特別研究員、飯田市歴史研究所研究員を経て、2015年に大阪大学へ。2017年4月から現職。
専攻:日本近現代史、移民史
p_yasuoka
研究紹介
近現代の日本社会に生じた、人の移動をめぐる様々な事象を研究することを通じて、現代につながる歴史を学んでいます。とくに農業・農村を学ぶことによって、人がどのようにして繋がり、生きてきたのかに迫ろうとしているのだろうと思います。近年は地域における歴史資料の収集・保存・活用やオーラルヒストリーの方法論など、関心がどんどん広がっています。
メッセージ
出会った本や人、環境から多くのものを吸収し、積極的にアウトプットしてください。研究は、新しい「学知」を作り上げてゆく創造的な活動です。そのために身につけなければいけないことも多く、自己管理も大変です。とはいえ、高い志をもって努力した経験は、自分個人には役立つような気がします。
主要業績
『「他者」たちの農業史-在日朝鮮人・疎開者・開拓農民・海外移民』(京都大学学術出版会、2014年、単著)、「高度成長期地域社会における高齢者の研究」(『農業史研究』50号、2016年)『農林資源開発史論Ⅰ 農林資源開発の世紀』(京都大学学術出版会、2013年、共著)、『貴司山治研究』(不二出版、2011年、共著)
概説・一般書
『読む辞典:人の移動』(東信堂、2013年、共著)

2017年 8月更新

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