共生文明論コース

kyoseibunmei.jpg 交通手段やコミュニケーション手段の発展とともに、時間と空間の圧縮がすすみ、人々の接触が増大して、その共生が現代社会の大きな課題となりつつあります。本コースでは、人々の多彩な関係を、接触、交渉から衝突や妥協、住み分けなど複合的な関係の発展まで多角的に追跡し、そのメカニズムの形成を歴史的に解明します。またこれを通じて、人々の歴史意識や言語意識、文化観や民族観の形成と変動にもアプローチして、現代世界の理解と共生に貢献することを目指しています。

くわえて、大学での専門研究と歴史教育の実践との間に生じる問題を考察し、新たな研究課題を見いだすとともに、現場の高校教員などと連携して歴史教育の改善を検討しています。地域ごとに区分された既存の方法論を越えて、現代歴史学の方法と課題について幅広い知見をもつこと、これは共生文明論コースのもうひとつの柱と言ってもよいでしょう。

本コースの修了生は、ジャーナリズム・教職のほか国際的な活動をおこなう企業や公共団体などへの就職を考えています。

教員紹介

教授 藤川 隆男 教授 堤 研二 教授 堤 一昭 准教授 井本 恭子

教授 藤川 隆男

ふじかわ たかお
1959年生。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程中退。文学修士(大阪大学)、MA(ANU)。帝塚山大学教養学部講師、同助教授、大阪大学文学部助教授を経て現職。
専攻:西洋史、とくにオーストラリアの歴史
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研究紹介
オーストラリアの歴史を主に研究しています。また、「白人」の歴史的な成立に関する研究 も行っています。 2011年に、『白人とは何か?』に続く、『人種差別の世界史―白人性とは何か?』を出版しました。研究ではないのですが、ネット上で動くオーストラリア 辞書(日本語)やオーストラリアの失われた地名辞典(英語)の作成も行っています。最近は、オーストラリアの歴史博物館の歴史や空想上の動物バニヤップに 興味を持って、オーストラリア各地を訪ね歩いています。2016年7月には『妖獣バニヤップの歴史 ―オーストラリア先住民と白人侵略者のあいだで』(刀水歴史全書91)を出版しました。日本画家の人たちに表紙絵や挿絵を描いてもらった豪華な?研究書です。
メッセージ
オーストラリアの研究を志す人を求めています。入学を希望する人は気軽に連絡してください。研究室の サイトにメールアドレスが記載してあります。ご利用ください。また、人種・ジェンダー・階級の関連を歴史的に考えたいと思っているような人も研究室に連絡 してください。これまで研究してきた分野は問いません。歴史学を研究してきた人も、人類学を研究してきた人も、社会学を研究してきた人も大歓迎です。妖怪や怪物が好きな人も歓迎します。
主要業績
『妖獣バニヤップの歴史 ―オーストラリア先住民と白人侵略者のあいだで』刀水書房、2016; 『人種差別の世界史』刀水書房、2011;『パスポートの発明』(監訳)法政大学出版局、 2008; 『白人とは何か?』(編著)刀水書房、2005、pp. 1-57;『空間のイギリス史』(編著)山川出版社、2005、pp. 3-11, pp. 57-69;「ジェントルウーマン・ダウンアンダー」『ジェントルマンであること』刀水書房、2000、pp.146-169;「オーストラリアにおける アイルランド系移民」『岩波講座世界の歴史19巻 移動と移民』岩波書店、1999、pp. 87-108;「移住する先住民」『先住民と都市』青木書店、1999、pp.24-40
概説・一般書
『アニメで読む世界史2』(共編著)山川出版社、2015; 『アニメで読む世界史』(編著)山川出版社、2011;『猫に紅茶を』大阪大学出版会、2007;『オーストラリアの歴史』(編著)有斐閣、2004;「オーストラリア史」『オセアニア史』山川出版社、2000、pp. 78-167

