本専門分野では、イギリス、アメリカを中心とした文学作品のテクストを綿密かつ正確に読むことを基本方針としています。研究対象とする作家、テーマ、時代、ジャンルは問いません。したがって、院生は、自分の文学的関心にもとづいて自由に研究テーマを選ぶことができます。
文学テクストを厳密に読む力を鍛えることと並んで、研究方法論の検討も欠かせません。近年、批評理論の著しい進展、キャノンの見直しが見られる状況にあって、院生たちは自分の文学的関心の理論的位置づけ、自分に合った研究方法の探求が求められています。
英米文学専門分野では、この要求に応えられるように講義・セミナー等に配慮がなされています。院生の全員が参加して行われる「談話会」は、教員・学生の隔壁を越えた自由な意見交換を目指しており、学会発表の実地訓練を行っています。
教員紹介
教授 片渕 悦久 教授 石割 隆喜 教授 山田 雄三 准教授 森本 道孝
教授 片渕 悦久
かたふち のぶひさ 1965年生。1995年、大阪大学大学院文学研究科博士課程単位修得退学。文学修士(大阪大学、1991年)。博士(文学)(大阪大学、2007年)。北陸大学講師、同志社女子大学講師、助教授を経て、2003年4月文学研究科助教授、2013年4月現職。 専攻:アメリカ文学 |
- 研究紹介
- アメリカ文学の中でもとくにユダヤ系小説を研究しています。とくにソール・ベローを中心に、20世紀はじめの移民作家エイブラハム・カーハンから現代作家のマイケル・シェイボンまでを、「物語意識」をキーワードとして系譜的観点から考察をつづけています。その他、「物語」そのものへの関心から、文学研究を超えたメディア横断的な物語生成のダイナミックスを探究し、新たな物語研究のありかたを模索しながら、アダプテーション(翻案)研究の可能性へと研究の視野を広げつつあります。
- メッセージ
- 私がこれまでユダヤ系アメリカ文学を専門に研究してきたのは、そのストーリーテリングの豊かさに魅了されたからです。主要な作品から、出版したての最新小説までを精読しながら、多彩で濃密で赤裸々な語りを繰り出してくるユダヤ文学の伝統がアメリカ大陸で驚異的な進化をとげるその過程を、いっしょにたどってみませんか。また、教室外ではアダプテーション研究の名のもと、〈物語〉生成とメディア文化の濃密な関係について研究を深めています。これについても授業内容に還元していくつもりです。
- 主要業績
- 『病いと身体の英米文学―阪大英文学会叢書1』英宝社(共著、2004);『越境・周縁・ディアスポラ』南雲堂フェニックス(共著、2005);『ソール・ベローの物語意識』晃洋書房(単著、2007);『「依存」する英米文学―阪大英文学会叢書5』英宝社(共著、2008);『ユダヤ系文学の歴史と現在』大阪教育図書(共著、2009);『笑いとユーモアのユダヤ文学』南雲堂(共著、2012);『ゴーレムの表象』南雲堂(共著、2013)
- 概説・一般書
- 『アメリカン・スタディーズ入門』萌書房(共編著、2003);『改訂増補版 新世紀アメリカ文学史』英宝社(共編著、2007);ラーラ・ヴァプニャール『うちにユダヤ人がいます』朝日出版社(翻訳、2008);『西洋文学―理解と鑑賞』大阪大学出版会(共著、2011);リンダ・ハッチオン『アダプテーションの理論』晃洋書房(共訳、2012)
2018年 8月更新
教授 石割 隆喜
いしわり たかよし 1970年生まれ。大阪外国語大学外国語学部(英語学科)卒、大阪大学大学院文学研究科博士課程(英文学専攻)修了。博士(文学)(大阪大学、1999)。大阪外国語大学助手、講師、助教授、准教授、2007年10月より大阪大学大学院文学研究科准教授を経て、2019年4月より現職。日本英文学会第22回新人賞(1999)。 専攻:アメリカ文学 |
- 研究紹介
- トマス・ピンチョンら、ポストモダニストと称される作家の作品ははたして「小説」と呼べるのか。「小説」は歴史のある時点で興り、今もしかしたらその役目を終えつつあるのかもしれないという、小説形式の歴史性とでも呼ぶべき問題に関心を抱いている。20世紀後半以降のポストモダン文学の分析を通して、広く近代という歴史的条件の中で「小説」がどのような役割を果たしてきたのか、「小説」という形式を必要としたのはどのような「人間」だったのか、といったことを探ってゆきたいと考えている。
- メッセージ
- そのままではまず使いこなせない機械の箱、ハードウェアであるコンピュータと、われわれユーザーとの間を仲立ちしてくれるのがOS(オペレーティング・システム)というソフトウェアであるように、文化とはわれわれ人間と環境(ハード)とのあいだを取り持ってくれる「ソフト」だといえるのではないでしょうか。その「ソフト」の一つ(たった一つ!ほかにも無数にあります)が「小説」――このような風通しのよい視点をもちながら「小説」についてもう少し深く考えてみませんか。
- 主要業績
