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臨床哲学

〈臨床哲学〉は、哲学講座倫理学研究室を母胎として設置された専門分野です。当分野では、欧米および近代日本の倫理思想、道徳理論や現代の社会哲学・文化理論を精密に解読・批評するとともに、そこに表現されている問いや概念を社会の具体的なコンテクストに再び置き直して問うこと、また、社会のさまざまな場所で潜在的に問題となっていることがらを、社会のなかで現に生きている人たちとの議論を通じて掘り起こし、問いや問題として定式化すること、に取り組んでいます。

当分野では“共同研究”というスタイルを重視します。研究者が孤独に自分だけの知的好奇心を満たすだけに終わらず、例えばケア、医療、介護、教育、科学技術、セクシュアリティなどについて、実際に社会でそれらに関わる人たちとの議論をおこなうなかで「何が問題であるのか」を確定し、研究プランを作り、それを遂行することを重視します。

教員紹介

教授 浜渦 辰二教授 堀江 剛准教授 本間直樹

教授 浜渦 辰二

はまうず しんじ
1952年生。1984年、九州大学大学院文学研究科哲学専攻博士課程単位取得退学。文学博士(九州大学)。1989年、九州大学文学部助手。1991年、静岡大学人文学部助教授。1996年、同教授。2008年4月より現職。
専攻:哲学/倫理学/臨床哲学
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研究紹介
もともと、現象学の創設者である哲学者フッサールを中心に、その周辺の現象学、哲学的人間学、解釈学などの現代ヨーロッパ哲学のなかで、間主観性の問題、自己と他者の問題、ケアの問題などを考えて来ました。そうした専門の研究をベースにしながら、現象学との関わりのなかで精神医学や看護学にも関心を持ち、現代社会における「生老病死のケアに関わる臨床哲学」という構想を持ちながら、この数年、「ケアの現象学」「北欧ケア」「傷つきやすさの現象学」といった共同研究に携わっています。
メッセージ
私の研究遍歴を振り返って見ると、臨床哲学の基礎体力を養う「哲学の現場」で修行を積み、「越境する知」から「ひとごとではない知」を経て、臨床哲学のヴァリアントとしての臨床人間学からフィールドとしての「ケアの人間学」へと展開し、現在は、「ひととひとの間に関する学」である倫理学から「いま、臨床は哲学を求め、哲学は臨床を求めている」と考える臨床哲学へと繋げていくことを考えています。どこかで皆さんの研究の軌跡と出逢うことを楽しみにしています。
主要業績
『フッ サール間主観性の現象学』創文社、1995年;「ナラティヴとパースペクティヴ」 (木村敏・坂部恵(監修)『〈かたり〉と〈作り〉臨床哲学の諸相』所収)2009年;「私の考える臨床哲学―私はどこから来て、どこへ行くのか―」『臨床哲学』第10号、2009年;「生老病死と共に生きる―ケアの臨床哲学にむけて―」日本哲学会編『哲學』No.66、2015年;「グリーフケアのために―臨床哲学からのあぷろーち」上智大学グリーフケア研究所編『グリーフケア』第3号、2016年。
概説・一般書
『哲学するために』北樹出版、1991年(共著);木田元ほか編『現象学事典』弘文堂、1994年(項目執筆);廣松渉ほか編『哲学・思想事典』岩波書店、1998年 (項目執筆);大澤真幸ほか編『現代社会学事典』弘文堂、2012年(項目執筆);エトムント・フッサール『デカルト的省察』岩波文庫、2001年(翻訳);同『間主観性の現象学―その方法』『間主観性の現象学Ⅱ その展開』『間主観性の現象学Ⅲ その行方』ちくま学芸文庫、2012-2015年 (翻訳)。

2016年 8月更新

教授 堀江 剛

ほりえ つよし
1961年生。2001年、大阪大学大学院文学研究科博士後期課程(臨床哲学専攻)単位取得退学。博士(文学)(大阪大学、2003年)。2004年、広島大学総合科学部助教授。2007年、同准教授。2011年、同教授。2016年4月より現職。
専攻:哲学/倫理学/臨床哲学
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研究紹介
西洋近代哲学、特にスピノザの研究をしてきました。それと同時にルーマンの社会システム理論に惹かれ、社会のあらゆる現象を「コミュニケーションのシステム」として捉える考え方に強い関心を持っています。臨床哲学(研究室が開設された年に博士後期課程に入学)では「ソクラティク・ダイアローグ」や「哲学カフェ」など、哲学対話の方法論と実践に取り組んできました。近年では、「組織」に着目した臨床哲学の可能性を考えようとしています。
メッセージ
臨床哲学は、「だれが・どこで・どのように・哲学する」のか、ということを常に新たに問い続ける分野だと考えています。哲学者や専門家(あるいは個人)が・研究室や大学で・古典的なテキストを読み解く仕方で哲学するといった既存のイメージを一旦リセットし、柔軟に「哲学する」ことの可能性を探る「挑戦」の場所だと言ってもよいでしょう。この、ゼロから哲学を考え行なうという意味で、教員も学生も、そして臨床哲学に関わる様々な人々も、同じ地点に立っています。
主要業績
「スピノザの「個物」概念」日本哲学会『哲学』52号、2001年;「スピノザの「属性」概念」スピノザ協会『スピノザーナ』5号、2004年;「現場の哲学と社会システム論」『臨床哲学』9号、2008年;「哲学する装置: Neo-Socratic Dialogueとその活用」広島大学人間文化研究講座『人間文化研究』3号、2011年
概説・一般書
『はじめて学ぶ西洋思想:思想家たちとの対話』ミネルヴァ書房、2005年(共著);『ソクラティク・ダイアローグ:対話の哲学に向けて』(仮題)大阪大学出版会、2016年(刊行予定)

2017年 8月更新

准教授 本間直樹

ほんま なおき
1970年生。大阪大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。文学修士(大阪大学)。大阪大学大学院文学研究科哲学講座助手、同講師を経て、2005年4月に大阪大学コミュニケーションデザイン・センター講師に着任し、文学研究科を兼任。2006年4月より現職。
専攻:哲学/倫理学/臨床哲学
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研究紹介
現象学、精神分析、システム理論ほか、20世紀の西洋思想・現代哲学の研究を軸に、コミュニケーション、社会、身体、セクシュアリティなどについての理論的探究を行う。臨床哲学の活動としては、哲学プラクティスなど、具体性に向かう哲学的思考の可能性を探究している。また、哲学的な対話法を学ぶワークショップや「こどもの哲学」などの実践と研究に取り組んでいる。
メッセージ
自分の知的関心に従い、あることを掘り下げて考える。それは面白くて仕方がないし、研究をすすめるうえでも欠かせないことでしょう。他方、水平的な関心から、単に隣接の分野ということに限らず、ひろく隣人の声を聴いてみる。これを実行するためには、自分を絶えず更新していく姿勢が求められるでしょう。誰かのニーズに耳を傾け、それにどう応えるのかを考えることも、なかなか奥深い。ましてや、それが創造的な営みとなるのならば。
主要業績
『行為/モラルの哲学』(岩波講座哲学6)岩波書店、2008年(共著);『応用倫理学講義1生命』岩波書店、2004年(共著);「コミュニケイションと倫理学」日本倫理学会編『倫理学年報』第48集、1999年;「オートポイエーシスと『身体』の問題」現象学年報15、1999年
概説・一般書
『ドキュメント臨床哲学』大阪大学出版会、2010年(共編著)

2016年 11月更新

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