2021年 9月更新

教授 堤 研二

つつみ けんじ
1960年福岡県大牟田市生れ。九州大学大学院文学研究科修士課程修了。文学修士 (九州大学、1986)・博士(文学)(九州大学、2009)。佐世保工業高等専門学校助手・講師、島根大学法文学部講師・助教授、大阪大学文学研究科助教授・准教授を経て、2009年11月より現職。地域地理科学学会賞(1997)、昭和シェル石油環境研究助成財団環境研究課題賞(2005)、大阪大学 教育・研究功績賞(2006)、大阪大学 総長顕彰(研究部門)(2015)、大阪府スポーツ少年団功労者表彰(2016)。
専攻:人文地理学、とくに社会経済地理学。
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研究紹介
山村・炭鉱閉山地域からの人口流出、伝統的環境利用、産業近代化、人口減少地域の生活環境、たたら製鉄地域の社会文化、荒神谷遺跡出土銅剣の計量分析、千里ニュータウンの地域社会再生などの実証的地域分析を行い、縁辺地域論、エージェント論、ソーシャル・キャピタル論を展開してきた。それらの中核にあるのは「地域空間の縁辺化」という概念で、これに沿って中範囲論的な研究展開を企図している。実践的に人口減少社会での地域連携に関与するため、地域に根ざしたスポーツ少年団活動にも力を注いでいる。
メッセージ
共生文明論は、共生の時代における文明の意義と可能性を探る、新たな学問領域として定義できよう。私自身は人文地理学に一つの基礎を置きながら、様々な学問分野との交流から得た新たな知見も援用しつつ、文明や社会や地域を対象とした学問世界へ切り込んでいきたいと思う。チャレンジングな学問的試みの中から、思いもかけないような知的発見ができるかもしれない。。。そういう期待ができるのではなかろうか。
主要業績
Social capital, Douglas Richardson (Editor-in chief)(The Association of American Geographers) (eds.), The International Encyclopedia of Geography: People, the Earth, Environment, and Technology, ” Vol.12 (Wiley Blackwell (Chichester, West Sussex), 2017); 『人口減少・高齢化と生活環境:山間地域とソーシャル・キャピタルの事例に学ぶ』(九州大学出版会、2011・新装版2015); Local Knowledge and Innovation: Enhancing the Substance of Non-Metropolitan Regions( 共編著、MARG(Kyoto), 1999);産業近代化とエージェント:近代の八女地方における茶業を事例として、経済地理学年報41-3(1995);ドイツ社会地理学の一系譜:社会 地理学論争の周辺、人文地理44-2(1992);人口移動研究の課題と視点、人文地理41-6(1989);過疎山村・大分県上津江村からの人口移動の 分析、人文地理39-3(1987) 。
概説・一般書
地域科学、新経済地理学と日本の経済地理学に関する試論的考察:ERSA50周年と日本の経済地理学、待兼山論叢(日本学篇)45(2011);社会的不平等、上野和彦・椿真智子・中村康子編『地理学概論』(地理学基礎シリーズ1)、(朝倉書店、2007);農村人口の変動、山本正三・奥野隆史・谷内達・田林明編『日本総論Ⅱ(人文・社会編)』(『日本の地誌』第2巻)、(朝倉書店、2006); 社会地理学研究の系譜、水内俊雄編『空間の社会地理』(「シリーズ人文地理学」、第5巻)、(朝倉書店、2004)。