- 「小説の非人間化−−ポストモダニズムとポストヒューマン」『言葉のしんそう(深層・真相)−−大庭幸男教授退職記念論文集』 (2015);“Rainbow’s Light: Or, ‘Illuminations’ in Thomas Pynchon’s Gravity’s Rainbow ,” The Japanese Journal of American Studies 24 (2013);「シュールリアリスティックな資本主義― Gravity's Rainbow 、あるいは Pynchon の『ポスト・ノヴェル』」『英文学研究』第85巻 (2008);「死者の〈怨〉の二つの型―フロイトの「文学」、 Vineland の"Cahmmunism"」『関西英文学研究』第1号 (2007);「Is Pynchon Too Much with the World?—“Is It O.K. to Be a Luddite?” と『ビン・ラディン』」『大阪外国語大学英米研究』第31号(2007);「ヘーゲル主義者、Stencil— V. の他者」『英文学研究』第81巻(2005); Postmodern Metamorphosis: Capitalism and the Subject in Contemporary American Fiction (英宝社、2001)
- 概説・一般書
- 『現代作家ガイド7 トマス・ピンチョン』(共著、彩流社、2014);『西洋文学―理解と鑑賞』(共著、大阪大学出版会、2011);「ポストモダンを目撃するということ―『小説の死』再考」鴨川卓博・伊藤貞基編『身体、ジェンダー、エスニシティ―21世紀転換期アメリカにおける主体』(英宝社、2003)
2019年 4月更新
教授 山田 雄三
やまだ ゆうぞう 1968年生。1990年大阪大学文学部卒業。1995年大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。1995-2013年、大阪大学言語文化部、同大学院言語文化研究科講師、助教授、准教授、2013年10月より大阪大学大学院文学研究科准教授を経て、2020年4月より現職。 専攻:英文学/文化理論研究 |
- 研究紹介
- わたしの研究は、大きくふたつの系列に分けることができます。そのひとつは、1950年代の英国で誕生し、1980年代以降に英語圏をはじめアジアにも拡大した、カルチュラル・スタディーズと呼ばれる新しいタイプの文化研究、とりわけ、その創始者とされるレイモンド・ウィリアムズ(Raymond Williams)の文化ダイナミクス理論の研究であり、もうひとつは、英国初期近代の民衆文化、とりわけ、女王一座による最初の商業演劇のフォームに関する研究です。
- メッセージ
- 「文化」ということばは、価値を帯びています。どんなマニアックな趣味でも、「・・文化」とつければ、かっこよく思えてしまいます。そうした現象を考察するカルチュラル・スタディーズに、わたしは関心があります。カルチュラル・スタディーズは今日、略してカルスタと呼ばれ、ラップやマンガなどを対照として社会学的手法で研究することをもっぱら指すようになりましたが、1950年代後半にイギリスに起こった時点にさかのぼり、それを政治・文化運動としてとらえ直してみたいと思います。
- 主要業績
- Writing under Influences: A Study of Christopher Marlowe (Eihosha,2000, 単著)、『感情のカルチュラル・スタディーズ―『スクリューティニ』の時代からニュー・レフト運動へ』(開文社出版、2005、単著)、『英語文学の越境―ポストコロニアル/カルチュラル・スタディーズの視点から』(英宝社、2010、共編著)、 “The ‘Far West’ after Industrialisation: Gwyn Thomas, Ishimure Michiko and Raymond Williams”, Keywords: A Journal of Cultural Materialism No. 9 (2011, 単著)、『シェイクスピアと演劇文化』(研究社、2012、共著)、『ニューレフトと呼ばれたモダニストたち―英語圏モダニズムの政治と文学』(松柏社、2013、単著)
- 概説・一般書
- 『原書で読むカルチュラル・スタディーズ』(英宝社、2008、共編著)、ロバート・アッカーマン『評伝 J・G・フレイザー―その生涯と業績』(法藏館、2009、共訳書)、『英語で読む現代世界の文化・社会・言語―植民地主義からグローバリゼーションへ』(英宝社、2015、共編著)、レイモンド・ウィリアムズ『想像力の時制―文化研究II』(みすず書房、2016、共訳)
2020年 4月更新
准教授 森本 道孝
もりもと みちたか 1978年生。2001年大阪大学文学部卒業。2009年大阪大学大学院文学研究科博士課程単位修得退学。文学修士(大阪大学、2003年)。博士(文学)(大阪大学、2009年)。近畿大学経済学部講師、同准教授を経て、2018年4月より、現職。 専攻:アメリカ文学 |
- 研究紹介
- 専門は現代アメリカ演劇研究です。特に、劇作家・俳優として活躍をしたサム・シェパード(Sam Shepard)の作品を中心に、「家族」「エイジング」などをキーワードに読み解いています。そこから関心を広げて、彼の影響を受けたアジア系アメリカ人劇作家デイヴィッド・ヘンリー・ホワンや、気鋭のアフリカ系女性劇作家スーザン=ロリ・パークスをはじめとして、アメリカ演劇作品全般を人種・ジェンダー・世代など様々な観点から読み進めています。
- メッセージ
- 学部生のときの演習でサム・シェパードの演劇作品に関する発表を褒められて以来、大学院進学後もアメリカ演劇に関する研究を進めることになりました。また、演劇・漫才・ライブなどジャンルを問わず舞台上で演じられるものに対してもともと持っていた関心と、研究が結びついていることに喜びを感じています。皆さんにも、同様の素晴らしい出会いのきっかけを作ることができればと考えています。興味・関心のあることに対して、素直に前向きに進んでみませんか。一緒にトライしてみましょう。
