大阪大学の地下に眠る遺跡
埋蔵文化財調査室は大学構内の建設工事に関連した文化財調査を行うために文学部・大学院文学研究科におかれています。
豊中キャンパスはその全域が待兼山遺跡として遺跡台帳に登録されており、また大阪市北区にある大阪大学中之島センター付近は江戸時代の蔵屋敷が建ち並んだ場所として知られています。近年の調査成果によって、吹田キャンパスの地下にも埋蔵文化財が包蔵されていることがわかり、山田丘遺跡と名付けられました。こうした遺跡やそこから出土する遺物は、国民の共有財産として守り活用していく義務があります。
大阪大学では、キャンパス内の文化財保護と建物計画などの調整を行うために埋蔵文化財調査委員会を設置し、文化財保護法の規定に基づいて構内の遺跡調査について協議していますが、その実際の調査を行うのが埋蔵文化財調査室です。現在、専任1名・兼任2名のスタッフで調査に当たっています。
調査研究から出土品の活用まで
埋蔵文化財調査室は、待兼山遺跡、山田丘遺跡、そして久留米藩蔵屋敷跡の発掘調査を実施し、数多くの研究成果を挙げてきました。
とくに待兼山遺跡の長年にわたる発掘調査によって、待兼山周辺は、古墳時代から奈良・平安時代、中・近世にいたるまで時代を超えて墓域として利用されていたことが判明しています。
2005年に待兼山道路整備工事にともなって実施した調査では、5世紀後半の古墳(待兼山5号墳)とともに、大阪府下でも有数の火葬墓群が発見されました。この調査で出土した埴輪や土器、人骨の整理作業を進め、2008年にはその成果を報告書として刊行しています。
さらに2011年には、総合学術博物館修学館の北側において発掘調査を実施し、火葬墓や古代の土器棺が発見されました。こうした地道な調査活動によって、待兼山遺跡の実態が鮮明なものとなってきたのです。なお、発掘調査による出土品の一部は、大阪大学総合学術博物館に展示しています。
埋蔵文化財調査室では、日々の埋蔵文化財調査・研究に加え、アウトリーチ活動にも力を注いでいます。大阪大学総合学術博物館における展示解説に加え、高等学校での出張講義、地域の歴史同好会での講演など、調査研究成果を関心ある市民の方々に広く発信しています。
教授 福永伸哉(兼) / 教授 高橋照彦(兼) / 助教 上田直弥