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教授 堤 一昭

つつみ かずあき
1960年生。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科博士後期課程(東洋史学専攻)学修退学。文学修士(京都大学、1988)。大阪外国語大学外国語学部国際文化学科比較文化講座専任講師、同助教授、同准教授、大阪大学大学院文学研究科准教授を経て、2013年6月より現職。
専攻:東洋史学
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研究紹介
13 ~ 14世紀の「モンゴル時代」の中国(いわゆる元朝)の歴史を専門にしています。この時代は最近急速に研究が進み、全ユーラシア規模での人・もの・文化の移動・交流が注目されています。おもに現在の中国地域で異文化接触のなか、どのような社会ができていったのかを研究しています。時代の特質を知るために重要となる中国石刻史料も研究の対象となります。また、広く日本・中国など東アジアにおける自己・相互のイメージの現在にいたるまでの歴史的変遷、「東洋史」という学問の成立やこれからの歴史教育を考える仕事にも取り組んでいきたいと思っています。
メッセージ
私自身は上記のような研究をしていますが、より広く日本を含むアジアの歴史について学びたい人を歓迎します。みなさんには、次のことを目指してもらいたいと思っています。まずひとつは地域・時代・学問分野ほかを越境することにより、自らの視点を相対化すること、もうひとつは自分自身の研究テーマをひたすら深く調べ考えることです。どちらからでも、分からない苦しい時間の連続の後に目から鱗が落ちて、なるほど歴史とは人間とは社会とはそうなのかと思えるようなすばらしい瞬間をぜひ体験してもらいたい。その体験を出発点にして現代世界のさまざまな事象を考えてもらいたいのです。
主要業績
「蒙元時代における「中国」の拡大と正統性の多元化」『中華民国の制度変容と東アジア地域秩序』(共著、汲古書院、2008);「〈中国〉の自画像―その時間と空間を規定するもの―」『現代中国地域研究の新たな視圏』(共著、世界思想社、2007);「石濱文庫拓本資料調査の概要」『大阪外国語大学論集』35(2007);「大元ウルス高官任命命令文研究序説」『大阪外国語大学論集』29(2003);「大元ウルス治下初期江南政治史」『東洋史研究』58-4(2000)
概説・一般書
『グローバルヒストリーと帝国』(共著、大阪大学出版会、2013);『歴史学のフロンティア―地域から問い直す国民国家史観』(共著、大阪大学出版会、2008);『異文化コミュニケーションを学ぶ人のために』(共著、世界思想社、2006);『角川世界史辞典』(項目執筆、角川書店、2001)

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准教授 井本 恭子

いもと やすこ
1963年生。大阪外国語大学大学院外国語学研究科修士課程(イタリア語学専攻)修了。文学修士(大阪外国語大学、1990)。大阪外国語大学外国語学部地域文化学科ヨーロッパIII講座助手、講師、同助教授、同准教授を経て、2007年10月より大阪大学大学院文学研究科准教授。
専攻:人類学
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研究紹介
ヒトがつくりだす世界の無限の多様性を読み解くための理論的モデルをいつも模索しながら、サルデーニャ島(イタリア)の習俗、信仰、伝承を研究してきました。それは同時にヨーロッパの自己意識を相対化することでもありました。最近は、さまざまな状況で「内なる他者」として異質化される/する島の人びとの生活世界から、「われわれ感覚」、「われわれ意識」といったヒトの共同性のありかたや文化変容(適応と不適応)を捉えることに関心をもっています。
メッセージ
多様な世界の探究は、ヒトの全体像をつねに意識しながら、細部の観察にこだわることだと思います。具体的な事象の個別性をみてゆくことが、「文化の公分母」を模索する道を切り拓くことにもなるからです。差異化の進む世界に分け入る、 雑食で、野太く、好奇心旺盛な人を求めています。ローカルな「場」と理論を往復しながら、自らの感覚と思考を鍛えてみませんか。
主要業績
「多重化するローカルな祭りー浮遊する聖人」『交錯する知―衣装・信仰・性』思文閣出版(共著、2014);「「ローカルなもの」の様相ーオルゴーゾロの事例からー」『待兼山論叢』第46号(2012);「差異の標本としての<伝統衣装>」『着衣する身体と女性の周縁化』思文閣出版(共著、2012);「「地続き」の思考の痕跡―普通の人びとの日常的な「もののやりかた」―」『待兼山論叢』第43号(2009);「ex votoの謎―セディロの聖コンスタンティヌスに返礼する人びと―」『AULA NUOVAイタリアの言語と文化』6(2007);「幻想の植物誌―人間の木―」『饕餮』9(訳・解説、2001)
概説・一般書

『ヨーロッパのことばと文化―新たな視座から考える』大阪大学出版会(共著、2013):『女の性と生』嵯峨野書院(共著、1997)


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