- 主要業績
- 『〈アンチ〉エイジングと英米文学』英宝社(共著、2013)、『「依存」する英米文学―阪大英文学会叢書5』英宝社(共著、2008)、『「移動」する英米文学―阪大英文学会叢書7』英宝社(共著、2013)、『英語のデザインを読む―阪大英文学叢書8』英宝社(共著、2015)、『アメリカ演劇26 ユージーン・オニール特集Ⅱ』法政大学出版(単著、2015)。
- 概説・一般書
- 『改訂増補版 新世紀アメリカ文学史』英宝社(共著、2007)
2018年 8月更新
外国人教師 Paul Harvey
ポール・ハーヴィ 1961年生。1980年9月、Oriel College, Oxford University入学。1986年6月 Oriel College, Oxford University 卒業退学 (MA, MPhil 取得)。1986年10月、京都大学教養部招聘研究員(1年間)。1988年4月、大阪大学言語文化部講師。1990年4月、カナダ商工会議所専務理事(1年間)。1991年4月、大阪大学言語文化部講師。1999年10月、大阪大学文学部・大阪大学大学院文学研究科外国人教師に着任し現在に至る。 専攻:シェイクスピア/イギリスルネッサンス/英文学 |
- 研究紹介
- I am working on Shakespeare in performance, looking at the way that different inflections change the meaning of particular speeches. What is beautiful verse-speaking on the Shakespearean stage? By comparing different spoken versions of famous speeches, and by studying the text closely it is possible to learn a great deal. I use this for my Shakespeare Lecture. In the past 12 years I have been busy writing textbooks, translating classic Japanese and Chinese poetry, writing poetry on religious themes, and writing poetry on other themes (Birds, Sport, Flowers).
- メッセージ
- My creative writing class has developed greatly in the past ten years, with a large attendance by students. Use your creative ability in English, focus on the tradition of Japanese and Chinese classical poetry, learn how to make a 5 line poem more effective as poetry – we are learning the basics of poetry. It is an excellent way to improve English ability and to make one read with more attention. I strongly recommend reading the Oxford English Dictionary, the complete edition, to enrich your knowledge of English.
- 主要業績
- All books by Stean Anthony (pen name) are published by Yamaguchi Shoten, Kyoto. Stean Anthony, trans, One Hundred Poems [百人一首の訳]; Selections from Shakespeare 1-5 ; Hagios Paulos 1-3 ; Songs 365 ; Great China 1-4 ; Heiankyo 1.
- 概説・一般書
- Saint John 550; Saint John 391; Saint John 190; Saint Matthew 331; Saint Luke 132; Saint Paul 200; Saint Mary 100; Saint Mary 365 1-6; Isaiah Isaiah Bright Voice; Songs for Islam; Manyōshū 365; Kongzi 136; Inorijuzu; Sufisongs; Soulsongs; Pashsongs; Bird; Sport. Pdf Eitanka 1 & 70+ lectures on the Psalms. 80+ classes of Monday Songs (ongoing textbook of songs in English).
2018年 8月更新